22 / 36
第22話★危ないところでしたわ
しおりを挟む
大木に正面衝突した魔導車は、中に乗せたエリーたち一行に、相当の衝撃を与えて止まっていた。原因は恐らく、運転手の前方不注意による事故だろう。何もない一本道で、魔獣でも飛び出してきたか。とはいえ、濃霧の向こうにその気配はない。
「エリーたん、無事か!?」
「ええ、お父さまは?」
衝撃に耐えた父娘は無傷を確認しあって、ホッと息をつく。それから顔をあげて、奇跡的な状況だと改めて胸を撫で下ろした。無傷にしては大木の損傷が酷すぎる。きつく抱き締められていたエリーは父親の腕の中から、無傷だったのはロタリオの魔法によるものだと悟る。現に、ロタリオは車内を重力操作し、周囲の空間を緩衝材のように和らげていた。
「ロタリオ」
エリーの声は、憔悴して膝をついた少年の名を呼ぶ。シシ爺が咄嗟にロタリオを支えたが、本人の許容量を超えた魔力の消耗によるものなことは、明白な事実で、綺麗な顔が苦しそうに息を繰り返しているのを知る。
「シシ爺、ロタリオはどうしたんですの」
「お嬢様、少しお待ちを。ロタリオは優秀でも、まだ子ども、ややっ、腕輪はどうした?」
「私が外したわ」
「なんと、どうりで」
ふむふむと頷くシシジに、エリーと同じくヒューゴも隣からロタリオを覗き込む。風邪の症状に似た苦悶を浮かべているところをみる限りでは、これは想像以上によくないことをしたのかもしれない。
「腕輪がないから魔力コントロールが出来ずに、耐久力以上の魔力を消費したんでしょう。安静にしていればすぐによくなりますゆえ」
「そうなの?」
「ええ、ロタリオは魔力量が常人よりも遥かに多いのです。腕輪は枷でもありますが、守りでもある。これほどの魔力を扱うには根気も体力もいるので、心身の消耗を和らげるためにも腕輪は身に付けておくものなのです。とはいえ、一度外れた枷。魔力が暴発せぬよう、見張りましょう」
ロタリオの腕輪は研究所に放置されている。壊れた扉の部屋に置き去りにしてきたので、今もまだそこにあるに違いない。エリーは珍しく罰の悪そうな顔をしてロタリオを見つめていたが、ヒューゴに頭を撫でられて、お得意の「私は悪くない」モードに突入しようとしていた。が、思い返せば、いまはそういう状況ではない。
ここは濃霧渦巻く魔素溜まりの道。事故が起きたというのに静寂であることが異常で異質なことに、そろそろ全員が気付き始めていた。
「お、お父さま。あそこ、子どもが寝てますわ」
窓にへばりついて外を見て叫ぶエリーに、車内の意識もそこへ向く。気絶した運転手に聞ければいいが、恐らく、事故となった要因はエリーの証言通り、地面に寝そべる一人の少年のせいだろう。
ただ、眠っているだけとは思えない。
大人たちは等しく、名前も知らない少年の生死だけを考えていた。
「ああ、お嬢様。お待ち下さい」
大人たちが考える間に、魔導車から飛び出したエリーがひとり少年のもとへ駆け寄っていく。濃霧の中を小さな姿だけが遠ざかっていくが、もちろん、レリアもヒューゴもセバスも魔導車から飛び出て、エリーの後を追いかけた。
「あなた、そんなところで寝てたら邪魔ですわよ」
「……っ…ぅ」
「あなたのせいで事故に合いましたわ。どう責任を取るつもりですの」
うつ伏せで顔を歪ませる少年は傷だらけで、苦しそうで、動けそうにない。身なりは奴隷か、捨て子か、簡素な服は汚れてボロボロで、着古したもの。髪色は真っ白で、肌は少し浅黒く、全体的に薄汚れて見えた。
明らかに負傷した少年の前で立ち止まった仁王立ちのエリーを脇へ寄せて、セバスが少年の脈をとる。
「どうだ、セバス」
「旦那様。魔素汚染が全身に広がっています。病院へ急いだほうがよろしいかと」
事故による怪我ではないらしい。セバスの見解では魔獣にやられたのか。魔導車で跳ねればもっとヒドイはずだと納得する一方で、日常的に殴られているような痕が見えなくもない。さらに魔獣にでも襲われたのか。切り傷や擦り傷が至るところに散布していた。
「彼に手当てを。すぐに出発する」
「かしこまりました」
ヒューゴの命で、セバスが取り出したのは治療用のパク。エリーがあまりに怪我をするようになったので、日常的に持つようになった最高級品。
「魔導車は動きそうか?」
「恐らくは大丈夫でしょう。運転手を起こして病院へ急ぎましょう」
「そうだな。彼も車へ」
「イヤですわ。そんな素性の知れない」
「エリーたん」
「だって、お父さま」
潔癖傾向のあるエリーの言いたいことはわかる。仮にも悪役令嬢として育つ予定の人間。身分主義な部分があるのだろう。
レリアが少年を抱え、セバスが車を整える間、ヒューゴの隣で不機嫌な瞳を揺らしていた。
