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不思議なお話No2
記憶から消えていた不思議な出会い
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僕は、どういう訳か思いもかけない偶然の出会いを何度も経験しています。こんなことが、本当に起こり得るのだろうかという偶然です。そんな時、誰でもそう感じると思うのですが、縁という言葉を思い浮かべます。
大学時代、宮崎から熊本に抜ける国道で、ヒッチハイクをしてトラックを止めました。とにかく切りつめた貧乏旅行ですから移動はこれに限るのです。高いステップを上がって、運転手に挨拶し、ふと、助手席に座る先客と目を合わせ僕は驚きの声を上げました。なんと先客は高校時代の同級生だったのです。
顔を知っていると言う程度の仲でも、この偶然は二人を興奮させ饒舌にしたようで、熊本の駅の冷たいコンクリートの上に寝袋を並べて夜の更けるのも忘れて語り合いました。そしていっしょに旅を続けようという同級生の提案に、ついつい頷いてしまう程に、僕も心を許したのでした。
翌朝早く、僕は悪いとは思ったのですが、その同級生を熊本駅に置き去りにして旅立ちました。それから二週間後のことです。京都の駅前の植え込みで寝ているところを、この同級生に起こされたのです。その時の驚きをなんと表現したらいいのか分かりません。まるで、運命の糸が二人を結びつけているとしか思えなかったのです。
この時、やはりこの同級生と縁があるに違いないと感じたのですが、実際には深く関わることはありませんでした。この同級生との縁は、もっと別な人との縁を後々思い起こさせるための布石だったのではと、最近考えるようになりました。いずれ、それについても書きたいと思います。
一つ面白いと思ったことがあります。それは後年この同級生と会社の帰りに電車で再会したときのことです。その同級生が言った言葉に、僕は耳を疑いました。彼はこう言ったのです。
「あの時は、置き去りにして悪かったな、どうしても一人旅がしたかったんだ」と。
「不思議な話その1」でもふれましたが、人間は都合の悪い記憶を消し去るか、あるいは都合のよいストーリーに書き換えて記憶の小箱にしまい込むようです。僕にもそれは同様にあるようで、次の話は、ある出来事を僕が記憶からきれいさっぱり消し去った例です。
僕にその出来事のあらましを教えてくれたのは、同窓会の幹事会の仲間A君で、幹事会とは名ばかりの、いつもの幼友達の飲み会の席です。その席でA君が会話の途中で「そういえばよー、安藤」といきなり話題を変えました。
「俺は長崎駅で偶然ばったり会ったあの出来事が、不思議でしょうがないんだ。いったいあんな偶然ってあるんだろうか?」
と言われても僕はなんのことかさっぱり分かりません。
「誰と会ったの?」
A君は、目をまん丸にして驚き、
「なにー、覚えていない?安藤、あれほどめったにない出来事を忘れてしまうなんて、お前どうかしているんじゃないの」
と、あきれ顔です。
そう言われて記憶を呼び覚まそうにも、僕の脳細胞にはその記憶の破片すら残っていません。しかたなく、僕自身が経験した偶然の出会いの経緯を、A君から聞く羽目になりました。それはこういう話です。
大学一年の夏休み前、僕はA君とたまたま街で会い、夏休みのことが話題になりました。その時、僕は九州一人旅を計画していたのですが、偶然にもA君も同じだったのです。ただ、A君は、もう一人の共通の友人B君と九州のどこかで待ち合わせする予定でした。ですから、A君はその待ち合わせに僕も誘ったのですが、丁重に断られたそうです。
そして、A君とB君は予定通り長崎駅で合流します。そして飯でも食おうと歩き出した途端、二人は驚いて顔を見合わせました。僕が街の彼方からリックを背中にしょって歩いてくるのを認めたからです。A君は、B君が僕に待ち合わせ場所と時間を教えたのだと思い、そのことを問うと、B君は安藤とはここ1年つきあっていないと答えたということでした。
これ以降の出来事は酒席でのことですから、話に割って入った仲間に邪魔されて聞くことは出来ませんでしたが、記憶にないとはいえ、僕自身のことですから、彼らと出会った後、どう行動したが手に取るように分かるのです。僕はこうしたと思います。
当然、僕も偶然の出会いに感動し歓喜の表情で二人に近づきます。しかし、視線はB君を通り過ぎA君に注がれていたと思うのです。そして3人で一緒に旅をしようという誘いをすげなく断って、列車の時刻が迫っているとか何とか言って二人と別れたはずです。
何故こう言えるのかといえば、長崎を後にして鹿児島方面に向かったことだけは記憶にありますし、そしてこれが肝心なことなのですが、1年以上前から、僕はB君との交友を絶っていたのです。お恥ずかしい話ですが、女性問題です。口をきく気さえ失せていました。僕が何故この出来事を忘れ去ってしまったのか、お分かりいただけたでしょうか?僕は当時、その女性とB君のことを記憶から削除したかったのです。
