4 / 9
ラリエットの決意
しおりを挟む
「頬を触ったり、肩を自分に寄せるって何ごとよ。私とアルフレッド様は仲が悪かったのよね?可笑しいわ。」
「はい、アデイル様がお生まれになってもお会いする事はありませんでした。さすがに毒で生死を彷徨われておいででしたので、心配では無いでしょうか?その上、記憶も無くしておいでですし。」
「アルフレッド様がユリアさんに毒を盛られて死にかけた妻を心配?ユリアさんと言う愛する人が居て本当は私が死んだ方が二人には好都合でしょうにーーーー。」
「ユリア様の事ですが、アルフレッド王太子殿下はアデイル様がお生まれになった頃からユリア様のお部屋にお渡りが無かったようです。」
「それは本当のお話しですか?」
「はい、ユリア様付き侍女からの情報です。」
「どうしてかしら、学生時代からの恋人だって言っていらしたのに------。」
侍女は頷き話しを続けた。
「ユリア様は、アデイル様がお生まれになって幸せそうなラリエット王太子妃殿下を恨まれておいでだそうです。」
「そうよね、恋仲の二人に赤ちゃんが出来ないのは辛いわよね。私の方が先に身ごもったのがいけなかったのかしら。」
「そんなことはありません。赤子は神様からの贈り物です。ラリエット王太子妃殿下の幸せのために送られたのでしょうね。」
「そうだと嬉しいのだけど------。」
「でも、アルフレッド様がユリアさんの部屋に行かなくなった事なんてこちらは知らないわ。殿下がこっちに来てた訳じゃないんでしょ?
そんな事で殺されかけるなんて、私の方が可哀そうじゃないかしら。不敬だけど全てアルフレッド様のせいじゃないかしら。」
「ラリエット王太子妃殿下、落ち着いてください。誰かの耳に入ったら大変です。お疲れのようですから少しお休みになってください。
今は体を治すことだけに専念致しましょう。」
そう言って侍女は部屋を後にした。
ラリエットは隣のゆりかごで眠る我が子の寝顔を見ながら眠りについた。
アルフレッド執務室
「やっと戻られましたか。アルフレッド様まさかラリエット様授乳姿を見てきたのですか?」
執務室に戻ったアルフレッドにデイリーはそう言った。
あの傲慢な女があそこまで変わるとは。あのラリエットがまるでか弱い乙女のようで、私でも彼女を守りたいと思ってしまった。
潤んだ瞳に頼りな下げな姿に豊満な胸---純粋な眼差しに潤んだ瞳、今の彼女は男達の理想そのものだった。
「それにしても、記憶を無くしたラリエット様は別人のようでした。厚化粧を落としシンプルな洋装に大人しくしていればあんなに美しかったとは知りませんでした。」
「不敬だぞデイリー、ラリエットは俺の妻だぞ?」
「アルフレッド様、どうしたのです。貴方がそんな風に怒るなんて、ラリエット様に惚れたのですか?アルがラリエット様を庇うなんて---、あんなに嫌っていたのに------。」
「------。」
「どうして黙っているのです。 相手はラリエット様です。今はたしかに大人しいが、記憶が戻れば元の王太子妃に戻るんだぞ、戻れば前と同じ可愛げもクソも無い高慢な女になるんだぞ?」
「---それは---そうかもしれないが----。」
私は、今のラリエットを手放したくないと思ってしまっている。
優しく、それでいて妖艶で美しいラリエット。ベッドで横たわるラリエットの姿ーーーー厚い化粧品と髪を下ろしシンプルな装いなだけであんなにも官能的になるだろうか?
