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第三夜 尋問の食事会(下)

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最初に感じた言葉通りキレイだと表現できる幸彦は、台座に腰掛けながら優雅に告げる。


「それで、優羽の願いは何かな?」


優羽は、よくわからないというふうに幸彦を見つめた。
願い。神様だから、願えば何かを叶えてくれるということなのだろうか。


「身を捧げるからには、何かしらの願いを持ってここに来たのだろう?」


話の意図がわからない。
たしかに身を捧げはしたが、連れてこられたのであって、来たつもりはない。
答えることができず、疑問符を頭に浮かべる優羽をどう思ったのか、幸彦は台座に腰かけながらゆるく指を動かした。


「家族の地位のためか、金か、あるいは恋人か。長(オサ)との取引はなんだ?」


ゆっくりと問いかけてくる内容に、優羽は目を見張ることしか出来ない。
家族はいない、金もいらない、恋人と呼べる人もいなければ、オサなどという人物に心当たりもない。神が述べる至極当然の理由だという発言を否定することは、一介の人間に、それも身寄りのない軟弱な存在に、許されることなのだろうか。
何とも言えない表情を浮かべるしかできず、優羽は口を閉ざす。
それをどう勘違いしたのか、幸彦はふっと笑みをこぼした。


「わたしがかわりに、願いを叶えてあげよう」

「はっ!?」


その場にいる全員の声、優羽と居合わせた四匹の狼の声がそろう。優羽は横目にそれを感じながらも、願い事があるわけではないと、困ったように眉をしかめた。


「お言葉ですが幸彦様。彼女は――――」

「戒。控えていなさい」

「――――っ、はい」


幸彦は戒の言葉を手のひらを動かし、柔らかく制してから、優羽に声を投げかける。


「こちらに来なさい」


誘う手の仕草に引き寄せられたからか、優羽は素直にそれに従った。


「もっと、近くへ」


近づけば近づくほど、幸彦の存在が突き刺さってくる。心の奥まで見透かされそうな瞳に、優羽は一歩ずつ近づきながら息苦しさが襲ってくるのを感じていた。
なにもヤマシイことはないはずなのに、鼓動が、どんどん、どんどん早くなっていく。


「んッ?!」


もうあと一歩というところで、優羽の視界はいきなり消えた。


「はぁ…っ…ぅ、んッ!?」


一瞬にして、身体が熱く染まるのも無理はない。
現実に追い付いていない脳が、まだ現状を理解しきれていないにも関わらず、優羽の体はその事実を認識して、顔まで赤く変えていく。


「ちょ…っ、待っ…ぁ…~~っ」


腕を強く引かれたせいで、重なった唇が角度を変えて幸彦に奪われる。
何かを確認するように何度も、何度も、何度も繰り返される口づけに、体幹を失った優羽は、気づけばいつの間にか、幸彦に覆い被さるようにその上に乗っていた。


「っ~ん~ッ…はぁ…ぁ」


口内を味わう舌に全身が緊張していく。抱え込まれた後頭部と腰に、優羽は目を閉じることで、これから起こることを理解しようとしていた。
静かでいて、深く、奥の奥まで吸い付く唇の感触が心地良い。無心というより、無垢の乙女がみせる反応で、優羽は幸彦の口づけにのめり込んでいく。
涼と陸のとき以上に、心臓がうるさい。口付けの先を知っているからかもしれない。舌を吸い上げてくる強さに甘えたくなる。身をすべて、任せてしまいたくなる。


「はぁ…ッ…はぁ…っ、ん…あ…」


撫でられる先から性欲を引きずり出される感覚に、優羽は鳥肌がたっているのを感じていた。麻痺したみたいに、身体中が甘くしびれていく。このまま意識が溶けてしまえば、それこそ理想郷に近い天国が待っているのではないかと思えるほど、キモチイイ。


