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第二章 共通の知人

第十四話 引っ越し

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日曜日。引っ越すにはいい天気で、元々運び出すほどでもない荷物を取りに来た身としては呆気なさすぎるくらい呆気なくまとめ終わった。
備え付けの家具はそのまま。
男子禁制なためロイ達は外で待機してくれている。キャスターと少し大きめのバッグと紙袋。


「これ…っ…見つからないようにしたい」


紙袋には、あの日。三人と初めてエッチしたときの白シャツが入っている。
洗濯済み。別に着ればいいのかもしれないが、袖を通すと鮮明に思い出してしまいそうで躊躇している。ただでさえ「会議室」という言葉や会議室の匂い、後片付けをしているだけであの日のことを思い出してしまうのに、そのきっかけとなる白シャツなんて着たら絶対どうにかなる。
仕事中にも関わらず四六時中、発情メス顔をしてしまうと断言できる。
でもどうしても捨てられなくて、記念にとってしまっているのはどうなんだと理性は言う。


「み、見つかったら、そのときは、そのときよ」


手のひらをパンっと叩いて考えなかったことにしたアヤは、再度荷物を見直してふんっと鼻息を鳴らした。


「一回。では、無理そう」


この荷物の量。二回に分ければなんとかいけるだろう。
それか、ゴミを先に出した方がいいかもしれない。


「ロイたちに聞いてみればいいか」


アヤは紙袋をぶら下げて、彼氏たちの待つ玄関へ向かう。仮にも男子禁制のマンション。いくらマンション前の路上とはいえ、一人でも目立つ三人は車内で待っていてもらうよう伝えてある。
今日はスヲンの車。
玄関扉を抜けた先で待っていた車目掛けて手を振り上げたアヤは、途端、その手を捕まれて悲鳴をあげた。


「まっ、待ってくれ、違うんだ」


アヤを見つけてすぐに車から降りてきた三人に、その見知らぬ人物は取り押さえられた。SP顔負けの早業だが、ここは拳銃の所持が認められる国。神経過敏になるのも無理はない。
まさかとは思うがロイたち拳銃なんて……見なかったことにした。
日本から来た一般人が誘拐されるわけがないから知人の誰かに違いない。突然すぎて驚いただけで、たぶん、きっと、そう。
そんな風に思いながら、アヤはスヲンに車へと誘導される身体をひねって、ランディに取り押さえられたその人を見た。


「ば…っ…バート!?」


しゃがみこんで、今まさにロイが前髪を掴んでいる顔は見覚えがある。
セイラの彼氏。名前をアルバート・コナー。


「えっ、どうしたの。どうしてここに?」

「セイラに会わせてくれ」

「………え?」

「知ってるんだ。どうせここにいるんだろう。連絡もとれないし、家にも帰ってこない。あいつが今、親しくしてる友達と言えばアヤしかいない」


その訴えにランディはロイとスヲンと目配せしてバートを解放した。
バートは怯えた様子でランディ、ロイ、スヲンの順に視線を動かして、最後にアヤの顔をみてホッと息を吐く。ゆっくりと地面から起き上がり「頼む」と懇願の目を浮かべた。


「……えっと…」


ロイが何かバートに小さく囁いているが、もしかしなくても聞こえてしまった「次にアヤに触れたら殺す」という言葉は誰が聞いても冗談に聞こえない。


「バート、話を聞くから少し待っていてくれる?」


いくつか疑問点はあるが、アヤはとりあえず荷物の運び出しを終わらせる方をとった。
マンションの鍵を受け取るために大家が顔を出したことが理由のひとつだが、仮にも二ヶ月近くお世話になった場所。余計な騒動を起こしたくはなかった。


「セイラを逃がすのか!?」

「バート、落ち着いて。私の家にセイラはいないわ」


勘違いをしたのか、興奮したバートが落ち着くには少し時間もかかるだろう。
それにセイラが帰ってこないという事実が本当なら、アヤもゆっくり話を聞きたいと思った。


「アヤ。すべきことを先に済ませよう」

「……スヲン」

「大丈夫。別にアヤに危害を加えないなら、俺たちもあいつに何もしない」


そうは言っても、ランディに肩を掴まれたバートは少し顔を青ざめさせているように見えるし、今度はロイが何を囁いたかは聞こえなかったけど、バートは慌てて首を横に振って祈るようなポーズをしている。
あ、目があった。
行かないでくれと目が訴えているが、仕方がない。アヤはスヲンの言葉を信じて荷物を取りに戻った。