注:話の後先が逆になってしまいましたが、最初の話は大学二年の時、この話は大学一年の時のことです。九州には3回行っています。
大学時代、宮崎から熊本に抜ける国道で、ヒッチハイクをしてトラックを止めました。とにかく切りつめた貧乏旅行ですから移動はこれに限るのです。高いステップを上がって、運転手に挨拶し、ふと、助手席に座る先客と目を合わせ僕は驚きの声を上げました。なんと先客は高校時代の同級生だったのです。
顔を知っていると言う程度の仲でも、この偶然は二人を興奮させ饒舌にしたようで、熊本の駅の冷たいコンクリートの上に寝袋を並べて夜の更けるのも忘れて語り合いました。そしていっしょに旅を続けようという同級生の提案に、ついつい頷いてしまう程に、僕も心を許したのでした。
翌朝早く、僕は悪いとは思ったのですが、その同級生を熊本駅に置き去りにして旅立ちました。それから二週間後のことです。京都の駅前の植え込みで寝ているところを、この同級生に起こされたのです。その時の驚きをなんと表現したらいいのか分かりません。まるで、運命の糸が二人を結びつけているとしか思えなかったのです。
この時、やはりこの同級生と縁があるに違いないと感じたのですが、実際には深く関わることはありませんでした。この同級生との縁は、もっと別な人との縁を後々思い起こさせるための布石だったのではと、最近考えるようになりました。いずれ、それについても書きたいと思います。
一つ面白いと思ったことがあります。それは後年この同級生と会社の帰りに電車で再会したときのことです。その同級生が言った言葉に、僕は耳を疑いました。彼はこう言ったのです。
「あの時は、置き去りにして悪かったな、どうしても一人旅がしたかったんだ」と。
「不思議な話その1」でもふれましたが、人間は都合の悪い記憶を消し去るか、あるいは都合のよいストーリーに書き換えて記憶の小箱にしまい込むようです。僕にもそれは同様にあるようで、次の話は、ある出来事を僕が記憶からきれいさっぱり消し去った例です。
僕にその出来事のあらましを教えてくれたのは、同窓会の幹事会の仲間A君で、幹事会とは名ばかりの、いつもの幼友達の飲み会の席です。その席でA君が会話の途中で「そういえばよー、安藤」といきなり話題を変えました。
「俺は長崎駅で偶然ばったり会ったあの出来事が、不思議でしょうがないんだ。いったいあんな偶然ってあるんだろうか?」
と言われても僕はなんのことかさっぱり分かりません。
「誰と会ったの?」
A君は、目をまん丸にして驚き、
「なにー、覚えていない?安藤、あれほどめったにない出来事を忘れてしまうなんて、お前どうかしているんじゃないの」
と、あきれ顔です。
そう言われて記憶を呼び覚まそうにも、僕の脳細胞にはその記憶の破片すら残っていません。しかたなく、僕自身が経験した偶然の出会いの経緯を、A君から聞く羽目になりました。それはこういう話です。
大学一年の夏休み前、僕はA君とたまたま街で会い、夏休みのことが話題になりました。その時、僕は九州一人旅を計画していたのですが、偶然にもA君も同じだったのです。ただ、A君は、もう一人の共通の友人B君と九州のどこかで待ち合わせする予定でした。ですから、A君はその待ち合わせに僕も誘ったのですが、丁重に断られたそうです。
そして、A君とB君は予定通り長崎駅で合流します。そして飯でも食おうと歩き出した途端、二人は驚いて顔を見合わせました。僕が街の彼方からリックを背中にしょって歩いてくるのを認めたからです。A君は、B君が僕に待ち合わせ場所と時間を教えたのだと思い、そのことを問うと、B君は安藤とはここ1年つきあっていないと答えたということでした。
これ以降の出来事は酒席でのことですから、話に割って入った仲間に邪魔されて聞くことは出来ませんでしたが、記憶にないとはいえ、僕自身のことですから、彼らと出会った後、どう行動したが手に取るように分かるのです。僕はこうしたと思います。
当然、僕も偶然の出会いに感動し歓喜の表情で二人に近づきます。しかし、視線はB君を通り過ぎA君に注がれていたと思うのです。そして3人で一緒に旅をしようという誘いをすげなく断って、列車の時刻が迫っているとか何とか言って二人と別れたはずです。
何故こう言えるのかといえば、長崎を後にして鹿児島方面に向かったことだけは記憶にありますし、そしてこれが肝心なことなのですが、1年以上前から、僕はB君との交友を絶っていたのです。お恥ずかしい話ですが、女性問題です。口をきく気さえ失せていました。僕が何故この出来事を忘れ去ってしまったのか、お分かりいただけたでしょうか?僕は当時、その女性とB君のことを記憶から削除したかったのです。
注:話の後先が逆になってしまいましたが、最初の話は大学二年の時、この話は大学一年の時のことです。九州には3回行っています。
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