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第一章 異世界のような現実

第五話 魅力的な提案

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「あ、その顔。信じてないな」

「しっ信じるも、なにも…っ、その…なんで私なんか」

「私なんかっていうのは好きじゃないな。アヤが自分をどう思っているか知らないけど、ボクがアヤを好きだってことは事実なんだから。ボクにとって特別なんだって自覚したのは、まああの日なんだけど。あんなことしちゃった手前、恥ずかしくて、顔合わせらんなくて、今日休んじゃった」


困ったように眉を寄せて微笑むロイの瞳に吸い込まれる。
美形がいうと、なんでもドラマに出てくるようなセリフみたいに聞こえるが、その雰囲気はからかいを持っていない。だから余計に、何て答えればいいのかわからない。


「いや、そもそもお前が勘違いしたからだろ」


ランディの横やりにアヤはロイの腕の中から視線を動かす。
向かって左にランディ。右にスヲンがそれぞれ一人がけのソファーでくつろいでいるが、うんうんとうなずくスヲンもいるので、ランディがロイに非難を向けているのは確かなようだった。


「仕方ないでしょ。ボクのなかで、黒髪の日本人っていったらアヤしかいなかったんだから」

「ロイが帰国する人間を間違えてな」

「どうせ帰国してしまうなら、最後の思い出作りをしておこうって。ね、ロイ」

「ちょっと、二人も共犯なんだからね。ボクだけ鬼畜みたいな感じに仕上げようとして、自分たちだけ株上げるとかナシだから」

「……何の話をしているんですか?」

「わからないか?」


ロイと逆側。つまりアヤの左側にランディが移動してくる。
柔らかなソファーが少し沈んで、圧迫感が増した。


「アヤが好きだ。突然こんなことを言われて困るだろうが、大切にする。付き合ってほしい」

「……ランディ」

「俺もロイやランディと同じく、どうやらアヤを好きになってしまったらしい」

「……スヲン」

「時間をかけようと思っていたけど、譲れなかった」


左耳に直接吹き込まれるような低音は、三日もたてばさらに身体をうずかせるらしい。その声に赤面しているうちに、一人がけソファーのうえで組んでいた足をほどくスヲンにも熱い瞳を向けられて、アヤはなすすべもなく狼狽えた。


「…………本当に?」


これは一体何の冗談だろう。ロイはもとより、ランディも、スヲンもなぜか「好き」だと言ってきた。好みを選択するときの名詞ではない以上、恋人にしたい相手に伝えるものだということくらいは理解できる。
それでも、理由がわからない。
彼らに好かれる理由。接点といえば、金曜日の性行為ぐらいだが。あれは、状況に流されるだけで終わったような気しかしない。


「彼氏がもういる?」

「ッ、いません」


固まったまま何も答えないアヤにスヲンが問いかけてくる。
もちろん首を横に振って、アヤはそれを否定した。


「だけど…っ…あの、ごめんなさい。私、恋人を作る気はなくて」

「ボクたちじゃ不満?」

「そういう、わけでは…むしろ、その…恐れ多いというか…それに誰か一人選ぶなんて、私には出来そうもなくて」

「だったら全員と付き合えばいいんじゃない?」

「…………え?」


会話が成り立たないのは、どうやら自分の英語力のせいではないとアヤは思う。腰を引き寄せて覗き込むようなロイの瞳は、獲物をみる狩人といっても過言ではない。
逃がすつもりはない。
表現されていない言葉が、その背後に含まれている気がして喉が渇きを訴える。


「いやいやいや、それは……え、どういうこと?」


少し理解する時間が欲しい。
それなのに、この空気はなんだろう。


「混乱してる顔も可愛いね、アヤ」


右耳を甘噛みをしそうなロイの動きに、アヤは身をよじって頭を悩ませる。
それでも片側にはランディがいる。二人のあいだで自由に身体を動かせるほど、アヤの力は大きくない。


「ボクたち全員と付き合えばいいって、そう言ったんだよ。アヤが誰か一人を選ぶのであれば、それでいいかって最初はそう思ってたんだけどさ。ランディもスヲンも全然ボクに譲る気ないし、一日ずつ交代って言うのはボクが耐えられない。アヤと四六時中いたいから、三人で話し合って、三人でアヤを愛していくことを決めたんだ」

「大体、選ばれるのが自分って前提で提案する奴があるか。なあ、アヤ。ロイはああ言ってるが、俺だけを選んでもいいんだぜ」

「……ッ」

「ねぇ、アヤ。もう一度聞くけど、どうして来たの?」


醒めたと思った酔いが戻ってくる。頭がグルグルと混乱して、鼓動だけが早まっていく。
ランディが耳にかけてくれた髪はそのまま大きな手ですくわれて、形のいい唇でキスをされる。その仕草を追っていた首筋に、今度はロイの鼻がこすりつけられる。
匂いは、かがないでほしい。