「まだ、けがれを知らない乙女であることは確かなようだ」


幸彦に与えられる唇が離れるころには、優羽は全身の力が抜けきったように幸彦にもたれかかっていた。


「さぁ、素直に吐いてもらおうか」

「ぁ……~~~ヤ、ぁッ」


服の合わせめから差し込まれた幸彦の手が、優羽の胸を柔らかくつかむ。弾力を楽しむように、撫でまわしてくる手のひらに、優羽の身体はピクリと反応した。


「……ひ、イッ……ァ……ッ…」


この場所からは逃げられない。
台座の上に向かい合う形で座った先で、はだけさせられた上半身に、幸彦の舌がはっていく。首筋に埋められたその綺麗な顔は、優羽の女を堪能し、一度だけ深く息を吸い込んだ。


「それで?」


脳に吹き込まれるように耳にかかる吐息が熱い。


「誰に頼まれたのかな?」

「はぁ…ッ…やッ……」


胸をもみしだく手つきに、身体が小刻みにゆれる。徐々に取り払われていく衣服の下で、優羽は快楽を伝えていた。


「誰かと、尋ねているのだよ」

「誰に…も…ッ…頼まれて…ま…せん」

「嘘はよくない」


こんな時だというのに、変な声が鼻を抜けて溢れそうになる。
慌てて口をふさごうとした両手を後ろ手につかまれ、ピンと突き出た優羽の胸を幸彦は口に含んだ。そのざらついた舌先に転がされて、優羽の胸は、面白いほど幸彦の愛撫に震えていく。
もう男を知らない体ではない。
固くとがる乳首を愛撫されるだけで、電流が駆け抜けるように体が反応してしまう。


「アッ…っん…はぁ…本当で…す…っ」


優羽は押さえきれない吐息をこらえ、与えられる微弱な快楽の隙間から必死に成り行きを説明する。


「私の村は、流行り病でつぶれ…ッ…両親も…もう、いません。身寄りを求めて立ち寄った村にも追い払われ……途方にくれてい、る時に……見知らぬ男たちに襲われたのです…ッ…それで……逃げている内に、この森に足をぁ、アッ、いやぁ」

「良くできた作り話だね」

「ヒッ…ちがっ…やめてくださ、ぁ…あぁ」


すべて取り払われてしまった服が、床に軽い音をたてて落ちる。
一糸まとわぬ姿のまま、傍にいるだけで苦しくなるほどのカミの足の上で、優羽がその身を悶えさせていた事実が浮き彫りになる。誤魔化しようもない。違うと伝えたくても、甘美な声が先に出てしまう。こんな状況下で嘘をつく余裕などないのに、まるで信じてもらえないことに混乱していた。


「ヤッだ……ぁ~ッ…そ、ぁ、やぁ」

「もう説明は終わりかな?」


余裕の笑みで肌に噛みついてくる幸彦に、説明できる言葉が見つからない。
どうすれば信じてもらえるのかわからない。可哀想な乳首は、カミの唾液で濡れ、赤い実を突き出している。時折視界から消え、与えられる刺激に悶え、股の内側にある汁を呼び起こすように形を変え、また視界に戻ってくる。
何度も繰り返されると、左右の乳首はどちらも次を求めて、交互に幸彦の唇に甘えだす。放置された腰が、不満足そうに揺れるのをなんとか抑え、なだめ、優羽に出来ることは、快楽に耐えながら、ただありのままの言葉をつむぎだすことだけだった。


