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第四章 埋まりゆく外堀

第五十七話 蜜濡れランチ

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パーティーまでの五時間ほどがランチタイムという名前で埋まるとは思ってなかった。
三日間の蓄積を物語る愛撫の海。
物欲しそうな顔をしていたことは認めよう。たかが三日、されど三日。抱きしめてほしかったし、抱きしめたかったし、キスもしたかったし、それ以上のことも望んでいた。けれど、明るい時間帯、それも就業中、仮住まいにしているホテルの部屋に備え付けられたベッドのシーツが波打つとは誰が予想できただろう。
おまけに「仕事に関する発言はしない」と、昼食開始前に約束させられた事実に基づくのであれば、昼の二時を回った時計の針は無視をするのが正解に違いない。


「待っ…にゃッ…あ」

「なに、時間が気になる?」

「ッ…ぁ、ヒ……ぅ」


数日ぶりに三人の顔をゆっくり見られるのはすごく嬉しい。
もちろん毎日顔を見ていたし、会話もした。朝食と夕食は代わる代わるといった感じで落ち着きがなかったものの、一人きりで寂しい時間を過ごしたことはない。
それでも三人そろうと逃げ場のない囲いの中で溶かされていくようで、それは他の言葉で言い表せないほど甘く心地よくて、幸せだと、求めていたのだと、体は正直に反応している。


「時間は気にしなくていいよ。問題なんて何も起こってないんだから」

「~~~ぁ…ッん…で、も」


悪魔が囁くまでもなく、心もそうだとわかっている。
わかっていても、仕事をサボるなんて事態に真面目な自分が追い付かない。まして任された重役。もしも、なにか不具合がおこっていたら。萌由やカツラが自分のことを探していたらと思考に浮かぶだけで、溺れようとしていた感覚に理性が戻りそうになる。


「ひ、ッ…ぅ…アッぁ……ヤっ」

「アヤ、約束忘れちゃった?」

「ヤだ…~ッ…ぃ、ぅ」

「ボクたち以外のことを考えた罰がほしいのかな」


語尾にハートをつけたロイの文句が、自分の失態を想起させる。張り詰めた絶頂の糸に操られて丸まった身体の反応が、それを許さないと告げる彼らの無言を受け入れたことを表していた。
自分達以外のことを考えるのは許さない。
この時間は特別なものなのだと、雰囲気がそう物語っている。


「んっ…ダ…めぇ…やっ、アッ、ぁ…ッ」

「アヤの口の中も最高に美味しい」

「ふ…ぅ…~~~~~ん、ンッ」

「ロイだけにやるなよ」

「ええ、ボクにもっとちょうだい」

「下はスヲンが食ってんだ。上くらい仲良くしようぜ」

「それはそうかもしれないけど。乳首もこんなに固くして、アヤが誘ってくるんだもん」

「…ッ…ぁ…~~~ぅ…っ」

「悪い猫だな」

「ほんとそれ」


ただ舐められ、撫でられるだけの一時間半。三十分前まで着ていた服は床に落とされ、髪は現在ランディの手がほどいて、生まれた姿に戻される。抵抗は無意味。乳首を甘噛みしたあと、唇に何度か吸いつき、首筋に顔を埋めて匂いを嗅いだロイが楽しそうに笑うのがその証拠。


「可愛いね、アヤは」


ランディのキスに声を奪われて、スヲンが顔を埋める場所で泣くアヤを見上げれば、一目瞭然。真面目を捨てきれない理性が憎いのか、悔しそうに絶頂を味わう彼女の姿に自然と頬は緩んでくる。


「アヤが言ったんだから、ちゃんとスヲンに食べさせてあげないと」

「ヤッ…ぁ…イクッぃ…ァッ…あぁっ」

「主食はスヲンにやったんだ。アヤ、腹が減ってるのはスヲンだけじゃないぞ?」

「っ、もぅ……も、終わ…ヒャぅ」

「平等にくれないと、な?」

「自分だけお腹いっぱいになればいいって、アヤはそんな子じゃないよね?」


そう問われても答えようがない。
スヲンの母娘が謎の団体に連れ帰られてすぐ、ホテルの自室でランチをしようと三人に招かれたアヤはすでに用意済みのそれらに足を止めた。少しおかしいなとは感じた。
別に彼らが食事の事前準備をしてくれるのはいつものことで、珍しいわけでも何でもない。
これは本能。直感とでもいうべきか。
「何か変」だとか「おかしい」と感じた自分の感覚は正しかったのだと、今ならわかる。


「~~~~っ、アッ」


無言で愛撫を続けていたスヲンの唇が腫れた突起を深く吸ったせいで腰が跳ねた。溢れた蜜ごとのどを鳴らして飲む姿は、淫魔の食事風景そのものだった。


「うまそうな音だな」

「どう、スヲン。美味しい?」


右耳にランディの声。
左耳にロイの声が吹きかかる。
この卑猥に響く音のどこが美味しそうなのか色々と疑問だが、黒い髪が舌を伸ばしたまま縦に揺れているのだから、その通りなのだろう。太ももの付け根を両手で押さえつけてくるせいで、閉じられない股の奥が疼いて、うずいてたまらない。


「イッて…る…も、イッたからダめ~~~ッぁ」

「じっとしてろ」

「……っ痛…ぁ…ヤぁあぁッ」


敏感な突起物にスヲンが噛みついたのが要因。今度は勢いよくのけぞったアヤの胸が天井を向く。
その先端に「可愛い、アヤ」と無遠慮なロイも噛み付いたせいで、見事な歯形がそこに刻まれた。


