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肆書:邪獣襲来
04:桶に浸す薬湯
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普段使う湯桶よりも、一回りも二回りも小さい子ども用の湯桶の中でぐったりうなだれてしまうのは仕方がない。あれからアザミはヒスイに抱き上げられて、アベニと共に湯浴びへと強制連行されていた。
「ふぅん、不粋な華族がいたもんだね。イルハくんが聞いたら雷が落ちそう」
「華族ってのは、どいつもこいつも不粋なもんだろ」
「そうだね。アザミちゃんはジンくんのことばかり気にしてるけど、ボクからしてみれば、あの態度は華族出身だろうと許せないな」
「もう少し早く来りゃよかったな、ごめんな、アザミ」
ヒスイとアベニの二人は、野菜でも洗う要領の力加減しか与えていないつもりだろう。
仲良く桶の中に両手を突っ込んで、逃げまどうアザミを頭の先からつま先まで丸洗いしている。薬湯を塗り込み、漬け込んでくる行為を丁寧というのか、凌辱というのかは判断がつかない。
「ァッ……ま、そこ……っ、ぅ」
簡単にひっくり返されて湯桶の枠にしがみついたのは、そうでもしないと溺れて沈みそうだったから。足膝程度の深さしか張られていないお湯に沈みそうだというのは、あまり現実的ではないが、それでも溺れてしまいそうなほど全身に力は入らない。
「アザミちゃんってば、こっちもボクの指が簡単に入るよ?」
「そりゃそうだろ。散々慣らして、挿入も経験済みだ」
「へぇ、そうなんだ」
男二人がかりでいじり倒される身になれば、それは迷惑な話でしかない。
何度も湯桶からあがろうとしているのに、ヒスイはアザミの腰を押さえつけて、お尻の奥まで洗おうと指を二本、三本とねじ込んできている。アベニはそれを知りながら、下を向いて震える胸を優しくもんで、薬湯を乳首に塗り込んでいた。
「ぃ……く……ッぁ、あ…アベニ様……ヒスイさ、まぁ」
「アザミはこらえ性がないな。何度目だ?」
「乳首とお尻だけでいっちゃうなんて、花魁の名前が泣いちゃうよ?」
「……ッぅ、だ……って……ぁ……ヒッぅ」
またひっくり返されて、今度は桶に足をかける形で縫いとどめられる。真上にのぞむ二人は髪一つ乱れていない。それなのに、二人の間で腰をくねらせながら浅い呼吸を繰り返す姿を見せるのは何度目になるだろう。
「ほら、アザミちゃん。お尻にいれた指は動かさないでいてあげるから、イクの我慢しなね」
「アザミのために用意した薬湯だ。隅々まで塗り込んでやる」
言いながら突起物だけを指先でしごくのはヤメテ欲しい。
ヤメテ欲しいと素直にそういいたいのに、あまりに強い刺激は声さえも消失させ、息を止めることしか許さないらしい。
「力抜けって言ってるのに、アザミはすぐに、どこもかしこも硬くしちまうな」
頭側から胸の先端を指先で遊んでくるアベニは、足側にいるヒスイのためにアザミの恥部を割り広げる。そこはぬらりと湿って、真珠のように煌めく陰核が自己主張していた。
「……っ……く、ぅ」
優しく微笑んだヒスイの指先が、そこを摘まむと視覚で認識したのが悪かった。
アザミは息をのんで身体をひときわ大きく震わせると、腰を浮かせて湯桶を必死でつかむ。足は湯桶の外に出て戦力にならない。頼れるのは自分の両手だけなのに、あまりに刺激が強すぎて呆気なく陥落してしまいそうになる。
力が入れば、お尻に埋まったヒスイの指に意識が向く。
快楽の神経だけが覚醒されていくみたいに、敏感になっていく感覚から逃れるために、アザミはアベニの名前を呼んでいた。