「本当…ッ…アッ…森に入ったら、迷ってしまって……そしたら子供が涼に石を…ッ…とっさに庇ってしまったら、今度は涼が子供を」

「それで?」

「こ、子供を逃がしてしまって…ッ…逃げた餌の身代わりにと…アッ──……ッ…ヤッ!?」


手を捕まれている方とは逆の手で、無遠慮に割り広げられた花弁を空気が撫でる。


「おや、これはこれは」

「……~ッ……」

「こちらのほうが、まだ素直な言葉を吐き出しそうだ」


見事なまでに濡れそぼった蜜は、妖艶な笑みを浮かべる幸彦の足までも淫らに汚していた。
キラキラと下肢からのぞく淫乱な蜜をすくうように、幸彦の指が隠れていく。


「~~~~ふ……ぅッ」


その刺激に、優羽の体が幸彦の腕の中でわずかに飛び跳ねた。
もちろん後ろでつかまれた両手を引かれ、不利な体勢のまま優羽は幸彦の愛撫を受け入れるしかない。軽く往復するだけの指先に、身体だけでなく、意識まで弾かれる心地がして、刺激が全神経を一瞬で駆け抜ける。
向かい合わせで座る男にかなうわけがない。幸彦も堪能するように、口角をあげて優羽の顔を見上げた。


「~~~~っ」


その視線に全身がカッと熱くなる。腫れた蕾を幸彦の指がわざとらしく時間をかけて往復するが、強弱をつけてヌメリを擦り付けられるその秘芽に、優羽の身体は震えていた。


「いヤッ…ぅ…そ、こ…それ、イヤぁ」

「敏感なのはいいことだが、嘘はいけない」

「はッ…アァッ…そこは、ダメで…~っ…本当です…ん…嘘じゃなッ……あッ……」

「それでは、それが本当かどうか、もっと奥まで調べてあげよう」

「~~~~ぁ、イヤァァッ!?」


グッと差し込まれた指に反応したのか、優羽の身体は幸彦のほうへ勢いよく倒れる。本当に奥まで突き刺さった複数の指が、事態に驚いて慌てたのか、内部をきつく締めつけている。


「力を抜きなさい。これでは、わたしの指が身動きをとれない」


足を閉じることも、腕を振り切ることもできず、哀れに身を震わせる少女の姿に、また幸彦の笑みが深まった。


「さて、こうしてわたしの指を根元までくわえたわけだが」

「…………ふぁ…ヤッ…いやぁ…ァア」

「逃がしはしないよ。ほら、淫乱なこの口で、わたしにきちんと説明しなさい」


ぐっと近づいてきた顔に悪寒が走る。そこから数刻、まるで地獄のような愛撫の連続に幸彦の指をくわえこみながら、優羽は本当だと必死に訴え続けていた。


「本当です…アァッ…ほんと…ヒァッ…ん…ほ……ヤァァァア…ッ───…本当なんれ…ッ…ふっ~……」

「よく聞こえないね」

「はぁッ…あ…はぁっ…ん…アッ」


かき出される蜜に、淫質な音が響く。女の匂いが部屋中に充満し、固く尖らせた部分までも執拗に責められて、優羽は甘い声で鳴いていた。


「やアッアァァ…──ッ……アッ…っ…ンッあぁ……」

「可愛い声で鳴く娘だね」

「ヒッ…~っ…アッアァァ…ヤッ……もぅヤメ……───ッら…アァァァァア…ッ……」

「本当のことを言いなさい。これ以上の快楽を望んでいるのだろう?」


優羽は首を横にふる。
これ以上の快楽なんていらない。逃げようと動く腰が、追いかけてくる指を締め付けて、激しく精神を狂わせていた。本当のことを言っているのに、違う願いが頭に浮かぶ。視線を少しさげれば、嫌でも目に入る幸彦の"ソレ"を優羽は見ないようにすることだけで精一杯だった。


「欲しいのだろう?」


確信めいた幸彦の言葉に、優羽の身体は素直に跳ねる。


「いりま…せ…ッ…ァ…アァア」


反対の言葉をいくら唱えようと、快楽を受け入れる従順な身体は素直に動いていた。前後に腰をふりながら、優羽は首を左右にふる。なんとも艶(ナマメ)かしい乙女の仕草に、幸彦の瞳が細く変わっていく。