「セックス目的?」

「ちっ、ちがいます」

「それなら、アヤ。きちんとした理由を説明をしてくれ」


スヲンの声は、どんなときでも理性を刺激するのだろう。
翻弄されていた感覚に鋭いメスを入れるような声が、アヤに拒否権をなくさせる。まるで身体の中心にある鎖を持ち上げられるように、スヲンの声には逆らえない。


「ただ、会いたくて」

「どうして?」

「今日、会えなかったから」

「誰と?」

「誰って…ッ…みんな」

「俺たち全員に会いたかったんだ」

「………はい」

「そうしたら、とりあえず付き合ってみない?」

「……え?」

「俺たち三人と付き合ってみてから、答えを出せばいい」


スヲンの提案は本音でいえば、かなり魅力的に聞こえた。それでもすぐに首を縦に動かせないのは、世間体や倫理観の足枷だろう。こんなこと許されるはずがない。
わかっていても、アヤは近付いてくるロイのキスを拒むことはできなかった。


「…っ…ンッ……ぁ」


顎に添えて上を向かせてきたロイの指が、首筋を通って鎖骨を滑る。落ち着かせるように二~三度肩から腕を撫でられて、アヤは身体の力を抜いた。


「ンッ…ぅ…ふ、ぁ」


両手で頬を包み込んできたロイのキスが深くかわる。ぐちゅぐちゅと口内で唾液が混ざる音が聞こえて、飲み込みきれないそれがロイの指先でぬぐわれる。
その間に、ランディがブラウスのうえから胸を揉んでくるのがわかった。
大きな手のひらでまさぐられると、本当に貧相な体としか思えない。彼らはこんな身体で満足するのだろうか。出るところも出ていないどころか、出なくていいところが目立つような体型なのに。


「アヤ、手どけろ」


ランディの手のひらに自分の手を重ねていたアヤは、低く囁かれてそれに従う。
聞こえないはずのボタンをはずす音が布の擦れを意識させて、ゆっくりと腕を抜かれた後、白いブラウスはどこか遠くへ飛んでいった。


「ぁ……っ…ンッ」


キャミソールを着ていてよかった。そう思ったのもつかの間、わき腹からたくし上げられてキャミソールもどこかへ飛んでいった。残るはブラジャーだけだがホックを外せば済むはずが、なぜかランディはその上から胸を揉む。
ロイのキスとランディの愛撫にもどかしさが拍車をかけてくる。
不自然な体勢からもじもじと足を動かし始めたアヤの動きに、ランディの手がブラジャーから胸を零れさせた。


「相変わらずちょうどいい」

「ひっ…ぅ…ンッぁ」

「触り心地も感度も……なあ、アヤ。乳首これだけ立たせてるなら、下ももう濡らしてるのか?」


合図のようにランディにギュッと先端を摘ままれて、アヤの息がロイの唇の中で止まる。
それでもロイがキスをやめないのをいいことに、ランディはストッキングをはいた足の上をなぞってタイトスカートの裾をたくしあげていた。


「やっ…ぁ…ッ~~んッ、ろ、ぃ」


ランディの手を止めようとした手が簡単にロイに捕まり、両手首合わせてソファーの背もたれに縫い留められる。それも左片手のくせにびくともしない。上半身を横から重ねてキスをしながら、手首を掴む左手とは逆の手であらわになった胸を揉み始める。
顔が美形で線が細く見えても、やはり男の人なんだと思わざるを得ない。
日本人的には一般的な胸の大きさも、こっちにくれば小さく見える。彼の指の間に挟まれた乳首が主張する胸も泣きたくなるほど可愛い形をしていた。


「~~~っ、ぁ」


キスをやめたロイの柔らかな髪が胸の先端に埋まっていく。
熱い舌でちろちろと舐められた乳首が、次の瞬間にはパクっと咥えられ、ロイの口内でその突起物はもてあそばれていた。


「……ふぁ…待っ、ヤッ」


閉じていた足からいつの間にスカートは取り払われたのか、ストッキングとショーツだけになった下半身がランディに大きく開かれる。足首をもつランディにヒザを折り曲げられ、M字開脚で固定された股の間は、もしかしなくても先ほどランディが言った通りだろう。


「アヤ、ストッキングまで濡れてるよ」


笑みを浮かべながらスヲンが左側に座る。
覗き込んだ後、一度キスをして頬を撫でる。唯一自由に動く視線でスヲンの瞳をそらさずにいると、びりっと大きな音をたててストッキングが破かれた。


