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シフォン様の記憶  1

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ライアン様と視線を交えながら当時の話を始めたシフォン様

「私たちが初めて会話したのは学園の裏の森の中で少し奥に入った樹の下だったの・・・それまでも図書館や裏庭とかのあまり人が集まらない所でお見かけしていたのだけれどその時は、学園内で一定の生徒に対して嫌がらせや陰口とかが多くて、私たちが否定したり庇ったりしても良くなるどころか悪化してしまう様な空気感だったわ。・・・・」

と悲しげに目を伏せたシフォン様。なるべく自分達と一緒にいる様にしている内に何人かは嫌がらせを受けなくなって行った。
それでもお母様・・サクラに対する嫌がらせや、そこかしこから聞こえてくる陰口は無くならなかった。


『嫌だわ、またこちらにいらっしゃるわ。100年に一度が聞いて呆れるわよね。繋がり人の癖に一般人と同じ能力しか無いくせに王太子様の御婚約者様だなんて。』

『恥ずかしく無いのかしら?堂々と学園に来るなんて、しかも王太子殿下に送り迎えして頂いてエスコートまで。カーラ公爵令嬢様がお可哀想だわ・・』

『それに、黒髪だけでなく瞳まで黒なんて・・貴族らしくなくてよ。』

『でも、一部の方々には崇める対象なんだから悪く言ったら駄目ですわよ?』 

『でも、大臣であるお父様もずっと無能のままで困っているとお話しされていたもの、無能でお荷物なんですってよ?』
 
『美しさでも能力としてもカーラ公爵令嬢様には到底及びもしないのですわ・・・』

『あら、聞こえますわよ?サクラ様に』  とクスクスと笑い合う上位貴族令嬢達。そこへカーラ様が通りかかる


『皆様、そんなことを仰ってはいけませんわの魔道具作製はとてもお得意でしてよ。ですからサクラ様が例え、攻撃魔法や満足な結界・大きな癒しの力が使えずとも ‘’ 繋がり人 ‘’ なのですから失礼なことを言ってはダメよ。今後いつ大きな力が開花されるとも分からないのですから・・・その時が早く来るようにわたくし達もお手伝い致しましょう?』

『さすがカーラ様ですわ。わたくし達も見習いませんと・・』

鷹揚に笑みを浮かべながら嗜めているようでいて落とすカーラ様に令嬢達は追従して去っていった。


そんないつも針の筵の中に居てもサクラ様はいつも凛として前を向いていらした。 私たちが陰口を嗜めると、なぜか ‘’ 繋がり人 ‘’ を奪うつもりだ、とか嫌がらせされている者の味方をする事で他国からの過干渉で支配するつもりかなどと言われ動きを制限されてしまったとの事。 

ある時、空き教室で王太子殿下と側近3名とサクラ様がお話されている所、と言うか声が大きくて3つ離れた教室くらいにも聞こえていて向かったの。聞こえて来たのは


『君は、‘’繋がり人‘’ としての自覚はあるのか?なぜいつまで経っても能力が開花しない? こんなにと伝えているのになぜなんだ?私の愛だけでは足りないのか?他の令息も必要なのか?

それならば手配しようか? 私は、ただ1人愛する人の元へも行けぬと言うのに・・・』

『いえ、その様なことはございません。王太子殿下の婚約者として鋭意努力中でございます。』

『ならば、殿下の為にせめての魔道具ではなく優れた魔道具を造るんだな、無能よ 』


と、俯くサクラ様を小突く王太子一行。やっと辿り着いた私達だったのだけど

『止めないか!』 とライアンが声をかけると

『何をでしょうか?』 と王太子は何事も無い様な笑みを浮かべて振り向いた

『何やら罵りサクラ様を小突いていただろう?』

『そんなことはしておりませんよ。腐っても‘’ 繋がり人 ‘’ 様ですよ、例え無能でもね。丁寧にお伺いしていただけですが?』と皮肉気に薄ら笑いを浮かべる王太子

『そのような丁寧な感じは受けなかったが。』 と鋭い眼差しを向けるライアンに

『例え帝国の留学生で第二皇子殿下といえども干渉しないで頂きたい。これは、婚約者同士の会話だ。それとも、大国から圧力をかけて貴重な ‘’ 繋がり人 ‘’ を奪うおつもりか? 帝国が ‘’ 繋がり人 ‘’ を奪う為に、そして一部生徒を介して内部から支配する為に第二皇子とその婚約者を留学させた、と言う噂は真実だったのですかな?』 とキツイ眼差しを向けてきて、一触即発かと思われたその時・・・

『お許しもなく発言するご無礼をお許し下さいませ。』 と透き通った声でサクラ様が申されまして

『本当に我が婚約者様は無礼だな。』と吐き捨てる王太子

『申し訳ありません。わたくしなら大丈夫でございます。ただのにございます。お気遣い頂く程のものではございませんので、どうか、お気になさらず。ありがとうございます。』と深々と美しいカーテシーをなさったのです。

『本人もこう申しております。さ、時間とは貴重なものです、参りましょう』 
と有無を言わさぬ王太子に促されて帝国に難癖を付けられても、と言うのときっとこれ以上言い募ることはサクラ様の為にもならないとその場を後にしたのです。


教室を出る前にサクラ様が心配で振り向いた時もまだカーテシーをなさったままだったけれど、その口元は凛と引き結ばれていたの。日常会話と言えるくらいにいつも酷い言葉ばかり投げかけられているのかと思うと、私の方が辛かった


その様なこともあって、尚更学園内でお声かけする事は出来なかった・・・お見かけする度に大変そうだったけれど、凛としたお姿を崩される事は無かったわ。

きっと泣きたい事が沢山あったでしょうに


と、シフォン様は一粒涙を零された。お母様の代わりのように






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