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自由になった人々 1
しおりを挟む必ず助ける!と言う思いを胸に森の中に分け入った私達。白狼獣人のアランとレオンの鼻も頼りに進んでいるが森に不慣れな奴隷商の者達が自由になった人々を連れて(何か台車?の様な物で通った轍が残っている)通った後なので下生えや木の枝が折れたりとそこまで難しい捜索では無いのだが間も無く陽が落ち始めるのだ、戦闘に慣れた者達も同行しているとは言え危険だ、少しでも早く見つけなければ。 通った跡は往きだけでなく引き返した分もある為奴隷商の者達は既に野営地に戻った後の様だ。
湖の周りは人も多くモンスター避けもあるが深めの森の中は夜になると何が起こるか分からない。もし怪我して血が流れていたらモンスターが引き寄せられてしまう、急がなきゃ。途中出てくるモンスターを倒しながらどうか彼らがモンスターに見つかっていません様に、と祈りつつ焦る気持ちを抑えながら進んで行く。もうかなり奥に入った様な気がするけれどどうなんだろう。 ハッ、ハッ、と息を切らしながらも何とか付いていく。出来るだけ静かにしないと・・・会敵する度に戦闘の分だけ時間がかかる、早く辿り着きたい、無事な姿を見たい。
こうして暫く進んで行くとモンスターの威嚇する唸り声が聞こえてきた、人の声もする。 皆でアイコンタクトを取り静かに素早く近付いて行くと、獣人や人間が約10人程固り、薄らとではあるが結界の様な物が張られているようだ。だがその頼みの結界も揺らぎ消えようとしている。
そして狼獣人だろうか傷だらけの身体で棒を手に持ち戦っている。だがその傷付いた身体では威力も無く3頭のモンスター相手に苦戦していたようで咆哮と共に殴り飛ばされてしまった。
また迫って行くモンスターとその狼獣人の間に白狼獣人とレオンが半獣化して飛び込んだ。 そして剣で応戦していく。他の結界内にいる人々の前に付いて来てくれたスタッフが立ち残りの2頭のモンスターから守り戦い始めた。
やっとの事で私も辿り着き消えそうな結界を張り直す。
そして、そこに居る人達を見てみると皆酷い有様だった。手足が欠けている者や深い傷を負った者が殆どだった。戦っている者も左手を失い片手で戦っていたようだ。 欠損だけで無いその状態に涙が出る、でも泣いている場合では無い。 流れる涙はそのままに生命維持に必要な分だけでもと癒していく。そうして、応急処置をしていると・・・
「すまん、此方も頼む。」と掠れた声が聞こえた
その腕には、瀕死の黒狼獣人が抱かれている。どうやら先程戦っていて殴り飛ばされた方の様で近くで見ると女性だと分かった。浅い呼吸で右手はダラリと垂れている。
診てみると腹部の傷が1番深い様でかなり出血している。この傷は先程付いたと言うより元々あった傷に見える、そこが戦闘で開きより深くなったのだろう。先ず出血から止めヒールを掛けていくが消耗が大きく命の灯火は小さい。
「レイラ、お願いだ目を開けてくれ・・・頼むレイラ、いかないで・・愛しているんだ。」
血の気を失い冷たい彼女の手を握り震える声で話しかける白狼獣人の彼。その頬に流れる涙の想いが彼女へ届きます様に彼女の力となります様に。彼女、レイラが必ず助かるとは言ってあげられないが何とか助かって欲しい、助けるんだ、と気持ちを込め癒しの力ヒールをかける。
他の残りの2頭のモンスターも倒した様だ、レオンと他のメンバーが戻って来た。 ルームに戻って更に手当していきたい。ルームを開き、衰弱している皆んなを魔法で運ぶ。そしてお父様とお母様にも手伝って貰いながら癒しの力を使っていく。2人は神獣でもあるし大きな力を持っている。そこにレオンと私に “ 越後屋 “ の皆んな 一丸となって動く、ここはさながら救急外来の様相だ。 緊迫していた空気が少し和らいで来た。
1番重症だったレイラの顔色も土気色から青白い程度に戻って来た。冷たかった手も身体も少し温もりを感じられる様になって来た。 まだ、絶対とは言えないが峠は越した。
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