「なんだ、アザミ」
「も……ぃ……もう、ィっ……」
もういいと終了の合図を口にするだけでも手間取ってしまうのは、休むことのない愛撫のせいだと主張したい。
最初は、本当に善意の気持ちで溢れていたのだろう。ヒスイとアベニは髪、顔、肩、腕、指先と分岐して、「疲労回復に効く薬湯」に浸してくれていた。子ども用の湯桶だったのは、効率よく薬湯に浸すため。それを信じて疑わなかったのは、二人からそういう気配が微塵も感じられなかったからで、日ごろから世話を焼かれていた弊害だろう。
「さっきの女は誰?」というありふれた世間話から始まり、アザミがジンの存在を思い出したところで、二人の気配ががらりと変わった。いや、二人の気配ががらりと変わったのは、アザミがある言葉を口にしてからだったように思う。
「メイリンはジンさまを狙っておりんす。わっちに付けばジンさまの寵愛を得られると思っているんだわ。気軽に会える方ではないのに……私だって、たまにしか会えないのに」
最後はほぼ、空気のように胸の内に秘めるほど小さな声にも関わらず、アベニとヒスイの耳にはちゃんと一言一句聞こえたらしい。
「そういや、ジンの鎖骨に赤い痕がついてたな。あれはアザミか?」
「え……っ…はい」
「んじゃ、ここにもひとつ、つけてみてくれ」
「アベニくんの次は、ボクにもお願いしようかな」
そこから流れがおかしくなったのは言うまでもない。
アベニの鎖骨に唇を押し付けている間はヒスイが、ヒスイの鎖骨に吸い付いている間はアベニが、薬湯を肌にかけてくれていたが、触り方が徐々に変わってきて、今に至っている。
「もう…終わ……ッン…ぁ…わっちはジンさまのところ、に……ヒッ」
「ジンくんはね、溜まり溜まった書類に目を通す仕事をしているから大丈夫」
「そうそう。陰禍払いとか、な。あいつにしかできない仕事が山ほどある。それが終わるまで、アザミは可愛がられていろ」
「……ッん…ぅ……ぁ……アッ、ぁ」
湯桶の中でぐったりうなだれてしまうのも無理はない。子ども用の桶で溺れそうになるのは黄宝館の中で自分くらいだろうと、アザミは呼吸を整えながら脱力する。
その間に、アベニが湯桶の横にある背もたれのない細長い椅子に、大判の布を敷いている。ヒスイの指がお尻から抜けていって、ようやく終わったのだと、疲労回復効果を実感できないまま、アザミはアベニに湯桶から拾い上げられていた。
「ゃ、ァッ」
布の敷かれた椅子の上に寝かされるなり、足を割り広げてきたヒスイの剛直が突き刺さる。
ぐちっと卑猥な音をたてて密着した腰はもとより、舌を出してひくひくと痙攣するアザミの様子に、二人の男はくすくすと笑っていた。
「こっちは全然触っていてあげていなかったからね。そんなに待ち遠しかったんだ?」
「……ぁ……ッく……にゅ…ぅ」
「アザミ、身体を動かすと落ちるぞ。ったく仕方ねぇな」
細い椅子をまたいで座ったアベニが上半身を支えてくれる。
そのせいで、二人の間で「く」の字型に折り曲がり、半分ヒスイの上に腰かける状態になってしまった。
「……奥…ゃ、ァ……っ……ぁ」
いやいやと首を振って抵抗したところで、ここから逃げ出せるはずもない。
ヒスイが腰を掴んでより深く挿入を果たしてくる。それを助長するアベニは、アザミの背後から脇に腕を差し込んで、胸を揉みながらその感触を楽しんでいる。すぐ目の前でそれが見えるのだから疑いようもない。到底入るはずのない太さの陰茎は膣の奥へ奥へとめり込んでいき、下腹部がその形をうっすらと伝えていた。
「いつ見てもやらしいな。アザミのここは」
胸から滑り降りてきたアベニの手が、静かにアザミのへその下あたりを叩く。