「さっきはどうもすみませんでした」


丁寧な謝罪にアヤは「ううん」と前置きした上で、「少し驚いたけど大丈夫」と笑ってバートを許す。


「それで、セイラと連絡がとれないって本当?」


ここは近くのカフェの角席。アヤとロイが並ぶ向かいに、スヲン、バート、ランディが座っている。アヤは運ばれてきたスムージーを一口飲んで、バートの話に耳を傾けた。


「先週、喧嘩したんだ。セイラと」


知っている。セイラからもそう聞いた。
あのときはアヤ自身も事情が色々立て込んでいたせいで、セイラとバートが喧嘩したということしか覚えていない。


「それで、お互いに収拾がつかなくなって、たまには料理でもして仲直りできたらいいなと思ったんだ」


それも知っている。バートが良かれと思ってやったことが裏目に出て、結果、セイラは爆発した。だから火曜日に誘われて、一緒に遊びにいってしまった。おかげでひどい目にあったのは、自業自得なので何も言えない。だけど、ロイたちに回想を与えたくもない。
アヤは刺激しないようにスムージーを飲むことで空気の中和を測っていた。


「アヤと遊びに行くと連絡が入って、それからセイラと連絡がつかない」

「……え?」


スムージーから顔をあげたアヤの声だけが驚いたように響く。


「火曜日から?」

「そう」

「え、そんなに?」

「職場には行ってるみたいだけど帰ってこない。だからアヤのところにいると思って……セイラの親しい友人で、何日も寝泊まりさせてくれる安全な場所は他に思い浮かばない」


落ち込んだバートの顔に胸が痛くなる。
セイラとバートは十年近くも付き合っている気心しれた仲で、飲みにいった帰りは毎回送ってくれた。何時でもセイラが呼び出せば快く応じ、アヤを送ることになってもバートは文句を言わない。セイラも口ではバートのことを悪く言っても、本当はバートのことが好きだということは、いちいち聞かなくてもわかっていた。
「男漁り」てきな言い方で遊びに誘われた時も本心じゃないと思っていた。そうじゃなければアヤもセイラに付き合って夜遊びなんてしない。
でも本当は自分が気付いていなかっただけで、あのときそう見えなかっただけで、バートから本気で乗り換えようとセイラは思っていたのだろうか。


「あの日以来、私もセイラに会ってないの」


セイラとはもともとブレイクタイムに顔を合わせて喋る関係で、日常的にわざわざ連絡を取り合ったりしない。それがちょうどいい距離感というのもあって、それ以上の関係をお互いに望んだりもしなかった。
バートの質問に返せるだけの情報を持っていないことが、なぜだか急に悲しくなる。


「職場に来てるってことは、元気、なの?」


ちらっと、ランディの方を見る。同じ部署ならセイラの様子を知るにはランディが一番把握できているだろう。その予想通り、ランディは「ああ」と前半部分に対して頷いたうえで、後半部分には首を傾げた。


「覇気が減って、単純なミスが増えた」


それだけでは、いまいちわからない。アヤも生理の日は頭がうまく回らなかったりするし、女性の身体事情も考慮にいれると単純に判断はしきれない。
覇気がないセイラは想像つかないが、単純なミスなんて誰にでもありうる話。


「どれだけ喧嘩しても、仲直りしてうまくやってこれた。話し合いにも応じてくれないなんて…っ…週末には帰ってくると思ったのに……アヤのところにもいないとなると、あいつは普段どこから職場に通ってたんだ?」


バートの力になってあげたくても現状手立てが何もない。
独り言に近い質問に答えられる要素もなく、アヤは困ったように息を吐いた。後頭部の髪を撫でて遊んでいたロイの指が腰を抱きながら距離を縮めてくるが、その横顔が何を考えているのかいまいちわかりにくい。