「お父さま、どこの誰かもわからない人を簡単に車に乗せるのはイヤですわ」
「こちらが跳ねていない保証はないよ。それに彼には恩を売っておいた方がいい」
「でも、でも、あれが演技で、また、お父さまが襲われたりしたら。イヤですわ。怖いですわ。実際に、事故に遭いましたのよ。ロタリオがいなければ、今度こそ死んで……っ、ぅ」
言いながら悲しくなってきたのだろう。黒い瞳に涙を浮かべて、それでも人前で泣かないようにドレスを握りしめている。
「うわぁぁあ、エリーたん。オレの身を案じてくれていたんだね。愛しすぎる。なんて優しいんだぁあぁあぁぁあ」
「……っ、ぐ」
「推しが天使過ぎて尊いが過ぎるぅうぅ。あのエリーたんが、オレの、あぁぁあ」
「………旦那様」
「聞いてくれ、セバス。エリーたんが、オレの心配をしてくれたぞ」
「………旦那様」
「今のエリーたんの映像をリックが撮ってるかもしれない。あいつ、まじで変態だからな」
「旦那様。それは、結構ですが。抱きしめて気絶させたお嬢様もろとも、早く車に乗ってください」
「ああぁあ、エリーたん」
執事が深い息を落とすのも無理はない。視界が悪い濃霧のなか、そこだけお花が飛んでいる錯覚すら得そうになる。そうして一同は気絶した子ども三人と運転手をつれて、リリアンとカールが収容されている病院へと向かった。
「エリーたん、無事か!?」
「ええ、お父さまは?」
衝撃に耐えた父娘は無傷を確認しあって、ホッと息をつく。それから顔をあげて、奇跡的な状況だと改めて胸を撫で下ろした。無傷にしては大木の損傷が酷すぎる。きつく抱き締められていたエリーは父親の腕の中から、無傷だったのはロタリオの魔法によるものだと悟る。現に、ロタリオは車内を重力操作し、周囲の空間を緩衝材のように和らげていた。
「ロタリオ」
エリーの声は、憔悴して膝をついた少年の名を呼ぶ。シシ爺が咄嗟にロタリオを支えたが、本人の許容量を超えた魔力の消耗によるものなことは、明白な事実で、綺麗な顔が苦しそうに息を繰り返しているのを知る。
「シシ爺、ロタリオはどうしたんですの」
「お嬢様、少しお待ちを。ロタリオは優秀でも、まだ子ども、ややっ、腕輪はどうした?」
「私が外したわ」
「なんと、どうりで」
ふむふむと頷くシシジに、エリーと同じくヒューゴも隣からロタリオを覗き込む。風邪の症状に似た苦悶を浮かべているところをみる限りでは、これは想像以上によくないことをしたのかもしれない。
「腕輪がないから魔力コントロールが出来ずに、耐久力以上の魔力を消費したんでしょう。安静にしていればすぐによくなりますゆえ」
「そうなの?」
「ええ、ロタリオは魔力量が常人よりも遥かに多いのです。腕輪は枷でもありますが、守りでもある。これほどの魔力を扱うには根気も体力もいるので、心身の消耗を和らげるためにも腕輪は身に付けておくものなのです。とはいえ、一度外れた枷。魔力が暴発せぬよう、見張りましょう」
ロタリオの腕輪は研究所に放置されている。壊れた扉の部屋に置き去りにしてきたので、今もまだそこにあるに違いない。エリーは珍しく罰の悪そうな顔をしてロタリオを見つめていたが、ヒューゴに頭を撫でられて、お得意の「私は悪くない」モードに突入しようとしていた。が、思い返せば、いまはそういう状況ではない。
ここは濃霧渦巻く魔素溜まりの道。事故が起きたというのに静寂であることが異常で異質なことに、そろそろ全員が気付き始めていた。
「お、お父さま。あそこ、子どもが寝てますわ」
窓にへばりついて外を見て叫ぶエリーに、車内の意識もそこへ向く。気絶した運転手に聞ければいいが、恐らく、事故となった要因はエリーの証言通り、地面に寝そべる一人の少年のせいだろう。
ただ、眠っているだけとは思えない。
大人たちは等しく、名前も知らない少年の生死だけを考えていた。
「ああ、お嬢様。お待ち下さい」
大人たちが考える間に、魔導車から飛び出したエリーがひとり少年のもとへ駆け寄っていく。濃霧の中を小さな姿だけが遠ざかっていくが、もちろん、レリアもヒューゴもセバスも魔導車から飛び出て、エリーの後を追いかけた。
「あなた、そんなところで寝てたら邪魔ですわよ」
「……っ…ぅ」
「あなたのせいで事故に合いましたわ。どう責任を取るつもりですの」
うつ伏せで顔を歪ませる少年は傷だらけで、苦しそうで、動けそうにない。身なりは奴隷か、捨て子か、簡素な服は汚れてボロボロで、着古したもの。髪色は真っ白で、肌は少し浅黒く、全体的に薄汚れて見えた。
明らかに負傷した少年の前で立ち止まった仁王立ちのエリーを脇へ寄せて、セバスが少年の脈をとる。
