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第三章 それぞれの素性
第三十六話 盤上の駒
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セミたちが窓の外で声援をあげて騒いでいる。七月最後の木曜日。
生ぬるい風。いや、外は熱風だろう。照りつける陽射しがコンクリートを鉄板にして、色んなものを焼こうとしている。とはいえ、ここは社内。つまり空調設備の効いたビルの一角。
服は黒のパンツに、ひざ丈まである白のオーバーシャツ。髪はゴムで軽くまとめたローテール。足元は履き慣れた五センチほどのローヒール。
オフィスカジュアルは過ごしやすい。
朝は半分消えた白い月が浮かぶ快晴の空だったと遠い目で思うのは、熱中症や熱射病に注意するよう訴える看板やポスターを横目に出社した日本の会社。
「……うぅ」
筋肉痛がひどい。
帰国後、二日連続はさすがにやりすぎだとアヤは顔を歪める。
ただ不思議なことに、三人とより深い関係になれたという事実からか心がすこぶる軽い気がする。だからどちらかというと、アヤは始終上機嫌で初日を迎えていた。
「…ッ、あ、暑い…」
これは日本の夏にやられる日本人の声。
今いるのは二階の事務室。
日本支社では事務員としてアヤは配属が決まった。
研修前は社内言語が英語だったが、今は日本語でコミュニケーションを重視した組織体制に切り替わっている。若く優秀な人材をかき集めたらしく、二十代から四十前半までの顔ぶれが揃い、社内の空気は活気に満ちていた。
「外すごく暑い、書類届けにいっただけで溶けそう。まじで配属先、営業じゃなくてよかった」
「えー、暑くても生ロイさん私も見たい。めっちゃ綺麗な顔らしいじゃん」
「それは見た、あれはまじで王子」
「王子とか妄想がはかどるんですけど…ッ…あ、電話出ます」
年が近いからか、女子社員は基本的に仲が良い。そしてオシャレ。
ネイル、メイク、パステルカラー。営業部隊はジャケットがいつでも着用出来るように比較的きちっとしているが、事務は基本的に自由で良かった。
キラキラ輝いて見えるその輪に初日から飛び込んでいけるわけもなく、アヤは照りつける日差しから生還した同僚が額に汗を浮かべて喋っているのをどこか他人事のように眺めていた。
『す、すみません。もう一度言っていただけますか、え、あの』
電話に出たばかりの彼女が何やら困惑した様子で喋っている。
電話口は英語なのだろう。視線を泳がせてヘルプを求めているが、面倒な気配を察知したのか誰も目を合わせようとしない。
「代わりましょうか?」
アヤは自分を指さすジェスチャーを交えて問いかけた。
「すみません。すごく早口なので何を言っているのか私には難しくて、代わってもらえますか?」
「はい」
アヤが配属先として決まった事務は、アメリカ本社とのパイプ役としても存在している。国際メールも国際電話も対応できなければならないが、本社がアメリカということもあり、基本的には英語でやり取りされる。
年下の彼女も本来なら問題なく対応できるのかもしれないが、受話器越しにでも響く大きな声は、早口でまくし立てているのだから急ぎの案件かもしれない。
アヤはアメリカでの研修を思い出して、ひとつ息をついた。
『はい、お電話代わりました。アヤ・さ』
「アヤーーーー!!!」
セイラだった。
「ちょっと、ランディいる!?」
「いや、彼の部署はここじゃない」
「困ったときはここにかけろっていう番号にかけてるんだけど?」
「教える番号、間違えたのかな?」
「……なんとなく理解した。まあ、それはいいわ。エラーがどうしても一ヶ所修正出来なくて、そっちでも対応可能な部分だからよろしくって伝えてほしいんだけど」
「どういうエラー?」
「口で言うより画面で見せたい。あいつ、日本に行くなら一言伝えとけって感じじゃない。あ、ごめん。アヤにいう愚痴じゃなかった、今のなし。でも急いでる」
