上 下
78 / 130

地獄みたいな空気

しおりを挟む








「リュカそれにユーゴも・・・最近テラス席に来てくれないから、どこにいるのかと思ったらここにいたんだね・・・」
「エマ・・・」
「・・・」

儚げな表情を浮かべるエマは庇護欲を掻き立てる。さすが主人公だ。
ちらりと横のリュカを見れば興味無さそうに爪を弄っている。おい、お前の事話してんだぞ聞いてやれよ。

「僕、なにかしちゃったのかな・・・?最近前みたいに皆といられないから・・・」
「いや!エマは何も悪くないぜ、ごめんな。そういうつもりは無かったけど嫌な思いさせちゃったなら」
「ユーゴ・・・それなら良かった。でも、一つだけ聞いていいかな?どうしてヴィリエさんと一緒にいるの・・・?」

静まり返った食堂にエマの声が響く。

「ぼく・・・僕・・・本当はこんな事言いたくなくて、ずっと黙ってたんだけど・・・。ヴィリエさんに沢山嫌がらせされてたんだよ・・・?物を隠されたり・・・嫌な事言われたり・・・この前だって、ユーゴに作ったお弁当・・・ひっくり返されたり」

しゃくりあげながら泣き出したエマ。
やばい、この空気。完全に俺が悪役な空気。
でも、これが正しい設定なんだよな。否定することも出来ず俺は黙っていた。
エマの後ろからかつかつと靴音を鳴らして来た副会長。

「エマ、こんな奴らの為に泣くことなんてありませんよ。リュカ、貴方には元々期待なんてしていませんでしたが、ここまで落ちぶれるとは思いませんでしたよ。そんな汚らわしい存在に擦り寄るなんて何を考えているんですか?」
「・・・・・・」
「それに、ユーゴ貴方も。エマが嫌がらせされていたのは貴方も見ていたはずでしょう。はぁ・・・本当に呆れたものです。2人だけならまだしも会長の護衛騎士までもこんな奴に肩入れするなんて」

副会長の言葉にアダンが立ち上がりつかつかと歩み寄った。

「俺は殿下の護衛騎士だ。貴様に指図される覚えは無い」
「はっだからこそ言っているのですよ。会長がそいつと婚約破棄したのは貴方もご存知でしょう?もうそいつを祭り上げる必要も無いのに何をしているんですか」
「では貴様も俺と同じでは無いと?平民上がりの祭り上げる必要も無い転入生如きに学園の副会長が四六時中纏わりつく必要はあるのか?」
「っ・・・貴方には関係ないでしょう!」
「それはお前も同じだ。これ以上エヴァに近寄るな・・・ああ、そこのお前も。最近エヴァの周りをうろちょろしていること知らないとでも思ったか?」
「!?ぼっ僕はそんなこと・・・!」
「今は警告で済ませてやる。お前らも自分の身の振り方をよく考える事だ」

副会長は悔しげな表情で俺たちを睨んだ後エマを連れて食堂を去っていった。

「あ・・・アダン・・・」
「感謝の言葉などいらない。礼なら体で払え」

やっぱこいつ嫌い。






しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...