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不思議なお話NO5

奥様は超能力者

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 僕が女房の特異な能力に気づいたのは、暇つぶしに二人でトランプ遊びをしていた時のことです。神経衰弱にも飽き、僕はテーブルに並べた5枚のカードの中から1枚のカード、ジョーカーをどちらが多く引き当てられるかを競うゲームを思い立ちました。
 最初に挑んだのは僕です。自分は勘が鋭い方だと思っていましたから、多少自信があったのです。神経を集中させ、手をかざしたりしながら最初の一枚をめくります。ハズレ。女房が再びシャッフルして並べます。またしてもハズレ。結局、5回中1回しかジョーカーを当てられませんでした。勘が鋭いというのは僕の勘違いだったようです。
 今度は女房の番です。女房はじっと見入っています。なかなかカードをとろうとしません。ようやく一枚のカードに手を伸ばし、そして開くと、なんとジョーカーです。そして、次も次もジョーカーを引き当てました。僕はまだ、単なる偶然だと思っていました。そして何度もシャッフルしてカードをテーブルに並べました。すると残り2回とも引き当てたのです。
 僕は、女房がじっとカードを見据える姿を思い出し、何か見えるのかと尋ねますと、精神を集中しているとジョーカーだけが浮いて見えると言うのです。僕はゲームどころではなくなり、女房の特異な能力を更にテストすることにしました。
 その結果、11回までは言い当てましたが、それ以降は当たったりハズレたりで、確率は半分以下に落ちました。女房が疲れたというので、テストを終了しましたが、どうやら、精神を集中させるのは相当疲れるようです。つまり集中力が落ちると能力も落ちると言うことです。
  ここで、ちょっと話の腰を折るようですが、この不思議なお話を書くに当たって、僕の脳裏にある核心が芽生えていました。それは不思議な現象の謎を解く鍵は「極度の集中力もしくは妄執」ということです。そして女房の特異の能力の出所も集中力にあるということを覚えておいてください。また、妄執はその対象となる妄想に囚われることにより狂気じみた集中力を発揮することも確かなのです。すべての鍵は集中力にあるということです。 

 さて、話の続きをしましょう。次に僕が実験?したのは、競馬の予想です。僕はすぐさま競馬新聞を買ってきて、枠順と馬の名前を見せ、女房の脳裏に二つの数字が頭に浮かぶと、競馬新聞にそれを記入してゆくのです。その時、どれほど馬券を買ったかは覚えていませんが、馬券を握りしめテレビに見入ったことだけは覚えています。・・・結果はすべてハズレでした。
 その後、僕は超能力の本をかなり読みました。そして、20世紀最高の超能力者エドガー・ケイシーを知ることになります。このホームページに掲載しているある小説は、霊界がユングの謂う集合的無意識領域に存在するとした僕の意欲作ですが、この中でもこの超能力者の言葉を数多く引用しています。それは、この人物の言葉に真実を見いだしたからです。
 このエドガー・ケイシーの精神を集中させる方法が少し変わっています。静かな環境で横たわり、自己催眠と他者による催眠(多くは奥さんが施行)により、眠りに陥るのです。恐らく、これほど精神を集中させる方法はないと思います。
  何故このエドガー・ケイシーの話になったかと言いますと、実はケイシーの能力に目をつけ群がった人々がいたのですが、その人々が考えたのが、僕と同じ金儲けだったからです。
 難病に苦しむ人々を助けてきた眠れるケーシーに、株価の動きや儲け話の成否を語らせたのです。しまいには、油田開発会社も乗りだし、油田の採掘場所を探索させることまでしまた。誰しも考えることは同じというわけです。しかし、結果は僕の場合と同様すべてハズレでした。 
 どうも、この超能力はお金儲けには向いていないようです。女房の超能力も現実には何の役には立ちません。せいぜいトランプゲームにそれが生かされる程度でしょうが、お金を賭けていればその効果も発揮できないのですから、実利という点からみれば、何の役にも立たないということになります。
 また女房と同程度、或いはそれ以上の超能力者は街に掃いて捨てるほどいますし、更に能力のある方がいてもおかしくはないのです。
 エッセイ「インターネットの文化人類学的な意味」にも書いたとおり、それは誰もが持っていた能力なのですが、文明の発達とともに徐々に失われていったのです。しかし女性にはその残滓が残されているようです。

 さて、何もかも忘れてしまう皆さん、この程度の不思議はあってもおかしくないと認めたら如何でしょうか。超能力と称されるもののうち、その多くは皆さんもかつてはお持ちだったのですから。
 とはいえ、テレビで超能力者が驚くべき現象を引き起こすたびに「あれは、絶対、ヤラセよ」と言い張る女房を後目に、何を見ても聞いても、信じたくないものは絶対に信じないという人々の頑なさを思い知らされるのです。
  そうそう一つ忘れていました。女房の超能力を知って以来、僕は女房にジャンケンで勝てるようにななりました。カラクリはこうです。頭の中でパーを思い浮かべます。しかし出すのはグー。分かりますか?僕のこの高等テクニック?女房は必ず引っかかり、小首を傾げます。
 こうして、僕は、冬の憂鬱な仕事、寒い中、石油ファンヒーターの石油を補充するという仕事から解放されたのです。これも、女房の超能力の存在あってのことと感謝しています。
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