かまえて電話に出たぶん、一気に気が抜けて笑えてくる。
「わかった、ランディに伝えればいいのね」
「そう。もしかしたら、もう……あっ、なおった。アヤ、なおったわ。さすがアヤパワー。あと、持つべきものは出来る上司ね。ありがとうって伝えておいて」
「わかった」
言うだけ言って電話は切れる。
メモをとろうとペンを持った指だけが取り残されて、アヤは息を吐いて受話器をおいた。
「すみません。システム部にいってきます」
一応、聞いてしまった以上、放置も出来ない。
あとのことは同僚に任せて、アヤは席を立つことにした。
「……んー」
廊下に出て、迷う。
就職してから三か月。海外研修の期間がほぼすべてを埋めていたせいで、日本支社に愛着やなじみがない。日本語すら母国語なのに会話についていけてない気がする。ついていけなさすぎて、本当にここは自分の勤めている会社なのだろうかと、朝から居心地の悪さはぬぐえない。
「ていうか、日本ってこんなに窮屈だったっけ?」
言わずと知れた空気感にランチタイムも終了した午後三時半。
アメリカならブレイクタイムと称してコーヒーを一杯飲むところだが、ここではそうもいかない。
新人同然なのだからそれもそうかと、廊下で少しだけ肩の力が抜ける。
「アヤ」
「ロイ!?」
朝別れたぶりの再会に心が踊る。
思わず社内の廊下だということも忘れて、アヤはロイに満面の笑みで駆け寄ってしまった。
「ロイ、どうしたの?」
「んー、気分転換。アヤは?」
「セイラから伝言を預かったからランディのところに行くの」
「セイラ……あー。ランディ、そういうところある」
「え?」
「ううん。面白いからボクも行こっと」
「いいの?」
「いいよ。叔父さんの惚気話を聞かされるより、アヤと一緒にいたいし」
ロイの呟きは小さすぎてうまく聞き取れなかったものの、都合のいい耳は最後の部分だけを聞き逃さない。
「一緒にいたい」その部分だけを反芻して嬉しくなる。
「私もロイと一緒にいたいから嬉しい」
素直にそう告げれば、ロイに優しく微笑まれた。
そうして並んで歩きながらランディのいる場所まで向かう。エレベーターに乗り込んで、ふたつ上の階。降りて、突き当たりの部屋。
「どう、日本は?」
エレベーターの到着を待つあいだ、隣に並んだロイの問いかけにアヤは首をひねる。「んー」と即答できない言葉を探して、結局「なんとか」と曖昧に濁した。
「んー。なんとか馴染もうと努力してるけど、日本には日本のやり方があるから、覚えるのが大変かな」
「システムはランディが統括してるから基本は一緒のはず……ああ、そっちじゃないか。メンバーがごっそり入れ替わったわけじゃないけど、だいぶ風通しがよくなった分、活気に溢れてるからね」
「うん。みんな仲がいいみたい」
「だけどアヤがアメリカに来る前に比べたら過ごしやすくなったんじゃない?」
到着したエレベーターのボタンを押しながらロイが聞いてくる。さりげなくレディファーストだなと、改めてその自然な態度に感嘆しつつ乗り込んだ後、扉が静かに閉まる。
エレベーターにはロイと二人。
「どうかな……私、ここに来て一ヶ月もしないうちに研修に行かされたから」
「ごめんね」
「どうしてロイが謝るの?」
「ボクも共犯者だから」
語尾にハートをつけたロイの顔が近づいてくる。
どういう意味か理解したかったのに、アヤは触れるだけのキスをして口角をあげた悪戯な笑みに顔を赤くして黙ることしかできなかった。
「~~~っ、ここ、会社」
「知ってる」
エレベーターが到着を知らせて、ロイが早く出るように促してくる。
本当についてくるつもりなのだと、アヤはランディがいるとされる部屋まで早歩きで向かうことにした。
顔が熱いのは夏のせいじゃない。
ロイと一緒に歩いていると自然と視線を集めてしまうのだから、アヤは密室のキスを悟られないため、いや、平常心を取り戻すため、歩幅を稼ぐことで誤魔化していた。
