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正直、お世話になっている身で更に少年達迄・・・てなると大丈夫とは思うけど、この【家】から出なきゃいけない可能性もあると思いながらマーサ様に話した。でも、大丈夫だと受け入れてくれてとてもホッとした。
ルームもあるし何とかなるけど、やっぱり受け入れて貰える方が嬉しい。

こうして、大丈夫だと分かったのでレオンの妹のマリーちゃんが居るルームへ入る。
彼女はまだ寝ていたけれど丁度起きる所だったみたいでレオンを見て安心した様に笑った。

それからマーサ様との顔合わせも穏やかに済ませ、家の方に皆んなで戻る。最初は緊張していたマリーちゃんもマーサ様の優しさに笑顔を見せてくれている。

この日は、2人には消化に良い食事をして貰ってお茶、ホットミルクを飲みながら明日レオンとマリーちゃんの仲間を迎えに行く為の話をしてから2人にも家のお部屋で眠って貰った。


翌朝、穏やかに晴れていて気持ちも上向きになった。優しい青い空にふわふわとした白い雲がゆっくりと動いて行く。 絵に描いた休日の様なお天気だった。

準備を済ませた私達、マーサ様も町人の様な服に着替えて同行してくれた。 護衛もいるが少し離れたところに待機して貰いマーサ様と私達だけが孤児院に入ることになった。 孤児院に着くと悲しげな泣き声が微かに聞こえて来て、レオンとマリーちゃんの身体が強張る。

急いでレオンが中に入り、間も無く胡散臭そうなおじさんを連れて来た。おじさんはでっぷりと太ってしっかり栄養が取れているようだ。それに孤児院の外観も入口からチラリと見える屋内も特にお金に困っている様子はなさそうだ。
周りには、所謂人の子が遊んでいて特に栄養失調な子は見当たらない。服もレオン達みたいにボロボロの子は居ない・・・随分と差があるようだ

「あんた達がレオンと知り合いか?」ふんっと値踏みする様な不躾な視線を向けて来る。

「はい、そうですね。」 とマリーさんが返すと

「私はここの院長だが、どうせ獣人の知り合いだ、あんたも獣人だろ。こいつを含めて4人を引きとると言うなら100万ゴールド払って貰おうか。今まで散々世話してやったんだからな。」
と馬鹿にした感じで歪めた口の端をあげる。そんなお金無いだろうとでも言いたげだ。

「獣人だったら何だとい言うのです? この国で獣人だからと蔑む事は許されておりません。 それと、何故引き取るのにお金が?通常かからないはずですが?それに、散々世話してくれた割にレオンたちはかなりの栄養失調、服もボロボロ、ノルマを課して冒険者として稼いだお金を巻き上げていたのでしょう?逆に積み立てとして払ったらいかが?」

マーサ様の気品溢れる凛とした声音にビク付いた様子を見せるも
「何を偉そうに。獣人の癖に!とっとと払えば良いんだよ、払えないんなら出ていけ。そもそもコイツらは引き取り先が決まってるんだ。残念だったな。」ニヤリと見遣るとレオンを小突く。

マーサ様がスッと目を細めると「あなたは余程破滅したい様ですね。引き取りには彼等の意志が必要になります。しかも、レオン君ともう一人は間も無く成人します。貴方は、孤児院で人身売買でもしているのですか?こちらの院には充分な予算がある筈です。それは、貴方を太らせる為にあるのではありません。ましてや、子供の食事を抜く事やノルマを課し稼ぎを達成出来ないと中に入れないなどあってはなりません。」

ここまでマーサ様が言ったところで外からガヤガヤと聞こえて来る。

「ああ、来てくれた様ですね。」

とマーサ様がニコリと笑ん門の方を見るとそこには公爵様ご夫妻がいらしていた。

「来て下さって、嬉しいですわ。丁度困っていたところですの。」


「ああ、遅くなって済まない。昨日話を聞いてね、ここはジーンバイヤー伯爵の管轄になっているんだが、前から黒い噂があってね・・調査中で証拠が揃うまでにもう少しだったんだがタイミングよく昨日、人身売買の証拠が揃ったんだ。」と私達に向けていた笑顔から一転、射抜く様な冷えた視線を院長に向ける公爵様。

「先程からの会話はこの魔石で聞いていた、録音もしてあるから知ってるよ。私はサイラシー公爵、法務部に属しているからね知っているし、裁ける立場にいる。先程は、孤児を引き取るのに彼等の意思確認だは無く、4人で100万請求していたね?勝手に引き取り先も決めていたみたいだしね。あー、心配しなくて良いよ。証拠はこれだけでなく、他にも色々あるから罪を償える。償った後のことを心配する事は無い、生涯償っていけ。」最後は冷たく履き捨てる様に言い放った公爵様


呆然と立ち竦む院長、それに関わった者達も次々と連行されて行く。 何だかあっさりと解決に向かっていて、ただただびっくりしている私達。

「さて、レオン君達のおかげでまた新たに有力な証拠が手に入ったよ。ここの孤児院の問題は解決するけれど、レオン君達4人は、私達と共に来てくれるかい?」
とさっきとは打って変わって穏やかに笑いかける公爵様。

「っ、俺、イヤ私達の方こそお世話になって良いのですか?」

「良いに決まっている。私達の大切なアイリーンが《《初めて自分から》希望したのだ。それに、私から見ても君達は誠実そうに見える。」

安堵の表情を浮かべるレオン。この国では、獣人は魔法のスキルを授かる事が少なく、耳や尻尾等身体的に違う事等から差別対象になると同時に身体能力がズバ抜けて優れている事への恐れから攻撃される事もある。

また逆に一部愛好家による性奴隷や戦闘要員として攫われて、違法であるが奴隷にされる事が多々あるのだ。一旦奴隷にしてしまえば合法奴隷としてするのは簡単なのだ。なんたる理不尽。悔しいがこれは多くある事らしい。

良かった。孤児院の件が解決したからもう一緒に居られないかと心配した。嬉しい。

方針が決まり、レオンの仲間である白虎獣人であるブランシー15歳とその弟8歳のラウル君これからは一緒だ。他のレオン達と同じ村の獣人の方が逃げ延びている事を願う。
また、レオン達以外の獣人や人、動物、モンスター等理不尽に捕らえられているものが居れば助けたい。 助けた後の事も大切だが先ず、助けたい。


そんな事を思いながらテキパキと随所に指示を出す公爵様に尊敬の念を抱いた。
そして、やっぱりイケオジはカッコいい。夫人のスカーレット様とマーサ様と一緒にふふふと、笑い合う。騎士の方や護衛の方、色々尽力して下さっている方に感謝した。



色々あったが、皆んなで【家】に帰ってくる事が出来た。ああ、本当に良かった。








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