「プライベートで最後にセイラと会ったのはアヤなんだろうけど、セイラと別れる前に何か変わったことはなかった?」

「……変わったこと?」


まさかロイから質問されるとは思わずに、アヤはロイをじっと見つめる。
落ちた前髪をロイが耳にかけてくれる行為をただ呆然と見つめて、その問いを頭の中で反芻させる。セイラと最後に別れたとき。
あのいかがわしい店の中が最後だが、その店内で何かあったようには思えない。
店内でセイラがしていたことといえば、アヤが知る限りではたったひとつ。


「変わったことはなかったけど、店内で別れる前に一緒に飲もうって誘われたって言ってた」

「誰に?」

「えっと……エドガー、だったような…」


エドガーに誘われたセイラが、仮にバートと別れて付き合うことになっても、それはそれでいいのかもしれない。エドガーがバートよりもセイラに相応しければ。
考えていると、意外にもスヲンから助け舟を出される。


「エドガーという人物には心当たりがある」

「本当か、どこだ、教えてくれ。セイラがいるならそこに行ってみる」

「教えてもいいが、例えば本人が望んでそこにいるとして、踏み込むことで余計に戻る可能性がない場合もある」


それもそうだ。恋愛は当人同士以外で解決は出来ない。第三者は部外者でしかなく、きっかけを作れても、最終的にはセイラとバートの問題。
仲直りも別離も決めるのはセイラとバート。


「明日。私からセイラに話を聞いてみようか?」


口にしてからしまったと思った。それでも一度吐いた言葉はなかったことにはならない。
バートは顔を輝かせてからうなずいて、どんな結果でも教えてくれと席を立って帰っていった。

* * * * * *

その後、スヲンの車で帰宅して、少ない荷物を部屋に運び込み、ようやくホッと一息ついたところでアヤはロイに後ろから抱き寄せられてソファーに腰を下ろした。
ロイの足に乗る形で収まった体は、ロイを背もたれにして少しだけ緊張する。


「ロイ、あの重いんじゃな…っ…」

「全然。もっとリラックスして全身を預けてほしいくらい」

「……そうは言っても」

「ボクの機嫌を直したいでしょ?」

「……ぅ」


たしかに、それを理由にあげられると断れない。どことなく全員の機嫌が良くなさそうなことは察していた。案の定、視界に入る顔たちが不満足そうに歪んでいる。


「アヤのお節介。他人の恋愛事情に首はツッコむもんじゃないよ」


ぐりぐりと後ろからぬいぐるみに顔を押し付ける仕草でロイの額が右肩付近に圧力をかけてくる。痛くはないが、アヤは苦笑の息を吐いて金色に揺れる髪を右手でそっと撫でた。


「そういえば、スヲン。エドガーっていう人に心当たりがあるって」

「アヤ」

「……な、なに?」

「今日はもう、その口から俺たち以外の男の名前を聞きたくない」


近付いてきたスヲンの顔が唇に触れて離れていく。


「アヤ、明日はうちのフロアに来い」

「…んッ…ランディの?」


スヲンがそのまま右側に座ると同時に左側に座ってきたランディにも唇を奪われる。ロイはまだ右肩の首筋付近に額を押し付けていたが、おかげで顔が左右どちらにも動かせずにされるがままアヤはそのキスを受け入れていた。


「ふやぁ…ッ…ロイ!?」


抱きしめる手で無遠慮に胸を下から持ち上げたのはロイ以外にいない。持ち上げるほど大きな胸でもないが、下から包み込むロイの手がそういう形なのだから、せめてそう表現しておきたい。


「ねぇ、アヤ?」


どこからその声が出てくるのか。背中にあたるロイの吐息が熱くて、アヤはギュッと目を閉じて鼻から静かに息を吐いた。


「てっきり処分したと思ってたのに、あのシャツ、大事に持ってたんだね」

「ッ!?」

「ボクたちとの初めてを想像して着ることも、捨てることも出来なかった?」

「……っ、あれは…そのッ」

「どうして乳首立ってるの?」

「それは…ッ、ロイが触るから」

「さわられたら感じちゃうの?」

「んっ…ぁ…ちょ、だめっ…すとっ、ぷ」


ブラジャーの存在を無視しすぎている。見た目にも主張する乳首を引っ張るロイの指は、器用にブラジャーを服の上から左右に押し広げ、おっぱいの肉を中央に寄せている。おかげでサマーニットのような薄い生地に異様に浮き出たそれは、ボタンに似た盛り上がりを見せていた。


