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第14話 罪の償い(後編)

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晶も知っている。

それだけに腫れ上がった秘部の赤さが羞恥を運んでくる。


「ちょッ待って、あっヤぁ!?」


まだ乾ききらない蜜壺を経由して差し込まれた菊壺は、晶の指を押し返そうと優羽の身体を強く硬直させた。


「大丈夫だよ、ほら。力抜こうか。」

「っく…ヒッだっ?!」


座薬を入れる要領くらいにしか思っていないのだろう。本来排泄する場所は、侵入してくるものを簡単には許さない。
たとえそれが一本の指であったとしても。


「今日は許してあげないよ。」


笑顔すら存在しない晶の指がどんどん埋め込まれてくる。
抵抗は無意味。
数ヶ月前に慣らされ始めた快楽の延長を求めて、優羽の身体はシーツを握る手の中に緊張を移動させていく。そうして次第に早くなる呼吸と心音と共に、ついに優羽は晶の指を根本まで受け入れた。


「っあッ…ゥ……はぁ…やだぁ……」


泣きたくないのに涙が出てくる。
すでに二人の男を受け入れてきた優羽の身体は、もう抗う力も残っていない。
感じたくないのに感じる。


「やめてぇ…っヒッあ」


折り曲げられて、胸につくほどの膝に圧迫された呼吸音が苦しい。
ゆっくりと抜き差しを始めた晶の指の動きが摩擦熱を引き起こして、お尻の内壁を熱く溶かしていくようだった。


「やめないよ。それに、優羽のここ。俺が初めてをもらうって言ったと思うけど。」


甘い吐息をあげながら、初めて知る快楽に優羽の瞳が震えていく。


「ヤッ…あきッへん…なんか…ヤッ」

「変にさせてるんだよ。」


感じたことのない新しい快楽を迎えることが怖いと、反論する優羽を見つめる晶の顔が嬉しそうに微笑む。


「優羽は本当に俺をあおるのが上手だね。大丈夫、ちゃんと気持ちよくなるから。」


どこが大丈夫なのかわからない。
涙でぼやける視界の中で、優羽は更なる恐怖を見つけて息を飲んだ。


「晶ッやめッイヤぁッ!?」


どこから取り出されたのか見当さえつかない魅壷の玩具が下半身に消え、そのまま否定の声をあげるまもなく、乙女の入り口にめり込んでくる。
無理矢理暴れ始めた機械を晶の指が埋め込まれた菊門の上に挿入された優羽は、身をよじって恐悦に鳴いた。


「ッいヤぁッ…ダメ…晶ぁっ───」


無駄に空気を振るわせる機械の音と愛液の音が、淫らに混ざりあっていく。
激しく犯される下肢に目を白黒させながら、優羽はシーツを強く握りしめると同時に、快楽に沈む腰を高く浮かせた。


「───ヤアァっあぁッ晶っあきッら」


沸き立つ相乗効果に助けを求めてさ迷う優羽の声が甘く高く室内に響き渡る。
何度も何度も自分を犯す男の名前を呼びながら、快楽を教え込もうとする穴を強く締め上げてイク。


「こら、俺の指を出そうとしない。ちゃんと力を抜いて。」

「ヒァあッ?!」


浮かせた腰を落ち着ける暇さえなく続けられる愛撫は、優羽の意識を飛ばさせるには十分だった。
だけど、それを晶が許してくれるハズがない。


「約束を覚えてるかな?」


陰湿に響く室内に、静かな晶の声が真上から落ちてくる。
その綺麗で残酷な光をはなつ目を見上げながら、優羽は再度大きな声をあげた。


「ほら、思い出してごらん?」

「も…らめ…ヤッ?!」

「忘れてしまったのなら、もう一度教えてあげようか?」


グイッと反転した身体に驚く間もなく、シーツに額を押し付けられた優羽は、晶の指が引き抜かれた場所にあてられたモノに気づいて顔を青ざめさせた。


「晶ッイヤァ…お願い…ヤ───」


本能が全身で拒絶する。


「───ッ?!」


グイッと腰が高く引き上げられた直後、裂かんばかりの勢いで主張する晶のモノがゆっくりと侵入してきた。
蜜壺に差し込まれたままの玩具がキツく締まり、苦しさで息ができない。


