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無事、ギルドの採用試験を通過しました
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「やるじゃない――とりあえず、問題については合格でいいんじゃないかしら」
「今の、本当にギルドの採用試験?」
今の問題、ずいぶん簡単だった気がする。最後の魔術式については、基本的な知識の確認の実だろうけれど。
「当たり前でしょ。あのねえ、あなた、自分がおかしいって理解してる?」
「おかしいって?」
「あなた、今までギルド職員になりたいなんて一度も言ったことないじゃない。参考書だって、借りに来たことないし。それで、全問正解。しかも、魔術式まで」
ぴらぴらと、レミリアの前でメグは問題用紙を振る。
(や、やらかした……!)
前回の人生、レミリアはまともな勉強はしたことがなかった。ギルドの受付係になるために基本的に押さえておかねばならないことは、全部前回の人生での実戦経験からだ。
「シスター・グレースのところに、本がたくさんあったので」
その言葉を信じているのかいないのか。メグは半眼でこちらを見る。
「これだけの逸材、私は逃しちゃいけないと思うけど。あとはギルドマスターとの面接ね。これは決まりだから」
そういうものでいいんだろうか。とりあえず、一山越えたということでいいんだろうか。
(まあ、合格ってことでいいわよね。王都のギルドの方が、情報が集まってくる気がするんだけど……いきなりあっちには行けないから)
王都ブライアルの冒険者ギルドは、この国の冒険者ギルドの中でも中心的な存在だ。地方のギルドには流れない情報も、王都のギルドには届いている可能性もある。
(まあ、王都のギルドに入る方法もいろいろあるしね)
王宮に入り込んだみたいに、転移魔術を使って中の様子を探りに行ってもいい。
もちろん、侵入者を防ぐための結界は張ってあるだろうが、レミリアの前では、そんなものなんの役にも絶たない。
「よしよし、新しいギルド職員な――って、シスター・グレースのとこのレミリアか。まさか、お前がギルド職員になりたがるとは思わなかったぞ」
試験が終わった頃合いを見計らっていたのだろうか。
レミリアとメグが話をしている部屋に入ってきた背の高い男性は、この町ホルストの冒険者ギルドマスターのカティアスだ。
引退した冒険者でもあるカティアスは、敵を引き付け、敵の攻撃を巨大な盾で防ぎ、仲間達を守る盾師でもあった。
シスター・グレースは治癒魔術を使えるから、教会にはしばしば冒険者が運び込まれてくる。その関係で、レミリアとカティアスは、互いに顔見知りだったのである。
「無理だと思います?」
「いや、いいんじゃねぇか? お前さん、根性はありそうだしな。シスター・グレースの手伝いなら人柄も保証されているし、むしろこっちから頼みてぇわ。よろしく頼むな」
「頑張ります……」
差し出されたカティアスの右手に、こわごわと自分の右手を重ねる。
こうやって、真正面からカティアスと向き合っていると、なんとなく居心地が悪い。レミリアが、ここの人達を利用しているから、だろうか。
(でも……ライムント様を、二度と死なせたくないから)
目の前で、彼が血を流し倒れた時の絶望感。彼となら、明るい未来を築くことができるだろうと疑っていなかった。
(……それに、この国をあの二人に任せるわけにはいかない。ライムント様をだまし討ちした、王太子とマルセリナには)
今回の人生では、ライムントに会うつもりはないけれど。ベルナルドとマルセリナには、相応の報いを受けてもらわなければならない。
今すぐ復讐に行かないのは、この国の人達を巻き込まないためだ。庶民として育ったレミリアは、王宮が騒がしくなった時、罪もない民達が巻き込まれるのは許せなかった。
復讐する相手を間違えてはいけない。あの時、魔王の前に一緒に立ったあいつらだけが、レミリアの復讐対象者だ。
「じゃあ、明日から来てくれる? まずは、私が教育係になるから」
「よろしくお願いします、メグさん」
メグと固い握手をかわしながら改めて誓う。
無事にギルド職員になったのだ。ライムントを、殺させるような真似はしない。
「今の、本当にギルドの採用試験?」
今の問題、ずいぶん簡単だった気がする。最後の魔術式については、基本的な知識の確認の実だろうけれど。
「当たり前でしょ。あのねえ、あなた、自分がおかしいって理解してる?」
「おかしいって?」
「あなた、今までギルド職員になりたいなんて一度も言ったことないじゃない。参考書だって、借りに来たことないし。それで、全問正解。しかも、魔術式まで」
ぴらぴらと、レミリアの前でメグは問題用紙を振る。
(や、やらかした……!)
