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湖の側
しおりを挟むお父様、お母様と再会してかれこれ14日程が経った。今日は、湖の側に馬車を停めてここに2~3泊する予定だ。 他にもここで骨休めする方達もいるようで商隊で3泊と言う人達もいた。 大きな取引ともなれば馬車を何台も引き連れ護衛も精鋭を2パーティ以上雇いって事もある。マジックバッグがかなり普及したとは言えまだまだ足りていないのが現状。それに快適過ぎて忘れていたけれど普通は馬車の中は狭い。クッション性も然程整っていない為クッションを良くしても揺れが酷くて疲れるのだ。 休憩は必須、馬達の疲れ具合も相当なものだ。
「レオンお散歩に行く?」
「うん、丁度誘おうかと思ってた。」と柔らかな笑みで答えるレオン。その低くて優しい声がもう、好きっ! と内心ヘラヘラしながらラフな格好に着替えて外に出る。
今は、私のスキルがあるから良いけれど居なくなった後製品が無いって困らない様にこの世界での代替品を探すのもこの旅の目的の一つ。 植物や鉱石、魔物からの素材と通常の魔法や錬金で代替出来る物が思ったより多くてびっくりしている。
お散歩がてら観て回るのも大事なお仕事。
気持ちの良い空気を感じながら歩いていると私達と同じくコミュシャから来たと言う商隊に出会った。大きな商隊で私でも聞いた事のある商会だった。
「これはこれは、かの有名な “ 越後屋 “ さんですか。私どももその勢いに預かりたいものですなぁ。」と隙のない眼差しを向けてくる40歳程の男性、商隊長との事。
思わず肩に力が入る。レオンが背をゆっくりと撫でてくれ少し落ち着いて来た。
「私どもにはマジックバッグはございませんのでこうして大きな商隊を組んで移動せねばならないのですがね・・まぁ手が足りず奴隷も使っております。高じて、奴隷商も営んでおりますので何か御入り用の時は当商会をご贔屓に。」
と上から下まで舐め回すかのような気持ち悪い視線を向けてくる。
「まぁ、その時はよしなに。私どもも大所帯になりますので人が足りない時はお願い致します」と私への視線を遮りつつレオンが答えてくれた。 “ 越後屋 “ も大きくなり多国から多くの爵位を賜っているとは言え私達は若輩者、商人として普通に接するのは大事だ。
「左様ですか、ではどうか手前どもの商品をご覧くだい。ささ、どうぞどうぞ。お近づきの印に2~3人いかがですかな?様々取り揃えておりますよ。」といやらしい笑みを浮かべ強引にテントの中へ誘う商人
無理やりの様に連れて行かれたそこは、様々な人種の奴隷達が居た。檻に入れられかなり衰弱している様に見受けられる者も居る。
「ああ、そちらの檻に入って居る者は廃棄になる者も居りますがこちらの奴隷は如何ですかな? 其方でしたら女も男も性奴隷として使えますよ?」
唇をニヤリと歪に上げながら見てくる。
「「私達は性奴隷は必要ありません。」」 と思わず静かに否定してしまった。2人して・・・
「フフフ、その様ですなぁ。ま、そのうちご入り用になりましたらどうぞ。では、こちらは如何ですかな?獣人ですが戦闘も何でもこなしますよ。お近づきの印に破格の金貨25枚でいかがでしょうか?」
と男が促す先に居たのは、白い狼耳の獣人で大きな体躯の凛とした狼獣人であった。ふと気付くとレオンが目を見開き強張りながら角の檻を見ている、黒い狼耳の獣人だったが身体はボロボロで右足が無かった。
「なぜ、この者は奴隷に?」とレオンが掠れた声で問うと
「お気に召しましたかな?」とレオンは黒狼の方を気にしていたが、男は白狼の方を見たままクククと喉を鳴らしながら答える
「この者は、あちらの角の檻に入っている黒狼を治療する為自分を奴隷に落として金を作ったが結局はその様ですよ。愚かな男だ。おかげさまでこちらは労せず白狼を手に入れられました。 ま、黒いのはそろそろ廃棄しますがね。」
とさも面白そうに嗤う。胸糞案件だ。いつもなら私を止めるレオンは静かな怒りを堪えている。もう少しで耳が出るんじゃ無いかと思った。
「気になる様でしたら、白いのを買って頂けましたら其方の黒いのもお付けしますよ? まぁ、捨てるなりサンドバッグになさるなりお好きになされば良いですよ、クックック」と顔を歪めながら黒狼を蹴りつける
グッと苦しげな声を漏らすも蹲り動かない黒狼。
「辞めろっっ!!」とガシャンと音がして憎々しげに檻を掴み威嚇する白狼。
「さあ、いかがですかな? 私ども明日此方を立ちますので本日中にお買い上げ頂ければ処分の手間が省けますので有難いですがね。ま、然程変わらないですかね?」
とまた嫌らしく嗤う。私達の顔から表情が抜け落ち、自分も売れなければ処分されるのかと恐怖に顔をこわばらせる者も居る。
「良いだろう、金貨25枚で買おう。」とレオンから低い響く様な声がした・・・
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