「まだ奥深くまで、調べてもらいたいようだね」

「――――ッ!?」


いともたやすく腰が浮く。重力なんてなければいいのにと切に願う。幸彦に導かれ、優羽の裂け目は滾る棒の上に乗せられた。


「いやアッ、ぅ、アッ…ぬい…ァア」

「おかしなことを口走る。わたしは導いてあげたが、腰を埋めているのは優羽自身だ」

「ちがッ……違います、ヤ、~~っぅ」

「少しずつわたしのモノで満たされていく感覚に、身体中がキモチイイと叫んでるのが聞こえているよ」


向かい合いながらズシリと時間をかけて埋まっていく張型に、優羽の身体が抵抗をみせる。息を止め、唇噛みしめ、それでも受け入れていく優羽の膣は、大きな異物の侵入に収縮を繰り返していた。


「………はぁ……っ……はぁ」


どうしてという疑問が、頭の中からなくならない。
どうして、こんなことになってるのか。
どうして、食べられないのか。
どうして、こんなにキモチイイのか。


「~~~~~~~ッ、ぁ、ンッんぅ、く」

「嗚呼、全部入ったようだね」


真下の美しいカミが、嬉しそうに舌舐めずる。しっかりと連結した秘部を確認するように優羽の腰を強く抱き寄せ、かぼそい息を吐き出す優羽の唇に、形のよい唇を寄せて微笑んでいた。
目を閉じた優羽の顔が、わずかにゆがむ。


「おや、痛みがまだあるのかい?」

「…ッ…あ……」

「ないだろう。昨夜の内に、悦びを教えられたはずだ」

「ぁ…ッん…はぁ」

「じきに慣れる」


その宣言通り、ポンッと軽く浮いた腰に反して、沈む感覚には強烈な刺激を感じた。
声を押し殺しているのか、身体に突き刺さる圧迫感に息がままならないのか、そのどちらともとれる状態で優羽は幸彦に首をふり続ける。


「もッ…ヤメテくださ…ッ…」


どうして誰も、一思いに命を摘んでくれないのか。七匹もいて、絶体絶命の状況に何度も遭遇して、なぜ今もまだ生きているのか。信じられない、信じたくもない。
食べるなら、何も感じないくらい、いっきに食べ尽くしてほしい。
何度も繰り返し願ってきたはずだった。
食べられてしまうのなら、辱(ハズカ)しめを植えつけられる前に殺して欲しい。


「あ、ァァぅ、アッ…はぁ…~っ」


イヤでも感じてしまう身体が、この世に未練を残してしまう。


「やァッ…ヒッ…食べるなら早く……はや、ク…殺し…ッ…てくらさッ」


何かのため、誰かのために死ねるのだと、偽善を持ったまま眠りたいのに、鋭い牙も強靭な爪も持っている彼らは、そろって優しく、甘く、触れてくる。
痛みなど、とうの昔に追い払われてしまった。
与えられる快楽に生きているのだと実感せざるをえない。
もっと、もっと、もっと、と、貪欲に求めてしまいそうになる。
足りないと身体の芯が訴え始める。


「ヤメ…ッ…てくださ…っ…あ」


まだ引き返せる。


「も……ッ…ヤメ……」


だが、さきほど願いを叶えてくれると言ったばかりのイヌガミ様は、優羽の願いを聞いてはくれなかった。


「優羽は、引きずり出しがいがあるね。ほら、もっと答えられるだろう?」


しっかりと埋め込まれた秘部に、優羽はかぼそい息を吐くことで答える。
溶けた体は、本当はとっくに崩壊して、蜜だけになってしまったのかもしれない。それでも、襲い来る痛快な刺激は、命があることを物語り、肺が吐き出す苦悶は、命が続いていることを歌っている。
鼻から抜ける甘美な声は、知らずと幸彦のモノを堪能していた。


「アッアァァ…ッ…ひ……ん……ヤァッ」


ゆっくりと、ゆっくりと、速くもなく、遅くもなく、ただ単調に繰り返される動きに意識が支配されていく。かき出されるように、執拗にねじこまれ、引き抜かれ、内壁を擦りあげてくる棒は優羽を徐々に責め立てていた。
向かい合う幸彦の動きが心地よく揺れ、痛みのない律動に優羽の目が溶けて、涙がにじんでいく。


