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しおりを挟む妹さんが眠って少し見守ってから外に出て歩き始めた私たち。周囲の気配を伺いながら道なき道を進む。話声が男達に聞こえたら困るから静かに、足音にも注意しつつ進むのは骨が折れた。途中、微かに声が聞こえて来て立ち止まり、緊張しながら動向を確認する・・・大丈夫そうだ。いざとなったらまたルームに入れば良いが出来るだけ早く明るい内に王都内に入りたい。
時折声、物音に耳を澄まし安全を確認しつつ進んで行った。 少年は獣人だからか?静かに早く歩けるが私はそうもいかず、木の枝や葉っぱをカサカサと踏む音がやけに大きく響いた。もっと気配を消して静かに歩ける様に気を付けよう。冒険者としてランクが上がれば魔物のランクも上がりこんな事ではすぐに居場所がバレて自分がやられてしまうだろう。 一つ、鍛錬する事が増えた。採集に来る時までは何も考えて無かったんだなって反省した。
その後、獣道を見つけてからは早かった。間も無く大通りに出て馬車や人通りも多くなりやっと一息つけた。それでも見つかれば何処で攫われるかは分からないから慎重に気配を探りながら進んで行った。
それからは、気をつけながらも少し話ながら歩く。陽が落ち始めたが、何とか暮れる前には着けそうだ。
少年とお互いの事を少しだけ話す。まだ出会ったばかりだ、心許すにはお互い何も知らない、何でもベラベラ話す訳にもいかないから難しい。ただ、今後一緒に行動する事は決まっているからある程度は腹を割って話さなきゃね。通常なら時間をかけて良いが今回はそうも行かない。
彼にしてみても男達程あからさまでは何しても裏切られる可能性もあるのだ慎重になるのも当然だけど最低限は情報がないと困る・・・。
「何だか、大変な時に居合わせて一緒に行こうなんて言ったけど・・孤児院の方は報告とかはしなくて良いの?」と、先ずクリアした方が良さそうな問題を聞いてみた。
「・・・院長とかは子供が増えたり減ったりなんていつもの事だし、獣人嫌いだから俺たちが居なくなっても何とも思わないと思うけど・・・」と立ち止まり俯く少年。まだ名前を聞く事も躊躇ってしまう。もう少し警戒を解いてくれると良いんだけどな。
「何か、気になる事があるの?」
「あと2人獣人の子が居るんだ。そいつらは俺たちより長くそこに居て、もっと痩せてるし最近稼ぎが減ってるって殴られてるの見たから心配なんだ。」 そこでしっかりと目線を合わせて来ると
「俺は、まだ頑張れる・・・だから、妹とそいつらを助けてやって欲しいんだ。」と力強く訴えて来る。
「貴方が来なければ妹さんは来ないんじゃない?それでも、貴方は来ない?私を信頼して3人を預ける覚悟があるの?」私も強い視線を送る、意地悪だ私。でも本当に騙される時もある。
自分でも変なふうに転がったらどうすんだ!って自分をドヤしながら彼を見る。
「・・・・・」妹さんの事を出されると弱いのだろう。妹さんを心配する気持ちと、仲間を助けたい気持ちとで葛藤しているのが分かる。それに、今よりもっと悪い環境になる可能性もあるのだから。 それでも、彼の言葉はこの短い時間の中で私を信頼してお願いしてくれてる。
フッと笑って「貴方も、妹さんも仲間の2人も・・・4人とも一緒に来れば良い。そしたら私が悪い人でも4人で戦える。でも、皆んなで幸せになろう?」と言うと美しいブルーがかったグレーの瞳を大きくして私を見つめて来るから、こっちが恥ずかしい。
いや、彼は普通にびっくりしただけなんだけど・・めっちゃイケメンだからドキドキした。推しちゃう? 私の眼福センサーは今は迷惑だね。反省
言葉を失う彼に
「よし、やる事いっぱいだし急ごっか。ギルド行って、孤児院行って、早く帰んなきゃマーサ様が心配通り越して角生えてるかもしれない・・・」 密かに怖くなって来た。本当に急ご。
まだ戸惑っている少年を急かして先ずは、ギルドへ向けて兎に角急いだ
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