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攻略対象7 ダニエル
しおりを挟む『この世の全ては僕のものだ!僕こそが正義であり僕こそが秩序!逆らうものはみんな消してやるっ!・・・・・・いやもっと静かにに言った方が悪役っぽいかな。逆らうものはみんな消してやる・・・うん、こんな感じか」
台本片手に練習場で1人練習をしているとドアの開く音がする。
「っ・・・お前は」
「・・・副会長様」
何でお前が来るんだよ。
忘れ物でもしたのか?それなら早く取って出ていってくれ。俺がじっと様子を伺っていれば、副会長は荷物をおろし着替え始めた。
は?お前も練習するつもり!?
唖然としていれば、台本を持った副会長が俺に近づいてくる。無理無理!!
慌てて荷物をまとめ帰ろうとすれば腕を掴まれ引き戻される。
「逃げるつもりですか」
「・・・何のことでしょう」
「私と同じ空間にいるのがそれほど嫌なのかと聞いているのです。何かやましいことでも隠しているのでしょう?」
「そんな事はありません。ただ僕は、普段から僕を毛嫌いしている副会長様に気を遣い出ていこうとしているだけです」
だから早く離してくれ。
「本当に・・・あなたの一挙一動が私を苛立たせる・・・。どうしてそんなにも横暴で最悪なのに・・・貴方の周りには人が集まるのですか」
こいつ急に何を言い出すんだ。
副会長は苦しそうな表情で語り出す。いや語り出さないでくれ早く帰りたい。
「エマに・・・言われたんです・・・。エマが・・・演技を上手く出来ないのは私のフォローが上手くないからだと・・・。今日も私のせいで恥をかかされたと・・・」
普段あんな鬼畜眼鏡なのに今にも泣きそうな副会長に少し同情する。あいつほんとに、とんだ我儘ヒロインだな。ユーゴの時にもそうだったが相当な性悪だ。今じゃ1番金魚のフンをしている副会長にそんなこと言うなんて。
「だからっ・・・だからもっと練習して・・・エマに嫌われないようにしないといけないんです・・・!は・・・どうしてこんな事お前なんかに話して・・・」
「・・・副会長様は自信が無いんですね」
「っ・・・何を言ってるんですか。私はお前と違って完璧な人間です」
「じゃあどうして、嫌われないようにそんな必死なんですか」
「・・・・・・」
「貴方が恋愛に対して自信がない理由、僕にはお見通しですよ。副会長様童貞ですよね」
「なっ・・・!?何を言うんです!?違います!!」
あーあーそんな必死に否定して。童貞だって肯定してるようなもんじゃん。慌てたように怒り始めた副会長に俺は確信する。
前々から怪しんではいた。親衛隊で唯一夜伽を禁止している副会長、性に奔放なこの学園で、こんなにも有名な副会長のそういう噂は1度も流れてこないのだ。外で発散してる様子もないし、つまりそういうこと。
「恥ずかしがる事はありませんよ。僕らはまだ高校生ですし、この歳で経験がない生徒だっているでしょう」
「っ・・・私はっ・・・私はお前みたいな貞操観念が甘い人間とは違うんです!」
「どう考えるかは自由ですが、その自信のなさからくる苛立ちを僕にぶつけられちゃ迷惑なんですよ」
ぴしゃりと言われた言葉に副会長が俯く。
ああ、童貞君のプライドをへし折ってしまった。
「・・・とうは・・・本当は・・・怖いんです・・・。経験がなく・・・エマに嫌われてしまうことが・・・」
「・・・・・・」
「私の両親は厳格な人で・・・幼少期から厳しく育てられてきたんです。だから、娯楽やそういった事には酷く疎くて。この学園に入ってようやく家から出られたのに、僕は生徒会副会長として抜擢されてしまいました。親衛隊なんてものも出来て・・・どんどん僕のイメージを勝手に作られて。今更初体験なんて言えずにここまで来てしまったんです・・・だから・・・だから・・・」
黙ってしまった副会長。
面倒で転入生なら童貞でも受け入れてくれますよと言って帰ろうとしたのに。俺の口は再び勝手に動き出す。
「経験無しでいざ事に及んだ時、上手くいかなかったら酷くトラウマになりますよね」
「・・・・・・」
「副会長様、僕が練習相手になって差し上げましょうか?」
おい、おい、勘弁してくれ。
そして副会長、顔を上げて希望の光を見つけたみたいな目で見ないでくれ。
「副会長様の悩みをここまで聞いたんです。僕なら副会長様の悩みを解決して、転入生と上手くいくように協力して差しあげます」
「・・・っ!駄目です・・・!僕はっ僕は清純な相手に初めてを捧げるんです!貴方は何人もの男に抱かれているのでしょう!?貴方なんかとは出来ません!」
おい童貞の癖に選り好みしてんじゃねえよ!だから童貞なんだよ童貞眼鏡!!
俺の体は勝手に動き副会長を壁に追い詰める。
胸元に手を置き顔を擦り寄せた。
「副会長様、安心してください。僕、今月はまだ誰にも抱かれてないんです。だから・・・今月はまだ処女ですよ?」
「は・・・しょ・・・処女・・・?」
「そう、僕まだ処女です♡」
とんでも理論に唖然とするが副会長がどんどん頬を赤らめる。こいつまじか。恐るべし童貞。
「僕が処女なら、副会長様か僕を抱きたくない理由も解消されましたね・・・?でも、僕を抱きたい男性は多いから、このまま抱かれずに帰れば明日は非処女になってるかも・・・」
「っ・・・!?」
「ねぇ、ダニエル・・・どうする?」
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