【本編完結済】悪役令息に転生したので死なないよう立ち回り始めたが何故か攻略対象達に執着されるように

なつさ

文字の大きさ
上 下
118 / 130

番外編 父の愛が重すぎる ※アダエヴァ

しおりを挟む
アダエヴァに子供が産まれたらのif話です







エヴァ⋯アダンと結婚後、アダンの屋敷に住み始める。必要最低限の外出以外は禁止。外出時はアダンがいないと駄目、とほぼ軟禁状態。
子どもが産まれてからは、育児で忙しくそこまで不満は溜まっていない。

アダン⋯王都の騎士隊長。部下からは冷徹上司として恐れられている。周囲からは悪評流れるエヴァとの結婚は政略結婚みたいなもので、アダンはエヴァを嫌っていると思われてるが真逆。
エヴァの愛らしさを知られたくないと、あまりエヴァの事を話さず、そのせいで噂に拍車をかけている。最近エヴァが息子に甘すぎやしないか?と不満を募らせている。

アドレ⋯アダンとエヴァの息子。
     2人に似た黒髪にエヴァの青い瞳の色を受け継いだ可愛い子。最終的にはアダン似の男前になる予定。将来はディディエ家を継ぐため次期、騎士として幼い頃から教育されてる。が、まだまだ甘えたな年頃。かなりのママっ子でアダンの指導が厳しすぎると、すぐにエヴァに泣きつく。
ママの作るお菓子が大好き。






「ひっ・・・ぐすっ・・・」
「アドレ、早く立て。涙を見せれば敵が許してくれるとでも思っているのか」

幼い少年は地面に膝をつき、ボロボロと涙をこぼす。そんな少年に容赦なく剣の切っ先を向けるのは、少年の父であるアダンだ。
今年7歳になったアドレは、アダンとエヴァの間に産まれた息子。騎士である父に習い、アドレもまた将来騎士になるべく、こうして訓練が始まったのだ。
しかし、冷徹で弱さを見せないアダンに比べ、アドレは少々、いやかなりの泣き虫だった。
アダンに負かされ叱責される度に、その大きな瞳から大粒の涙を零すのだ。
一向に立ち上がらず、ぐすぐすと泣くばかりの息子にアダンは眉間に皺を寄せる。
その時、2人に近づく影があった。

「アダン様、いくら剣の稽古とは言えアドレはまだ7歳ですよ。厳しすぎではありませんか」

聞こえた声にアドレは涙と鼻水に塗れた顔をぱっと上げ、一目散にその声の主に駆け寄り抱きついた。

「エヴァ、貴様・・・」
「可哀想に・・・美味しい紅茶とお菓子を用意したから一緒に食べよう?」
「ひっく・・・ん"・・・はい・・・母上・・・」

アドレの母であり、アダンの妻であるエヴァ。
アドレを抱き上げると、恨めしそうにこちらを見るアダンを睨み返す。

「貴方は息子に厳しすぎます」
「お前は甘やかしすぎだ。何れ騎士となる者が幼少期からこのように母親にべったりでどうするつもりだ」
「別に・・・僕はアドレが必ず騎士になるべきとは考えておりません」
「何?」
「子供は自分がなりたいものを目指すべきです。アドレ、騎士になりたくないのなら無理にならなくてもいいんだよ?」
「駄目だ!アドレは13になったら騎士学校へ入れる。これは決定事項だ」
「アダンっ・・・!」

アダンはエヴァからアドレを引き剥がすとそのまま部屋の外に放り出す。

「俺はエヴァと話がある。お前は早く部屋へ戻れ」

父に凄まれアドレは泣きそうになりながら頷き部屋を出た。最近はいつもこうだ。
父と母は仲が悪い。父がアドレを叱り、それを母が宥め、喧嘩になってしまう。
以前、父の部下が立ち話をしているのを聞いたことがあった。
何でも母は婚約前から父に嫌われていたらしい。
2人が結婚したのもお互いの家の事情によるものだとか。
だから、父は母を嫌っているし、よく母に突っかかるのだ。