「ここを見てごらん?」

「ッ!?」


あまりの卑猥さに、優羽は声を失う。
薄い腹は盛り上がり、幸彦の形を浮き立たせている。そればかりか、幸彦のものをくわえこんだ花弁は、ヨダレをたらしながら淫質な水音をたてていた。
その中心で主張する小さな芽も、はっきりと尖って見える。


「実に、美味しそうだとは思わないか?」

「ヒァッ…アッ…ふ………」

「まだ小さな蕾もこんなに硬く主張させて、いっきに摘んであげたくなる」


視覚でとらえるソレは、優羽にとっては強烈なものだった。姿をあらわすたびにヌメリをおびて光る張型、わけ入られる感触が視覚を通して、より単明に優羽に快感を打ち付けてくる。


「ヒッ!?」


それこそ、イッキに摘みあげられた秘芽に意識がとんだ。


「~~~~~~ッ…んぁ…ア…ア…あ」


強制的に引き戻された現実に、優羽は荒い息を吐き出して答える。気のせいでなければ、ボタボタと有り得ない量の蜜が幸彦の足を伝って床を濡らしている。
止められるなら止めたい。それでも止まらない。
目をそらすことも出来ずに、優羽は出し入れを繰り返す花弁を凝視していた。


「わかるかい。蜜をあふれさせて、わたしのモノを深くくわえこんでいるね」

「はぁ…っ…はぁ…ッ…あ」

「ヤメテほしいかい?」


優羽は答えられなかった。
これみよがしに見せつけてくる腰の動きを遮るように、幸彦の唇が優羽の胸をその口内で弄んでいる。これ以上、何に、どう反応すればいいのか。
引きずり込まれる卑猥さに、優羽はその快感を受け入れていく。


「ァアアぁアァ…も、もぅ…やだぁ、やめて…くださ……ひ、ぅ」


弓なりにのけぞった身体に、引き寄せられた腰が強く締まった。腕を解放されたにも関わらず、抵抗する力が湧いてこない。上も下も、巧みに責め続けられ、襲い来る快楽に逆らえなかった。
それでもまだ、頭は現実を受け入れようとはしない。
きっと、心と体がバラバラになってしまったのだろう。
泣きながら抵抗する心と、気持ちがいいと貪欲に求める体の感覚が、正反対に狂っていく。幸彦の動きに合わせて軽く弾む優羽はもう、視界が定まっていなかった。全身の力が抜けきったように、幸彦に従順している。
前後に、上下に、左右に、回されるように動く腰から逃げ出すことなど不可能だった。


「やはり、優羽は嘘つきな子なのかな?」

「ッ…チが…ぅ…アァッ……」

「ウソではないと言うのなら、すべてにおいて素直であるべきだ」


ニッコリと綺麗な笑みで見上げられ、優羽は潤んだ瞳で幸彦を見下ろす。受け入れがたい現実に、首を横にふるのが精一杯だった。


「……っ、なん……で」


ふいに律動がやむ。


「ヤメテほしかったのでは、なかったかな?」


優羽は、ついに声を失った。
終わることなく繰り返される単調な動きが止まったことに、ひどく落胆している自分に驚く。恥ずかしくてたまらないのに、うずきがおさまらない。体の芯から突き上げてほしいという卑猥な願望を認めることは、死ぬよりも難しい現実だった。


「あ…ぁ…っあ」


うまく切り返せない優羽に、幸彦の笑みはさらに深さを増す。


「まぁ、このわたしが食事の最中に席をたたせることを許しはしないがね」


再び、グッと勢いよく引き寄せられた身体に、優羽は強く目を閉じる。が、次の瞬間には、大きく目を見開いていた。
その犯人でもある幸彦のクスクスと笑う声が真下から聞こえてくる。


