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第20話 七人目の帰来(前編)

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もう何時間たったのだろう。
何度か意識が途切れ、それでも止まない快楽の波によって強制的に叩き起こされた今になっても、優羽は時間の感覚がつかめないでいた。


「──ッ…ンん…ハッっ…いやアァッァ」


朦朧とする意識の中で、唯一確認できたのは温かな人肌。


「何言うてんねん。まだ始まったばかりやないか。」

「ッ…~ぅアァッァヤッ…ダメっ~」

「ダメちゃうやろ?」


寝ころぶ竜の上に強引に座らさせられた優羽は、蜜壺に突き刺さったものを強く締めつける。
直後、前のめりに突き飛ばされ、顔をしかめたまま竜に抱きしめられた優羽の身体は、高く突き上げられたお尻にあてがわれたものを知ってさらに硬直した。


「ほら、優羽。力を抜かないと入らないよ?」

「んっ晶アァッ!?」


顔をつかんで舌を絡めとってくる竜に、目をとじて答えた優羽の瞳が大きく開かれていく。
カチカチと噛み合わない歯列を舌でなぞりあげてくる竜の胸に押さえつけられるように、体重をかける晶の行為に叫びたくなる。


「そうそうイイ子だね。」


竜と挟み込むようにゆっくりと自身を埋め込んでくる晶に振り返りたくても、身体の力がうまく入ってくれない。


「んン…ンっ~ンン?!」


泣き叫ぶように大きく首を振っているのに、下から口づけてくる竜にそれさえも許してもらえなかった。


「ええ子やなぁ。」


重圧に耐え忍ぶように、か細く震える優羽の頭を竜はよしよしと優しくなでてくる。


「いやぁ~ッ抜い…て…っ抜いて」


何度懇願しただろう。
肩で息をしなければまた気を失うかもしれないほどの圧迫感に、かすれた声が同じ言葉を繰り返す。


「あぁぁあっヒァあァァ」


グチャッと卑猥な音をあげて下半身が密着すると同時に、上半身が悲鳴をあげてのけぞった。
仰向けで開脚する足の間に埋まる男根がふたつ。背中にかかる晶の吐息が落ち着くころには、完全にふたつの穴はふさがれていた。


「なっ、ダメちゃうかったやろ?」

「っ…ン…ッあ──」

「たくさん可愛がってあげているのに、まだ抵抗があるみたいだね。」

「──ッン…はっ…~ッ」


視界がぼやけていた。
ジッと動かない異物は、逃げようとした腰を四方から捕らえ、哀願して震える果実に深々と突き刺さっている。

息が出来ない。

自然に力がこもった筋肉反射に、優羽の内部が痙攣するようにキツく締まった。


「お願っ抜…ぃてッ抜いて…あッ」


望んでもいないのに与えられた苦痛に顔が歪む。魅惑の剣山から抜け出そうと悶える優羽を銀色の瞳が見つめていた。


「あき…っ…りゅ…ちゃッ」


いつもと同じなのに、いつも以上に責め立ててくる彼らに思考がうまく定まらない。


「優羽、よだれたれてんで?」

「気持ちいいね。さっきから全身が震えてる。」

「ッ!!?」

「あーあー、そない動かすから優羽イッテもたやん。」


余裕の表情で笑みすらこぼす二人の男は、中央で荒く胸を上下させながら大きな呼吸を繰り返す少女の苦しみを堪能している。
互いに探りあうように動かし始めた腰が、内部で薄い皮を擦るように力を込め、収縮する乙女を壊すために荒波を起こそうとしていた。


「イヤァッ動かなッらメェ?!」

「優羽、呂律まわってへんから何いうてるかわからへんわぁ。」

「ヒぁッ…ナカで…こすりあっ…ちゃ…ヤだッ…アァァァッァ」


ひ弱な少女の叫びなど誰も聞こえない。


「イヤァぁ変になっ壊れコワレるっ」


変わらない腰の位置に反して、暴れる上半身は、体液を振り撒くように男の肌に爪をたてる。


「こら、逃げない。」

「アカンで。」

「ッ!!?」


体中がギュッと硬直する。
逃げることもできず、受け入れることもできない全身が、性感帯のように感じるようになったのはもういつのことか。
敏感に声を荒げる優羽は、悲痛な叫び声をあげて抵抗をみせる自分の身体にすら犯されていた。


