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第3章

カミシメ

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~ 朝・園山雄二の部屋 ~

昨夜はやはり眠れなかった。

黒い戦闘機が二機になり、新たな少女が登場した。
驚いたのもそうだが、少女と会話したことも、いろいろと気になることがあった。
そもそも、問題の少女に会って、話をして、自分はなにをしたかったんだろう。
人殺しを止めたかったんだろうか。
逆にもっと…応援に似た、妙な感情を抱いてしまったんじゃないだろうか
想いが反芻して、気づくと朝になっていた。
昼間眠らされたせいかもしれないが、結局寝付けず昨日は夢を見れなかった。

人間は眠りにつくと、無意識のうちに集合意識に接続していると言う。
夢を見るのは、誰かの人生の残滓を追体験しているのだと。
自分の場合は彼女たちの未来を見ている。
なぜ…? 
少女はそれを、役割と言った。
そういえば、少女の言葉でひっかかる言葉があった。

神様はね、ずうっと、いなかったんだよ

少女の言葉が、脳に質量のある響きをもって繰り返された。
人間世界の残酷な惨状、それを憂う想い。
きっと、誰もが一度は疑問を持ち、悩み、答えを出せずにいる想いの一つなんだ。

海外の、神様に祈りを捧げている人たちは、どうして信仰を保てているんだろう…
朝焼けを見つめてもその答えは出てこない。
部屋のネオン球は、昨日と変わらない稲妻を発していた。


~ 事務所・朝 ~

眠れなかったせいで、朝になってから眠気が襲ってきた。
ただ残念なことに仕事が溜まっていた。締め切りが近い。
慣れたルーチンワークをこなす程度なら良かったのに。
なんとか締め切りは伸びないだろうか。だめか。
天地がひっくり返ってもうちの締め切りは伸びない気がする。

会社に着くと主任は遅刻していた。あの人にとっては珍しい。
…いや。飲み過ぎた次の日は時々遅刻してたっけ。
昨日は無理を聞いてもらってしまった。
なにか、どこかのタイミングで落ち着いたらお礼をしよう。なにか喜ぶようなこと、あったっけ。
本人に聞いてみてもいいかもしれない。
それまでは、せめて仕事くらいは迷惑をかけないようにしないといけない、けれど、なにから手をつけていいか分からなくなっていた。

これから日本の国会が襲われて、政治家が大勢死ぬっていう日に、自分はなんでこんなことに悩んでいるんだろう。
ガードマンの人とか、警備、受け付けの人、スタッフさんたちに被害が出ないことを祈りたい。
政治家の生死より、むしろそっちの方が気になる。
悪人じゃない政治家だって、中にはいるだろうとしてもだ。

結局、人間は、少なくとも自分は、自分にとって良い繋がりだけが大切なのだ。
だれの人の生死でも、命はとても尊いと理解しているのに、自分自身に影響が無いと価値をすぐ見失って、遠い世界のことに思えてしまう。
ましてや悪人の命になると時に憎いとすら、思えてしまう。

園くん、昨日のメールに返信があったわ!
気付くと主任が出勤してきて目の前に立っていた。
手に持っていたスマートフォンの画面をこちらに見せている。

少し会議室にいきましょう

仕事がたまってるんですけど…と口に出すと、
そんなのどうでもいいのよっ!と言われてしまった。
太陽が爆発しても木星が堕ちてきても、締め切りだけは守れって言ってたくせに、なんてこと言うんだこの人。
そういえば今日もそれぐらい酷い事件が起きるんだった。
徹夜明けでさすがに思考が霞んでしまっているのか。
雄二は気を取り直して席を立ち、主任に続いて会議室に向かっていった。


~ 自衛隊・駐屯地・首都圏防衛対策室 ~

オペレーターが操作パネルを操り、各センサーとレーダー状況を司令官へと伝えている。
司令官は時間を逐次確認しながら、下士官達に指示を伝えていった。
それが済むと何名かとともに基地を後にするため対策室を出て行く。

昨晩、特に信憑性に難はあったが、少し気になる情報が寄せられていた。
イタズラ、妄想、撹乱工作。いずれの可能性もあったが、情報を寄せた人物の事を思い出して、ひとまず連絡を返してみることにしたのだ。

向かう先は幸いにも、これから部隊が展開する地点への通り道だった。
なんといったか、広告やチラシ、地方の情報をまとめて発信しているサイトの小さい広告会社。
装甲車で向かうには市街地は狭いため、少し小型の軽装甲車で向かうことになる。

車に乗り込んだ司令官は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
あのバカものめ…。たまに連絡をして来たかと思えばわけのわからない情報をよこして、もっと詳しく知りたいならこっちまで来い! だと?
良いだろう。こちらの苦労も知らないで。もし有益な情報が得られないならただでは済まさん。
そうキツく心に念じ口を固く結ぶ。
自分は、軍人の前に、ただの親なのかもしれない。


~ 会議室 ~

主任だけかと思いきや、
珍しく部長や専務が顔を並べて座っている。
なにやら大事になりそうな気がする。あくまで自分は平社員。なんというか、肩身がせまい。
主任が前へ出て話を始める。

さきほど、皆さんにメールでお伝えした通り、本日、こちらに自衛隊の駐屯地から数名の自衛官の方がこられます。
勝手にこちらでセッティングをしてしまい申し訳ありませんでしたが、ことは一刻を争いましたのでこのような状況になってしまいました。
昨日、園山と私のほうで取材に向かった場所で、連日世界規模で破壊活動を行うテロリストに対し、極めて重要な情報が得られました。
こちらとしては、全く業務とはかけ離れた内容ではありますが、社会人として社会に対する奉仕活動を行う意味でも、
しかるべきところへ報告の義務があると考え、先方へ連絡を取った次第です。
その結果、ぜひ詳しい内容をお聞かせ願いたいとの返答を受けました。
つきましては、本日この会議室で自衛官の方達の応対をすることを許して頂きたいと思います。

主任の説明には有無を言わさぬ圧があった。
専務と部長が、口を開け呆然としている。

主任は、人を圧倒する力がある。なんというか、言い出すと聞かない。迫力のある口上が得意だ。そして人を巻き込む術を知っている。
専務はどうかはわからないが、部長はそれを知っているはずだ。だから主任は、同期の誰よりも早く出世した。
仕事を任され部下を預かっている。

霧島くん、その、自衛隊の方はいつごろくるのかね…?
あまり突然こられても…
そ、そうだぞ霧島。うちにも業務があるから、いろいろ、まずいぞっ…

大丈夫ですっ!会社に迷惑はかけませんっ!
ただこの会議室を貸していただくだけで結構です!
半日! いや、二時間!話をするだけなんで!