「アルはラリエットに愛情が湧くのかーーー。夫婦としてやっていくつもりなんだな。」デイリーはユリアを切り捨ててラリエットを愛せるのかと言っているのだ。
「------それは、そうするつもりだ。」
デイリーは今の言葉では納得していないようだった。
「元老院達はアデイル王子だけじゃ納得しないぞ、------それとも又妾を見つけるのか?その時はユリアみたいな庇護欲の強い可愛い下級貴族では無く少しぐらい気位が高くても高貴な血筋のご令嬢を妾にすることだな。」
「馬鹿か、妻が大変な時に妾など探すわけ無いだろう。子供は----欲しいな。ラリエットとの子がいいーーーラリエットに産んでもらいたいと思っている。今は記憶を無くして不安なラリエットに寄り添いたいし優しくしたいと思っているのだ。」
その時背筋がゾゾッっとした。ラリエットは寒気がして目が覚めた。アデイルは相変わらず可愛らしい寝息を立てている。
私の子供---二度とこの手に抱く事が無いと思っていた。
どうしてそう思ったのかしら------。
その時酷い目眩に襲われ脳裏に走馬灯のように今とは違う自分が流れてきた。
脳裏に浮かぶ、私は病室で泣いているーーーー前世の自分の姿が---。白い部屋、白いベッド------横たわる私。
私----流産をして二度と子供が産めない身体になり、夫から離縁されたのだった。
夫は世間体が大事で、出世には、家と妻----子供が必要だった。子供が産めない私は不要だった。
流産した私は退潮が思わしくなく心労と食欲が落ち日に日に弱り果て命を落とした。
今度こそ『幸せな人生を生きたい!優しい旦那様に可愛い子供ーーー幸せな家庭。』今度こそ私に幸せをーーーー。
でも今世も同じだ、旦那様に愛されず妾に毒を盛られ死にそうになっているのに夫は見舞いも来ない。------私に似たラリエットの魂が、私の心に共鳴したのかしら。
そして私はラリエットととして生きているのかもしれない。
私はラリエットであってラリエットじゃない。
身体を起こし、アデイルの頬を撫でながら思わず涙がこぼれてしまった。
自分の子と言われてもピンと来なかったが、抱き上げ乳を上げたこの温もりが------愛しいと、アデイルの存在が私の母性が愛おしいと言っていた。
この可愛らしい存在アデイルを守れる母でありたいと---私はこのままではいけない。強く、早く元気になってこの子をずっと慈しもうと誓った。
「はい、アデイル様がお生まれになってもお会いする事はありませんでした。さすがに毒で生死を彷徨われておいででしたので、心配では無いでしょうか?その上、記憶も無くしておいでですし。」
「アルフレッド様がユリアさんに毒を盛られて死にかけた妻を心配?ユリアさんと言う愛する人が居て本当は私が死んだ方が二人には好都合でしょうにーーーー。」
「ユリア様の事ですが、アルフレッド王太子殿下はアデイル様がお生まれになった頃からユリア様のお部屋にお渡りが無かったようです。」
「それは本当のお話しですか?」
「はい、ユリア様付き侍女からの情報です。」
「どうしてかしら、学生時代からの恋人だって言っていらしたのに------。」
侍女は頷き話しを続けた。
「ユリア様は、アデイル様がお生まれになって幸せそうなラリエット王太子妃殿下を恨まれておいでだそうです。」
「そうよね、恋仲の二人に赤ちゃんが出来ないのは辛いわよね。私の方が先に身ごもったのがいけなかったのかしら。」
「そんなことはありません。赤子は神様からの贈り物です。ラリエット王太子妃殿下の幸せのために送られたのでしょうね。」
「そうだと嬉しいのだけど------。」
「でも、アルフレッド様がユリアさんの部屋に行かなくなった事なんてこちらは知らないわ。殿下がこっちに来てた訳じゃないんでしょ?
そんな事で殺されかけるなんて、私の方が可哀そうじゃないかしら。不敬だけど全てアルフレッド様のせいじゃないかしら。」
「ラリエット王太子妃殿下、落ち着いてください。誰かの耳に入ったら大変です。お疲れのようですから少しお休みになってください。
今は体を治すことだけに専念致しましょう。」
そう言って侍女は部屋を後にした。
ラリエットは隣のゆりかごで眠る我が子の寝顔を見ながら眠りについた。
アルフレッド執務室
「やっと戻られましたか。アルフレッド様まさかラリエット様授乳姿を見てきたのですか?」
執務室に戻ったアルフレッドにデイリーはそう言った。
あの傲慢な女があそこまで変わるとは。あのラリエットがまるでか弱い乙女のようで、私でも彼女を守りたいと思ってしまった。
潤んだ瞳に頼りな下げな姿に豊満な胸---純粋な眼差しに潤んだ瞳、今の彼女は男達の理想そのものだった。
「それにしても、記憶を無くしたラリエット様は別人のようでした。厚化粧を落としシンプルな洋装に大人しくしていればあんなに美しかったとは知りませんでした。」
「不敬だぞデイリー、ラリエットは俺の妻だぞ?」
「アルフレッド様、どうしたのです。貴方がそんな風に怒るなんて、ラリエット様に惚れたのですか?アルがラリエット様を庇うなんて---、あんなに嫌っていたのに------。」
「------。」
「どうして黙っているのです。 相手はラリエット様です。今はたしかに大人しいが、記憶が戻れば元の王太子妃に戻るんだぞ、戻れば前と同じ可愛げもクソも無い高慢な女になるんだぞ?」
「---それは---そうかもしれないが----。」
私は、今のラリエットを手放したくないと思ってしまっている。
優しく、それでいて妖艶で美しいラリエット。ベッドで横たわるラリエットの姿ーーーー厚い化粧品と髪を下ろしシンプルな装いなだけであんなにも官能的になるだろうか?
