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第四章 埋まりゆく外堀

第五十一話 変形する肉芽

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「……っ…ぅー」


下腹部の刺激がそろそろ不快に感じるのか、アヤの顔がわかりやすく動き始める。
それを三人そろってじっと眺めていると、やがて「ぅにゃっ!?」と目を見開いてアヤが飛び起きた。


「…ふ…ァッ…にゃ」


無意識に動いた両手がクリトリスを強制的に吸い上げ続ける機械に向かって伸びる。当然、スヲンに押さえつけられて、アヤは不可解な顔で涙を浮かべながら視線を泳がせていた。


「アヤ、おはよう。俺がシャワー入ってる間に寝ちゃってたな」

「~~~…ッあ…ぅ」

「のぼせたんだって?」

「な…にッ…ァッ、あ」

「アヤ、腰が動いてる。いきそうになって起きた?」


スヲンが指先で弾く空洞の玩具が左右に揺れるたびに痛覚に似た刺激が全身を駆け抜ける。神経が刺激を逃がそうと腰を浮かせ、スヲンに押さえつけられた身体をひねろうとするが、ランディに頭を撫でられ、ロイまで加勢した状態ではそれもかなわない。


「……ッ…とって」

「なにを?」

「~~ァッ、それ…変なの…ぅ…」

「これ?」

「ヤッ…引っ張ったらダメ~~~~ッ…ヤァァぁ…あ」


きゅぽんと可愛い空気の音がしてアヤの淫核は解放される。スヲンが無理矢理引っ張ったせいで、本当に身体から抜けそうな錯覚を味わったのか、アヤは確認するようにその部分を凝視していた。


「ひ…ぅ…ッ!?」


ランディの撫でる大きな手を額に当てながら顔を起こしたアヤの視界にそれは映る。


「あのリングをはめるには少し大きくしすぎたか?」

「飛び出してて可愛い。アヤのクリトリス、真っ赤な苺みたい」

「うまそうだな」


全員総意で同じものが見えているらしい。
つまり夢ではなく現実。
皮がめくれ、赤く勃起したクリトリスが割れ目から飛び出し、見たことのない大きさで足の間に鎮座している。小さな男性器に似た不気味な形状。
じんじんとした違和感の正体はこれかと、自分のなかで身体と意識が結び付いた瞬間、アヤはそれがスヲンの指でつままれるのを見た。


「ヒぁッ!?」


敏感の象徴であるその場所に触れられるのは、いくら優しくされても拒絶したいものがある。


「スヲン…ッや、ァッ…イクッぃ、ァッ…」


いつの間に濡れていたのか、愛蜜を指ですくって塗り付けてくるスヲンの奇行に泣き声が叫んでいた。


「だめ…ダメ…やっぁ、イクううっぅ」


はぁはぁと息を切らせて雫をまき散らせ、戸惑いと困惑に狼狽えるアヤを無視して空気は進んでいく。


「や、スヲン…そ…アァッ」

「アヤ、足は閉じない」

「なに…これ…ッ…アァ、ど…し、てスヲン…怖い…ッぁ」

「こうすれば怖くないだろ?」

「ランディ…手、ぁ」


額から撫で落ちるようにして視界を奪ってきたランディの手に五感のひとつを消される。温かな暗闇。まぶたの裏には可哀想な自分の性器が残っているのに、なぜか安心して身を委ねてしまう。
大丈夫だと与えられる刺激に微睡んだ心が甘い声をあげて悦びを口にする。


「ァッ…いく…イクッぁ…ぅ…いくイクッ」


三人が見下ろす視線の中心で悶える声が止まない。絶頂への刺激で目覚めた体は、快楽を貪ることを止めないのだから仕方ない。
クリトリスだけでは足りないのと感じるのは、もはや調教の賜物と言ってもいいだろう。


「も……ぁ…いれ、て…」

「風呂場でロイと二回しただろ?」

「でも…ッ…ヤッ…ほし…~ッい」


ランディが悪戯に尋ねてきたところで、ねだればくれることを知っている。
スヲンが足をあげて埋まってくるのを期待した腰が宙に浮くころ、ロイが笑って「ご飯の用意しとくね」とベッドから降りていった。


「ぅ…ロイ…?」

「アヤ、俺に抱かれて別の男を呼ぶつもりか?」

「ひ…ぁ…スヲン…ッ!?」

「ん?」

「ァッ…ごめんなさ、いッ、ぅアッ」


容赦なく一気に最奥まで突き上げてきた刺激が強い。
欲しかった快楽。
日常に戻ったロイを呼び止めるより、非日常をくれるスヲンにアヤはしがみつく。


「アヤ、明日仕事だぞ?」


呆れた声で囁くランディの言わんとしていることはわかる。
月曜日。酷使した身体なんて世間は気遣ってくれない。いつもであればアヤもお風呂やご飯を終えて寝るだけになった時間。
それでも欲しいものは欲しい。
我慢は身体に毒だと先人も言っていた。


「…い…の…いいの」


スヲンに突かれながらうわ言のように繰り返す。
持ち上げられた腰が全身の力を抜いて受け入れているが、ランディに塞がれた視界のままではグルグル世界が回るだけ。


「アヤの声、かすれてるな」

「水飲ますか」


スヲンのうえに座るように持ち上げられ、突き刺さったまま反転した身体はランディと向き合って少し止まる。
まるで足を開いてスヲンの椅子に腰かけた状態。


「…んっ…ぅ…んっ…」


ランディの口から飲まされる水が美味しい。ポタポタと唇の端からこぼれた水滴はスヲンが触れる胸の曲線に沿って流れていく。


「おいしい?」

「……ッぁ…おいし…水…ぁ」


背後から揺さぶるスヲンの問いかけに応え、ランディから水をもらう。
乳首ごと胸をもみ、首筋に埋もれてくる黒髪を感じながら目の前のランディを眺めていると、途端に頭の位置を下げたランディが視界から消える。