しかしだなぁ…
大体、重要な情報とはなんなんだね?
あのテロリストが、今度は日本に来るとでも言うのかね?
そんなばかなぁ
ありえないだろー
わははは

…なんて、説明をしたら良いんだろう。本当に襲われるんだけど、それを伝えたら信じてもらえるんだろうか。
それより自衛隊がここにくる?
主任はいったいどういうメールを送ったんだろう。
自衛隊の人もいきなり信じたわけではないだろう。信じてもらえるに越したことはないのだけど、まさかそのまま鵜呑みにするとは思えない。
その情報の確認を直接しにくる、ということだろうか?
説明に迷っていると主任が2人に向けて歩き出した。
そして机に向けて思いきり両掌を叩きつけた。

いいからつべこべ言わず会議室を貸してください!自衛官の人達もうそこまで来てるのよ!! バンバン!!
ひぃぃぃー!!
あわわわ!お、落ち着きなさい霧島くん!

主任がキレたのと同時に、外に数台の車両が到着する音が聞こえた。


~ 会議室・情報開示 ~

一応、なにも説明らしい説明はできなかったが、形だけ専務にも同席してもらった。
べつになにかプレゼンするわけではないし契約を取るわけでもないが、人数が多いほうがこちらの説明に説得力が増すかもしれない。

自衛官の人達はさすがというべきか、規律正しく部屋へ案内されると、用意された席に着席していった。
一番中央に座った、いかにも上官っぽい厳しい顔をした人が、所属と部隊名を名乗ってくれる。

私は、陸上自衛隊・首都圏連部隊所属、一等陸佐、霧島康平です
…ん? 名前、霧島?
先日より、世界各地で頻発している無差別市民襲撃事件に関して、昨晩こちらの方より重要とおぼしき情報が提供されため、こうしてお時間をお借りしに伺った所在です。

ギロリ…と、主任のほうを一瞥する。
なるほど…。似てる。目元がそっくりだ。この2人父娘か。
なんだか迫力も似てる。
使えるものは親でも使う。迅速に対応してくれるはずだ。

…さて、昨日の電話で、…失礼。このメールに添付されていた資料、これはテロリストの実行計画書で間違いはありませんか?
霧島陸佐が主任に問う。
後ろでは年若の下士官達が、昨日俺が書いたホワイトボードの写真をA0サイズぐらいに引き伸ばし、まさにそのホワイトボードに貼り付けていく。

実行計画書って…

わたしが確認した限り、今のところこの通りに襲撃が行われていたのは間違いありません。人物、時間場所。
今後もこの通りに、あの黒い戦闘機が現れるかその責任までは取れませんが、闇雲に人員を配置されるよりは、一つの目安になるのではないかと。

ふん…

霧島陸佐はいかにも不満そうだ。
昨日、電話でもやり合ってるなこれは。

この資料はどこで手に入れたものだ?
昨日、取材に行ったところが、たまたまテロリストのアジトでした。そこで隙を見て入手しました
そんな危険なところへなぜ行ったんだ!
仕事の一環です
なにか危険な目にあったらどうする。テロリストに拉致されて人質にされていたかもしれない。
最悪、命を失うようなことになったかも。それが会社の、業務の一環と言えるのか!
なにごとも無く無事に戻れました。そして計画書を手に入れ、情報も提供しています。他になにか問題があるのでしょうか!!
危険なところだと事前に分かっていたのなら、警察に連絡をするなり他にやりようがあったはずだ!愚かななマネをして、周りに心配、迷惑をかけるのはお前のほうなんだぞ!
迷惑なんてかけてません!必要なことを必要に応じて限られた人員でやるのが民間の仕事の仕方です!
どこかのだれかさん達みたいに税金で好き放題やれるわけじゃないんです!
なんだとっ!!!
なんですか!!!!

うちの専務がとってもオロオロしている。
周りの下士官の人達も斜め上に視線を向けてしまった。
微妙な顔をして震えている人もいる。
感情を隠さないといけないなんて、厳しい仕事だな。この人達はこの2人が親子だって知ってるんだろうか?
ご苦労様です。などと思っていると、会議室に若い自衛官の方が入ってきて霧島陸佐になにやら耳打ちをしていった。

陸佐の目が厳しくなる。

…。正体不明の飛翔体が、ロシアの北方に出現した。猛烈なスピードでこちらに向けて進攻している

はっとした。やはり戦闘機は日本に来る。
少女の顔が脳裏に浮かんだ。陸佐は続ける。

この計画書の信憑性は、まだはっきりとはわからないが、部隊の展開は行うべきと私や上層部は判断している。
この情報の出自は決して褒められたものではない!
だが、先に襲撃された各国の被害は甚大だ。あれをこの日本で起こされるわけにはいかない。
その点で、我々はきみたちの迅速な情報提供と勇気に感謝しなければならない
…そう、ですか。良かった
今後は安全の観点から、危険な場所へは絶対に近づかないように。それが仕事の一環だったとしてもだ!
…肝に、命じておきます

我々は飛翔体を迎え撃つ
陸佐は娘を心配したんだろう。
そして、情報を信じて来てくれた。
主任もバカではない。それをわかっていて、あえて父親に頼った、んだと思う。
陸佐の顔が自衛官の顔に戻っていく。

ご協力に感謝する。
まもなく首都圏一帯に特別避難命令が発令されるだろう
今日は首都圏の機能が麻痺すると心に決めて行動したほうがいい。パニックになる前に避難を開始するんだ。

確かに、帰るにしても避難するにしても、早いほうがいい。

それと、
まひる、お前はわたしと一緒に来なさい
はぁ!? いやですっ!
ほかに確認することもある!時間が惜しい。車に乗れ
業務があるんですっ!いそがしいの、わたしは!来てくれてどうもありがとう!時間ないんでしょ!早く行って!さよなら!
つべこべ言わずに一緒に来るんだ!避難命令はすぐに発令される!家に帰るより一緒に来たほうが安全だ!
特別扱いしないで!一般市民なのよわたしは!
だからまだ情報の確認があると言ってるんだ!情報を提供したのはおまえだろう!早く来いっバカもの!
霧島くん、今日はもう業務は停止だ。自衛隊の方の言うように、一緒について行ったほうが良い
専務はだまっててください!!グルるるる!!
ひぃぃぃー!!

そういえば主任はまひるって名前だった気がする。

わかったわいくわよ!いくから!いくけどっ

主任がこちらを見て指を指した。
あいつも、一緒に連れていくわっ!!