母は男好きな悪女のような男と言われているが、そんなことは無い。いつもアドレに優しく接してくれる母はとても優しく、アドレにとって大切な母だ。
母は騎士になんてならなくてもいいと言ってくれるけれど、早く強くなって母を連れてこの屋敷を出たい。

母がよく口にしていた夢、お菓子屋さんを開くこと。その夢を叶えて上げるためにも、僕は早く強くなりたいんだ。
僕は稽古場へ行き剣を手にした。

「早く強くなって・・・母上を守るんだ・・・!」










翌朝、朝食の場に行けば既に父と母が席に着いていた。父は既に軍服に着替え、いつもの感情の読めない表情で食事を食べている。
対して母は、泣き腫らしたのだろうか、赤くなった目が痛々しい。それに父に暴力を振るわれたのか、ところどころ首元が赤くなっていた。
僕はぎり、と拳を握る。

「あ、アドレ・・・おはよう」
「おはようございます、母上、父上」

僕は母が心配でじっと見つめながら食事を始める。

「あの、母上。昨日用意してくださったお菓子凄く美味しかったです・・・!」
「あ・・・よかった。アドレが好きそうなもの作ったから気に入ってもらえて嬉しい」

母が嬉しそうに頬を赤らめるから僕も嬉しくなる。
しかし、そんな穏やかな会話に割り込んだのは、またしても父の鋭い言葉だった。

「おい、昨日あれほど甘やかすなと言ったのを忘れたのか」
「・・・子にお菓子を与えることの何が悪いんですか」
「チッ・・・」

母の言葉に父が心底不愉快そうに舌打ちをする。
つかつかと母の元に歩いてきたと思えば、母の細い手首を掴み無理やり立たせ引き摺るように連れて行ってしまう。
慌ててその後を追いかけるが、父から鋭い視線で睨まれ硬直した。

(どうしよう・・・どうしよう!また母上が酷い目にっ・・・!)

父に逆らえばタダでは済まないだろう。
けれどもうこのまま母を見捨てることなどできない。僕はこっそり2人の後をつけた。







「エヴァ、お前は誰の妻だ」
「・・・アダン様です」
「そうだ。お前は俺の妻だ。お前が1番に考え一番に思うべきは相手は俺だろう」

かすかに2人の声が聞こえる。
アダンは夫婦の寝室である部屋へとエヴァを連れ込んでいた。この屋敷には敵に攻められた時に逃げられるよう、至る所に隠し通路がある。
僕は隠し通路を辿り、2人の寝室に繋がる暖炉の裏から様子を伺っていた。

「アドレは僕の息子ですよ!?母が息子を一番に思うのは当然の事です!」
「お前は母である前に俺の女だ。子供など乳母や侍女に世話を任せればいいだろう!お前が1番に考えるべきは俺だ。俺だけを見ろ」
「ど、どこまで子供なんですか貴方は・・・!?」

そう、アダンは実の息子に酷く嫉妬をしていた。
エヴァを縛り付ける為、妊娠させたのは良かったものの、いざ子供が生まれたらエヴァが子供にかかりきり。
自分に構ってくれなくなったことに不満を抱いていた。

「菓子など、俺に作ってくれたことなどあったか?何故アドレにばかり構う。お前の夫は俺だ!」
「っ・・・呆れました。信じられない、実の息子に嫉妬するなんて」
「うるさい。息子だからなど関係ない。お前に近づく男は誰であれ許さない。お前は俺だけを見ていろ」
「ちょっやめてくださいっ・・・!」

エヴァの声に思わず前のめりになる。
(また母上が酷いことされちゃうっ・・・!)
いざとなったら父に歯向かうつもりだった。
母を連れこの屋敷を逃げようと。
しかし、隙間から見えた光景はアドレの予想に反したものだった。

