5%の冷やした砂糖水

煙 うみ

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8.3 露空

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真子にばんっと背中を叩かれた。

表情がきらきらと興奮している。拙論にご満足いただけたらしい。


「星羅すごいー!探偵みたい!でも察してたんなら言ってよ!」

「いや、全部妄想の域を出てないんだって。

まぁ真実だとしたら、悠馬さんちょっと匂わせすぎでは?とは思ったけど・・・」


相手との絆をちらつかせることで自分を保ってたんだろうな、と思う。

それほどまでに不安で仕方なかったのだろう。


「いやまあそのパートまでは良かったんだけどさ、その先よ問題は・・・」


溜息が際限なく出てくる。

コーヒーを持っていない方の手で顔を覆ってうめく。


「どうしてあんな捲し立てちゃったんだろう…勝手にやってろとか

・・・今思うとほんとめちゃめちゃなだし私情が全開…死にたい…」


「いや、あれは悪いことなにも言ってないじゃない。

言ったことも全部、星羅にとっての正義には、反してなかったでしょ?」

「そうだけど、そんなものに従って動いてよかったのかな。医療者として。」

「そんなもんだよ。みんな職業倫理とか偉そうにいうけど、結局各々好きなように動いてるんだよ。」

「まぁ・・・そうなのかなぁ」


研修医1年目、数年後の自分たちが今の会話を聞いたら青くて恥ずかしくて、もう一度死にたくなるかもしれない。

それでも、真子だけはこうしてありのままの私を肯定してくれるから、明日も地に足をつけて立っていられる。

「私は星羅のそーゆう自分曲げないとこ好きよ!かっこいい」

「そうかなぁ」

にっこりと真子が笑う。

曇り空の下、顔色がくすんでもおかしくないのに、私の親友は今日も最高に可愛い。

「・・・そうだといいなぁ・・・。」


共通の正義なんて幻だし、今は欲しくない。




「それに、まだ短期アウトカムしか出てないけど、あの2人にとっては正解だったんじゃない?」


真子がiPhoneの画面を私に見せてきた。

昨日の夜に投稿されたInstagramのストーリー画面だった。

アカウント名は@yamamototakuya。写真に映っているのは悠馬さんがカクテルをサーブしながらカメラ目線で笑っている姿と、


「『いろいろ落ち着いて、久しぶりに行きつけのバーに来ました。

いつものカクテル今日もおいしいありがとう』だって~」


写真に添えられたコメントを、真子が読み上げる。

その白々しさに怒りが湧いてきて、私は反射的に口走っていた。


「てめぇふざけんなよ、山本拓也」


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