上 下
64 / 130

部屋は全然爽やかじゃありません

しおりを挟む







晴れて部活を立ち上げた俺だが、正式に活動を始めるまで少し時間がかかりそうだ。
というのも調理器具については、俺の物を持ち込もうとしたのだがリュカから部費として、学園の予算から出せると言われたのだ。
せっかくなら新品で揃えたいと、お言葉に甘える事にした。

部活については順調に進んでいるが、相変わらず同室者との関係は最悪。
ユーゴは俺を見る度に嫌そうに顔を顰めるし、胃がキリキリと痛む。
学園では相変わらず嫌がらせをされているものの、俺が虐められていることに気づいたリュカとユリスが何かをしたのか、大分収まった。

まあでも一人でいる時に悪態をつかれるのは変わらないが。そんな事より俺は今とてつもない危機に直面していた。
俺は前世から唯一苦手なものが1つある。
それはあの黒く無駄に艶光した生き物、所謂「G」だ。
人間の居住地に出没しては恐怖に貶める恐ろしい存在。奴が、今、リビングに出現したのである!

「何でだよぉ・・・!この学園に来てから1度も見てなかったのに!!無理!なんでBLゲームの世界にもいるわけ!?無理無理無理!どうしよう俺退治できない!」

半泣きになりながらソファーの上に避難する。
奴は部屋の隅にいるものの、俺が1ミリでも動いたら飛んでくるかもしれない。
そう考えただけで恐ろしくて、俺は逃げることが出来なかった。そいつから目を逸らす事も出来ず、眼球が乾くほどじっと監視していればドアの開く音がする。

「・・・お前何やってるんだ」
「あ・・・あ・・・!ユーゴ・・・!あいつがっ!Gが!」

半泣きで必死に指をさせば呆れたような目で見られる。仕方ないだろ!本当に苦手なんだから!
ユーゴは頭を掻きながらティッシュを数枚取るとGに近づき、何ともないようにそいつを掴んで窓から外に放り投げる。

「ひぃっ・・・よく触れるな・・・」
「お前がビビりすぎ。俺らの方がでかいんだからどう考えても虫の方が人間を怖がってるだろ」

もう良いか?と言うようにユーゴは自室へ戻っていく。相変わらず冷たい奴だ・・・。
俺も部屋に戻ろうとした瞬間、俺は目を見開き思わずユーゴの部屋へ走ってユーゴの前に割って入るように部屋を覗き込んだ。

「おまッ!お前ッ~~~!?!?」
「おいっ何すんだよ!?!」

驚いたユーゴが怒ったように俺を退かそうとするが、俺は俺はそれどころじゃなかった。

「お前何でこんな部屋汚いんだよ!?ゴミ屋敷じゃん!?そりゃGも出るわ!!てかさっきのG絶対お前の部屋のせいじゃん!!??」

ユーゴとドアの隙間から見えた部屋の中。そう、ユーゴの部屋はとんでもない汚部屋だった。
机の上には飲みかけのペットボトルや食べかけの弁当が散乱。ゴミは長らく捨ててないのかゴミ袋に入れられた状態で積み重なっていた。そして洗濯したのかも分からない衣類が床にちらばっており、独特な異臭が漂っている。

爽やかスポーツマンとは程遠い。こんなに汚い部屋で生活してるのにこいつからは制汗剤の匂いしかしないのには攻略対象効果なのか??イケメンはゴミ屋敷でもいい匂いするってか??

正直こいつの部屋が汚部屋なのはどうでもいいが、こいつのせいで共同エリアや俺の部屋にまでGが出られるのは困る。というかふざけんな。
何としても片さなければ。

「すぐに片すよ!ゴミ袋と掃除道具もってきて」
「はぁ?なんでだよ、俺にまで命令する気か?お前に関係ないだろ」

心底不愉快ですと顔に出すユーゴに俺の怒りの沸点は限界だった。

「関  係  あ  る  ん  だ  よ!!お前の部屋が汚いせいで僕の部屋にGが出たらどうしてくれるんだッ!!というかもう既に共同スペースにGが出てるんだ。次Gが出たらこの部屋に火を放ってGを駆逐してやるぞ」
「わっ分かった・・・!分かったから!落ち着けよっ・・・」

俺のあまりの怒り具合にたじろいだユーゴ。流石に悪いと思ったのかすごすごと掃除用具を取りに行った。






しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...