「ほんっと、エロすぎだろ」


ストッキングを破ったランディが、ショーツを割れ目に沿って引っ張り上げてくる。未処理の毛がはみ出ているが、大事な部分が濡れた布に浮き出てランディの視界を悦ばせているようだった。
足はストッキングを破るときにロイとスヲンに託したらしい。
こんなところで阿吽の呼吸というべきか。自由になるスキが微塵もない連携プレーに、アヤは羞恥の赤に染まることしかできなかった。


「腰が浮いてるね、アヤ。触ってほしい?」


乳首を舐めることをやめたロイが、下に向けていた視線を変えて意地悪く確かめてくる。
ランディはショーツに広がった証拠を指で押しのけて、濡れた性器を外気にさらした。


「アヤ。ロイの質問には、イエスかノーで答えないといけないよ」


耳にささやくのは悪魔に違いない。


「してほしいことは、きちんとこの口で言わなきゃいけない。大丈夫、怖いことは何もない。ただ、気持ちよくなるだけ」

「そうだよ、アヤ。ほら、乳首もこうやって触られてキモチイイって感じてる。あそこにもボクたちのを突っ込んで、ぐちゃぐちゃにしてもいいでしょ?」

「っ……ァ…~~~ッ」

「アヤ、ロイの質問には?」

「……ッは、ぃ」


三匹の獣に身を捧げることを承諾した娘が、どうなるかなんてわかりきった話。ランディの中指が濡れた花弁を押しのけて、膣の入り口から侵入してくる。内壁を探るようにグルグルと腕を動かしているが、そのもどかしさに腰が浮いてしまう。
気持ちよくなりたい。
それを与えてくれることを教えられている。あれから三日目の夜。どこかでこうなることを待っていたかのように、身体が喜ぶように震えている。


「クリトリスも勃起してる。そんなに待ち遠しかった?」

「ひゥっ…ッぁ…スヲン、そ…ぁ」

「ロイがそっちしてるから、俺はこっちを舐めてあげよう」

「ンッ…~~ぁ、アァ」


与えられる快感の強さに身体が委縮してしまう。
開かれて行く恐怖ともいえるかもしれない。それを察したようにロイが再びキスを落として、なだめるように唇を舐めた。


「アヤ、可愛い……ねぇ、もっと気持ちよくなって」


唇だけをぺろぺろと舐められると力が抜けていく。そうじゃなくても、もう限界は近いのに。両手首を固定され、身動きが取れないようにしている張本人のくせに、この甘い声と瞳に見つめられると全部どうでもよくなってくる。


「ァ…め…ィく…ッ…いっちゃ、ぅ」

「うん、いいよ。アヤ」

「やっぁ、あ…ッ…いくぃっちゃぁァアァぁ」


たぶん、人生で一番大きな声が出た。
動けない身体に与えられる絶頂がこんなにも威力があると思わずに、アヤは触れるだけのロイの唇めがけて叫んでいた。跳ねた体も、支えがなければソファーからずり落ちていただろう。それほど気持ちよかった。
はぁはぁと呼吸の整わない胸の上下を見ていればよくわかる。
それなのに、何を思ったのか。スヲンが舐めていたクリトリスから顔を上げたその場所にランディが身体を割り込ませ、指の数を増やして内部を摩擦してくる。


「イヤッ…っ…ぁ、ァア…だめ」


ランディの指が二本から三本に増えて、なぜか一か所に指先が引っかかるような形で刺激を強めてくる。それ以上、続けられるわけにはいかない。
尿意とは違う。奥のほうから溢れてくる新しい快楽をアヤは放出しながら叫び続けていた。


「アヤ」


ランディの腕を濡らすほど飛沫する水の音に、ロイの唇に甘える自分の声の中を通る声はひとつしか知らない。


「……スヲ、ン」

「舐めて」


この状況でソファーに背を預けたスヲンの動きに、アヤはようやく手首を解放されてランディの指を埋めたまま、身体の向きを変えられる。


「ぁ…ッぁ…らんでぃ」

「ダメだ、このまま」

「……ふぁ…ッ」


ソファーの下にずり落ちた先の床に膝をつき、四つん這いの形で顔だけをスヲンの足の間に持っていく。高く突き上げたお尻にはランディの指が埋まったままだったが、一度だけ破れたストッキングと濡れたショーツを脱がすために引き抜かれた。
とはいえ、ぬるぬるとした乾ききらない蜜は再びランディの指を容易に埋めさせる。


「もうこれもいらないから、外そう」


スヲンにブラジャーのホックをはずされて、下を向いた胸に合わせて床に落ちる。


「ほら、脱いだものはロイに任せて。アヤが意識向けるのは俺のほう」

「……っ…はい」


眼前でそそり立つスヲンのモノは、きめ細やかな肌に不釣り合いな血筋を浮かせて傘を広げている。ムダ毛なんて言葉とは無縁の肌に、触れた皮膚が吸い付いて気持ちよくなる。
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