「優羽ってほんとに可愛いよね。」


晶と竜に犯される優羽の姿を見つめながら、やはりそこにいる全員と同じく素肌をさらした陸がうなだれた声をあげる。


「この感覚、久しぶりすぎてどう扱えばいいかわかんないや。」


幾分か落ち着きを取り戻した戒の横で、陸はだるそうにゴロンと寝がえりをうった。


「僕も優羽を虐めたい。」

「あれに陸が加わったら地獄絵図ですよ。」

「確かにな。」


寝転ぶ陸をはさんで、戒とは反対側であぐらをかいた輝が笑う。


「抵抗なんざ無意味だってのに、どいつもこいつも根性ねぇな。」

「根性とかって問題じゃない、ぅっ」


吐きそうと呻きながら、黒と銀の光を点滅させて力のない声で反発した陸に輝は苦笑した。


「輝は、限界じゃないのぉ?」


疲れた陸の銀色の瞳が、嬌声に叫ぶ優羽の声に混ざって輝を見上げる。
ふわふわと可愛らしい容姿で見上げた陸は、あぐらをかいて優羽を見つめる輝の瞳が、そこにいる全員と同じように銀色に色めいていることに顔を歪めた。


「かなり、目の色濃いけど?」


瞳の濃度は欲望に比例する。
その恐ろしさを知っているのは、他の誰でもない。晶と竜の間で上下に揺れる優羽しかいない。


「次は僕がもらっちゃってもいいの?」


その声に反応するように、見下ろしてきた瞳の色を見ながら陸は疲れたような息を吐き出す。
輝が口角をあげてニヤリと笑った。


「陸がヤる前でも後でも俺はかまわねぇよ?」

「うわぁ。そういう顔させたら、本当に悪い人みたいに見えるよ。」

「陸、おまえ。あれ以上の悲鳴聞きたくねぇの?」


素敵に視線を細めた輝の言葉を想像したのか、陸は少し考えてから優羽へと顔を向ける。
"あれ以上"
それはちょっとだけそそられるかもしれない。


「優羽が可哀想ですよ。」

「「戒が言うな。」」


全員がたどり着いた時の状態は、それこそ優羽にとっては快楽という名の地獄絵図に違いなかっただろう。
戒に虐げられ、とめどなく与えられる律動に酔いながら弛んだ頬を恍惚に染めていた。


「しれっとした顔してるけど、優羽がこうやって僕らの相手をすることになった原因は戒にあるんだからね!」


数時間前の状況を思い出すように陸が口を尖らせる。
思わず見惚れるほどに淫惨な情景を引き起こした張本人にだけは、今からヤろうとしていることを批難されたくないと、輝と陸は声を揃えて息をはいた。


「ッいゃらアッやァイクいくっイッ───」


その高い矯声につられて、三人の意識が悶える優羽に向けられる。


「──ぅァンッ~っアッあ」


乱れていた優羽が痙攣を起こすように竜へと抱きつくと同時に、背中の晶も体重を加えたせいで、下肢に埋まった異物が敏感なところを突いたらしい。


「どうしたのかな?」


優羽の耳元で意地悪く囁く晶の声が笑っている。


「竜だけじゃなくて俺にもちょうだい?」

「優羽、鳴き声小さいで?」


途切れかけていた意識が、強烈な快感に叩き起こされた。


「ッンンッ~っ~」


抱きついていたはずの竜から引き剥がされるように晶に向けられた顔が、叫び声を口内に押し返してくる。
それでも差し込まれた二本の男根は抜けず、ぬめりをおびたまま速度を増して打ち付けてきた。


「アアッ?!」


絶頂の先を求めるように、優羽の腕が宙をもがく。


「まだまだ上手に鳴けるやんか。」


優しく囁く竜の言葉に、首を振る力も残っていなかった。


「ほら優羽、イッテごらん?」


晶の言葉に、もう声をあげる力もない。


「──ッ」


それなのに身体は必死に暴れ狂っていた。


「しン…じゃぅ…アっ…ッ~~」

「大丈夫や。あいつが戻らんかったとしても、俺らが死なせへんよ。」

「そうだね、何をしてるんだか。」

「ッひ?!」


これ見よがしに強くなった律動に、一瞬本気で意識が飛んだ。
が、すぐに舞い戻ってきた頭の中に、チカチカと沢山の星が瞬いている。
最後の競争なのか、どちらも負けじと内壁をこすりあげるからたまったもんじゃない。