「すみません、ランディさんいますか?」
開いていたドアを覗いてみると、ずらりと並んだパソコンの画面がひとり三台。もしくはそれ以上。大小さまざまな液晶を並べて、かたかたとキーボードを叩く音が響いている。
「すごい」
全員、耳にイヤホンをつけて何か喋りながら対応をしている。
余程忙しいのか、アヤは邪魔をしないように人を呼ぶことはあきらめて、自力でランディを探すことにした。
「アヤ、あっち」
ロイの方が早く見つけたらしい。
顔を向けてみると、すでにランディが近くまで来てくれていた。
「アヤ、それとロイも。どうかしたのか?」
「あのね、ランディ。セイラから伝言を預かったの」
「そうか、わざわざ悪いな」
「ううん、いいの。あのね、ありがとうって」
「………それだけ?」
ランディだけじゃなくロイまで不思議そうな顔で見つめてくる。
せっかく収まった顔の熱が、また高まっていく気がした。
「それだけ」と聞かれれば「それだけ」
もっと言えば、内線ひとつで済む話。
みんなが必死に仕事をしているのに「それだけ」を口実に会いに来たなんて怒られるかもしれないと、この時初めてアヤは自分の行動の意味に気づいた。
「あ、えっと、最初は何かのエラーのはなしで、でも途中でなおったって、それでありがとうって伝えてほしいって」
最後の方は蚊の鳴くような声になっていたと思う。
仕事をさぼったわけではないのだと、わかってほしくて、アヤは恐る恐る二人の顔を盗み見た。
「ッ」
心臓に悪い。どうしてそこで愛しそうに笑うのか。その意味は、初日終了後に帰宅したホテルで思い知らされる。
「へえ、そんなことが」
「…ッ…ぁ…アッ」
「ね、めちゃくちゃ可愛かった。はじめてのおつかいって感じで」
「ああ、あの場で抱き締めたかった」
「妬けるね、アヤ。俺には会いに来てくれなかったのに」
「ンッん、ぁ…っ…あ」
ベッドの上にいくのはシャワーを浴びてからじゃないと嫌だと言ったせいで、アヤは立ったままスヲンに背後から犯されていた。
生ぬるい風。いや、外は熱風だろう。照りつける陽射しがコンクリートを鉄板にして、色んなものを焼こうとしている。とはいえ、ここは社内。つまり空調設備の効いたビルの一角。
服は黒のパンツに、ひざ丈まである白のオーバーシャツ。髪はゴムで軽くまとめたローテール。足元は履き慣れた五センチほどのローヒール。
オフィスカジュアルは過ごしやすい。
朝は半分消えた白い月が浮かぶ快晴の空だったと遠い目で思うのは、熱中症や熱射病に注意するよう訴える看板やポスターを横目に出社した日本の会社。
「……うぅ」
筋肉痛がひどい。
帰国後、二日連続はさすがにやりすぎだとアヤは顔を歪める。
ただ不思議なことに、三人とより深い関係になれたという事実からか心がすこぶる軽い気がする。だからどちらかというと、アヤは始終上機嫌で初日を迎えていた。
「…ッ、あ、暑い…」
これは日本の夏にやられる日本人の声。
今いるのは二階の事務室。
日本支社では事務員としてアヤは配属が決まった。
研修前は社内言語が英語だったが、今は日本語でコミュニケーションを重視した組織体制に切り替わっている。若く優秀な人材をかき集めたらしく、二十代から四十前半までの顔ぶれが揃い、社内の空気は活気に満ちていた。
「外すごく暑い、書類届けにいっただけで溶けそう。まじで配属先、営業じゃなくてよかった」
「えー、暑くても生ロイさん私も見たい。めっちゃ綺麗な顔らしいじゃん」
「それは見た、あれはまじで王子」
「王子とか妄想がはかどるんですけど…ッ…あ、電話出ます」
年が近いからか、女子社員は基本的に仲が良い。そしてオシャレ。
ネイル、メイク、パステルカラー。営業部隊はジャケットがいつでも着用出来るように比較的きちっとしているが、事務は基本的に自由で良かった。
キラキラ輝いて見えるその輪に初日から飛び込んでいけるわけもなく、アヤは照りつける日差しから生還した同僚が額に汗を浮かべて喋っているのをどこか他人事のように眺めていた。
『す、すみません。もう一度言っていただけますか、え、あの』
電話に出たばかりの彼女が何やら困惑した様子で喋っている。
電話口は英語なのだろう。視線を泳がせてヘルプを求めているが、面倒な気配を察知したのか誰も目を合わせようとしない。
「代わりましょうか?」
アヤは自分を指さすジェスチャーを交えて問いかけた。
「すみません。すごく早口なので何を言っているのか私には難しくて、代わってもらえますか?」
「はい」
アヤが配属先として決まった事務は、アメリカ本社とのパイプ役としても存在している。国際メールも国際電話も対応できなければならないが、本社がアメリカということもあり、基本的には英語でやり取りされる。
年下の彼女も本来なら問題なく対応できるのかもしれないが、受話器越しにでも響く大きな声は、早口でまくし立てているのだから急ぎの案件かもしれない。
アヤはアメリカでの研修を思い出して、ひとつ息をついた。
『はい、お電話代わりました。アヤ・さ』
「アヤーーーー!!!」
セイラだった。
「ちょっと、ランディいる!?」
「いや、彼の部署はここじゃない」
「困ったときはここにかけろっていう番号にかけてるんだけど?」
「教える番号、間違えたのかな?」
「……なんとなく理解した。まあ、それはいいわ。エラーがどうしても一ヶ所修正出来なくて、そっちでも対応可能な部分だからよろしくって伝えてほしいんだけど」
「どういうエラー?」
「口で言うより画面で見せたい。あいつ、日本に行くなら一言伝えとけって感じじゃない。あ、ごめん。アヤにいう愚痴じゃなかった、今のなし。でも急いでる」
かまえて電話に出たぶん、一気に気が抜けて笑えてくる。
「わかった、ランディに伝えればいいのね」
「そう。もしかしたら、もう……あっ、なおった。アヤ、なおったわ。さすがアヤパワー。あと、持つべきものは出来る上司ね。ありがとうって伝えておいて」
「わかった」
言うだけ言って電話は切れる。
メモをとろうとペンを持った指だけが取り残されて、アヤは息を吐いて受話器をおいた。
「すみません。システム部にいってきます」
一応、聞いてしまった以上、放置も出来ない。
あとのことは同僚に任せて、アヤは席を立つことにした。
「……んー」
廊下に出て、迷う。
就職してから三か月。海外研修の期間がほぼすべてを埋めていたせいで、日本支社に愛着やなじみがない。日本語すら母国語なのに会話についていけてない気がする。ついていけなさすぎて、本当にここは自分の勤めている会社なのだろうかと、朝から居心地の悪さはぬぐえない。
「ていうか、日本ってこんなに窮屈だったっけ?」
言わずと知れた空気感にランチタイムも終了した午後三時半。
アメリカならブレイクタイムと称してコーヒーを一杯飲むところだが、ここではそうもいかない。
新人同然なのだからそれもそうかと、廊下で少しだけ肩の力が抜ける。
「アヤ」
「ロイ!?」
朝別れたぶりの再会に心が踊る。
思わず社内の廊下だということも忘れて、アヤはロイに満面の笑みで駆け寄ってしまった。
「ロイ、どうしたの?」
「んー、気分転換。アヤは?」
「セイラから伝言を預かったからランディのところに行くの」
「セイラ……あー。ランディ、そういうところある」
「え?」
「ううん。面白いからボクも行こっと」
「いいの?」
「いいよ。叔父さんの惚気話を聞かされるより、アヤと一緒にいたいし」
ロイの呟きは小さすぎてうまく聞き取れなかったものの、都合のいい耳は最後の部分だけを聞き逃さない。
「一緒にいたい」その部分だけを反芻して嬉しくなる。
「私もロイと一緒にいたいから嬉しい」
素直にそう告げれば、ロイに優しく微笑まれた。
そうして並んで歩きながらランディのいる場所まで向かう。エレベーターに乗り込んで、ふたつ上の階。降りて、突き当たりの部屋。