「アッあ…あき…~っ抜い…て」


全身が抵抗して無意識に力がこもる。


「無理ヤダッぃやアァァッ?!」


根本まで埋め込まれた重力に、叫び声が肺を突き破ってシーツに吸い込まれていく。
理性が崩壊し、脳が引き起こす過剰反応に視界がぼやけるが、ふたつの穴を支配する張型に意識は明滅を繰り返していた。


「身体中が震えてるね。でも、わかるかな?」


差し込まれたまま振動し続ける蜜壺とは違い、腰を動かし始めた晶のせいで優羽の菊壺は軋みをあげる。
指なんて比じゃないほどの熱い痛みと圧迫感に、ただただ混乱していた。
それなのに、こんな風に責め立てられても、快楽を受け入れようとしている自分自身が何より不可解で恐い。


「ヤッ…っ…晶ア…動かなッダメ」


ダメだと言いながら、ヤメナイデと心は叫ぶ。


「アァあアっ…抜い~ヤッ…んっ」


必死に踏みとどまろうとしていた正常な判断は、髪を掴まれて振り向かされた口づけに追い払われた。


「イッ…~ンン…ッ…ん」


絡まる舌が、うごめく下半身から全身に突き抜ける快楽の声をくぐもらせる。
頭がおかしくなりそうだった。
やけどしそうな熱さで身体が前後に揺れ、ビクビクと感じ始めているのがわかる。
出すばかりに特化した筋肉は逆流する異物に弱く、吐きそうなほどの悦が込み上げてくる。


「アァ…いやぁっ~ッ」


泣きながら恐怖と凌辱行為に耐える優羽の腰を晶は優越な笑みで見下ろしたまま何度も力強く打ち付けていた。
第三者がいれば手をさしのべたくなるほど、高くあげられた腰に刺さる卑猥な物質達は、全く異なる動きをしながら可哀想な少女の穴を犯していく。


「~っめなさっイッ?!」


一度押し込まれた絶頂の方法に、二つの穴を同時に犯されることの喜びが答えてようとしている。

イク

そのたった二文字を体験するには、あまりにも衝撃が強すぎた。


「イヤっくっ晶ッあきぁぁぁあ」


受け止めきれない快楽の波に、シーツを握りしめて逃げようとする優羽の腰を晶は引き寄せて強く自身を埋め込んでくる。


「出すよ。」

「イッやァあぁ止まっアァ」


晶が注ぎ込んでくる前の最期の律動に、もう完全に二つの穴は繋がってしまったと思えるほどだった。腸へと続く入り口を初めて汚される感触はなんとも言えないほど屈辱的で、どくどくと注ぎ込まれてくる液体に背筋がゾクゾクと痙攣していた。


「ひっ…う」

「まだ終わらないから、体制はこのまま崩さないように。」


蜜壺に埋め込まれたままの玩具をそのままに、自身を引き抜いた晶は大きく空いたその箇所に新たな玩具を押し当てる。


「っアッ!?」


抵抗する暇もなく、優羽は挿入されたそれが獣の尻尾なことに気がついた。
外見はただのフサフサと気持ち良さそうな尻尾なのに、中はゴツゴツと優羽を堪能するかのようなイビツさを持っている。
どうやらこれも振動するらしいのだが、晶が手にもつリモコンに嫌な考えが拭(ヌグ)いきれない。


「これはね、知ってる人にもついていかないって約束をやぶった悪い子にするお仕置き。俺たちを選ぶっていう覚悟が弱いようだから少し痛くしようね。」


言っている意味がよく理解できなかった。たまに、そう思うことがあった。

彼らは何を言っているのだろうか?

