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遠乗りへ
しおりを挟む今日は、カーシス様との遠乗りの日。とっても楽しみで、前日の夜は中々眠れなかった。少し寝不足の目を温タオルで温めてシャキッとさせてから身支度をすっかり整える。
厩舎に向い愛馬を連れ出す。料理長がランチボックスに沢山詰めて、こっそりと渡してくれた物を持って・・・料理長、ありがとう。
護衛は侍従のレオンが着いて来てくれる。カーシス様にも騎士が数名お供で付いている。
それでも、2人の遠駆けデートだ。カーシス様の愛馬はしっかりとした美しく白い牡馬。私の愛馬は、月毛の薄い栗色で鬣は白っぽい牡馬だ。茶色の大きな目の周りを鬣と同じ色のまつ毛が縁取っている。とても優しい相棒だ。
王都に隣接した森の中を暫く進み、抜けるとお母様と行った事は無いけれどエメラルドグリーンのとても綺麗な湖が現れた。
思ったより澄んだ水を湛えている。底までは見えないけれど水草の揺らめきや魚が泳ぐ様まで見える。 ゆったりと気持ち良さげに泳ぐ様は自由に見えて羨ましっかった。 陽の光が水面で踊るように煌めき時折魚が跳ねている。しばしうっとりと見つめてしまった。
「気に入ったかい?とっても綺麗だよね。僕も今日初めて来たけれどこんなに綺麗な湖があるなんて聞いた事無かったから驚いた。」と目を細めるカーシス様。
「ええ、私も初めて来ました。こんなに綺麗な湖はきっと数えるくらいしか無いでしょうね。連れて来て下さってありがとうございます。」
すると断りを入れた護衛のリーダーらしき騎士が
「カーシス様、私たちもこの森は何度も足を運んでおりますが、この湖は初めて来ました。少し早めに帰途に着いた方が安全かと思われます。」と進言する。
「分かった。お前達も知らないのならば、早めに帰る事としよう。時間は任せる、良い時間に声をかけてくれ。」と返すカーシス様
「「「「「御意」」」」」と騎士達から少し重めの返事があった
「カーシス様、お時間も少し取り辛い様なので早速ランチに致しますか?」
「ああ、そうだね。シェフ特製のランチ楽しみだよ。」
私たちは、少しの不安はあったものの、美しい景色に心まで洗われるようで清々しい空気を吸い込んだ。
きっとこの場所に辿り着けたのもご褒美に違いないと密かに思いながら、美味しい食事と会話を楽しんだ。
そうして、私にとってはとても楽しかった時間はあっと言う間に過ぎてしまった。
「カーシス様・・そろそろお帰りになった方がよろしいかと思われます。」と声がかけられた。
「分かった。」と供の者たちへ合図を出された後
「ブランシーヌ。時間みたいだね、また今度来ようね。」と、煌めく瞳で告げるカーシス様
「はい、楽しみにしております。」と幸せな気持ちで返す。そうして私たちはまた愛馬と一緒に帰路に着いた。
邸に戻って来たのは思っていたよりもかなり早い時間だった。もう少し時間が経っていた様な気がしたけれど気のせいか・・・
それから暫くは、嫌な事もいつもの教育での痣も気にならないくらい落ち着いた穏やかな気持ちで過ごす事が出来た。
ただ、義姉と義妹がカーシス様との遠乗りの事を今までより執拗に詰って来た。それさえも幸せな気持ちが勝っていたのは2人には内緒だ。
ただ、どうしても怒りが収まらなかったらしい2人はいつもよりも長い期間私がカーシス様と会える日を邪魔して来た・・・
そんな邪魔を掻い潜り、またカーシス様と遠乗りに出かける日がやって来た。またあの湖に行けるだろうか。とっても楽しみ
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