「気持ちいいか?」

「~~んっ、む……ァ」

「口のなかまで熱いな」


耳たぶにかじりついたランディの囁き声が子宮に響く。ほほを撫でた指先をそのまま口腔内に差し込まれ、太く逞しい二本の指が舌を挟んだり、引っ張ったり、押し付けたりして遊び出す。
おかげで、まともな言葉は紡げそうにない。


「ンッ…ぬ…にゃ」


迷惑な話だ。
着衣を崩さない彼氏たちの腕の中で乱れていく感覚が、もどかしくて心地いい。もっと、もっと欲しくなる。たまらなく腕を伸ばして、すがりついて、甘えたくなる。
この三日間。肝心な本番は終わっていないのに「頑張ったでしょ?」と褒めてほしくて仕方がない。
自分以上に疲弊し、癒しを求めているのは彼らの方だと理解していても、どこまでも甘やかされたくなる。自分勝手で醜い欲望が剥き出しになっていく。


「しばらくしてないうちに、アヤの口が小さくなったみたい」

「ほら、もっと開けてみろ」

「~~~~ッく、ぁ……にゃ、ぬ」


ピクピクと痙攣する神経に、ぼやけた視界が愛しい姿を刻み付ける。
なぜ、こんなに触れられる部分が性感帯になってしまうのか。彼らの匂いが混ざり合って、欲しいと望む以上に与えられる行為が嬉しくてたまらない。言葉にしなくても全身で応えてくれる存在の有り難さに、知らずと蜜が溢れてくる。
痛いほど残されたくて、枯れるほど叫びたくて。泣いて、求める感覚が絶頂に結び付く。


「ヤッ…ぁ…スヲン……っィッ~~ぁ」

「ここだろ?」

「~~~ッ、そ……こ……ァア」


静かに吹き出してシーツに染みが広がっていくのを楽しむつもりなのだろう。舌で吸い上げながら指で掻き出す絶妙な刺激は、アヤの奥から甘濡れの液を外界に解き放っていく。


「ンんッ……い……クッ」


ランディの指が舌を押し付けたせいで、喉の奥まで開いたのがわかった。
空気が肺深く浸透してくる。きっともうすぐ、この穴も塞がれてしまうのだろう。彼らの雄が抜き差しを始めて、苦しくても解放されない時間が訪れるに違いない。


「カハッ…ぁ…ん…っ~~…ぅ」

「物欲しそうな顔だな」

「まだ腹が減ってるのか?」

「アヤ、食べたいの?」


絡む指に込める力が緩まない。
交互に名前を呼ばれながら触れられる箇所が熱くて、熱くて、仕方がない。自由に動かせない肢体がもどかしくて、視界に映る肌には塗り直された赤い印が踊っている。ぐちゅぐちゅと首から上は丁寧に混ぜられ、時間をかけて溶かされ、胸の突起は可哀想にかじられて、下の突起は赤く勃起したまま戻らない。
歯型であったり、唇型であったり、それは大小さまざまな形で肌の上に散っている。けれど、服を着れば絶妙に隠れる範囲に集中しているのはきっとわざとなのだろう。
これは秘密の行為。
他の誰かに知られるわけにはいかない。
ランチタイムが終わればまた、仕事場に戻らなければならない。
何もなかったフリをして。


「欲しい……も、いれて…ホシイ」


知性まで奪われたのか。恥ずかしさはとっくに消え、嬉しさに満たされていく感傷が彼らの行為を煽っていく。腰を揺らし、誘い続ける。
現実を無視して、欲望に溺れていくことを望んでいる。
今だけは許される。それが本能に拍車をかける。
すると金属の音が聞こえて、アヤは反射的に顔をそこへ向けた。


「にゃ……ィッ…~~やッ…スヲ……ン」


記憶に新しい。
どこからか現れたクリップがびらびら広がる皮の片側を強く掴んで、その先についたゴムが臀部を回り、もう片方のラビアを噛んで落ち着く。強制的に左右に広がった花園は、蜜に濡れた恥部をスヲンの眼前にさらけだす形で固定された。
満足そうに顔をあげたスヲンの瞳がこちらを向く。
黒い瞳。どこまでも深い、漆黒の双眼。


「これでもっと食べやすくなった」

「ッ!?」


ぱくっという擬音語さえつきそうな勢いでスヲンの唇が剥き出しの突起にかぶりついた。
一瞬身構えた体は、ランディとロイが指と舌であやしてくれるが、震える声で快楽に悶えるアヤ自身を慰めるつもりはないらしい。


「ぅ、ァアッ…にゃ……っ…ぃ」

「アヤ、力抜け」

「ひっ…ぅ…~~~ンッ…に」


鼓膜に直接囁くランディの指が口の中を出たり入ったり、押したり引いたりしている。
ぐちゅぐちゅと唾液の音が響く。
思考が錯覚して指がなにか認識できなくなったに違いない。ランディの言葉通りに力を抜いたアヤは、舌を出して、無心でそれを吸っていた。


「ランディの指、美味しい?」

「ァむ…ンッ……ぅ…にゃ、ぁ」


途切れる息の狭間でロイが肌を撫でつける。
大きな手が優しく肌の上をすべると、ぞわぞわと言いようのない感覚が這い上がって、全身が喜んでいるのを知った。


「ニャッ、ァッ~~~~ぅ、ぁ」


軽い絶頂が短絡的にやってくる。ベッドの上で熱く溶けた身体が小刻みに痙攣している。
持続していると言い換えていいかもしれない。スヲンが強制的にこじ開けた花園の扉は、蜜を生む穴を早く埋めてほしくてパクパクと何か喋っている。


「もう、いいのか?」


この状況でうかがうのは卑怯だとアヤの瞳が潤むのを知っていながら、スヲンの声が意地悪に響いている。

―――――ホシイ

唇を噛み締めた哀れな姿に、三人の瞳が光を宿して笑った気がした。
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