霧島陸佐の目が、出会って一番鋭くなった気がした。


~ 自衛隊・仮設防衛棟・司令室 ~

車で移動中、霧島陸佐は指示と各所より挙がってくる情報の確認で大忙しだった。
その合間合間に、後部座席に座る俺たちに、というか俺に視線を投げかけてくる。
主任は窓に肘をついて外を見ていて、陸佐と目を合わせようとしない。
乗り物には強いほうだがなんだか車酔いしそうだ…。
日本に危機が迫っているがこっちのほうもきつい。
クルマを停めてもらうかビニール袋をもらうかどっちにしても長くは持たない…。
そんなことを考えていると、ひろい敷地に仮設で設営された、自衛隊の作戦基地に到着した。助かった。
基地は仮設に設営された大型のプレハブがいくつかとヘリポート、人員輸送用の大型トラックが複数台停まっているのが見える。
目に映る全員が、目まぐるしく機能的に行動し、脅威に対抗するために動いている。スーツを着てるのは自分達2人だけで、ひどく場違いだ。

作戦部にいく、ついて来てくれ

陸佐が駆け寄ってくる自衛官達と情報の確認をしながら歩いていく後ろ姿を見ながら、鞄を抱えてついていく。

胸を張って歩きなさいっ。余計みすぼらしく見えるよっ!
そう言って主任は堂々と歩いている。
きっと小さいころからお父さんについてきたりして、こういう場所の雰囲気に慣れているんだろう。

陸佐が入っていった建物は、仮設のプレハブとは思えないほど立派なものだった。
なにかの機器が整然と並び、通信機やレーダーを確認する自衛官達が必死に情報を集めまとめ上げている。

陸佐は報告書を受け取り、各部署の責任者を集めるように指示した。そしてこちらに振り向く。

…これから、作戦の確認を行う。普段なら一般人は絶対に参加させたりしない。
だが脅威は目下南下中で、国防の危機にある。
内容を口外しないと約束してもらった上で、会議に同席をしてもらいたい。

なぜ、ですか。知っている限りの情報は全てお話ししました。これ以上聞かれても、その…俺たちには

…。我々は、奴を過小評価しない
あの動画、youtuveと言ったか。犯人らしき人物の襲撃動画も確認した。
あれは情報戦略の一環の可能性が高い。
あのサイトによる資金の調達も確認されている。広告収益、さらに一部熱狂的な支持者が資金の提供を行った形跡もある。
全員に逮捕命令が出されたが、新たな援助者は今後さらに増え続けるだろう。
…このようなこと、いままでで初めてなのだ。
動画も削除するよう要請した。消されるのは時間の問題だろう

それは、まずい。少女達の行動が確認出来なくなる。
…役割、彼女達を見ること…。たぶんそれは俺の義務、なんだろうから。

私は、動画の削除に反対です。
なに?
動画を削除してももっと別の、例えば本人達以外の第三者が、海外サイトを経由して匿名で動画をアップするものが現れます。
そうなるとさらに少女達の特定が困難になります。
いまなら、彼女達の所在地を探せるかも。本当のアカウントを消さないよう逆に要請し、動画の運営サイトやネットプロバイダーに連絡して投稿元を特定するべきです

なるほど…

陸佐が扉の前で立ち止まった。

やはりおまえを、

一般企業に就職させたのは失敗だったな

陸佐はそう呟き、俺たちを扉の中へ招き入れた。


~ 作戦会議 ~

室内は想像と違って、とても簡素で小さい部屋だった。小さいといっても自分の1人暮らしの部屋よりはあるのだけど。
厳しい顔のおじいさんや顔が傷だらけの歴戦の勇士みたいなおじさんが顔を揃えているのかと思いきや、数人の情報士官が機器のテストを行なっているだけだった。
壁にパソコンのデスクトップの映像が映し出され、他はパイプ椅子と机がいくつか並んでいるだけの暗い部屋。
最近はインターネット環境が進んでいるから、わざわざ現地に来なくてもweb会議でどこにいても参加できると言うわけか。
これなら声を出さない限り、民間人の自分達が参加していることも気付かれないかもしれない。

霧島一等陸佐が到着しました
士官の1人が電話でどこかに伝えている。
始めてくれ

緊張感の無い電子音。続いて何人かがコール音に応える。

全拠点クリアーです
霧島です。遅れて申し訳ありません。情報の精査と裏付けを行っておりました
…正体不明の戦闘機が北の公海上に出現している。今のところ呼びかけに応答はない
飛翔体の予測進路上、関係各所は迎撃態勢に入った。米軍も最大限協力してくれるそうだ。まぁ、彼らは情報の収集を優先するだろうがな
霧島くんに提供された資料も各国へ通達しておいた。そこで仮に所属不明機を不詳、ブラッドイーグルと決定した。今後はこの呼称を使用してくれ
飛翔体…失礼。ブラッドイーグルにはまず北方航空師団、北方連隊が応対してもらえるのですか?
当然だ。スクランブルの練度は高い。安心してくれたまえ。それと、新型ドローンの使用も許可している。
確認した限りブラッドイーグルの飛翔性能は自衛隊の所有機の大半では対応が難しい可能性がある。
…接敵まで、あと15分前後です!
というと?
ブラッドイーグルは旋回能力、飛行速度、全ての面でこちらの最新鋭機より機体性能が上だ。
というよりもどの国の戦闘機よりも奴は規格外の性能を有している。人が操縦しているとは思えんほどにな
戦後以来、初めて実弾を使用した航空戦闘が予想されます。各隊の検討を祈ります
承知した。
ほかになにかあるかね?
無いようなら…

陸佐はひとまず状況を静観できるようだ。
でも、
俺は知っている。黒い戦闘機は必ずここまでくる。
東北と北海道の航空連隊では歯が立たない。
出動すれば確実にパイロット達は死ぬ。

言うべきか、言わないべきか。
いや、言うべきだ。絶対。覚悟を決めろ

あの…
!!
部屋にいた全員がこっちを見る。
主任がバカ!と服をつかんだ。でも怯むわけにはいかない。
人の命が、…かかってる

戦闘機を、出撃させちゃダメだっ!!


~ 会議室・2 ~

冷たい、沈黙が流れた。
緊張による冷や汗が背中を流れていく。
時間は誰にとっても均等だけど、間違いなくこの部屋の中は時の流れが遅い

…言ってしまった。

…いまのは、誰の発言かね…?
壁に移された文字から、声は北方師団の空佐だと分かる。

ま、待ちたま…っ!
霧島陸佐が大きく目を見開いている

私は!情報提供を行った民間の会社に勤めるもので、
名前は園山雄二です!千葉県出身!26才!
あの! 戦闘機を出撃させてはいけない!
必ず撃墜されてしまう!!

やはり、沈黙が後ろに続いてくる。
こんなに重たい空気の中で発言するのは生まれて初めてだ。
振られると分かっているのに好きな子に告白するのも、こんな気分なんだろうか。
でもここで言わないと、パイロットの命は…!

あの黒い戦闘機は!地球の科学水準を遥かに超えた技術で作られています! 物理法則を超える防御性能を持っていて、攻撃は無意味で! 
人を殺すことに戸惑いがありません!