それは一定の速度で行われ、やがて揉みこむように力が加わってきた。
「ひっ……ぅ……ァッ、ぁ」
身体の中心部が熱く疼いて、たまらなく声が震えてしまう。
挿入したヒスイは動いていないのに、まるで子どもを寝かしつけるようにアベニが下腹部をとんとんと叩くだけで、全身までぶるぶると震え始めてしまう。
「それ……ヤッ、ぁ……んッ…変にな…りゅ……ぅ」
「いやじゃねぇだろ。アザミ、ここ好きじゃねぇか」
「ヒッぃ……しゅき…じゃなッ……ぁ、ァッ」
「アザミちゃんが、ここ、とんとんってするとすぐ気持ちよさそうな顔になっちゃうのは、みんな知ってるよ?」
ヒスイの手が伸びてきて、だらしなく開いた口から飛び出た舌を押さえつけられる。
違うと言葉にしたくても「ぁぇ」と小さな濁音しか吐き出せず、アザミは視界が歪んでいくのを感じていた。
「ぁ゛……ァッ、ぇ゛……ッ……ぁ、ァッ」
「最初は痛がってたけど、もう大好きでたまらないんだよね」
「玩具で反対側からも刺激してやろうか?」
「……ッ、ぁ……やっ、ぁ゛ぁアッ」
のけぞりたくても、それすら許されない。ヒスイが楽しそうにくすくす笑って「どれだけアベニくんに開発されたの」と舌を強く押してくる。
「想像だけでイッちゃうくらい、ひどいことされたの?」
「したことねぇよ」
心外だとアベニは悪態を吐いているが、その顔がイタズラに笑っているのだから真意は口にしなくても伝わっているだろう。玩具で膣とお尻の両方を虐げられ、絶頂を覚えたことは否定しない。
ただ、肯定もしたくないのに、アザミは敗北を訴えるようにぽろぽろと涙をこぼしていた。
「あーあー、アザミちゃん、泣いちゃった」
「ヒスイのせいだろ。あんまりからかうなって」
「ついついね。アザミちゃん、可愛いからついいじめたくなっちゃうんだよね」
ごめんねと、ヒスイの手が口から抜けて、再び腰を掴んでくる。
何のための謝罪かと聞き返したいのに、動き始めたヒスイにその問いかけは無駄に終わるだろう。
「アッ、ぁ゛ぁ……ひっ…ンッ、ぅ」
「いやらしくなるのは悪いことでも、恥ずかしいことでもないよ。ボクたちがそれを望んで、そうたいと思ってそうしているんだから、アザミちゃんは素直に乱れていいんだよ」
「……ぁ…ッ……ヒスイさ、ま」
なぜ泣いてしまったのか。聞かれても答えられそうにない現実に戸惑いを隠せなかったが、あやすように正解をくれるヒスイの動きが、アザミの涙をぬぐっていく。
アベニが椅子から降りて、そこに寝かせられてしまえば、ヒスイの独壇場といっても過言ではなかった。
「ッ…く……ぃ……ンッん…ぅ」
口づけで悲鳴を閉じ込めてくるヒスイの腕の中で、アザミは何度も絶頂に浸る。
涙は止めようと思って止まるものではなく、言葉にできない声の代わりに、何度も視界をにじませて頬を濡らしていった。
「椅子、壊すなよ」
「壊れても贈呈するから大丈夫」
一際大きく腰を打ち付けて止まったヒスイにアベニは忠告したが、その返答に納得がいったのだろう。先ほどまで椅子を壊す勢いで動いていたヒスイの下から、ひくひくと痙攣するアザミが姿を現すと、妙に落ち着いた顔で「それもそうか」と頷いていた。
「アザミ、まだへばるときじゃねぇぞ」
「……ぅ……ぁ」
アザミの中に放出して萎えた陰茎を抜いたヒスイの代わりに、アベニが抱き起してくる。椅子はまだ無事のようで何よりだが、アベニはそこに腰かけると、アザミを上にのせて自身の竿を埋めていった。
「ん…ッ……く」
対面で向き合って、口づけを交わす。
ヒスイのものでぬかるんだ場所は、アベニを受け入れ、その動きに合わせて身体を上下させていく。
「ッや゛ぁァァぁァ…ン…ぅ……ぅ」
