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嫌味な副会長
しおりを挟む「それでは配役については台本の通りとなっています。皆様1度目を通していただくようにお願いします」
今日は、演劇部門の1度目の打ち合わせ会議だ。大イベントなだけあって、演劇部門だけでもかなりの人数がいる。
渡された台本に俺は不満しか無かった。
内容はありきたりな御伽噺。ストーリーはこうだ。
この世界を乗っ取ろうと企んでいた魔女は妃を殺し、魔法で国王を誘惑して自信が妃となった。そして魔女は、駒として王子を洗脳するのだが、お姫様であるヒロインが王子の前に現れる。
ヒロインと出会ったことで目が覚め、魔女への復讐を決意した王子。
ヒロインと協力して魔女を倒した王子は、この国の王となりヒロインといつまでも幸せに暮らしました。
そんなストーリーだ。
そして俺はこの物語の魔女役に抜擢された。
正直物語に不服はない、つまらない話だなとは思うけど。ただ俺の不満は1つだ。
この物語にはお菓子のおの字も出てこない。ふざけるな!ヘンゼルとグレーテルをやらせろ!
「なにか意見のある方は手を・・・あ、ヴィリエ様どうぞ」
「演劇の内容、つまり話はもう決まっているの?てっきり今から決めていくものだと思っていたのだけれど」
「はい、伝統ある演劇ですから代々演じる物語は決まっているんです」
「確かに伝統は大事だと思うけれど、毎年代わり映えのないものを演じられては観客も退屈なのでは?そこでどうでしょう、今年はヘンゼルとグレーテルを演じるのは」
「・・・・・はい?」
「僕は思うんです。この国の人間はスイーツに興味のあるものが少ないと。けれど皆お菓子を食べたくない訳では無いんです。お菓子を食べたことがないから、その素晴らしさを分からないんですよ。だから需要もなくお菓子作りに必要な材料を輸入するも、この僕ですら人脈をフル活用しないと出来ないんです。国際的にも注目されるこの学園のイベントでお菓子の素晴らしさをアピールすべきでは?貴族として国の、いやスイーツ会の発展のためにも僕はそうすべきだと思「あっあのっヴィリエ様っ・・・!」
なんだよ俺の力説を邪魔するな。
「ヴィリエ様の仰りたいことは分かりますが、お菓子に関しては既にお菓子販売部門があります・・・。我々がすべきはお菓子のアピールではないのでは・・・」
ちくしょう!何だよ!俺だってお菓子部門に行きたかったのに!!
「ふっ、どこまでも我儘で自己中心的ですね、エヴァ・ヴィリエ」
「っ・・・副会長」
副会長のダニエル・デュボワ。
ブロンドのサラリとしたショートヘア。知的に見えるメガネ、如何にも乙女ゲームやBLゲームでいるようなクールビューティ系のド鬼畜眼鏡キャラ。
「どうせこの配役が気に入らなくて駄々を捏ねているんでしょう?悪役の魔女・・・はっ、正に貴方にピッタリの役柄ではありませんか。ヒロイン役がエマで本当に良かったですよ。もし貴方がヒロインなんかになっていたら、例え演技だろうと貴方とくっつくなどという展開、冗談じゃありませんからね」
「副会長様、僕は役柄に不満がある訳ではありません。国際的なイベントであれば、観客にもっと有意義な物を提供すべきだと思ったんです。それにそんなお褒め頂き光栄です、副会長様も王子役なんですね。どんな演技を見せていただけるのか楽しみです」
そう、こいつはこの物語の主人公でもある王子役。
そしてヒロインはあのエマ。
よりによって、1番関わりたくないやつと関わることになってしまった。
こうなったら圧倒的演技力を見せて、あの副会長をぎゃふんと言わせてやる。
あいつの態度には前々からムカついていたのだ。
日頃から悪役として演じている俺が負けるわけが無い。
学園祭1ヶ月前にもなると、学園内が一丸となって準備に励み始めた。
各々必要な物品を購入したり、準備したり。
俺の料理研究部はというと、学園祭までの間お菓子販売部門が使用するからと調理室の出入りを禁じられてしまった。
通り過ぎる度に漂ってくる甘い香りにつられ(中を覗いてしまう。
当日に向けて新作のスイーツを試作しているようだ。
(いいなぁ・・・)
あとから聞いた話だが、有名なパティシエの息子達が揃って参加しているらしい。もし一緒に出来ていたら色んな話も聞けたはずなのに。
そして後ろ髪引かれる思いで、俺は今日も今日とて演劇の練習場へ向かっていた。
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