「ぁ、ンッ…ん」


親指の腹で乳首の表面を撫でられると、歯がむずむずして舌が唾液を溢れさせる。ロイの手首をつかんで止めさせようとしているのに、こういうときに限って優しさをどこに置いてきたのか、びくともせずに服の上から乳首を撫でられ続ける。


「ロイ…そ、ァッ…らんでぃ…~~ふっ」


静かに寄せられた顔に舌を吸い上げられる。口内にランディの太い指が入ってきて、上あごの裏や歯の表面、喉のほうから唾液をかき集めるように引っ掻かれる。ぞわぞわと這い上がる微弱な感覚がもどかしいのに、閉じることが出来なくなった口から声が自然に零れていく。


「~~っ、んッ…ンァ…にゃ」

「猫みたいだな」

「…ぁ、にゃ…ッ…ん」


勝手に零れる声が猫の発する鳴き声になるのが、どうにもランディのお気に召したらしい。くちゅくちゅと溢れる唾液を舌と指でかき混ぜながら、アヤの声を引き出そうと、もう片方の手で後頭部ごと自分の方へと引き寄せていた。


「ふっ、にゃ」


ロイがソファーに背を預ける形に体勢を変えたことで、アヤもランディと共に後方に倒れ込む。代わりに、ロイの足に連動して開いた足の間にスヲンが滑り込んでいた。


「もう血はほとんど出てないけど、中はまだ……無理そうだな」

「まだ無理か。仕方ない……ね、アヤ」

「…ッ…ぅ、ャぁ…ンッん」

「ほらほら、気持ちよくなることから逃げちゃダメでしょ」


キスに専念するランディの代わりにロイが右耳に囁きかけてくる。与えられる快楽から抜け出そうと奮闘するもむなしく、アヤは薄れていく理性の砦をロイの手首を握りしめることで表現していた。
許容範囲を簡単に超えようとしてくる刺激に力が抜けていく。
スヲンが何かゼリー状の液体を指に塗って、ショーツの上から手を滑り込ませ、クリトリスを優しく撫でてくる。


「気持ちいいね、アヤ。乳首もどんどん硬くなってる。ほら、わかる?」


実況中継役はロイが担当なのだろう。逃げられない身体で息を切らせて、足の爪先をぴくぴくと踊らせるアヤの思考を煽ってくる。


「力抜いて、もっと感じて」

「…ンッにゃ…ぁ…あ…」

「そう、上手だよ。アヤ、怖くないから、大丈夫」

「ぁ…はぁ…ッンぅ…はぁ…ッ」


スヲンが手の甲を恥丘にあてる形で中指と薬指の間の陰核の皮を押し上げる。
瞬間、ピクリと全身に力を込めたアヤをなだめるロイの声とランディのキス。スヲンの指がまた何かゼリー状の液体をまとって、剥けたばかりのクリトリスの表面を適度にいじりはじめた。


「にャッ…ンッ…ぁ…アッぁ」


アヤはまた快楽の海に沈んでいく。
焼けるほど熱い感覚が込み上げてきて、逃げ出したくなってくる。ロイの手首に置いた手が磁石で引っ付いたみたいに離れようとしないが、ロイは気にもせずに始終乳首を好きに触っている。


「…ぁ…ァッ…~~ひっ、ゥ」


たくし上げられたニットのせいで、中途半端にずり下がったブラジャーから零れた胸が丸見えになる。スヲンがアヤに手首を捕まれているロイのためにそうしたのか、べとべとした液体がロイの指にもまとわりつき、指で舐められるみたいに乳首への愛撫が加速していた。


「やッ…な、ぁ…へん…ァッ、ぁ」

「変じゃないよ、アヤ。気持ちいい、でしょ?」

「くっ、ぁ…気持ちいィっ、ァッ…ぁ」


視界と口をランディに犯され、聴覚と身体の支配をロイに、刺激をスヲンから同時進行で与えられて、何もなく終われるはずがない。


「アヤ、腰が動いてる」


暇を持て余したスヲンの左手が昨晩、ロイがトントン叩いていた箇所に乗せられる。
おへその下。少し重圧を加えられて自然と動いていた腰が強制的に止められて、手のひら全体で何かを探るように押さえてくる。