ヒスイと交わっている間に、アベニが用意していたらしい玩具が、ヒスイによってお尻の穴に埋め込まれていく。それがわかるほどには、慣れ親しんだ玩具で、快楽に溺れようとしていたアザミの意識を掘り起こしていた。
「いい子だな、アザミ。ヒスイにも遊ばしてやれ」
「ァッあ゛ぁ……っ…んンッぅ…ん゛」
今度はアベニがよしよしとあやしてくる。
足を開いて、無防備に落ちた臀部を押し広げてくる異形の玩具。戸惑いもためらいもないところがヒスイらしいが、口づけで拒絶を塞いでくるアベニもアベニらしい。
「あらら、アザミちゃん。こっちは声我慢できないんだ」
「子宮降ろして、だらしねぇ顔になっちまう。なぁ、アザミ?」
「……ぅ…ッく……きゅ…ぅ…」
太くて長い玩具は、ヒスイの手で何度も出入りを繰り返す。アベニは口づけを楽しみ、肌に唇の痕を残すために吸い付いたり、乳首に噛みついたりして遊んでいるが、時々、ヒスイの差し込んだ玩具が触れる場所に合わせて腰を突き上げてくる。
甘く疼く時間が継続している。
膣にアベニを埋めたまま、ヒスイの玩具を感じている。
こぽりと自分の奥から愛蜜があふれ出すのを感じて、アザミは力なくアベニにすり寄りながら、全身を震わせていった。
「ぃ、く……ィクッ、ぅ」
「ああ、いいぜ。可愛い姿を見せてみろ」
「ァッ…ぁ…アベニさま……っ…ヒスイさまぁ…ァッ…ァあ゛ぁ」
アベニにしがみついて、ヒスイにしがみつかれる。
全身が跳ねて、跳ねて、どうしようもないのに。アベニに抱きしめられて、ヒスイに捕まっていては逃げようもない。
「アザミ」
ひくひくと、脱力した身体が再び細長い椅子に寝かせられて、アベニが体重を乗せてくる。抜け落ちた玩具をヒスイが鼻歌を歌いながら手に持っているところを見る限り、何かとんでもない弱みを握られた気がしないでもない。けれど、それを横目にとらえたのも一瞬のはなし。
ヒスイ同様、アベニも容赦はしてこない。朱色の髪が降り落ちてくるのを感じながら、アザミはその身をゆだねていた。
「ふぅん、不粋な華族がいたもんだね。イルハくんが聞いたら雷が落ちそう」
「華族ってのは、どいつもこいつも不粋なもんだろ」
「そうだね。アザミちゃんはジンくんのことばかり気にしてるけど、ボクからしてみれば、あの態度は華族出身だろうと許せないな」
「もう少し早く来りゃよかったな、ごめんな、アザミ」
ヒスイとアベニの二人は、野菜でも洗う要領の力加減しか与えていないつもりだろう。
仲良く桶の中に両手を突っ込んで、逃げまどうアザミを頭の先からつま先まで丸洗いしている。薬湯を塗り込み、漬け込んでくる行為を丁寧というのか、凌辱というのかは判断がつかない。
「ァッ……ま、そこ……っ、ぅ」
簡単にひっくり返されて湯桶の枠にしがみついたのは、そうでもしないと溺れて沈みそうだったから。足膝程度の深さしか張られていないお湯に沈みそうだというのは、あまり現実的ではないが、それでも溺れてしまいそうなほど全身に力は入らない。
「アザミちゃんってば、こっちもボクの指が簡単に入るよ?」
「そりゃそうだろ。散々慣らして、挿入も経験済みだ」
「へぇ、そうなんだ」
男二人がかりでいじり倒される身になれば、それは迷惑な話でしかない。
何度も湯桶からあがろうとしているのに、ヒスイはアザミの腰を押さえつけて、お尻の奥まで洗おうと指を二本、三本とねじ込んできている。アベニはそれを知りながら、下を向いて震える胸を優しくもんで、薬湯を乳首に塗り込んでいた。
「ぃ……く……ッぁ、あ…アベニ様……ヒスイさ、まぁ」
「アザミはこらえ性がないな。何度目だ?」
「乳首とお尻だけでいっちゃうなんて、花魁の名前が泣いちゃうよ?」