「止まッイクッまたイヤッいあぁぁあ」


膣と腸を隔てる薄い皮越しに太く固い棒を打ち付けてくる腰の間で、優羽は吐き出される欲望の液体をその体の奥底で受け止めた。


「──はぁ…はぁ…はぁ」


ずるりと引き抜かれた身体が重力に素直に従う。
自分の呼吸の音だけがやけに響き渡り、うつろな瞳で優羽は晶と竜が離れていくのを見つめていた。


「ッ?!」

「まだ、僕のあとに輝がいるけど、全部もらっちゃってもいいよね?」


真上から覗き込んできた天使の微笑みに、体が震え始めたのは嘘じゃない。


「ヤダッもぉイヤッやめアッァァ」


引き抜かれたばかりなのに、陸のものが容赦なく深々と突き刺さってくる。
イヤなのに、体が言うことを聞いてくれない。
これ以上ムリなのに、誰もやめてくれない。
そんな優羽の切なる願いを無視するかのように、休むことなく犯される蜜壷は、二度と塞がらないんじゃないかと心配になるほど、パックリとよだれを垂らして陸を飲み込んでいった。


「アカン、全然おさまらへんわ。」

「優羽が可愛いからね。」

「ほんま可愛すぎ。」


陸の下で前後に鳴き始めた優羽の姿に、収まったはずの欲情の塊が鎌首をもたげようと反応する晶と竜を輝と戒の視線が銀色の瞳で迎え入れる。
物言わぬ視線の交差は一筋の殺気を走らせてから、仲良くならんで優羽を見つめた。


「優羽は誰にも渡さねぇ。」

「そっくりそのまま返すよ。」


獰猛さを隠さない輝の物言いに、晶がため息を吐く。
陸の下で甘く泣く優羽から輝へと銀色の瞳を走らせて、ふっと笑みをむけた晶に室内の雰囲気は賛同の意を示していた。
優羽は誰にも渡さない。
合言葉のように口にしながら、譲り合うように優羽は彼らに犯される。
交互に入れ替わる人肌と、視界にうつる無限の世界。桃源郷の先にあるものは、真っ白で何もない無重力の快楽だけ。


「りっ陸ッ~~っ~クッぁぁあ」


前後に激しく揺れていた世界が、折り曲げられた足の奥に白濁の液体を注いだことで終わりを告げた。
何も聞こえない。
陸が離れたのかどうなのかもわからない。
何度も助けを求めて伸ばした腕は、より深い快感を植え付けてきただけで、力の抜けきった身体は、栓が抜けたワイン瓶のようにドクドクと身体中の液体を流しているようだった。


「輝、お待たせ。」


明るく弾んだ陸の声とは対照的に、暗く沈んだ存在が近寄ってくる。


「ッ」


逃げたいのに、指先すら動かせなかった。
呼吸をしているのが不思議に思うほど、身体中が溶けてしまったように意識がまどろみ、のどが異常な渇きを訴えていた。


「まず水飲んどけ。」


さっきまで陸の顔が見えていたはずなのに、今は輝の顔が見える。
細い瞳孔、銀色の瞳、隠そうともしない獰猛な気配。輝だけじゃない。異様な雰囲気は全てが理解できなかった。
それなのに、いつもと違う愛撫、いつもと違う律動。いつもと違う快楽の与えられ方が、妙に懐かしく感じるから不思議だった。


「これが最後になるといいな。」


本気かどうかはわからないが、直後に走った戦慄に心からそう願う。


「うわっ。輝、最悪。」

「これは目の毒だね。」

「そう言いながら、ちゃっかり見てるやんか。」

「優羽の涙が美味しそうですね。」


ゴクリとのどを鳴らした四人の目の前で、優羽が爪をたてて反応するのを心底楽しそうに見つめ返す輝がいた。
狂声に涙する優羽が可愛くて可愛くて仕方がない。
淫らに乱れ、狂い咲く花弁の下肢は女特有の匂いと色香を振り撒きながら、そこら中に優羽の愛液を踊り散らしていた。


「うまいな。」


たしかにそう聞こえたはずなのに、自分のあげる悲鳴じみた狂喜の声がすべてを掻き消していく。


「───…~ッ…」


とっくに渇れていたはずの声が潤みをおび、強く伸ばした腕に輝が答えるのを最後に、優羽の記憶は失われていった。

───────────
──────────
────────

丸一日地上を荒れ狂っていた嵐がおさまり、次の日の昼を過ぎるころには世間ではいつもと変わらない日常が戻っていた。
いや、被害を受けた家々の主たちはその修復におわれていたが、大抵の人々は過ぎ去った嵐を忘れるかのように降り注ぐ陽光の下を歩いていく。


「また派手に散らかしたもんだ。」


帰宅するなり淫惨な空気が充満する部屋に足を踏みいれたこの家の主も、室内で巻き起こった嵐の残骸に深い息を吐き出した。
ざっと見渡したところ、力を使い果たしたように子供たちが転がっている。