だからっ!
出動しても、無駄に…
パイロットの命が無駄になるだけで、

航空時ではなく、人型になった時に叩ければ、あるいは

だから…パイロットの命を犠牲にしないために!出動命令は取り消しにっ…!


ッバチィーーーンッ!!!
?!

一瞬、何が起きたのかわからなかった。
ほほの痛みが遅れてやってきて、横を見ると主任が俺のほっぺたを叩いたのだと理解できた。

…。主任…?
…自衛隊の、隊員達は、

みんなそれをわかっていて出動するわ…

そんなこと、ちゃんと理解していて、それでも闘うために!
戦場に行くのっ!!!

それを…分かっていて、この人達は、出動させないといけないの…!!

主任は涙を流して泣いていた。霧島陸佐が俺達に近づいてくる。

…すまない。いまは、…外に出てくれ。


~ 基地・敷地内 ~

自分は、間違っていたんだろうか。
見ず知らずの、パイロットの人の命を守りたい。そんな思いにとらわれて。自衛隊の人の職務のことを考えもしなかった。

主任はきっと知ってたんだ。
お父さんは自衛隊の人だから、だれかのために命をかける仕事っていうのはそういうことなんだってこと。

急に、世界がよそよそしく感じる。
どこに行くあてもない。
この場所で、自分だけがその覚悟を知らなかった。


~ 緊急発進 ~

北方を警戒する航空連隊はその地域柄、常に緊張と政治的背景の微妙な立ち位置で任務に当たっている。
公には伝えられないスクランブル発進を含めると、国内で最も戦闘機発進の頻度は高い。
しかし、今回は先の世界規模のテロリストによる襲撃で、本来予想されてきた仮想敵戦闘機の戦闘行動や経験則は、全く当てにならない事態になっている。
これまでの出動はその多くが実際の戦闘にはいたらないため、マニュアル通りの呼びかけと我慢比べのような追尾飛行で事足りてきたが

今回は即時発砲? 迎撃許可?
怪獣でも飛んで来んのか、こりゃあ

北方航空連隊、一等空尉・霧島翔吾は、命令を見て思わず口にしてしまっていた。

格納庫へ向かいヘルメットをチェックする。
すでに他の隊員達が出撃命令に従い整列し、点呼が始められようとしていた。

彼はこの緊張感が大好きだ。ドックの匂いや燃料の匂い、金属を打ち付ける際に発する甲高い音。それらが奏でる空気感。
すべてがコンディションを上げるスパイスに感じられる。
自分の仕事は空を警備し、青天を駆け巡ること。
コックピットに座り、真っ青な空に出ることに毎日生きがいを感じているのだった。
その彼が、空に出て闘うのに戸惑うはずがなかった。

さあ、てめぇら! いっちょドッグファイトってやつをやらかそうや!


~ 南下する黒い機影~

黒い戦闘機は相変わらずその異様な形態を超高速の速度に任せて流氷の上を猛烈なスピードで飛行している。
両翼に取り付けられた巨大なガトリング砲は四門に増え、それらが生み出す空気抵抗をものしもしない機体強度と推進パワーを持っていた。
本来ならへし折れるか、砲塔が曲がるほどの急旋回にもびくともしない。
この戦闘機の外殻や装備が、現代の科学水準では到底追いつけない技術以上のものを持って作られていることの明確な説明になってしまっている。

♪飛べっば隼、座ればボンタン!歩く姿はホメオパシーぃぃぃー☆⤴︎⤴︎⤴︎

ゆいちゃんはノリノリで機体を操っている。

操縦、といっても操縦桿らしい操作パネルは一切見当たらない。かわりにエイリアンの中身のような植物の葉脈のような異様に赤黒く発光するコックピットの内部に、その身体の下半身を取り込まれ、もはや一体となっている。
目の周りはゴーグル型の構造に覆われ、口元から肩口だけが辛うじて確認できる生身なのだ。
戦闘機の運動性能を極限まで発揮させるため、機体と感覚を完全に共有していた。
黒い戦闘機は地球上の戦闘機の形を模してはいるが、大きさも中身も全くの別物だった。

怪獣。
霧島翔吾の例えは全く的を得ているのである。

ギャリオオオ!!ギャリオオオ!!ギャリオオオ!!
黒い戦闘機の内部にカラスの叫び声のようなギャリギャリとした、おそらく警報らしい警告音が発せられる

お♪ おっ客さん!おっ客さん!
今日もいっぱい!エリミネートだよー☆


~ スマートドッグファイト ~

管制室、聞こえるか。こちらはブラボー1。攻撃目標を確認した。高度と地点はデータの通りだ!
こちら管制塔、アルファ。もちろん聞こえている。視界の共有も良好だ

…本当に、撃っていいんだな? 


OK、ブラボー1、北方航空連隊の力をみせてくれ。火器ロック解除!
ブラボー1、了解!火器、ミサイル照準ロックオン!
こちらチャーリー1、照準ロックオン!
チャーリー2、了解!ロックオン!
ラジャー!ブラボー2、ロックオン!
デルタ1、デルタ2、ロックオン!

ファイヤー‼︎


~ 航空連隊 ~

航空連隊のF15戦闘機の翼から1筋ずつ、合計6本の空対空ミサイルが黒い戦闘機に向かって発射された。

…回避行動を取らない? なぜだ
フレア?…も出ない!
命中する…!!

黒い戦闘機は発射されたミサイルを全てその機体やな受け止めていた。


~ 黒い戦闘機内 ~

きしししっ☆
強い衝撃と振動の中で、
ゆいちゃんは笑っている。

~ 北方司令管制室 ~

ミサイルっ全弾命中!
おぉっ…
やったな 状況を!
はっ! ブラボー1 聞こえるか、目標は撃墜したか?ブラボー1

ザザッ…、こちら、ブラボー1…
…目標、以前、航行中…!
なんだと!


~ 撃墜 ~

黒い戦闘機は、六発ものミサイルの直撃に、びくともしなかった。
一瞬少し機体がブレたのみで、ミサイルの爆熱を振り払いながら、悠然と空を真っ二つに引き裂いていく。

…まじの化け物かよっ!!

各機! 続けてミサイルロック解除!照準ロックオン! 怯むな!
ラジャー! ロックオン!
ロック解除! ロックオン!

上等だ、化け物…! もう一度

ッファイヤー!
ファイヤーッ!!

ミサイルは見事な軌道で黒い戦闘機に命中していく。
まただ! 黒い戦闘機は回避行動を一切取らなかった。
誘導フレアを発射したふうにも見えない

不気味過ぎる…!!

ブラボー1 もう一度だ! ブラボー1 !
…わかってる! だがっ!

その時だった。
黒い戦闘機が、この世のものとは思えない咆哮を発し始めた。
ぶぉおぉぎぁぁぁぁあああああー!!!!!