「……ッぅ、だ……って……ぁ……ヒッぅ」
またひっくり返されて、今度は桶に足をかける形で縫いとどめられる。真上にのぞむ二人は髪一つ乱れていない。それなのに、二人の間で腰をくねらせながら浅い呼吸を繰り返す姿を見せるのは何度目になるだろう。
「ほら、アザミちゃん。お尻にいれた指は動かさないでいてあげるから、イクの我慢しなね」
「アザミのために用意した薬湯だ。隅々まで塗り込んでやる」
言いながら突起物だけを指先でしごくのはヤメテ欲しい。
ヤメテ欲しいと素直にそういいたいのに、あまりに強い刺激は声さえも消失させ、息を止めることしか許さないらしい。
「力抜けって言ってるのに、アザミはすぐに、どこもかしこも硬くしちまうな」
頭側から胸の先端を指先で遊んでくるアベニは、足側にいるヒスイのためにアザミの恥部を割り広げる。そこはぬらりと湿って、真珠のように煌めく陰核が自己主張していた。
「……っ……く、ぅ」
優しく微笑んだヒスイの指先が、そこを摘まむと視覚で認識したのが悪かった。
アザミは息をのんで身体をひときわ大きく震わせると、腰を浮かせて湯桶を必死でつかむ。足は湯桶の外に出て戦力にならない。頼れるのは自分の両手だけなのに、あまりに刺激が強すぎて呆気なく陥落してしまいそうになる。
力が入れば、お尻に埋まったヒスイの指に意識が向く。
快楽の神経だけが覚醒されていくみたいに、敏感になっていく感覚から逃れるために、アザミはアベニの名前を呼んでいた。
「なんだ、アザミ」
「も……ぃ……もう、ィっ……」
もういいと終了の合図を口にするだけでも手間取ってしまうのは、休むことのない愛撫のせいだと主張したい。
最初は、本当に善意の気持ちで溢れていたのだろう。ヒスイとアベニは髪、顔、肩、腕、指先と分岐して、「疲労回復に効く薬湯」に浸してくれていた。子ども用の湯桶だったのは、効率よく薬湯に浸すため。それを信じて疑わなかったのは、二人からそういう気配が微塵も感じられなかったからで、日ごろから世話を焼かれていた弊害だろう。
「さっきの女は誰?」というありふれた世間話から始まり、アザミがジンの存在を思い出したところで、二人の気配ががらりと変わった。いや、二人の気配ががらりと変わったのは、アザミがある言葉を口にしてからだったように思う。
「メイリンはジンさまを狙っておりんす。わっちに付けばジンさまの寵愛を得られると思っているんだわ。気軽に会える方ではないのに……私だって、たまにしか会えないのに」
最後はほぼ、空気のように胸の内に秘めるほど小さな声にも関わらず、アベニとヒスイの耳にはちゃんと一言一句聞こえたらしい。
「そういや、ジンの鎖骨に赤い痕がついてたな。あれはアザミか?」
「え……っ…はい」
「んじゃ、ここにもひとつ、つけてみてくれ」
「アベニくんの次は、ボクにもお願いしようかな」
そこから流れがおかしくなったのは言うまでもない。
アベニの鎖骨に唇を押し付けている間はヒスイが、ヒスイの鎖骨に吸い付いている間はアベニが、薬湯を肌にかけてくれていたが、触り方が徐々に変わってきて、今に至っている。
「もう…終わ……ッン…ぁ…わっちはジンさまのところ、に……ヒッ」
「ジンくんはね、溜まり溜まった書類に目を通す仕事をしているから大丈夫」
「そうそう。陰禍払いとか、な。あいつにしかできない仕事が山ほどある。それが終わるまで、アザミは可愛がられていろ」
「……ッん…ぅ……ぁ……アッ、ぁ」
湯桶の中でぐったりうなだれてしまうのも無理はない。子ども用の桶で溺れそうになるのは黄宝館の中で自分くらいだろうと、アザミは呼吸を整えながら脱力する。
その間に、アベニが湯桶の横にある背もたれのない細長い椅子に、大判の布を敷いている。ヒスイの指がお尻から抜けていって、ようやく終わったのだと、疲労回復効果を実感できないまま、アザミはアベニに湯桶から拾い上げられていた。
「ゃ、ァッ」
布の敷かれた椅子の上に寝かされるなり、足を割り広げてきたヒスイの剛直が突き刺さる。
ぐちっと卑猥な音をたてて密着した腰はもとより、舌を出してひくひくと痙攣するアザミの様子に、二人の男はくすくすと笑っていた。
「こっちは全然触っていてあげていなかったからね。そんなに待ち遠しかったんだ?」
「……ぁ……ッく……にゅ…ぅ」
「アザミ、身体を動かすと落ちるぞ。ったく仕方ねぇな」
細い椅子をまたいで座ったアベニが上半身を支えてくれる。
そのせいで、二人の間で「く」の字型に折り曲がり、半分ヒスイの上に腰かける状態になってしまった。
「……奥…ゃ、ァ……っ……ぁ」
いやいやと首を振って抵抗したところで、ここから逃げ出せるはずもない。
ヒスイが腰を掴んでより深く挿入を果たしてくる。それを助長するアベニは、アザミの背後から脇に腕を差し込んで、胸を揉みながらその感触を楽しんでいる。すぐ目の前でそれが見えるのだから疑いようもない。到底入るはずのない太さの陰茎は膣の奥へ奥へとめり込んでいき、下腹部がその形をうっすらと伝えていた。
「いつ見てもやらしいな。アザミのここは」
胸から滑り降りてきたアベニの手が、静かにアザミのへその下あたりを叩く。
それは一定の速度で行われ、やがて揉みこむように力が加わってきた。
「ひっ……ぅ……ァッ、ぁ」
身体の中心部が熱く疼いて、たまらなく声が震えてしまう。
挿入したヒスイは動いていないのに、まるで子どもを寝かしつけるようにアベニが下腹部をとんとんと叩くだけで、全身までぶるぶると震え始めてしまう。
「それ……ヤッ、ぁ……んッ…変にな…りゅ……ぅ」
「いやじゃねぇだろ。アザミ、ここ好きじゃねぇか」
「ヒッぃ……しゅき…じゃなッ……ぁ、ァッ」
「アザミちゃんが、ここ、とんとんってするとすぐ気持ちよさそうな顔になっちゃうのは、みんな知ってるよ?」
ヒスイの手が伸びてきて、だらしなく開いた口から飛び出た舌を押さえつけられる。
違うと言葉にしたくても「ぁぇ」と小さな濁音しか吐き出せず、アザミは視界が歪んでいくのを感じていた。
「ぁ゛……ァッ、ぇ゛……ッ……ぁ、ァッ」
「最初は痛がってたけど、もう大好きでたまらないんだよね」
「玩具で反対側からも刺激してやろうか?」
「……ッ、ぁ……やっ、ぁ゛ぁアッ」
のけぞりたくても、それすら許されない。ヒスイが楽しそうにくすくす笑って「どれだけアベニくんに開発されたの」と舌を強く押してくる。
「想像だけでイッちゃうくらい、ひどいことされたの?」
「したことねぇよ」
心外だとアベニは悪態を吐いているが、その顔がイタズラに笑っているのだから真意は口にしなくても伝わっているだろう。玩具で膣とお尻の両方を虐げられ、絶頂を覚えたことは否定しない。
ただ、肯定もしたくないのに、アザミは敗北を訴えるようにぽろぽろと涙をこぼしていた。
「あーあー、アザミちゃん、泣いちゃった」
「ヒスイのせいだろ。あんまりからかうなって」
「ついついね。アザミちゃん、可愛いからついいじめたくなっちゃうんだよね」
ごめんねと、ヒスイの手が口から抜けて、再び腰を掴んでくる。
何のための謝罪かと聞き返したいのに、動き始めたヒスイにその問いかけは無駄に終わるだろう。
「アッ、ぁ゛ぁ……ひっ…ンッ、ぅ」
「いやらしくなるのは悪いことでも、恥ずかしいことでもないよ。ボクたちがそれを望んで、そうたいと思ってそうしているんだから、アザミちゃんは素直に乱れていいんだよ」