「どうだ、セバス」
「旦那様。魔素汚染が全身に広がっています。病院へ急いだほうがよろしいかと」
事故による怪我ではないらしい。セバスの見解では魔獣にやられたのか。魔導車で跳ねればもっとヒドイはずだと納得する一方で、日常的に殴られているような痕が見えなくもない。さらに魔獣にでも襲われたのか。切り傷や擦り傷が至るところに散布していた。
「彼に手当てを。すぐに出発する」
「かしこまりました」
ヒューゴの命で、セバスが取り出したのは治療用のパク。エリーがあまりに怪我をするようになったので、日常的に持つようになった最高級品。
「魔導車は動きそうか?」
「恐らくは大丈夫でしょう。運転手を起こして病院へ急ぎましょう」
「そうだな。彼も車へ」
「イヤですわ。そんな素性の知れない」
「エリーたん」
「だって、お父さま」
潔癖傾向のあるエリーの言いたいことはわかる。仮にも悪役令嬢として育つ予定の人間。身分主義な部分があるのだろう。
レリアが少年を抱え、セバスが車を整える間、ヒューゴの隣で不機嫌な瞳を揺らしていた。
「お父さま、どこの誰かもわからない人を簡単に車に乗せるのはイヤですわ」
「こちらが跳ねていない保証はないよ。それに彼には恩を売っておいた方がいい」
「でも、でも、あれが演技で、また、お父さまが襲われたりしたら。イヤですわ。怖いですわ。実際に、事故に遭いましたのよ。ロタリオがいなければ、今度こそ死んで……っ、ぅ」
言いながら悲しくなってきたのだろう。黒い瞳に涙を浮かべて、それでも人前で泣かないようにドレスを握りしめている。
「うわぁぁあ、エリーたん。オレの身を案じてくれていたんだね。愛しすぎる。なんて優しいんだぁあぁあぁぁあ」
「……っ、ぐ」
「推しが天使過ぎて尊いが過ぎるぅうぅ。あのエリーたんが、オレの、あぁぁあ」
「………旦那様」
「聞いてくれ、セバス。エリーたんが、オレの心配をしてくれたぞ」
「………旦那様」
「今のエリーたんの映像をリックが撮ってるかもしれない。あいつ、まじで変態だからな」
「旦那様。それは、結構ですが。抱きしめて気絶させたお嬢様もろとも、早く車に乗ってください」
「ああぁあ、エリーたん」
執事が深い息を落とすのも無理はない。視界が悪い濃霧のなか、そこだけお花が飛んでいる錯覚すら得そうになる。そうして一同は気絶した子ども三人と運転手をつれて、リリアンとカールが収容されている病院へと向かった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない
亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ
社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。
エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも……
「エマ、可愛い」
いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~
イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?)
グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。
「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」
そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。
(これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!)
と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。
続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。
さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!?
「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」
※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`)
※小説家になろう、ノベルバにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる