【本編完結済】悪役令息に転生したので死なないよう立ち回り始めたが何故か攻略対象達に執着されるように

学園裁判

「第23回学園裁判を開廷します」

厳粛な会場。目の前には本物さながらの裁判官ならぬ執行部の生徒が並んでいる。
俺は所謂被告人席にいる訳だが･･･。

あの後、学園内で傷害事件が起きたと騒ぎになった。恐らくエマは自ら階段を転げ落ちた。
だが俺の手元が上手いこと見えなかったようで、周りには目撃者も沢山いたとなり俺は速攻執行部に取り押さえられた。
本来なら警察案件だがこの学園はお坊ちゃま学園。

何より体裁を重んじるこの学園は、学園内部の問題を露呈したくないようだ。
だから、何か事件が起きればこうして学園内で裁判が開かれ裁かれることとなる。
判決の内容により、役職持ちの生徒は降格させられたり役職が無くなったり。高いカーストにいればいるほど、卒業後の進路が優位になるこの学園ではカーストが下がること、即ち未来が無くなるも同然だ。
最悪なのは退学。有名なこの学園を退学になったとなれば、卒業後の進路はおろか、家族からも絶縁されるだろう。
それほどこの裁判は重く重要なものなのだ。


さて、悪役であるエヴァ・ヴィリエは勿論この裁判にて退学と言い渡される。
そして、家族から絶縁されたあと後ろ盾がなくなり最悪のルートでは攻略対象達から残忍な殺され方をするのだ。
勿論、俺は対策をした。
実を言うとこの学園に入る際、前世で言うパスポートとそれなりの量の宝石や貴金属を実家から持ってきた。
セキュリティの高いこの学園を許可なく無断で抜け出すのはかなり至難の業だ。それに逃げ出したとしてもすぐに連れ戻されてしまうのが関の山。
だが、正式に退学になるのなら話は別。

俺は退学となった時点で、この学園を出てすぐに海外に行く予定だ。
実家から持ち出した貴金属を売れば、旅行代やお菓子屋の開店資金位は出せるだろう。
もう退学する気満々の俺は悪役令嬢さながらの佇まいで反省0の表情をしていた。


「被告人、エヴァ・ヴィリエ。貴方は転入生のエマ殿に対し、数々の嫌がらせ行為を働き、意図して怪我をさせようと階段から突き落とした。間違いありませんか？」

執行部員の問答に不敵な笑みを浮かべる。

「まさか、僕は彼に注意をしただけです。彼が勝手に階段から落ちたのでしょう？」
「目撃者は沢山いるのですよ？白々しい嘘をつくつもりですか」
「何と言われようと僕は間違ったことはしていません。それよりも、彼こそ生徒会の皆様に付き纏って、裁かれるべきではありませんか？」

僕の言葉に執行部の生徒達は不愉快そうに顔を歪める。

「全く、反省が見えませんね。貴方には数々の余罪もあるのですよ」
「ふんっ僕は正しいことをしたまでです」
「まあいいでしょう。貴方の罪について証言したいという生徒達がいます。皆さんどうぞ順番に発言してください」


執行部員の声に立ち上がったのはダニエルだった。