「……ぁ…ッ……ヒスイさ、ま」
なぜ泣いてしまったのか。聞かれても答えられそうにない現実に戸惑いを隠せなかったが、あやすように正解をくれるヒスイの動きが、アザミの涙をぬぐっていく。
アベニが椅子から降りて、そこに寝かせられてしまえば、ヒスイの独壇場といっても過言ではなかった。
「ッ…く……ぃ……ンッん…ぅ」
口づけで悲鳴を閉じ込めてくるヒスイの腕の中で、アザミは何度も絶頂に浸る。
涙は止めようと思って止まるものではなく、言葉にできない声の代わりに、何度も視界をにじませて頬を濡らしていった。
「椅子、壊すなよ」
「壊れても贈呈するから大丈夫」
一際大きく腰を打ち付けて止まったヒスイにアベニは忠告したが、その返答に納得がいったのだろう。先ほどまで椅子を壊す勢いで動いていたヒスイの下から、ひくひくと痙攣するアザミが姿を現すと、妙に落ち着いた顔で「それもそうか」と頷いていた。
「アザミ、まだへばるときじゃねぇぞ」
「……ぅ……ぁ」
アザミの中に放出して萎えた陰茎を抜いたヒスイの代わりに、アベニが抱き起してくる。椅子はまだ無事のようで何よりだが、アベニはそこに腰かけると、アザミを上にのせて自身の竿を埋めていった。
「ん…ッ……く」
対面で向き合って、口づけを交わす。
ヒスイのものでぬかるんだ場所は、アベニを受け入れ、その動きに合わせて身体を上下させていく。
「ッや゛ぁァァぁァ…ン…ぅ……ぅ」
ヒスイと交わっている間に、アベニが用意していたらしい玩具が、ヒスイによってお尻の穴に埋め込まれていく。それがわかるほどには、慣れ親しんだ玩具で、快楽に溺れようとしていたアザミの意識を掘り起こしていた。
「いい子だな、アザミ。ヒスイにも遊ばしてやれ」
「ァッあ゛ぁ……っ…んンッぅ…ん゛」
今度はアベニがよしよしとあやしてくる。
足を開いて、無防備に落ちた臀部を押し広げてくる異形の玩具。戸惑いもためらいもないところがヒスイらしいが、口づけで拒絶を塞いでくるアベニもアベニらしい。
「あらら、アザミちゃん。こっちは声我慢できないんだ」
「子宮降ろして、だらしねぇ顔になっちまう。なぁ、アザミ?」
「……ぅ…ッく……きゅ…ぅ…」
太くて長い玩具は、ヒスイの手で何度も出入りを繰り返す。アベニは口づけを楽しみ、肌に唇の痕を残すために吸い付いたり、乳首に噛みついたりして遊んでいるが、時々、ヒスイの差し込んだ玩具が触れる場所に合わせて腰を突き上げてくる。
甘く疼く時間が継続している。
膣にアベニを埋めたまま、ヒスイの玩具を感じている。
こぽりと自分の奥から愛蜜があふれ出すのを感じて、アザミは力なくアベニにすり寄りながら、全身を震わせていった。
「ぃ、く……ィクッ、ぅ」
「ああ、いいぜ。可愛い姿を見せてみろ」
「ァッ…ぁ…アベニさま……っ…ヒスイさまぁ…ァッ…ァあ゛ぁ」
アベニにしがみついて、ヒスイにしがみつかれる。
全身が跳ねて、跳ねて、どうしようもないのに。アベニに抱きしめられて、ヒスイに捕まっていては逃げようもない。
「アザミ」
ひくひくと、脱力した身体が再び細長い椅子に寝かせられて、アベニが体重を乗せてくる。抜け落ちた玩具をヒスイが鼻歌を歌いながら手に持っているところを見る限り、何かとんでもない弱みを握られた気がしないでもない。けれど、それを横目にとらえたのも一瞬のはなし。
ヒスイ同様、アベニも容赦はしてこない。朱色の髪が降り落ちてくるのを感じながら、アザミはその身をゆだねていた。
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