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シフォン様の記憶  3

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学園に通い始めたサクラ様を待っていたのは、また辛い日々でした。


私たちが耳にしたり、居合わせたりしたもの以外にも嫌がらせは数知れずあったそうです。子供騙しなものから、深く心を抉るものまで・・・

サクラ様の学園での知り合いと言えば王太子殿下だけでした。王太子妃教育は施されていたものの、お茶会での顔合わせは王妃の友人との極小さなものしか出席させてもらえなかったそう。

夜会等では貴族から王族への挨拶を王陛下、王妃陛下、王太子殿下のお側で一緒に受けるが他の者と口をきく事は許されていなかった。
ダンスの時間は1曲殿下と踊った後は、王族席で1人じっと座って皆が踊っているのを見ているだけだった。
カーラ様と王太子殿下が楽し気に踊る姿を、ニホンの婚約者を思い出しながら・・・


そんなサクラ様にご友人などおられる訳もなく、学園に入られたからと言って初めから周りは敵状態だったの。

生徒は、公爵令嬢であり今も王太子殿下と仲睦まじいカーラ様の方についたからです。そして、公爵家、ひいては王家に忖度そんたくしたのです。


王太子殿下もサクラ様に 口では‘’ 愛している ‘’  と言ってもお茶を飲むのもそこそこに、直ぐカーラ様の元へ向かわれ共に過ごされる・・・それを隠すことも無かった・・・流石に気付きますよね

学園でも御二人隠れているおつもりなのかも知れませんが空き時間を見つけてはお二人の秘密の場所で逢瀬を重ねておられたの。それは公然の秘密でした、私達他国の留学生でさえ知っている程に


そんな中でもいつも凛としているサクラ様が森の奥の方で肩を震わせ泣いていた・・・

『サクラ様、今日はどうして此方で・・・泣いていらしたか聞いても? 何か、出来る事があるかもしれません。』 
迷ったけれど聞いておかなければ、と気持ちを引き締めて聞いてみたの。何か見えないところでお助け出来るかもしれないでしょ? 勇気を出して聞いてみたところ話して下さったの


いつも出来るだけ人の目に付かないところで出来るだけ過ごしているサクラ様。それは私達も同じだったから良くサクラ様をお見かけする事で知っていたわ。人が全然いない訳じゃないから声をかける事はしなかったけれど
それでも教室には行くわけでカーラ様や取り巻きと会うことも避けられない、もちろん王太子と側近たちとも。

今日は、たまたまカーラ様達と踊り場ですれ違い囲まれてしまって進めなくなってしまったらしくて挨拶だけして端っこに寄り何とかすり抜けようとしたらカーラ様が『キャー、ごめんなさいサクラ様っ!』と転んでしまわれたそうなの。もちろん触れてもいなかったそうよ。

そこに『カーラに何をしている!!』
と怒気を孕んだ王太子殿下の声が響いた。 側近達と走り寄る殿下、周りの生徒達も遠巻きにしながら見ていた。

『カーラ様、だ・・・』 ‘’ 大丈夫ですか?‘’ と手を伸ばし助け起こそうとしたサクラ様の声は続けられなかった。

『カーラに触れるな、無能!!!』 と殿下に振り払われたのだ。 そして気づくと頬の痛みと共に床に倒れていた。

『殿下!っ、っ、私、わたく・・し。ごめんなさい、』と泣きながら殿下に縋り付くカーラ様

『良いんだ、カーラ。私は君だけを愛している。何者からもカーラを守るよ。』と優しくカーラ様を抱きしめ慰められた後キッとサクラ様を睨み付け

『サクラ、お前のような無能のせいで私達は引き裂かれた! まだ不服なのか? お前は、私だけではやはり足りないのであろう。どの令息が好み何だ? 何組の婚約者達を不幸にすれば気が済むんだ? そうしなければ、お前は力を使いたく無いから無能を装っているのか? 』  

と凍てついた眼差しで言ってきたそうよ。

『私は、婚約も壊したくはありません。一生独り身でかまいません。指示された場所で』とカーテシーしたそうよ。 彼女の心には、‘’ ニホン ‘’ の婚約者が住んでいたから、その方以外は想う事は無いと仰ったわ・・・とてもとても切ない眼差しだった。

『嘘をつくなっ!』 とまた、頬を打った後カーラ様を抱き上げて去って行かれたそうよ。取り巻き達とギャラリーが消えた後、そのまま誰も来ないであろう森の中に来られたと・・・サクラ様の居場所は無かった、どこにも


また、ポロリと溢れた雫は美しかったけれど私達の胸を締め付けた・・・無力な自分達が悲しかった


そんな事があってから、時間がある時はこの森の奥で3人で落ち合って親交を深めたの。私達の前でだけは笑ってくれる様になっていたのよ。儚く美しい笑顔だった。


けれどサクラ様に期待される ‘’ 繋がり人 ‘’  としての大きな力は開花しないまま時は過ぎていった


辛い学園生活も終わりを告げたけれどサクラ様の大きな力が開花せず王太子殿下との婚約は白紙になった。 そのまま自由になれるかと思われたのだけれど、国外に出る事は叶わずシラキュース侯爵と婚姻を結ばされた。 そして子供が生まれるまでは共に過ごし、生まれた貴女に ‘’ ブランシーヌ ‘’ と名付けてからは現在の夫人の元で過ごされたの。


「わ、私がお母様の枷に・・・」 思わず溢れ出した涙___レオンが抱きしめてくれる

「いいえ、貴女が生まれてきてくれたからあれ以上シラキュース侯爵と過ごさずに済んだ。貴女は侯爵には似ていない。彼女言っていたの、

『初夜の前日夢に女神様が現れて

“ ごめんなさい、サクラあちらの世界には貴女と同じ女性が居るの。愛し合う貴女達を引き離せ無かった・・・あなたは彼への想いが無いサクラの欠片だけだった筈なのに記憶が残ってしまっていた。ごめんなさい。

そして、こんなに酷い人々の所に連れて来てしまって。今の私にはどうにも出来ないけれど明日の初夜シラキュース侯爵には済ませた、って記憶のみ残るわ。でも実際はあなたの愛する彼と初夜を過ごしてもらうわ、そして赤ちゃんは来てくれる。あなたと愛する彼の子よ。

貴女だけ苦しくさせてごめんなさい。‘’‘   って言われたの。だからブラン愛する彼との子。』

って見たことの無い笑顔を見せてくれた。とてもとても幸せそうに・・・」


あまりの驚きに声が出なかった、代わりに安堵の涙が流れた。良かった、お母様が穢されなくて。幸せな気持ちになってもらえて・・・お母様、今は幸せ?





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