与えられ続ける快楽の端で渦巻いた疑問に震えたその時だった。


「お待たせしました。」


遠慮なく声をかけてきた戒の姿に優羽の息が止まる。
四つん這いのまま驚き固まっている優羽をよそに、晶が笑顔で服を脱ぎ始めた戒を迎え入れた。


「おかえり、戒。」

「優羽が涼と接触したと聞いた時には、心臓が止まったかと思いましたよ。」

「間に合わなかったから、こうして優羽は償ってるんだけどね。」


服を脱ぎ捨て平然と近づいてきた戒は、ベッドの上で震える優羽を見下ろすとニコリと笑みを向ける。
どこから何を尋ねたらいいのかわからないが、こんな事態にも関わらず優羽は感じている現状を悟られないことに必死だった。


「いい顔してますね。」


同じように覗き込んでくる晶と戒を横目で眺めながら、優羽は唇をかみしめる。
もれる吐息までも押し殺そうとシーツに顔を押しあてたが、ここぞとばかりにリモコンのスイッチをいれた晶のせいで身体が大きくのけぞってしまった。


「尻尾は可愛いので、そのままでいいですよ?」


笑顔で宣告した戒は痛みに喘ぐ優羽を抱き起こすと、その言葉通り"尻尾はそのまま"に、引き抜いた玩具と入れ替えるように膣に男を突き刺してくる。
もちろん優羽は首を振って拒否したが、うまく入らない力のせいで戒の全てを受け入れる羽目となってしまった。


「アっ戒…っ…イヤ…ヤァアッ」


戒の上に座り込むように引き起こされた体が、上下する視界に揺られながら新しい快感を与えてくる。


「戒ッいヤメ…ッ…ム…りっ」

「無理じゃありませんよ?」


これからじゃないですかと、戒の楽しそうな瞳が苦悶と困惑に戸惑う優羽の前で揺れていた。
吸いつかれた肌に真新しい後を残していく優羽の体は、胸の頂にたてられた歯に反応して戒を強く締めあげていく。


「イッテもイッテも、足りないでしょう?」


そんなことないと反論したくても、喘ぎ声さえままならない口はベッドをきしませた晶に奪われ、羞恥と混乱に意識が遠のいた。


「んぅ…ッ…ヤッ…アァッァア──」


遠のいてもすぐに舞い戻ってくる快楽に、優羽は強く腰をひく。
逃げようと身をよじらせても、戒が逃がしてくれない。


「ヤッ…怖…ぃ…ッいやぁ」

「優羽、怖くないから力を抜いてごらん?」

「ダメ…っ…でき…ャ…ッい…」


尻尾をいじりながら、真上から肩を押さえつけてくる晶の声が甘く優羽の耳元で響く。
下から突き上げられる戒の動きと重力に従って感じる乙女は、二人の男に与えられる強制的な快楽にあらがえる術など持っていなかった。


「涼は気持ちよかった?」


晶の言葉にハッと見開いた目に、戒の真っ直ぐな視線が飛び込んできた。
ゴクリとのどが鳴る。


「~~~ッ」


非難の目に耐えきれず、顔を隠そうとした両手は晶にとらえられ、逃げようともがく全身は戒に支配される。
うつむいた優羽のホホを涙が伝い、ポタポタと戒と自分の間に落ちる雫を見つめながら、優羽は輝にしたのと同じ懺悔を口にした。
ごめんなさい。
その言葉しか繰り返せない自分はなんて愚かで、バカだったのだろう。きっとそう思ったに違いない戒が、舌で涙をすくうように頬を舐めてくる。


「許せませんね。こんなに可愛い姿を家族以外に見せた罰は、やはり必要でしょう。」

「ヒッ?!」


そこからしばらくは記憶がない。
ただ気付いたときには、荒い息を肩から吐きだし、涙とヨダレに濡れた顔も髪もグチャグチャになっていた。


「優羽、生きてますか?」


優羽は脱力した全身を戒にあずけながら放心状態で呼吸音だけを聞いている。

"誰でもいいのか"

寂しそうな声で囁かれた秀麗な秘書の言葉は、あの時に感じた痛みよりも重みを増して優羽の心にのしかかっていた。


「誰でも…いいわけじゃ…ない…の」


何を口にしても言い訳にしか聞こえない。
なんて浅はかなことをしたのだろう。
裏切るつもりなど微塵もなかったのに、もう許してもらえないかも知れないと思えば思うほど、狂いそうなくらい後悔が押し寄せてくる。