前回の人生、レミリアはまともな勉強はしたことがなかった。ギルドの受付係になるために基本的に押さえておかねばならないことは、全部前回の人生での実戦経験からだ。
「シスター・グレースのところに、本がたくさんあったので」
その言葉を信じているのかいないのか。メグは半眼でこちらを見る。
「これだけの逸材、私は逃しちゃいけないと思うけど。あとはギルドマスターとの面接ね。これは決まりだから」
そういうものでいいんだろうか。とりあえず、一山越えたということでいいんだろうか。
(まあ、合格ってことでいいわよね。王都のギルドの方が、情報が集まってくる気がするんだけど……いきなりあっちには行けないから)
王都ブライアルの冒険者ギルドは、この国の冒険者ギルドの中でも中心的な存在だ。地方のギルドには流れない情報も、王都のギルドには届いている可能性もある。
(まあ、王都のギルドに入る方法もいろいろあるしね)
王宮に入り込んだみたいに、転移魔術を使って中の様子を探りに行ってもいい。
もちろん、侵入者を防ぐための結界は張ってあるだろうが、レミリアの前では、そんなものなんの役にも絶たない。
「よしよし、新しいギルド職員な――って、シスター・グレースのとこのレミリアか。まさか、お前がギルド職員になりたがるとは思わなかったぞ」
試験が終わった頃合いを見計らっていたのだろうか。
レミリアとメグが話をしている部屋に入ってきた背の高い男性は、この町ホルストの冒険者ギルドマスターのカティアスだ。
引退した冒険者でもあるカティアスは、敵を引き付け、敵の攻撃を巨大な盾で防ぎ、仲間達を守る盾師でもあった。
シスター・グレースは治癒魔術を使えるから、教会にはしばしば冒険者が運び込まれてくる。その関係で、レミリアとカティアスは、互いに顔見知りだったのである。
「無理だと思います?」
「いや、いいんじゃねぇか? お前さん、根性はありそうだしな。シスター・グレースの手伝いなら人柄も保証されているし、むしろこっちから頼みてぇわ。よろしく頼むな」
「頑張ります……」
差し出されたカティアスの右手に、こわごわと自分の右手を重ねる。
こうやって、真正面からカティアスと向き合っていると、なんとなく居心地が悪い。レミリアが、ここの人達を利用しているから、だろうか。
(でも……ライムント様を、二度と死なせたくないから)
目の前で、彼が血を流し倒れた時の絶望感。彼となら、明るい未来を築くことができるだろうと疑っていなかった。
(……それに、この国をあの二人に任せるわけにはいかない。ライムント様をだまし討ちした、王太子とマルセリナには)
今回の人生では、ライムントに会うつもりはないけれど。ベルナルドとマルセリナには、相応の報いを受けてもらわなければならない。
今すぐ復讐に行かないのは、この国の人達を巻き込まないためだ。庶民として育ったレミリアは、王宮が騒がしくなった時、罪もない民達が巻き込まれるのは許せなかった。
復讐する相手を間違えてはいけない。あの時、魔王の前に一緒に立ったあいつらだけが、レミリアの復讐対象者だ。
「じゃあ、明日から来てくれる? まずは、私が教育係になるから」
「よろしくお願いします、メグさん」
メグと固い握手をかわしながら改めて誓う。
無事にギルド職員になったのだ。ライムントを、殺させるような真似はしない。
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