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今、どんな顔をしてた?

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「おっはようございまぁぁぁっす!」
「レミリア、今日はやけに元気ね……」

 受付カウンターに入ろうとしたら、メグがあきれたようにこちらを見た。

「えへへ、やりたいことがたくさんあるんですよ、今日は」

 オオヤリ菊については、レミリアのこっそり"援助"のおかげで問題ない。ホルストの町を守るのはこういった地味な活動なのだ。
 レミリアは思いきりギルド職員の役割を課題解釈しているのだが、そこにその点を突っ込む人はいない。
 ――レミリアの陰の活動については、誰一人知らないので。
 オオヤリ菊の土地には、レミリアの魔力を注いであるから、当面は大丈夫だろう。これからのことについては、考えないといけないだろうけれど。

(っていうか、ライムント様がいなかったらあそこまでしなかった気がする)

 近隣のギルドから仕入れるという方法もあるのに、レミリアがやけにはりきってしまうのは、ライムントの存在があるからだろう。
 ――今度こそ、死なせない。
 前回の人生のような関係にはなれなくても。ただ、生きてさえいてくれればそれでいい。
 その前に。
 どうにか彼にかけられている呪いは解くつもりではあるが――その手掛かりがないというのも困る。

(私の知らない技術かなぁ……)

 レミリアが聖女として認められたとはいえ、知識の面では突貫工事もいいところだ。けれど、ライムントがメルクード遺跡に挑もうとしているのなら、その奥に何かあるということなのだろう。

(メルクード遺跡について調べてみる?)

 冒険者ギルドでは、ある程度の情報は冒険者達に公開している。それは、共通認識を持つことによって、事前に危険に対応できるようにという計らいだった。
 魔物の倒し方や解体の仕方、毒抜きの方法に、薬として使える野草、数種類の薬草によって作ることのできる簡単なポーションの作り方、等。
 遺跡の情報も、公開してよしとされたものについては公開されているけれど、ライムントがここに来ている理由についてまではギルドの情報では知ることができないだろう。

(となると、王都のギルドで握っている情報か、魔術師協会か……あっちに行くと、イェルドに関わり合わないといけなくなる)

 イェルドはレミリアの攻撃魔術における師匠であった。
 そして、最後の戦い、最後まで一緒に魔王に立ち向かった――とレミリアは思っていた。まさかあのあと、あんな裏切り方をされるとは思ってもいなかったから。

(私の方が強くなったのが気に入らなかったとか、そんな理由なんだろうけど)

 魔術の研鑽を積むためには、基本的には長い時間が必要だ。レミリアやマルセリナはある意味天才と言えただろう。
 だが、イェルドが四十年もかけて到達した領域に、レミリアはあっという間に到達してしまった。イェルドは、それが気に入らなかったのだろう。
 最初から、レミリアに好意的ではなかったが。
 なぜ彼がベルナルドやマルセリナに加担したのか、レミリアにはわからない。
 あの時、イェルドがベルナルドに協力していなかったら、ライムントを連れて脱出することだってできたはずだ。
 魔術には、魔術の力を持って立ち向かうしかないからだ。

(――よし、殺そう)

 時をさかのぼってから、物騒なことばかり考えているような気がする。だが、イェルドを殺したところで復讐にはならないだろう。
 アレフにウィクルンドにも復讐しなければ――殺すのでは生ぬるい。彼らが、一番、ダメージを受ける方法を考えなくては。
 ただ、殺すのではない――ただ、命を奪うのではなく、もっとダメージを与えられる方法を。

「ちょっと、何考えてるの。レミリア。めちゃくちゃ顔が怖くなってるんだけど」
「私、今どんな顔してた?」
「死ねって感じ」

 メグに言われて、ぎくりと肩を跳ね上げる。そんなにわかりやすかったか。
 でもまあ――と考え直す。まだ、時間はあるのだ。"彼ら"に対する復讐は、ゆっくり考えていけばいい。
 それより、ライムントの呪いを解く方が先だ。
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