「ここがイイようだね」

「ッ、ぃ……イぁ、ヤ、だ……ぅ」

「今さら、逃げようとしたところで、もう遅い」


快感で人は死ねるのかもしれない。
悲鳴が涙に変わり、涙が嬌声ににじむ。今までの行為が嘘のように、集中的に責め立ててくる幸彦の速さについていけない。
振り落とされないようにしがみつくどころか、断続的にぶつかり合う性器の音さえも聞こえてこなかった。


「――…ッ…ん…アッ――」


自分が声を出しているかもわからない。


「ああ、久しぶりだ」


それなのに、幸彦の声ははっきりと聞こえてくる。


「ここまで満たされる心地よさを感じたのは、優羽が初めてかもしれないね。お礼にひとつ、いいことを教えてあげよう」


酔いそうになるほど揺れる身体に、優羽は幸彦の言葉を全身に刻み込んでいく。
耳を疑うような真実が刻まれていく。


「わたしたちの食事は、獲物を切り刻んで血肉を食いあさることではない。こうして性力を引きずり出し、純粋なまでに求めあう快楽に、わたしたちは満たされる」

「な、ンッ……ん…ッ…」

「優羽。わたしたちのエサになったからには、その性を提供し続けなさい。かわりに、死よりもはるかに天国に近い、永遠なる甘美を与えてあげよう」

「アァッ…だめッ…イヤ…アァッ――」


奥底から、沸き立つような快感が這い上がってくる。
限界が近いことがわかる。
それがどれほど恐ろしい感覚なのかは、きっと目の前の捕食者にはわからない。


「わたしたちが求めれば拒絶することなく、その身体を差し出し、食事をさせるのだよ」


全身に力がこもっていた。
絶頂というよりかは、絶望の気配が近づいていて、幸彦の声も段々と聞こえなくなってくる。


「わかったね?」


最後に確認された質問に、優羽は一際高い声で答えてみせた。


* * * * * *


バンッと、勢いよく青ざめた顔で二匹の狼が姿をあらわした頃には、ちょうど幸彦の食事も終わり、ぐったりとした優羽が床におろされる所だった。


「優羽ッ!!」


気を失って眠る優羽を守るように、涼と陸が駆け寄る。


「どういうつもりだ!?」


涼は怒りを隠しもせずに、玉座にふんぞりかえる幸彦に牙を向けた。
本来なら有り得ない行為。臣下が王に牙を向けることの意味を考えれば、涼の行動は許されることではない。それなのに、幸彦は片肘をつきながら涼に笑みを返していた。


「よい娘を連れてきたね」


瞬時に、獣のうなりごえが低く吠えたのは気のせいではない。


「いつ献上するといった。優羽は、俺のだ」

「ちょっと涼、違うよ。僕たちのでしょ!?」


そこは譲れないと、陸の場違いな声まで響きわたっていた。


「陸、だまされてはいけませんよ」


成り行きの一部始終を傍観していた四匹の狼のうち、戒が陸に静かに告げる。


「彼女は、村人がわたしたちをこの地から追い払おうと寄越した娘です。隙を見せれば、逆にエサになりかねませんよ」


戒の説明に、陸は荒く上下に胸を動かす優羽を見下ろしながら、困ったように首をかしげる。その顔には、明らかに優羽の方を信じるという答えが見て取れる。それを言葉にして口にしないのは、優羽という初めて出会う存在への戸惑いに違いない。
長年の信頼関係を壊すだけの自信もなく、言葉を探す陸のかわりに、怒り冷めやらぬ涼が口を開いた。


「優羽は、他の人間とは違う」

「なぜそう言い切れるのかな?」

「演技かどうかくらい見分けられる!!」


幸彦の問いかけに涼は吠えた。が、食事を終えたばかりのカミの前で、その行為は無力に等しい。


「涼、その子は人間だ。情を持つことは、許さない」


有無を言わせない声音に、涼は押し黙る。悔しそうに細めたその瞳は、わずかに顔を歪めた優羽の姿をジッと見つめていた。
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