5%の冷やした砂糖水

煙 うみ

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8.4 露空

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真子のiPhoneを奪って、何度もストーリーを再生しながら食い入るように写真を見る。

山本拓也が自分のスマホで撮ったんだろう。

車椅子くらいの高さからの撮影角だ、そこまでは推測しても差し支えないはず。

被写体と撮影者の関係性を知っているからつい色目で見てしまうけれど、

知らない人が見てもきっと、ふたりの親密さがありありと伝わってくるような静止画だった。

なんだこれは。死んだって嘘ついて切ろうとしていた恋人なのに、次の週にはノロケ投稿か。


虫が良すぎるだろう。


「ほんとあいつ殺す・・・」


真子がすかさずツッコミを入れてくる。


「せっかく救急の先生方が助けたのに殺しちゃダメだよ」

「次会ったら18Gでルート取ってやる・・・病院中で一番太い尿カテ突っ込んでやる・・・」

「星羅落ち着いて。元ヤン出てるよ??」

「元ヤンじゃないし、ピアスたくさんあいてるだけだし、本物のヤンキーに失礼」


ふふ、と真子が微笑む。

雨が本格的に降り始め、中庭の向こうに透けるビル群の輪郭がぼやけ始めた。


「それにしてもアツいふたりだったなー。

 うちらより歳上なのにね。心洗われたわ。素敵」

「真子、どう思うよ。

 悠馬さん、あんなオラオラ系男子に獲られちゃったけど・・・」

「まーーあれは最初っから勝ち目ないわ!ベタ惚れだもんね!

 イケメンは生きてるだけで尊いから許す」


いつもながら、何も気にしていないような呑気な様子にほっとする。

真子が本気で恋をし始めたら、置いていかれる私は、きっと途方に暮れてしまうから。


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