ぐっ…  なにか来る! まずい!
各機! 回避行動を取れ…!!

大気が、黒い戦闘機を中心に歪んでいく。
砲塔がこちらに向いて動いた。

各機! 回避行動を取れ! 
チャーリー1! 聞こえないのか! チャーリー1 !
…ざっざざ…  うわ…うわぁぁぁー!!!

ッ! チャーリー1 !

黒い戦闘機のガトリング砲が火を吹いた。
弾丸の雨が不自然な軌道でチャーリー1のF15に襲いかかっていく
脱出しろチャーリー1 !  米崎ぃ!!



なんだ…これは…! くそっ…!
各機、撤退! 基地へもどっ

ブラボー1、…霧島翔吾は気付いた。
自分以外、横にいたはず仲間の機影が跡形もなく無く消えてしまっていることに。

黒い、ただ黒い横向きの竜巻のような軌道の雨が、視界に映りこんでくる。


翔吾は刹那の迷いの後、脱出レバーに手をかけ…

そして、北方航空連隊の精鋭6名の機体が、レーダー上から姿を消した。


~ 司令管制室 ~

…第一航空連隊、全機、信号ロスト
そんな、ばかな…
追撃中の第二、第三飛行連隊も信号消失…
目標は以前速度を保ち南下中…です

…帯広で展開中の部隊につなげ
…は、

わたしだ。北方空挺師団は壊滅。
分析データをそちらへ送った。
敵の増援の警戒をしつつ、任務を後方支援に移行する。そちらの、健闘を祈る

…ラジャー。こちらはあと5分で会敵する
情報は無駄にしない。通信終了


撃墜された者の捜索と、救助を最優先に
はっ!

ありえ、ない。命中して、撃ち落せないとは…


~ 北海道上空 ~

レーダーに写された黒い戦闘機の機影が次第に位置を近づけてきている。
海上に展開していた航空空母と駐屯地から、次々にヘリコプターが離陸を開始した。

地対空ミサイルを装備した装甲車が列を組み黒い戦闘機に備え面を上げる。
ありったけの兵器。ありったけの人員…
なにか、なにかが違う…。
戦争とは、こんなにも焦燥とした気分で行うものなのか?


~ 首都圏・仮設防衛司令所・会議室 ~

報告を聞いた霧島陸佐は机に手をつき、下を見つめている。
北方と、東北師団が壊滅した、だと?

出撃した航空連隊の全機がマーカーロスト…
尚も機影は猛烈な勢いで南下中…です

…俯いている、場合ではない…。首都の部隊の、展開状況は…?

配備の遅れていた部隊はさきほど到着。市民の避難はすべて完了いたしました

米軍に要請した協力申請は?
横須賀に駐留している部隊が南方に合流、
また、さきほど合衆国政府より、攻撃衛星の実戦使用を許可したと連絡があり、準備でき次第攻撃が開始されます
配備可能なドローン戦略攻撃機も多数、こちらに向けて飛行中、とのこと

…そうか
そろそろ、向かおう
はっ!
下士官が扉を開けて先に出て行く。

…翔吾…

扉を出ると娘、=霧島主任が立っていた。

…まひる、翔吾の、部隊が全滅した
えっ?

生死は不明だ。だが、幸い翔吾の乗っていたF15の脱出装置は、作動していたようだ。信号付近を捜索に向かってくれている

兄さん…
大丈夫だ。あいつは、必ず無事に戻ってくる。
わたしは部隊を指揮しなければならない。翔吾を撃墜したやつがもうすぐここにくる
もし、なにかあったら、母さんを頼む
…はい

さっきの、彼はどこへいった? 園山君、と言ったか
外に、出ていったと思う
そうか

霧島陸佐は歩き出した。その後ろ姿に霧島主任が声をかける。 あの、
…なんだ?
…、ご武運を
あぁ

輸送用のヘリが停まっているヘリポートへ急いだ。

…航空時ではなく、人型になった時に叩ければ、あるいは
か…


~ ヘリポート ~

霧島陸佐が、ヘリコプターに向かって歩いていく。
あの人は、これからあの人にしかできない仕事をやりにいく。
素直にかっこいいと思った。誰かを、いろんなことを守れる仕事。

園くん…
振り向くと、霧島主任が立っていた。

さっきは、ごめんなさい。痛かったでしょう?
…いえ、怒られて、当然です。俺は、自衛隊の方達の覚悟を、軽く考えていました
正されて、むしろ良かったと思います。ありがとう、ございました


兄が、北方の航空連隊にいるの
そう、だったんですか
さっき、撃墜されたと知らせがあったわ
!! そんな…、まさか
大丈夫。脱出装置を使ったサインはあったそうよ。いま、捜索隊が救助に向かってくれている
そう、ですか。良かった
ええ…

霧島主任が隣にきて陸佐の方を見つめる。

…うちは、祖父の代から、みんな自衛官の家柄なの
わたしも自衛官を目指していた時期があったのだけど、
父が昇進した時におめでとうと言ったらね、
父はとても複雑な顔をしてしまって

これからは…命を投げ出す立場から、命を預かる立場になる。いつ、なにが起きてもいいように、家族にも覚悟を決めてもらいたいって、そう言っていたわ

…とても、立派なことだと思います
さっきは偉そうなことを言ったけど、わたしは覚悟ができなかった
兄はあまり深く考えるタイプじゃなかったから、そのまま自衛官になったけど、
わたしは自衛官にはならずにジャーナリストになる道を選んだ。
将来、戦場で父と兄の仕事の正しさを、みんなに発信できたらいいかなって思ってね

そう、だったんですね
主任のことが、また少し分かったような気がした。

命を、使う覚悟…

他の、パイロットの人たちも無事かしら
主任
…ん?
俺も、まだなにかできることを、一つだけ見つけました
そう?
さっき気づいたんです。いま、この場で、俺にしかできないこと。きっと、やるべきことを
とても、大事なことだと思うわ
はい。なので、ちょっと、
うん
行ってきます
は?

俺は離陸しようとしている陸佐のヘリコプターに向けて走り出した。

ちょっ?! 園くん?!

主任が、あっけにとられて叫んでいるのを後ろ背にしながら。


~ ヘリポート ~

離陸しようとしているヘリコプターはめちゃくちゃ怖かったが、なんとか機体にへばりついた。

なっ、パイロットが目を見開きこっちを見ている。

霧島陸佐! 俺!まだ、話していないことが!!
き、きみは一体なにをしている!?!

俺!大事な話があるんです!!
あの戦闘機について!! 犯人について!!

…目付きが、さっきまでと違う…

…。乗れ!
っ陸佐?! 隣にいた士官が驚いて声を上げている
かまわん!乗れ!!話は機内で聞く!!

雄二の身体が機内に飛び込むと、輸送機はその回転を早め、地上を離れて飛び立っていった。


~ 輸送用ヘリコプター内 ~

霧島陸佐は状況の確認と、先に交戦した北方と東北の部隊からのデータを確認しながら、これから合流してくる部隊の配置を無線で伝え、指揮者のように部隊の足並みを(ノ╮╯╭)ノ ポティトゥ整えていく。

…。それで、まだ話していないこととはなんだ?
陸佐は、本当なら、まだやるべきことは山ほど残っているのだろうけどそれを後回しにして聞いてくれた。
…はい、実は俺、
待て。…きみは、もうすでに一度間違いを犯している。
それを踏まえても、聞くべき話なんだな?
はい!
よし、なら聞こう

俺は、事の顚末を告白していった。
一週間前から夢を見始めたこと。黒い戦闘機と少女のこと。ホワイトボードに書いたこれからの被害者のこと。
昨日、霧島主任とその少女の家に行き、話をしてきたこと。
霧島陸佐は、黙って全てを聴いてくれた。

…にわかには、信じがたい話だ
昨日、少女が言ったんです…。俺にも役割が、あると
なんのことかまでは、教えてくれなかったけど…

…それで、君はそれをわたしに話して、どうするのだ?

俺は彼女と何らかの力で意識を共有しています。
彼女は最後に言った。ずっとこの活動を見ていろと。
つまり、俺は彼女には殺されない。彼女は俺を殺さない! あの戦闘機に近づけるのは、いまこの場所で俺だけです!!


霧島陸佐!ポイントに到着します。
…あぁ

輸送機が着陸した。


~ 反撃作戦 ~

輸送機を降りるまで、霧島陸佐は黙っていた。
目標の到着が近い。ここまではこれた。
もうなにを言われても、俺は腹をくくってしまっている。

もし、仮に、あの黒い戦闘機、ブラッドイーグルに近づけたとして…その後、なにをする
霧島陸佐がゆっくりと訪ねた。
…、少女を、止めます。どんな手を使ってでも
…。
短い逡巡の間。

こんな、不確定な条件で、そんな許可を、できるとわけが…
…さっきまで、俺は覚悟ってものがなにか、まるで知らなかった。あなたたちを見て、それがなにかわかったんです…

…主任の、お兄さんの部隊のことを聞きました
…!
俺は、お兄さんのように戦闘機に乗ってあの怪物と闘いにいけるわけじゃない! あなたのように、たくさんの大切な部下の命を預かることもできない! でも…自分にしかできない、今しかできない闘い方をやっと見つけたんだ!お願いです!俺に、俺に命を張るチャンスをください!

…うぬ、ぼれるんじゃない!!!!!
っ!!

霧島陸佐の拳が、おもいきり左の頬にめり込んだ。

…自分にしか、できないこと、だと…? 命を投げる、チャンスを与えろだと!? …そんな、そんなことを理由にして、いままで何人の兵士が、戦場で命を散らしたと思ってる!! 
お前は命を賭けると言った! この戦場に!!こんな不安定なにことで命を賭けるやつの居場所などくれてたまるものか!!


周りの士官達が、全員こちらを見ている

我々は皆で闘い、皆でこ苦難を乗り越えるためにここまで来た…、それを、たった1人が命を賭けたぐらいで、乗り越えられるなんて二度と口にするんじゃない!!!!!

霧島陸佐の意見は正論だ。
だけど


このまま、だと、全員死にます…
俺は見たんだ…全員が殺されていく虐殺の瞬間を…
あれを、現実には絶対にしたくないっ…

何故か涙があふれてくる

…さっきまでとはちがう。俺は1人でも、例えじゃなく命を懸けてでも、あれを、あの光景を止めに行く…!!!



米崎…
…はっ
このバカものに、装備を一式、貸してやれ
え!? 霧島陸佐?!
聞こえなかったのか!!こいつに装備を装着しろ!!
い、イエス!サー!
それと、もう1セット…私の装備も、もってきてくれ

目の前に立つ霧島陸佐を見上げる。
霧島、さん…?

ただの一市民を危険地帯に、ましてやテロリストの前におめおめと行かせたとなれば、私自身ただではすまん!
…なのに、お前はどうしても、どうしても絶対にやつのもとに行くと言う!
もし、もしもおまえを死なせたらお前の親御さんや、まひるに、娘になんて顔をしろと言うのだ…!

…ぁ
霧島陸佐が拳を握りこんでいる。

…おまえは、私が奴のもとまで、連れて行く…!!



--- 作戦が、始まった。


~ 火急 ~

他の車両の邪魔にならないように陣地の隅で、さきほど米崎と呼ばれた年上の下士官が、自分の装備の予備をもってきて着けてくれた。

体型的には、大丈夫か?
はい、ありがとう、ございます
ヘルメットは新品があったからこれを持って行こう。他人のは嫌だろうしな
あ、いえ、まぁ、そうですね
うん、似合ってるよ。いっそこのまま隊に入ればいい
そうすれば市民では無くなりますね
そういうことだ。よし、いいぞ完璧だ
すみません。無理を言ってしまって。ありがとうございます
かまわんさ。まあ、その…なんだ

北方連隊には、弟がいるんだ…戦闘機乗りで、な
! さっき連絡のあった部隊の…

これから会いに行く奴は、俺の仇でもあるんだ。だから、

絶対、成功させよう!!
…はい!

米崎さんは敬礼の仕方を教えてくれた。

霧島陸佐や他の隊員達がエンジンをかけていた車は、潔く天井を取っ払ったような四輪駆動の軍用ピックアップだった。数は5台。 

狙撃の得意な者と、対物ライフルをかき集めた。万が一の場合、逃げる時間を稼げるかもしれん

連れて行くとは言ったが、俺が戻れと言った時はすぐに戻れ!絶対にだ!
了解です!
敵がもうまもなくやって来る!準備はいいか!?
はい!
よし! 行くぞ!!
はい!!

これから、やってくる少女の元へと向かう。
昨日とは違う。今度は彼女を、止めるために。


~ 渋谷区国道 ~

駐留地から出た車列は大通りを走り抜けていく。

どこに向かえばいい?計画書では国会議事堂の襲撃となっていたが?
すでに政治家は避難してあの場所にはいません!あの計画書は、もう無視してください!
だとすると、次に狙われるのは…?

欲望、悲しみ、快楽、人混み…この条件がそろうのは、
まず思い浮かぶのは新宿の歌舞伎町界隈だ。いや、平日のしかも避難命令の出た昼間に、狙われるような要人がいるとは思えない。なら、

銀座…、銀座に、向かってもらえますか!


~ 銀座 ~

避難警報が隅から隅まで、時折思い出したように流される繁華街の国道を、5台の車が走り抜けて行く。

どこか! どこか政治家が集まるような、会員制の高級クラブとか、そんな場所をご存知ありませんか?!

