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見つけた俺のお姫様 ※リュカ視点
しおりを挟む俺が勇気を振り絞って行動に移してもエマにとって俺は周りにいる男の1人である事に変わりはなかった。エマの愛は俺だけに向いてない。
俺が欲しいのは俺だけを1番に愛してくれるお姫様なのに。
俺はまた王子様になれなかったんだ。
『ねえねえリュカのフラグ折って良かったの?あのまま褒めてあげれば確実にリュカを落とせたのに!』
「うーん確かにそうだけどぉ、僕欲深いからハーレムルートにしたいんだよねぇ」
『つまり他の攻略対象も?』
「そう!生徒会は全員落したけどアルベールの護衛してるアダンとかエヴァの使用人のユリスも落としたいんだぁ♡だからリュカはその気にさせといてまだ完全には落とさないの。だってあいつ面倒くさそうじゃん?」
耳を疑いたくなるような会話。
だが何度聞いてもそれは愛しいお姫様だったはずのエマの声。
気づいた時には俺は走り出して人気のない廊下に来ていた。
生徒会長は全員落とした?他の男も狙ってる?どういう事?ねえエマどういう事?俺に向けてくれたあの笑顔も優しい言葉も全部嘘だったの?
俺が信じてたおとぎ話は嘘なの?
ねえ、エマ
君はお姫様じゃないの?
信じていたものが一瞬でガラガラと崩れ落ちる。
結局俺は1人だった。誰も俺を愛してくれてなんかいなかった。馬鹿みたいだ。王子様どころか俺はただの道化だった。
ぽたぽたと涙がこぼれ落ち床が濡れる。
(もうどうでもいい・・・何もかも・・・)
あれから俺はエマに近づかなくなった。
当然だ。だってもう傍にいる必要は無いのだから。エマは俺の運命じゃない、あんなに愛おしかった筈なのにその事実がわかった瞬間心底どうでもいい存在になった。
同時にまた灰色の日常が始まる。
「リュカ貴方最近どうしたんですか」
「・・・どうって・・・?別に・・・どうもしてない・・・」
「最近エマの所に子ないじゃないですか。僕としては有難いですけどエマが心配してるんです。何も言わずに離れるのはエマに失礼じゃないですか?」
理由なんてエマが1番知ってるでしょ。
その一言を言うのですら億劫で俺は副会長を無視して生徒会室を出る。後ろで副会長がなにか騒いでいたが知らない。
もう今日の仕事は終わったし早く部屋に帰ろう。
早歩きで廊下を進んでいた時だった。
「俺アルベールに婚約破棄されるっぽい」
思わず廊下の端に隠れてしまった。
そっと覗けばそこに居たのはあいつ。誰かと話しているようだ。
(何で俺が隠れなきゃいけないんだ)
そう思いながらも話し続けるあいつのせいで中々出られない。
「皆が噂してる。だから親衛隊も除隊させられたんだよ」
はっ。あいつも会長に見捨てられたんだ。捨てられた同士俺と同じじゃんざまあみろ。それより学園裁判だとか追放だとか何の話をしているんだ?
よく聞き取れず耳を澄ました。
それにいつもの猫なで声とは違う乱暴な年相応な青年らしい言葉遣いに本当にあいつなのかと疑ってしまう。
「なあ何その歯切れの悪い感じ。お前のせいでやりたくもない親衛隊とかアルベールの婚約者してたんだぞ?なに、なんか問題でも発生してんの」
やりたくもない親衛隊・・・?どういう事だ・・・。
あいつは、エヴァ・ヴィリエは会長に心酔してたんじゃなかったのか・・・!?
学園から追放されたら西の国でお菓子屋さんを開きたいとか話し出すアイツにそれよりも会長との話をと問い詰めたくなる。
耐えきれず少し覗いたところで俺は目を見開く。
あいつの傍に羽を羽ばたかせる妖精のような生き物がいたからだ。
その日から俺はエヴァ・ヴィリエの跡をつけるようになった。あいつが話していた事の真実を知りたかったから。何よりあいつが西の国でお菓子屋を開くという話をしていた時の表情があまりにも無邪気で、いつもの悪役みたいな表情や話し方とかけ離れていて・・・凄く惹き付けられたんだ。
まるで小さい頃王子様になりたいと夢物語を語っていた俺のようで。
その笑顔に触れたい、もっとお前の事を知りたいんだ。俺が知らないエヴァの事。
エヴァを観察する事で俺は今まで知らなかったエヴァの変化に気づくようになった。人前ではいつものお高く止まった態度を取るけど誰もいない時やペットの犬と過ごす時は年相応な表情をするんだ。
その時の笑顔が可愛くてどうしようも無いほど魅力的だった。
この頃完全にストーカーと化していた俺だがエヴァを知れば知るほどエヴァ・ヴィリエという人間に惹かれていた。
同時にエヴァが他の男と部屋に入っていく姿を見た時どうしようもない怒りと嫉妬の感情に苛まれる。
あの笑顔が俺に向いてくれたらどんなに良いだろう。俺もあの体に触れたい。
エヴァが日課のペットの散歩に行った時跡をつけた。そしてエヴァが木の下で眠ってしまった時俺は堪らず傍へ歩みよる。
すうすうと寝息を立て眠るエヴァ。眠るエヴァに小さな小鳥が数羽寄ってくる。
「俺の・・・俺のお姫様・・・」
あの時絵本で見た光景そのままだった。
美しい美しいエヴァ。
きっとお姫様なのにあの悪い妖精の魔法であんな我儘な悪役になってたんだ。俺が王子様なのに気づいてあげなかったから。
そっと頬に触れる。口元にあの時殴ってしまった時の傷が少し残っていた。罪悪感と同時に自信がつけた傷がエヴァに刻まれていることにほの暗い歓喜を覚える。
ああ、エヴァ。俺が王子様のキスで君の魔法を解いてあげる。他の男と関係を持ってるのもそのせいなんだよね。
大丈夫今度は間違えないから。
もし君が僕を拒絶しても僕はもう諦めたりしない。運命でなくても俺がその運命を捻じ曲げてお前を俺のお姫様にしてやる。
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