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地獄の椅子取りゲーム

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攻略対象達の寄行に目を瞑れば学園生活は比較的、平和な日々が続いていた。
今じゃ以前は酷かった嫌がらせも、リュカやユリスが何かをしたのか、物を盗られたり傷つけられることはほぼ無い。聞こえるように言われていた悪口も、俺の傍に張り付くガレルが睨みを効かせるせいで無くなったところが、悲鳴をあげ逃げられるようになってしまった。

そう、嫌がらせが無くなったのは喜ばしい事だが、代わりに代わる代わる攻略対象達に迫られているのがここ最近の悩みだ。
事ある事に顔を出すユリスや電波王子様子と書記、遠征から戻ってきては俺を部屋に引きずり込み抱き潰すアダン。頼んでもないのに守ってやったお礼とか良いながら保健室に引きずり込んでこれまた俺を抱き潰すガレル。
そして部屋に帰れば待ってましたとばかりに恋人面するユーゴ。

もう俺の体は限界に達していた。
こいつらどういう心境で俺を抱いているのかと。何れ悪役令息として無惨に俺を殺す予定だった加害者達が、どうしてこんなにも俺を抱くのかと。
睡眠もろくに取れず若干の隈を残した俺は、今日こそは一人の時間をと奴らを撒いて一人食堂の隅でご飯を食べていた。

「あいつら好きなだけ中出ししやがって・・・魔法が掛けられてなきゃマジで妊娠してた・・・」

痛む腰を擦りながら目の前のハンバーグを口に運ぶ。ああ、一流のシェフが作るご飯のなんと美味しいことやら。
しかしそんな平穏も長くは続かなかった。


「エヴァ・・・見つけた・・・。俺も・・・ご飯食べる・・・」
「げっ・・・」

我が物顔で俺の隣に腰かけたリュカは料理の乗ったプレートを机に置く。そして何故か俺の肩に頭を置き寄りかかった。俺よりも身長の高い男に寄りかかられ俺は転びそうになる。

「エヴァ・・・今日もかわい・・・大好き・・・」
「リュカやめろっ・・・!人前だぞ!?」

隠す気もないのか俺にキスしようとするリュカのせいで周りの生徒がざわめく。
しかしそんなリュカを押しのけるようにして手が割り込んだ。

「エヴァ様から離れろこの駄犬が」
「ゆっユリス・・・!」

怒ったようにリュカを椅子から引きずり出す。

「痛・・・何すんの・・・お前・・・」

バチバチと見えない火花が散る様子に頭を抱える。
止めに入ろうとした瞬間、ぐんっと上から引き上げられるように腕を掴まれ硬い何かに頬が当たる。

「アダンっ!?」
「こんな所で男を引っ掛けて浮気か?お前は俺が目を離すとすぐに他の男に股を開こうとするな」

顎をくいと上げられ目線を合わせられた先にはアダン。相変わらず黒髪が似合う色男だ。
いやいやそんなこと言ってる場合じゃない!なんてこといってんだよ!!周りの生徒がやっぱり、まさかアダン様とも関係が?とか変なこと言い始めてる!
俺は慌ててアダンから離れようとするが後ろから鋭い怒声が上がる。

「てめぇ俺のお姫様に何してんだ?あ"ぁ"?」
「が・・・ガレル・・・」

ガレルの鋭い視線がアダンへと向けられる。
そんなガレルをアダンは嘲笑したように見ていた。

「ああ・・・貴様はガレル・オルメスだな。よく知っている、貴様の父親が裏でしている商売も、敵国と繋がっている事もな」
「はっ俺もお前の事はよく知ってるぜぇ。アダン・ディディエ、国王の犬だな?じゃあ次期に国のトップになる俺に今から跪いておいた方がいいんじゃないのかァ?それと、てめえが今腕に抱いてるのは俺の次期妃だってことも分かってんだろうなァ?」
「はっ笑わせるな。貴様の首はいつでもはねられるという事を知っておけ。この学園から出たら最後、お前の首と胴体は真っ二つだ」

まるでドラゴンと虎が睨み合っているオーラを感じる。2人が言い争っているうちにと、俺は急いでアダンの腕の中から出て逃げようとする。
ハンバーグが残っているがそれ所じゃない!トレーを持ってプレートオフへ駆け出そうとした。
しかし横から伸びてきた腕にまたしても掴まる。

「エヴァここに居たんだな。一緒に飯食おうぜ」
「っ・・・ユーゴ!」

今度はお前か!!
有無を言わさぬユーゴの言葉と共に再び着席させられる俺。当然のように隣に座ったユーゴ。
そして言い争っていたはずのリュカが光の速度でユーゴとは反対側の俺の隣に座る。お前っ!?
そして舌打ちをしたユリスは真正面へ、アダンとガレルもいつの間にかユリスの両隣りに着席する。

最悪のテーブルが出来上がったわけだ。







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