あ?!
そんなもんは知ら…知、知っているか、もしれな
すごく大事なことです!
わ…私は知らんが!私の上官達でそういうところが好きなものが、たまに良く通っていたような気もする!!


お嬢さんには黙っておきますから!連れて行っていただけますか!
わ、わかった!


~ 高級で光丘な恒久 ~

銀座でも避難命令が出ているが、それにしては、人がまばらに歩いている。
平和な社会に慣れ過ぎると、いざという時の感覚が鈍ってしまって、重大な脅威とか、危険を回避する妨げになってしまうということだろうか。

あのホテルだ!

霧島陸佐の案内してくれたところは、銀座の大通りから少し奥、名前だけは聞いたことのある超の付く有名ホテルだった。
豪華な内装が外からでもわかる、一泊でもとてもできない高級ホテル。

30階と31階が会員制のラウンジになっている

高い。登るべきか、地上で待つべきか。

だが、この辺りは高級ラウンジだらけだぞ
そう、なんですね

少し考えて、地上で待つことに決めた。
ここ以外を狙われた場合、急いでそちらへ向かわなければならない。

銃を借りるわけにはいかないので、このフレアガンを貸していただけませんか?
ああ、それなら大丈夫だ。使い方はわかるか?
はい…!
車を降り、乗せられていた装備を借りる。
米崎さんや隊員達も、装備を確認し、集まってくる。

…あくまでこの付近にくると仮定して、目標の到達予測まで、残り5分弱だ
霧島陸佐が告げる。
この作戦の成否にかかわらず、首都圏の防衛作戦は発動し、襲来したブラッドイーグルの周囲は確実に戦場になる!
私が退避命令を出したら全員、絶対に戻れ!いいな!退避命令が最後の命綱だと思え!
はい!
狙撃手は距離を取り、ブラッドイーグルから絶対ゆ射線を外すな!
射撃の判断は各自に任せる。隙を見つけたら確実に、撃て!
はっ!

よし各員、配置につけ! 行け!!
…はい! はっ!

あとは、少女の駆る、あの黒い悪魔の兵器を待つだけになった。


~ 相対 ~

霧島陸佐は運転席に座っている。車にエンジンをかけ、いつでも走り出せるようにスタンバイしている。
緊張からか少しずつ、手に汗がにじむ。

…落ち着け、呼吸を深くゆっくりしろ
はい…

陸佐は落ちついている。この人はいままで、どれくらいの修羅場を経験してきたんだろう。
近くに存在を感じるだけでたのもしい。これが指揮官のもつ雰囲気なんだろうか。

…本当はな、どうせまともに闘っても、勝ち目がないことは明白だったのだ
え?
私の立場で決して言っていいことではないが、
あの黒い戦闘機は空自の最新のAAM、空対空ミサイルを20発以上まともに食らって無傷でここに向かってこれる化け物だ。軍事国家のロシアや中国も奴に有効打を与えられなかった。…そんな相手に、我々ではとても太刀打ちできん

…なにも答えられなかった。

普通ではないことがとにかく多く起きている。こういう時は、奇策が必要かもしれん
…俺に、やれるでしょうか

さあ、な。しかし問題無い。
陸佐は言う。
どうせ元から失敗する作戦だった。気楽にやろう。もし失敗しても総勢5万の精鋭がバックアップに付いている
気をしっかり持て!おまえぐらいの時は、生意気を言うぐらいがちょうど良いのだ
…はい

失敗する作戦…それなのに、なぜ陸佐は闘おうと…

その答えが聞きたくて、言葉にしかけたその時、
遠くから雷鳴のような振動と、続けて悲鳴に似た轟音が近づいてくるのが聞こえた。

きた…っ!

どこに、どこを攻撃する!? せめて、できるだけ近くに!!

黒い戦闘機は、ゆっくりと速度を落としたように見えた。
そして、まさに目の前の高層ホテルの上空でその翼を折りたたむと、次々にロックを解除し、変形を整え始めた。

まさか、まさか!どんぴしゃなのか?!
…っ陸佐は離れて! ガラスが割れて降ってきます!

ヘルメットをかぶりゴーグルを当てる。

距離が遠い…、気づいてくれ!
フレアガンを人型になった戦闘機に向かって発射する!ダメだ…全然、届かない!


ッパン!!

えっ?!
乾いた音のした方をみると、霧島陸佐が拳銃を構え、空に向けて発砲していた。
続けて二発、お手本のように綺麗な動作で発砲する。

よくも! よくも翔吾を!! よくも仲間達を!! こっちを見ろっ!!この悪魔め!!
霧島さん…

そのうちの一発に気付いたのか、ブラッドイーグルは地上の方に首を向け、
そして…ゆっくりと、こちらに向けて高度を下げてきたのだった。


~ 作戦・出発前ブリーフィング ~

…作戦は、あります
あの戦闘機は、戦闘機の形をしていますが、地球上のどの技術よりも進んだ性能を持っています
おそらく、防御力も桁違いでしょう
あの機体を焼き尽くすためには、聞きかじりですが米軍のもつバンカーバスターとか、もっと強力な貫通力を持つ攻撃が必要だと思うんです。
だが、東京のど真ん中でそんなものは使えないぞ
はい。ですが、乗っている少女は別です
動画で彼女は、たしかに素手で銃弾を弾いていました
ですが、ダメージは受けていた。体感ですが、彼女は生身の人間よりも少し頑丈なくらいだと思うんです
なので、なんとか彼女を外に出すことができれば…

狙撃で、仕留められる?
…はい

殺す…。あんな少女を。
俺は、なんて恐ろしいことを

素手で銃弾を弾いたと言ったな。どんな武器で撃たれていた?
普通の、ドラマとかでよく見るタイプ、だったと思います
…わかった、一応、念には念を入れよう

霧島陸佐が士官に狙撃の得意なものを集めるように伝える。

昨日話をしてきた少女を、俺は本当に…

園山、
はい…
やつはすでに何万人と人を殺し、都市を破壊している
…!
ここで止められなければ、さらに何百万という人が死ぬ可能性が高い
説得しよう、などと考えるな。やつは有史以来の、未曾有の大量虐殺の犯人なのだ!
迷うな。姿形に惑わされるな!迷えばこの作戦は失敗する
俺はうなずいた。
…さっき見せた気合いを思い出せ!
こんな時こそ、ガッツだ!!


~ 黒い戦闘機 ~

黒い戦闘機が、地上に降りてくる。
…悪魔の兵器。
初めて生で感じる、夢で見ていたよりずっとむごい威圧感感…! 存在する、悪夢…

ズッ…!!  ッゴファー!!!