「優羽は無事なようだね。」


その中央で一際小さな寝息を立てる少女を見つけると、幸彦の顔がほっと和らいだ。思っていた以上に心配していた胸中を自覚して驚いたことは、幸いにも誰にも悟られてはいない。
誰もが優羽をその腕の中におさめようと、絡まりあってベッドに花を描いていた。
ふっと、愛しそうに瞳を緩めた幸彦の声がため息をはく。


「少しヤりすぎな気もするが。」


苦笑した幸彦の視線にとらえられた箇所には、乾ききらない愛液が大きな波紋をうんでいた。
そこかしこに見られる乱れたあとは、この密室で何が行われていたかを容易に想像させる。それだけに感慨深い息が幸彦の口からもれたに違いない。


「懐かしいだろう?」


優羽を愛しそうに見つめながら訊ねた幸彦の背後に、よく見知った男の気配が現れた。


「いつまでふて腐れているつもりかな?」


困ったように眉をしかめるも、幸彦は振り返らない。


「そんなに心配しなくても優羽は大丈夫だよ。」

「そんなんじゃない。」

「そうかい?」


ムスッとすねた子供のように歩み寄ってきた男に、やっと幸彦は視線をむける。
そこには、数日前までまとっていた不安定さを一掃させた涼がいた。


「優羽をもらっていく。」


返事も聞かない内に、涼は寝ている兄弟たちを踏みつけないように気を付けながら、優羽へと腕を伸ばす。


「今日一日だけだ。」


すれ違い間際に瞳をとじた幸彦に、優羽を抱いたまま、涼は眼鏡のない目を閉じて思いを飲み込んだ。


「それでもいい。」


落とした視線の先で柔らかな香りをはなつ優羽を見つめて気分が少し持ちなおる。
今なら素直に言えるかもしれない。


「優羽が傍にいてくれるなら。」


涼の答えに、幸彦が嬉しそうな笑みをこぼす。そうして家のどこかに消えていく二人の背中を見送ったその瞳は、安心したように疲れた息を吐き出した。
何か大切なことを忘れている気がする。
それが何かはよくわからないまま、優羽はひんやりと心地良い空気に眉をしかめながら目を覚ました。


「ここは────」


見たことがある天井。
さっきまでいた部屋とはまるで違ういつもの自室に、人知れずホッと安堵の息が吐き出される。
カーテンの隙間から射し込む陽光は冬晴れの寒さを感じさせながらも温かい光を室内に届けていた。


「───んッ?!」


寝返りをうとうとした身体が妙なきしみをあげたことで、優羽の脳裏に記憶が甦(ヨミガエ)る。記憶が正しければ、四つん這いにさせられ、高くあげさせられた腰に輝が突き刺さっていたはずだ。
自室に運ばれた記憶はなく、彼らが自主的に離れる訳がないと思えるだけに疑問が頭に浮かんでいた。


「みんな、は?」

「目が覚めたか。」

「うんぅぇえっ、どどどうして!?」


言葉にならないのも無理はない。
当たり前のようにホホを撫でてくる手の持ち主に、優羽は混乱の声をあげてその名前を叫んだ。


「涼ッ!?」


眼鏡をしていないが、彼で間違いない。
一瞬、本当にここが自分の部屋か再確認するように、半身を起こして部屋を見渡した優羽は、たしかに自室だと確認するや否や、今度はベッドに腰かけている美麗な男の顔をまじまじと見つめた。何度か会ったこともあるし、一度は体も重ねた相手。だけど、どこか、以前会ったときよりも何かが変わっている気がした。


「ああ。"涼(リョウ)"だ。」

「りょ…ッ…ンっ!?」


重なった唇に、ますます混乱する。
以前、彼と逢瀬を交わした結果、自分に訪れた惨劇を優羽は忘れていない。


「いやぁ!」


パンっと乾いた音が響いた。
青ざめた顔で肩で息をしながら、優羽は人を叩いた手のひらの痺れに震える。はぁはぁと、変な呼吸音とトラウマからくる緊張感に、出来ることなら今すぐ彼を部屋から追い出したい。
確かに先日の電話で傍にいてほしいと言ったのは自分の方だが、いざ目の前に現れると矛盾した感情が生まれくる。


「こないで!」


声が震える。
気のせいじゃなければ、身体中が震えていた。


「~~~っそんな顔しないで。」


叩かれた側の頬をおさえて、悲しそうに顔を伏せる涼の姿に泣きたくなってくる。罪悪感が胸の中でぐるぐると回って、吐きそうなほど苦しかった。

本当はそばにいてほしい。

素直になることが許されるのなら、涼に手を伸ばして謝りたい。眼鏡を捨てた横顔にどこか懐かしさを感じる彼を抱き締めたくてたまらなかった。


「ごめんなさい。」
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