「んっ♡ぢゅるっ…♡ちゅっ♡ぢゅうっ…♡ん"ぅっ♡」
「はっ生意気な奴め・・・少しこうしただけで瞳を蕩けさせて、本当にいやらしいなエヴァ?」
「はっ♡ら"めっ♡あだっ…ん♡」

父の大きな口が、母の小さな口を捕食するようにキスをしている。僕はまさかの光景に顔を真っ赤にさせた。

「お前は息子のことばかり気にかけるが、いつもお前をこうして満足させてやっているのは誰だ?」 
「あ"っ♡も"っ意地悪しないでください・・・!」
「ちゃんと言え。お前のココを突いて何度も絶頂させてやれるのは誰だ」
「あっ♡あだん・・・様です・・・♡」
「そうだ。では、誰に媚びるべきなのかお前なら分かるな?」
「はっぁ"っ♡♡」

キングサイズのベッドに押し倒された母は目を蕩けさせ父に縋るように首に手を回す。
いつもの凛として優しい母からは想像もつかないほど、妖艶で愛らしい姿に思わず釘付けになってしまった。

「エヴァ、貴様は学園時代から男を誘惑していたな。結婚してようやく俺の心も休まるかと思ったが、お前の誘惑癖は未だ治らないようだ」
「あっ♡あっ♡ゆっわくなんてぇっ…!♡してないぃっ♡♡」
「嘘を言え。俺と不仲だとかいうありもしない噂が流れるのを良いことに、他の貴族から言い寄られているのを俺が知らないとでも思ったか」
「あ"ぁっん♡♡ら"ってぇ!♡♡」

そう、いくら悪い噂が流れていたエヴァとはいえ、実際にエヴァと出会った物は尽くその存在に魅了されていた。夫と不仲というのであればあわよくば、と考えない男はいない。
密かに手紙を出し、あれやこれやとエヴァを舞踏会やお茶会に誘う者は多かったのだ。

「この俺の妻に手を出そうとする愚か者は全て消してやる。エヴァ、貴様も貴様だ。俺というものがありながら、その愛らしさを軽率に振りまくなッ!」
「あ"っ♡あ"っ♡ら"めら"め!!♡♡♡いっちゃう"ぅ~ッ…!?♡♡♡」

ビクンビクンと大きく体を震わせ脱力したエヴァはそのままシーツに倒れ込む。

「はっ…はっ…エヴァ・・・俺から逃げられると思うなよ。俺の愛を軽く見るな。ようやく手に入れたんだ。二度と離さない、お前は俺の物だ」
「ん…あだん…♡」

所有印をつけるように、父は母の首筋を噛み痕をつけた。
僕はその光景をただただ見ることしか出来なかった。




つまり父と母は不仲な訳ではなかった。
寧ろ父の愛が重すぎるあまりに全方位に嫉妬していたようだ。息子である僕にでさえ。
父が僕に家督を継いで欲しいというのは本心なのだろうが、その中には早く自立して屋敷を出ていけ、じゃないと母と2人になれないだろうという気持ちも入っているのだろう。

今日も母は泣き腫らした顔でテーブルに着く。
でもそれは、以前僕が思っていたものとは違って、父に愛されすぎた結果の姿だ。
使用人達の同情するような視線を浴びながらも、僕は父の母に対するどろりとした瞳を見てため息をついた。
全く父上、少しは母上のお身体も気遣ってあげてください。









しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

神子だろうが、なにもかも捨てて俺は逃げる。

白光猫(しろみつにゃん)
BL
脱サラしたアラフォー男が異世界へ転生したら、癒しの力で民を救っている美しい神子でした。でも「世界を救う」とか、俺のキャパシティ軽く超えちゃってるので、神様とは縁を切って、野菜農家へ転職しようと思います。美貌の後見人(司教)とか、色男の婚約者(王太子)とか、もう追ってこないでね。さようなら……したはずなのに、男に求愛されまくる話。なんでこうなっちまうんだっ! 主人公(受け)は、身体は両性具有ですが、中身は異性愛者です。 ※「ムーンライトノベルズ」サイトにも転載。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...