「ごめんな…さ…ぃ」


ごめんなさいと、それ以外言葉を知らないオモチャのように、何度も謝って小さく震える優羽に、晶と戒は息を吐いて優羽の頭を軽く叩いた。


「ひっあっ?!」


引き揚げられるように、ずるりと引き抜かれた尻尾と戒に身体が情事の音を響かせる。
ゴポッと、卑猥な音をたてた穴がポタポタと白濁の液をシーツに落とした。


「誰でも言い訳じゃない…のッ」


うまく顔を向ける勇気がなくて優羽はうつむく。
戒から晶に渡った身体は全身が溶けてしまったみたいにだるかったが、彼らを失うかもしれない恐怖に比べたらどうってことはない。


「本当なの…ッ…ごめんなさい。」


言葉を述べればのべるほど、言い訳に聞こえた。
自分は愛する彼らを裏切ったのだ。
危険を回避する方法なんていくらでもあったのに、勝手に信用して身体を許してしまった。


「何のために持たせた携帯か、わかりませんね。」


戒の言葉に優羽はギュッと目をとじた。


「本当、頭に血が上ったのはいつぶりかな。」


晶の言葉に返す言葉も見つからない。


「優羽が涼を求めるのは仕方がないとはいえ──」

「え?」

「───でも、今はダメだよ。」


思いもよらない晶の言葉に顔をあげた優羽は、泣いていたことさえも忘れて晶の顔を見上げた。
"理解できる"と、たしかに晶はそう言ったが、言っている意味が理解が出来ない。


「彼が戻ってくるまでは、イイ子で我慢しましょうね。」


後ろから抱きしめるように身体を引き寄せる戒の言葉も、よくわからない。
狐につままれたような顔で不思議そうな顔をする優羽を見つめた晶と戒は、そろって優しい笑みを浮かべるとプッと噴き出した。


「随分と酷い顔してるよ?」

「晶が怖がらせるからでしょう?」

「戒も人のことは言えないと思うけどね。」


楽しそうに会話する二人を、優羽はますます混乱の顔で見つめる。
彼らは何を言っているのだろうか。


「え、あの…っ私、どうしたら?」

「どうって?」

「その…ッ…あの」


うまく言葉が見つからなかった。
てっきり別れを宣告されるだろうと思っていたのに、和やかな雰囲気を見せ始めた二人の様子に困惑する。
言葉を探すように視線を泳がした優羽に、晶と戒はそろって怪訝な顔をした。


「まさか優羽は、わたしたちを捨てるつもりでいたのですか?」

「えっ!!?」


背後から抱きつく戒の言葉に、驚いた優羽は振り返る。
まさか捨てる側が自分だと思ってもみなかっただけに、その衝撃は大きかった。


「わたしたちが、優羽を手放すわけがないでしょう?」

「俺たちから離れようなんて考えていたのなら、それこそ1から教え込ませないといけなくなるね。」


いたずらに笑った晶と戒に、さっきまでとは違う意味で涙腺が緩み始める。


「えっ、じゃあ…私…ッこれからもずっと一緒にいられるの?」

「この子は何言ってるんだか。そんな当たり前のことがわからないかな。」


晶のあきれた顔にホッとした感情のせいで、込み上げる思いに歯止めが聞かない。


「それでは、仲直りの印に親睦を深めましょうか。」

「父さんと陸が来るまでだけど、今度は優しくイカせてあげようね。」


晶の提案は暗黙のうちに戒に了承されたらしく、怒り心頭の幸彦と陸が乱入してくるまで優羽の体はふやけっぱなしだった。

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ガチャリと音をたててベッドルームから出てきた二人の男は、乱入した時とはうってかわって晴れ晴れしい顔をしていた。


「優羽って、なんであんなに可愛いんだろうねぇ。」

「陸とは違うからだよ。」


出てくるなり上機嫌な陸の疑問は、同じく上機嫌な幸彦の答えに固まる。
パタンと閉じられた扉の前で全裸の男同士の会話は聞きたくもないが、その場にいる全員が見慣れた光景だと許しているからいいのだろう。


「いやぁ、陸の本性は相変わらずだね。」

「父さんだって僕のこと言えないじゃん!!最後の方なんて、優羽の声出てなかったんだよ?」

「それは最初に、陸がベッド下に収納してある全部の玩具を優羽に使った時からだったよ。」

「違うよ。僕と父さんが、どっちがより優羽をイカせられるかの勝負を始めた頃くらいからだよ。」


一回り以上も年が離れた親子の会話とは思えない会話に、あきれた息がかかるのは当然だった。
高級ホテルをなかば私用化した一室で雑談をかわしていた晶と輝と戒は、変態という言葉では済まされない親子の様子に顔をひきつらせる。


