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よし、殺そうと思ったのは一瞬で
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「こちらにどうぞ――ええと」
「ライムントだ。ライと呼んでくれてかまわない」
ライムントの言葉には、何も返すことができなかった。ギルドマスターの部屋にライムントが消えるのを見送り、レミリアはカウンターに戻る。
ライムントの顔、ライムントの声。なのに別人。
ギルドマスターのカティアスとライムントの会話は、数時間にも及んだ。
「――では、また明日」
ライムントがギルドを出て行ったのは、レミリアが仕事を終えようとするのとほぼ同じ時間だった。
(……なんで、ライムント様がここに来たんだろう)
ライムントが、ホルストに来る理由なんてあるのだろうか。
「皆――話がある。集まってくれ」
帰ろうとしていたら、カティアスがギルド内にいる面々を呼び集めた。
「ライムント殿下が、冒険者としてホルストで暮らすことになった」
「……は?」
レミリアだけではない。その発言を聞いた一同が、ポカンとしてしまった。
「ブライアルギルドから、昨日のうちに連絡は来ていたんだが――自分の目で見るまでは信じられなかった」
それはそうだろうな、と側にいるレミリアも思った。王族が、冒険者免許を取得して、冒険者ギルドに来ると言うだけでも前代未聞なのに。
カティアスが、ブライアルのギルドから連絡を受けても信じられなかったのも当然だ。
「それと、問題が一つある。殿下は――呪われている」
だが、再びカティアスが口にした言葉に、またもやギルド内は静まり返る。いったい、どういうことだろう。
「呪いの原因は不明――今は、すべての感情が失われている状況だ」
「なぜ、それを我々に伝えるのです?」
王族が呪われたなんて話、本来なら表ざたにするはずはない。だが、レミリアの疑問は、すぐに解消された。
「殿下の呪いの件については、すでに公開されているらしい。ベルナルド殿下がそうしたようだ」
カティアスの言葉に、レミリアは瞬時に思った。
(よし、殺そう)
おそらく、ライムントを呪ったのはベルナルドだろう。ベルナルドは、ライムントを嫌っていた――恐れていたと言った方がいいかもしれない。あんな濡れ衣を着せて殺すほど恐れていた。
「……なぜ、そんなことに」
「それがわかれば、苦労はしない――とにかく、今後殿下のことは、ライムントと呼ぶように。冒険者として扱うようにというのが、先方の意向だ。メルクード遺跡で修行を行う」
誰かのつぶやきに、カティアスが返す。
メルクード遺跡は、以前の魔王が作った城だったと言われている。まだ、遺跡の中すべてが調べつくされたわけではなく、危険な場所でもあった。
(なんで、この時期に修行始めちゃうの……? それに、メルクード遺跡で修行って)
続くカティアスの言葉に、レミリアは唇を噛んだ。
「殿下が、メルクード遺跡に入るのは、呪いを解くためという理由もあるそうだ」
「……冒険者になったということは、王宮から騎士が来て殿下に同行するわけではないんですね?」
「冒険者パーティーと同行するそうだ。"白竜の盾"が指名依頼を受けている」
カティアスが名をあげたのは、ホルストでも有名な冒険者パーティーだった。"白竜の盾"が一緒ならば、危険な地域に踏み込むのは避けられるだろう。
人生を逆行してしまった時、真っ先にレミリアはライムントの存在を確認しに行った。あの時、窓の外で剣をふるうライムントの姿を見かけたけれど、彼の腕はかなりのものだったと思う。
(……メルクード遺跡に呪いが関係してるなんて聞いたことがないけど……もしかして、私の知らない呪い?)
レミリアの知らない呪いならば、うかつな行動はとらない方がいい。全盛期ならばともかく、今はまだ力を取り戻していないのだから。
「ライムントだ。ライと呼んでくれてかまわない」
ライムントの言葉には、何も返すことができなかった。ギルドマスターの部屋にライムントが消えるのを見送り、レミリアはカウンターに戻る。
ライムントの顔、ライムントの声。なのに別人。
ギルドマスターのカティアスとライムントの会話は、数時間にも及んだ。
「――では、また明日」
ライムントがギルドを出て行ったのは、レミリアが仕事を終えようとするのとほぼ同じ時間だった。
(……なんで、ライムント様がここに来たんだろう)
ライムントが、ホルストに来る理由なんてあるのだろうか。
「皆――話がある。集まってくれ」
帰ろうとしていたら、カティアスがギルド内にいる面々を呼び集めた。
「ライムント殿下が、冒険者としてホルストで暮らすことになった」
「……は?」
レミリアだけではない。その発言を聞いた一同が、ポカンとしてしまった。
「ブライアルギルドから、昨日のうちに連絡は来ていたんだが――自分の目で見るまでは信じられなかった」
それはそうだろうな、と側にいるレミリアも思った。王族が、冒険者免許を取得して、冒険者ギルドに来ると言うだけでも前代未聞なのに。
カティアスが、ブライアルのギルドから連絡を受けても信じられなかったのも当然だ。
「それと、問題が一つある。殿下は――呪われている」
だが、再びカティアスが口にした言葉に、またもやギルド内は静まり返る。いったい、どういうことだろう。
「呪いの原因は不明――今は、すべての感情が失われている状況だ」
「なぜ、それを我々に伝えるのです?」
王族が呪われたなんて話、本来なら表ざたにするはずはない。だが、レミリアの疑問は、すぐに解消された。
「殿下の呪いの件については、すでに公開されているらしい。ベルナルド殿下がそうしたようだ」
カティアスの言葉に、レミリアは瞬時に思った。
(よし、殺そう)
おそらく、ライムントを呪ったのはベルナルドだろう。ベルナルドは、ライムントを嫌っていた――恐れていたと言った方がいいかもしれない。あんな濡れ衣を着せて殺すほど恐れていた。
「……なぜ、そんなことに」
「それがわかれば、苦労はしない――とにかく、今後殿下のことは、ライムントと呼ぶように。冒険者として扱うようにというのが、先方の意向だ。メルクード遺跡で修行を行う」
誰かのつぶやきに、カティアスが返す。
メルクード遺跡は、以前の魔王が作った城だったと言われている。まだ、遺跡の中すべてが調べつくされたわけではなく、危険な場所でもあった。
(なんで、この時期に修行始めちゃうの……? それに、メルクード遺跡で修行って)
続くカティアスの言葉に、レミリアは唇を噛んだ。
「殿下が、メルクード遺跡に入るのは、呪いを解くためという理由もあるそうだ」
「……冒険者になったということは、王宮から騎士が来て殿下に同行するわけではないんですね?」
「冒険者パーティーと同行するそうだ。"白竜の盾"が指名依頼を受けている」
カティアスが名をあげたのは、ホルストでも有名な冒険者パーティーだった。"白竜の盾"が一緒ならば、危険な地域に踏み込むのは避けられるだろう。
人生を逆行してしまった時、真っ先にレミリアはライムントの存在を確認しに行った。あの時、窓の外で剣をふるうライムントの姿を見かけたけれど、彼の腕はかなりのものだったと思う。
(……メルクード遺跡に呪いが関係してるなんて聞いたことがないけど……もしかして、私の知らない呪い?)
レミリアの知らない呪いならば、うかつな行動はとらない方がいい。全盛期ならばともかく、今はまだ力を取り戻していないのだから。
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