「ひゃあっ!?」


電気が走る音がして星が瞬く。
魚みたいに身体が跳ねて、浮かべた涙と共に爪先までピンと伸びた自分の足が映った。
何が起こったのか理解は難しい。


「……アヤ、しめすぎ」


切なげなスヲンの声がどこか遠くから聞こえてくる。同時に、じゅっと強くすするランディの唇がどこにあるか気付いて、アヤは反射的に身体を丸めていた。


「ヤッ…ぁ…あ…ァアァ」


どくどくと溢れていく蜜が止まらない。
スヲンに突き刺された秘部に吸い付くランディの顔がどいてくれないせいで、勝手に吹いた潮が周囲を濡らしていく。


「…っぐ…ィク…ッぁ…いってる…ィッ、ぁぁあぁァッ」


力が入らなさすぎて、されるがまま快楽に犯されていく。
それを一緒に体感してくれているスヲンの吐く息を思えば、ランディもなかなかの性格をしているに違いない。


「ぁ…あ゛…ぅ…ッ…イ、ぁ」


ぷちぷちと頭の回路が切れる音が聞こえてくる。
尿意でも生理現象でもない水が下半身を伝ってスヲンまで濡らし、ランディの喉を潤しているが、それがなんだというのだろう。射精できない勃起物が熱く、根元まで敏感に反応して沸騰している。
このままなぶられ続けたら溶けて死んでしまうと、アヤは唇を噛み締めて涙を飲み込んでいた。


「…ふっ…ぁ…ぅ…アァッ…ぁ…」

「ランディ」

「あー、悪い。普段よりしゃぶりがいがあった」


スヲンの声に我に返ったのか。
少しだけ、ほんの少しだけ悪びれた様子のランディが唇を舐めながら顔を上げてくるが、その顔はやはりどこか愉しそうに笑っている。


「アヤの上半身、支えろよ?」

「わかった」


「このままじゃ食いちぎられる」とぼやいたスヲンの呻きを聞いたアヤの身体は前方に傾いてランディの肩に両手を置く。
中途半端な体勢で不自然に浮いた身体が斜め下から暴虐されるのは、耐え難いものがあった。


「アヤ…っ…この体勢でも締め付けんのかよ」

「スヲ…ッぁ…ンッ…ィッあ」

「なに?」

「一緒に…ッイク…ぁ」

「ああ、一緒にいってやるよ」

「…っ…きて…スヲン…きて、きて」

「まじ、その声最高だな」

「~~~~~ッア…ぁ」


ランディの肩に爪を立てて、のけぞった身体でスヲンと共に高みに果てる。互いに溶け合った息が空気に霧散して、はぁはぁと声にならない音だけがそこにあった。


「ふっ…ッア…いァッあぁ!?」


半分放り投げられるようにベッドに転げ落ちたアヤは、お尻を突き上げる体勢で引き寄せたランディに息を呑む。直後、問答無用で侵入してきた異物にアヤの腰は奇声を叫んでいた。


「~~~っ、ぅ……ァッ」


本能が危険を感じてシーツを握りしめても無意味。押しては返す荒波に埋もれていくのは、非力な女の身体だけ。


「あれ、まだヤってたの?」

「ランディが楽しんでる」

「そういうスヲンの顔も相当楽しそうだよ?」

「アヤが可愛すぎた」

「それはアヤが悪い」


食事の支度を終えたらしいロイが姿を見せて、スヲンと静かな笑い声を交わしている。その視線の先、獣のように犯される彼女の姿を映して、可愛いと声をそろえる異常者に救いはない。
結局、ランディに最奥まで好きなように暴れられて、アヤは四つん這いで絶頂に鳴いていた。


「……にゃ…ぅ、にゃ」


イきすぎて指先に力が入らない。
ぼやけた瞳はまばたきも忘れて勝手に涙を流している。人間は快楽が許容範囲を超えると涙を流すものらしい。震える唇からよだれがこぼれて、涙と一緒にシーツに吸い込まれていくのをどこか他人事のように眺めていた。


「アヤ、生きてる?」


能天気なロイに文句のひとつでも言い返したいのに、言葉が人間のそれを紡いでくれない。
八つ当たりに拳を振り上げようにも、指の先まで溶かされて小刻みに痙攣しながら息をするだけで精一杯だった。


「せっかくお風呂入ったのにぐちゃぐちゃにされちゃって、ご飯はどうする?」

「…にゃ…ん……ぅにゃ」

「ごめんね、アヤ。すっごく可愛いけど、ボクは猫語がわからないんだ」


正しく泣きたくなるとはこういう心境なのだろう。
「もう信じられない、今日はまだ月曜日なんだよ?」と伝えることが出来たのは、ロイにご飯を食べさせてもらい、ランディにお風呂にいれてもらい、スヲンに手入れをされた後の事だった。


「………ぅ」

「どうかした?」

「なんか…まだ…ムズムズする」

「寝て起きたら元に戻ってるからそんなに心配しなくてもいい」

「……ほんと?」

「ああ」


微睡む意識が頭を撫でてくれたスヲンの言葉を信じて眠りにつく。
まだ月曜日。一日が濃厚に流れていくせいでとても長く感じるのに、過ぎてみればあっという間すぎて振り返る時間もない。
そういえば昼間に見たスヲンはどこか元気がなかったと、問いかけようとした意識に気付きながらもアヤは夢の中に落ちていった。
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