「アルはラリエットに愛情が湧くのかーーー。夫婦としてやっていくつもりなんだな。」デイリーはユリアを切り捨ててラリエットを愛せるのかと言っているのだ。
「------それは、そうするつもりだ。」
デイリーは今の言葉では納得していないようだった。
「元老院達はアデイル王子だけじゃ納得しないぞ、------それとも又妾を見つけるのか?その時はユリアみたいな庇護欲の強い可愛い下級貴族では無く少しぐらい気位が高くても高貴な血筋のご令嬢を妾にすることだな。」
「馬鹿か、妻が大変な時に妾など探すわけ無いだろう。子供は----欲しいな。ラリエットとの子がいいーーーラリエットに産んでもらいたいと思っている。今は記憶を無くして不安なラリエットに寄り添いたいし優しくしたいと思っているのだ。」
その時背筋がゾゾッっとした。ラリエットは寒気がして目が覚めた。アデイルは相変わらず可愛らしい寝息を立てている。
私の子供---二度とこの手に抱く事が無いと思っていた。
どうしてそう思ったのかしら------。
その時酷い目眩に襲われ脳裏に走馬灯のように今とは違う自分が流れてきた。
脳裏に浮かぶ、私は病室で泣いているーーーー前世の自分の姿が---。白い部屋、白いベッド------横たわる私。
私----流産をして二度と子供が産めない身体になり、夫から離縁されたのだった。
夫は世間体が大事で、出世には、家と妻----子供が必要だった。子供が産めない私は不要だった。
流産した私は退潮が思わしくなく心労と食欲が落ち日に日に弱り果て命を落とした。
今度こそ『幸せな人生を生きたい!優しい旦那様に可愛い子供ーーー幸せな家庭。』今度こそ私に幸せをーーーー。
でも今世も同じだ、旦那様に愛されず妾に毒を盛られ死にそうになっているのに夫は見舞いも来ない。------私に似たラリエットの魂が、私の心に共鳴したのかしら。
そして私はラリエットととして生きているのかもしれない。
私はラリエットであってラリエットじゃない。
身体を起こし、アデイルの頬を撫でながら思わず涙がこぼれてしまった。
自分の子と言われてもピンと来なかったが、抱き上げ乳を上げたこの温もりが------愛しいと、アデイルの存在が私の母性が愛おしいと言っていた。
この可愛らしい存在アデイルを守れる母でありたいと---私はこのままではいけない。強く、早く元気になってこの子をずっと慈しもうと誓った。
15
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から
Mimi
恋愛
結婚初夜、旦那様は仰いました。
「君とは白い結婚だ!」
その後、
「お前を愛するつもりはない」と、
続けられるのかと私は思っていたのですが…。
16歳の幼妻と7歳年上23歳の旦那様のお話です。
メインは旦那様です。
1話1000字くらいで短めです。
『俺はずっと片想いを続けるだけ』を引き続き
お読みいただけますようお願い致します。
(1ヶ月後のお話になります)
注意
貴族階級のお話ですが、言葉使いが…です。
許せない御方いらっしゃると思います。
申し訳ありません🙇💦💦
見逃していただけますと幸いです。
R15 保険です。
また、好物で書きました。
短いので軽く読めます。
どうぞよろしくお願い致します!
*『俺はずっと片想いを続けるだけ』の
タイトルでベリーズカフェ様にも公開しています
(若干の加筆改訂あります)
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる