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白い狐と黒い狐
しおりを挟むそんな色々な事があったコミュシャを後にした。コミュシャにも支店を出してきた。フリーマーケットでの調味料もろもろが大人気で出店に至った。
コミュシャ店を任せる事になった2人は夫婦で、1年程前に出会って共に過ごして来たのだけど、丁度子供が生まれて定住出来る土地を探していた彼らはコミュシャを気に入ったのだ。
店舗兼住居で、バックヤードと住居部分の空間を拡げ収納と水回りの仕様等も凝っている。リビングから望む屋上庭園は私もお気に入りでマーカスとアリーの夫婦もとっても喜んでくれた。
アイテムバッグ内でお互いの店舗同士繋げる事ができる様になったのは大きい。それを介してご当地同士の商品や調味料、アイテムバッグ等の空間系の商品もやり取りしている。 お互いの店舗を経験する意味で行き来したりもしている。安心安全な魔道馬車があるから危険も少なくて済むから私もお任せで安心している。
なんて事を思いながら少しの草地から穏やかな森が広がる外を見ていると___真っ白な狐・・・遠くにいる筈なのに大きいな。あ、黒い狐も居る。と思っていたら2頭の狐が近付いて来た
見ている内にどんどん距離が縮まってその気高い姿が鮮明になってきた。レオンが頬を拭ってくれて気付いた、涙が流れていた・・・なんでだろう、2頭の狐が美しいから?何故だか懐かしさが溢れてくる
馬車を停めてもらい降りる。狐たちが危険な生き物とは思えなかった。3m程の大きさがあるにも関わらず威圧感は無くその滑らかな毛並みは陽が当たり煌めいている。 その穏やかな眼差し優しさと、愛しいと言う感情に包まれた感覚
「お、お母様・・・」感情が溢れて声にならない
気付くと2頭の狐に抱かれていた。「ブラン・・・」いつの間にか白い狐は人間の姿、お母様に。黒い狐は黒目黒髪の男性に、その穏やかで包容力があり、逞しさも兼ね備えた人が私のお父様だと感じた。
「お父様?」と問うと、
「そうだよ、会いたかった。 辛かったね、直ぐに迎えに行けなくてごめんな。抱きしめても__良いか?」と問いかけてくる
「・・・・」声にならずうんうんと頷きながら抱きついた。声をあげて泣く私を2人は抱きしめ共に涙する。少し落ち着いたところで馬車の中に戻り、中にいたアルフォンソ様、ライアン様・シフォン様、そっと馬車に戻っていたレオンと挨拶を交わす。
そしてお母様とお別れした後の事をお互い報告する
「ブラン、まだ子供のあなたを置いて居なくなってしまってごめんね・・・どうしてもあれ以上留まる事が出来なかったの・・・」とほろりとお母様が涙を溢しお父様がそっと背を撫でる
「お母様は、多くの事をしてくれたわ。そのお陰でレオンがずっと側に居てくれた___お母様が頑張ってくれたからライアン様やシフォン様も託された “ 越後屋 “ を守り育てて下さった・・・本当に御二人とレオンに感謝しているの。・・・」自分が転生者だった事、レオンとの前世からの繋がりも話す。
「そうだったのね。大きな力を持っているとは思っていたけれど転生者だったのね。」
ときっと日本を思い出しているのだろう、目を細めたお母様。今私ができる様になった事、“ 越後屋 “ の現在を伝える。
「 “ 越後屋 “ がそんなに大きくなって、アーフォレ国ともすっかり離れられたのね。 “ シラキュース商会 “ を作っておいて良かったわ。でも、カーシス様やあのシラキュース侯爵の娘・・・辛かったわね。良く頑張ったわ。流石、私の娘!!」と安堵の笑みを見せ頭を撫でてくれる。
「あ、ごめんね。もう10歳の子供じゃ無いのに、離れていたからかつい 」
と眉を下げながら微笑むお母様はあの頃より若く見える。そんなお母様の肩を抱きニコニコと穏やかに笑むお父様
「あの後・・・私のこの世界での生を終えた後。すり減ってしまった魂を元のレベルに戻すのに時間が掛かってしまった___でも、女神様がブランを授かった時の狭間にお父様、優太の魂の一部を残しておいて下さったの。優太・・お父様が寄り添ってくれたから戻る事が出来た。そして私達は地球じゃなくてブランが居るこの世界に戻る事を決めた。」
お互いが見つめ合い、そして私達を一人一人見つめる2人。柔らかな空気に暖かく包まれる
「アーフォレ国は本当に嫌な、ダメダメな国だわ。でも今のブランを見ていると、皆さんは本当に優しい人達だって分かる。もちろん、ライアン様とシフォン様が良い人なのは知っていたけれどアルフォンス様や他の方々も素晴らしい方達だって分かります本当にありがとうございます。」と2人揃って頭を下げた
「私達がこの世界に戻るに当たって女神様から生まれ直すのも良いけれど父、母として会うなら神獣として送るのが力もあるから安全だし人間の姿にもなれるからってこの姿になったの。」
「繋がり人サクラ様・・・今は神獣となられたのでしたね。我々はあなた様方お二人を歓迎致します。」とアルフォンス様が、ライアン様とシフォン様も揃って頭を下げると
「頭をあげて下さい。私達を歓迎してくださるだけで充分です。ただ、以前の様に縛られるのはごめんなので神獣として縛られない事だけを周知して頂ければ・・・ブラン達と共にこの世界を旅して周りたいのです。___過去には出来なかった世界を周ることを・・・優太と共に。 ライアン様とシフォン様ともゆっくりと話したいの。」
とはにかみながら告げたお母様。私も、シラキュース家から出て自由な今を一緒に楽しみながら過ごしたい。
レオンに抱き寄せられながらあたたかな温もりに包まれて幸せだ
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