「どう、日本は?」
エレベーターの到着を待つあいだ、隣に並んだロイの問いかけにアヤは首をひねる。「んー」と即答できない言葉を探して、結局「なんとか」と曖昧に濁した。
「んー。なんとか馴染もうと努力してるけど、日本には日本のやり方があるから、覚えるのが大変かな」
「システムはランディが統括してるから基本は一緒のはず……ああ、そっちじゃないか。メンバーがごっそり入れ替わったわけじゃないけど、だいぶ風通しがよくなった分、活気に溢れてるからね」
「うん。みんな仲がいいみたい」
「だけどアヤがアメリカに来る前に比べたら過ごしやすくなったんじゃない?」
到着したエレベーターのボタンを押しながらロイが聞いてくる。さりげなくレディファーストだなと、改めてその自然な態度に感嘆しつつ乗り込んだ後、扉が静かに閉まる。
エレベーターにはロイと二人。
「どうかな……私、ここに来て一ヶ月もしないうちに研修に行かされたから」
「ごめんね」
「どうしてロイが謝るの?」
「ボクも共犯者だから」
語尾にハートをつけたロイの顔が近づいてくる。
どういう意味か理解したかったのに、アヤは触れるだけのキスをして口角をあげた悪戯な笑みに顔を赤くして黙ることしかできなかった。
「~~~っ、ここ、会社」
「知ってる」
エレベーターが到着を知らせて、ロイが早く出るように促してくる。
本当についてくるつもりなのだと、アヤはランディがいるとされる部屋まで早歩きで向かうことにした。
顔が熱いのは夏のせいじゃない。
ロイと一緒に歩いていると自然と視線を集めてしまうのだから、アヤは密室のキスを悟られないため、いや、平常心を取り戻すため、歩幅を稼ぐことで誤魔化していた。
「すみません、ランディさんいますか?」
開いていたドアを覗いてみると、ずらりと並んだパソコンの画面がひとり三台。もしくはそれ以上。大小さまざまな液晶を並べて、かたかたとキーボードを叩く音が響いている。
「すごい」
全員、耳にイヤホンをつけて何か喋りながら対応をしている。
余程忙しいのか、アヤは邪魔をしないように人を呼ぶことはあきらめて、自力でランディを探すことにした。
「アヤ、あっち」
ロイの方が早く見つけたらしい。
顔を向けてみると、すでにランディが近くまで来てくれていた。
「アヤ、それとロイも。どうかしたのか?」
「あのね、ランディ。セイラから伝言を預かったの」
「そうか、わざわざ悪いな」
「ううん、いいの。あのね、ありがとうって」
「………それだけ?」
ランディだけじゃなくロイまで不思議そうな顔で見つめてくる。
せっかく収まった顔の熱が、また高まっていく気がした。
「それだけ」と聞かれれば「それだけ」
もっと言えば、内線ひとつで済む話。
みんなが必死に仕事をしているのに「それだけ」を口実に会いに来たなんて怒られるかもしれないと、この時初めてアヤは自分の行動の意味に気づいた。
「あ、えっと、最初は何かのエラーのはなしで、でも途中でなおったって、それでありがとうって伝えてほしいって」
最後の方は蚊の鳴くような声になっていたと思う。
仕事をさぼったわけではないのだと、わかってほしくて、アヤは恐る恐る二人の顔を盗み見た。
「ッ」
心臓に悪い。どうしてそこで愛しそうに笑うのか。その意味は、初日終了後に帰宅したホテルで思い知らされる。
「へえ、そんなことが」
「…ッ…ぁ…アッ」
「ね、めちゃくちゃ可愛かった。はじめてのおつかいって感じで」
「ああ、あの場で抱き締めたかった」
「妬けるね、アヤ。俺には会いに来てくれなかったのに」
「ンッん、ぁ…っ…あ」
ベッドの上にいくのはシャワーを浴びてからじゃないと嫌だと言ったせいで、アヤは立ったままスヲンに背後から犯されていた。
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