「はぁ…ッぁ…はぁ…んにゃぁ」

「アヤ、もっと鳴け」

「ッくぅ…ぁ…クッぃ、イクッ…ァッぁあぁ」


絶頂の波があっという間に押し寄せて、ロイの上でのけぞるアヤにランディの低音が声を促す。すべてが彼らの腕の中に収まって、逃げることも隠れることも出来ないまま、その快楽を味わっていたアヤはまだ醒めない余韻に震えながらぐったりと力を失くしていた。


「あー、早くやりたい」

「ッん…ぁ…ぁ」


腰をつかんできたロイが、自分の膨張した下半身を押し付けるように下から腰を回してくる。ぐりぐりと当たるその大きさに、そういえば久しく入れられていないことを思い出して、アヤはごくりと小さく喉を鳴らした。


「……ぁ、ぅ…」

「あまり煽るな」


なぜかランディに頭の悪い子を見るような目で見つめられる。よしよしと頭を撫でてくれているが、訴えは聞いてもらえそうにない。


「体調が万全じゃないとツラくなるよ。俺たち潰すくらい溜まってるから、今の状態だと何の血かわからなくなると思うし…って、その顔はどっちかな、アヤ。冗談だけど。アヤの身体を大事にしたい俺たちの気持ちもわかってほしい」


スヲンにまでなだめられると、自分がワガママを言っているみたいで腑に落ちない。じっと二人を見つめていたが、いい加減身体を起こそうとしたところで、アヤは身体を起こしたロイにつられて折れ曲がった。


「十代の盛りだと絶対ヤってる。こんな可愛いアヤを間近で感じて、理性保ってるの。めちゃくちゃ自分を褒めたい」


やはりぬいぐるみか何かと勘違いしているに違いない。後ろから抱きしめてぐりぐりと額を押し付けてくるロイの行動に、いちいち動揺させられる。


「アヤ、ご褒美にキスして」

「ぅ、わっ」


軽々と腰を起点に回転させられて、お姫様だっこの形でロイの上におさまっていた。
キスをねだる顔も綺麗で羨ましいが、アヤは吸い寄せられるようにその唇に自分の唇をそっと重ねる。


「ありがとう、可愛い子猫ちゃん」


ロイのお礼に顔を赤く染めるしかない。
アダ名が「子猫」になった由来は、出来ることなら誰にも聞かれたくないと思った。


「子猫ちゃん、お風呂入っておいで」

「……ぅ、うん」

「ゆっくりでいいからね」


額にキスをされて見送られる。
そして、脱衣所の鏡に映る自分の乱れ具合にアヤが息を飲んだのはすぐだった。


「乳首、まだ立ってる」


ここ二~三日、執拗に乳首だけを責められて少し触れるだけでも子宮が疼くようになってしまった。服の上から優しく擦られるのも、直接しごかれたり、摘まんだりされるのも、なぜか全部気持ちいい。
少し前まで、ちょっと敏感な皮膚くらいの感覚だったのに、いつのまにか性感帯と呼べるポイントに変わっている。


「私って変態なのかな?」


鏡の中の自分が、サマーニットの乳首ボタンを確認するように服を引っ張る。


「……っ、ん」


少し擦れたくらいで感じるなんてどうかしている。どうやら就寝中も全員から乳首への愛撫をされているようだが、いつの日か、軽く撫でられただけでイッてしまいそうな自分が想像できてイヤになる。
そうならないためにも、逃げられるときは逃げたいのに、今日も無事にヤられてしまった。


「大丈夫かな?」


引っ越してきたのは早計だったかもしれない。
それでもアヤは彼らと暮らしていく新生活の楽しみには抗えないことも知っていた。


「……っ、うわ」


ショーツの中にしいた生理用のナプキンに血はついていない。その代わり、透明の液体が糸を引いて垂れさがっていく。何を塗られたのかはおおよそ予想がついていたが、その正体はローションだけではないだろう。
明日には生理も終わる。そうすれば、存分にかき乱してくれるかもしれないと思うとまた垂れさがる糸の量が増えた気がした。
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