戦闘機の足が地面に着いた瞬間、機体脚部のアブソーバーが衝撃を吸収し、そこで吸収しきれない振動が地面を揺らす。

くっ
なんとか足を踏ん張り、尻餅をつくことだけは耐えられた。
大きい…!! なんか写真や、映像と違う? 迫力がそう見せるだけなのか?

そして、機体から、何度も繰り返し聞き、もうすでに耳慣れた声が飛び出してきた。

『っちょっとぉぉぉー!!!!???⤵︎⤵︎⤵︎
っなーんで、お兄ちゃんがここにいるのーおおおお!?!?!?』


~ 反則技 ~

実際、生で聞くまで現実感がなかった。
この黒い戦闘機を、あの子が動かしているなんて。
でも、この声は、間違いなくあの子の声なんだ。
『まじ意味わかんない!! なんでなんでー?!?!?』

やっぱり、いきなり顔を出してはくれない、か
どうやって顔を出させる?

ここで説得して、投降してくれとるとは思えない。
いや、迷うな。 顔を出させることに集中しろ!

『それは、だめだから! お兄ちゃんはまだ出てきたらダメなところだからー!!⤵︎⤵︎』

意味、言葉の意味。なんて言ってる!
くそ、拡声器を持ってくればよかった。 いやまてよ。それなら…

ご、ごめん、何言ってるか、ぜんぜん聞こえない!!!
声が! 声が反響して! 聞こえないんだ!!!

『だーかーらー!! もー!!』

プシー!!
戦闘機のコックピットのロックが外れていく!

バグンっ!
戦闘機の胸部の風防が開いた!その異様な内部が露わになる!胸の下まで戦闘機と一体となった少女が顔を見せ、こちらに叫ぶ!

ダーメーだーかーらーっ!!⤵︎⤵︎  あぶないからー!!!
こんなとこで先回りとか反則だからーっ!!!

半泣きだ。
泣いてる。 なんで泣いてんだ。
身体が、強張って動けな…、

米崎ィィ!!!

次の瞬間、霧島陸佐が叫んでいた。

そして、対物ライフルを構えていた米崎さんは、歯を食いしばって少女に照準を走らせていく。ライフル越しの少女と米崎さんの目が合い、
米崎さんは戸惑うことなく、引き金を引いていた。


ッズガォン!!!


~ 撤退 ~

対物ライフルは、厚い装甲を貫通するために生み出された大口径の大型ライフルだ。
あまりの反動から立って使用することは出来ず、必ずうつ伏せに構えて射撃する。
米崎さんの発射した弾丸は正確に彼女の眉間を捉えていた。
だが、少女の神経系統は黒い機体と直接接続され、機体の反応も、普通の機械のそれを遥かに上回るスピードで防御に動いていく。

ッジャガッッ!!!

衝撃と火花が周囲に撒き散らされる。近くにいたため、身体がはじき飛ばされ、後ろに倒れ込んでしまった。

弾は! 少女は?!

少女は無事だった。弾丸は斜めに逸れ、戦闘機の風防を大きく割っている。少女は破片が眉の上をかすめたのか、こめかみ辺りを深く切っているようだった。目に血が流れ込んでいる。
ぐぅ…!!
弾丸は機体の左手首の付け根を貫通し、貫通した部分は大きく破断していた。地面には、ちょうどいま自分が立っていた辺りに手首が落下している。

だめ、だった!

きぁあー!! わたしの黒羅ちゃんがぁぁー!!⤵︎⤵︎⤵汗汗汗︎

少女は左目を押さえ、そう叫ぶと、機体の右腕のガトリングを米崎さんに向けた。
俺はとっさにその砲塔に捕まる!
なっ!?

米崎さん! 逃げて!!  
園山!!
園山くん!!

少女、ゆいちゃんはこれで撃てない! なんとか、なんとか時間を!!

もー!!!   もーっ!!!

モウモウ言うと牛になるよ、などと言ってる場合じゃない!
彼女は俺の捕まっているガトリング砲を地面に擦り付くくらい低くすると、機体を丸め、そして背中側を空に向けて翼を展開していく。そして、

…もーっ!! もぉ!!知らないんだからーっ!!!⤵︎⤵︎⤵︎


機体の背後から、小型のミサイルがまるでスズメバチのように次々に生み出され始めていく! 
空中に投げ出されたミサイルは一斉に火を吹き、四方八方に
散開し、大量のロケット花火に一度に火をつけたように、周囲に向けて乱射され、周りに接触しなかったものは飛び上がりホテルの上、ちょうどラウンジがある階にどんどん命中していく。
周りは噴煙が巻き上がり視界が見えなくなってしまった。激しい振動のせいでガトリングガンから手を離してしまう。

黒い戦闘機は機体を沈め、タメをつけた後、空中へ飛び上がり、なおもミサイルを発射しつづけている。そのことごとくはビルやホテル、おそらく、優先して殺すべき対象がいるところに狙いを定めて浮かび上がっていく。
ミサイルはなぜか自分を避けているように見える。

園山ー! どこだ! ホテルが崩れる!車へ走れ!!
陸佐の声を道標に急いでその場を離れた。
発進しようとしている車を見つけ飛び込む。

霧島さん! 米崎さんや、他の人達は?!
大丈夫だ!さっき車が発進する音が聞こえた!いまなら全員逃げきれる! 口を閉じてろ!舌を噛むなよ!

車が発進すると同時に、崩れたホテルの高層階が地上に落ちてくる。
瓦礫と煙、とてつもない質量を受けた衝撃が地上を覆う。
ぐぅ…!!

黒い戦闘機はミサイルの発射をやめ、空中に停滞すると、

『お兄ちゃんの、…お兄ちゃんの!!

バカー!!!!!』

そう言い残し、再び飛行形態に戻ると南の方角へ飛び去って行った。


~ 帰投 ~

霧島さんは車を止めると無線で本隊に連絡を取りはじめた。

私だ!消防隊に連絡を!負傷者重軽傷者多数!銀座方面の避難命令を継続し、道路を封鎖!
ブラッドイーグルはコックピットの風防部を大きく損傷、南方へ飛行を開始した! 
絶対に奴を見失うな! 追撃のチャンスは今しかない!
米軍にもそう伝えろ!! 

頭上を、二機のF15が通過したのはこのすぐ後だった。続けて4機、さらにもう8機!
次々に戦闘機が編隊を組んで飛行していく。

園山!
…は、はい!
わたしはこのまま前線へ向かう!チャンスは今しかない。
おまえは米崎と共に駐留地へ戻れ!
え、でも!
いいから戻れ負傷兵! お前の役目は終わった!ここからは、我々の仕事だ!!


このチャンスはおまえがくれたものだ。…よくやってくれた
必ず、必ず生かしてみせる!
…っ! はい! 陸佐も、どうかご無事で

霧島陸佐は敬礼をして車に乗り込んだ。
それはとても堂々としいて、まるで映画のワンシーンのようだった。
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