「優羽は無事なんだろうな?」


話しの折り合いをつける目的で輝が声をかけたが、お互いの顔を見比べて首をかしげているあたり本人たちもよくわかっていないようだった。


「でも、しばらくは起きないと思うよ?」

「もう少し楽しみたかったんだけどね。」


室内の沈黙が意味するものはなんなのか。
防音効果の高い壁を貫通するほどの優羽の奇声が止まったのは数分前。


「あともう少しかかるようでしたら、止めに行ってましたよ。」

「本当は何度かノックしたはずなんだけどね。」


塞がれた扉の向こうから聞こえるすがるような悲鳴に、助けの手は結局差しのべられなかった。
違う怒りが沸き起こると、取り残された三兄弟は辛辣な面持ちで近づいてくる二人を見つめている。


「えー。みんな結構エグいことしてたじゃん。僕たちだけ非難されるのはおかしいと思う。」

「トラウマになったらどーすんだよ。」

「他と交わるとどうなるか、優羽の脳裏に叩き込むにはいい教材になった程度だろう。」


日付が変わり、すっかり夜も暗くふけこんでいたが、底抜けな体力をもつ残虐な二人は余裕の笑みを浮かべながら空いている席に腰かけた。


「優羽も酷いよね。僕がいるのに他の男についてっちゃうなんてさ。」

「相手が涼だったからね、仕方ないよ。」

「彼がすぐに優羽を解放したのは意外だったが、落ち着いてきてるとみていいのかな?」


陸の文句を受け流した晶に、幸彦の疑問がかぶせられる。
それに答えたのは、戒だった。


「まだ警戒しておくべきですよ。」

「あいつは独占欲が半端ねぇからなぁ。」


輝の苦笑は、その場の全員を苦笑させる。
だが、次に戒がこぼした言葉には冷酷な表情をみせた。


「何も覚えていない優羽の心につけ込んで、名前を呼ばせたのは許せませんけどね。」

「そんなことしたの!?」


信じられないと、立ち上がった陸を幸彦が座るようにうながす。
しぶしぶでもそれに従った陸は、悔しそうに唇を噛みしめた。


「ぶっ殺してやる。」

「こうなっている原因も忘れているなら、このまま消えてしまえばいいよ。」

「おい、晶。冗談に聞こえねぇよ。」


陸のつぶやきをひろった晶の笑みに、輝が白けた息をこぼすが、そういう輝にも白けた視線がむいている。


「俺はなんもしてねぇよ?」

「よく言いますよ。優羽をナンパしたあの3人は、そろって再起不能らしいじゃないですか。」

「優羽を怖がらせた天罰ってやつだな。」

「そういうことにしておきましょう。」


わざとらしく、しらを切り通すことに決めたらしい輝に対して戒も肩をすかせる。それを見届けた後で、脱線した話しを戻そうと幸彦は席をたった。


「優羽と触れたことで、彼に何かしらの変化があらわれると助かるんだが。」


こればかりはどうしようもないと、酒を注ぎ始めた幸彦のつぶやきに輝が答える。


「俺に啖呵キレるほどには、なったみてぇだぜ。」


ニヤリと面白そうにゆがんだ輝の表情に、幸彦は嬉しそうに口許を緩めた。
そして一口グラスをかたむけると、集まる視線に向かって深い息をこぼす。


「もう一人、やっかいなのが残っているからね。」


誰も何も言わない。

何かを思い出すように、各々の手を見つめながら眉根をよせる。


「もっと早く帰ってくると思ってたんだけどなぁ。」

「そうですね。少し遅い気もします。」

「ってか、誰か連絡したのかよ?」


沈黙は否定。


「見境なくヤってなきゃいいけどね。」

「制御の仕方がわからないのなら、叩きこんであげればいい。」


晶の苦言に、幸彦は瞳を鋭利に細めて進言した。


「家族以外にも等しく。」


音をたてて空気が凍る。
薄く笑った幸彦の瞳に、同じ残虐な光を宿す四つの視線が向いていた。

──────To be continue.
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