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親父にもぶたれたことないのに!
しおりを挟むあれから相変わらずのように生徒会は転入生もとい主人公のひっつき虫をしてるらしい。
俺としては心底どうでもいいが親衛隊の連中はうるさいったらないので一応俺も怒っている振りをしてはいる。
「隊長このまま転入生を見逃していいんですか?聞けばあいつ庶民の出だって言うじゃないですか。そんな奴が生徒会の皆様の傍にいるなんて許せない」
「夜だって生徒会の皆様の部屋に出入りしてるらしいです。こんなこと許せません」
「・・・」
そんなこと言ったってなぁ。転入生の周りには常に生徒会の奴らがいるしこれ以上どうしろって言うんだよ。自分達が手出し出来ないからってある程度権力ある俺にやらせようとしてるだけだろ。
いつまでも黙っている俺に親衛隊の奴らはヤキモキしている。そんな空気に割って入ったのは副隊長だった。
「全く隊長とあろう方が情けない限りですね。転入生の1人に制裁すら出来ないなんて」
「ルネ・・・」
「隊長、約束は覚えていますか?夜伽の話です」
ああそういえばそんな話あったな。
「今月の成績と隊員からの投票で夜伽は僕に決まりました。異論は無いですよね?」
「まあ、約束だからね」
「それなら良かったです。それと、貴方が何もしない間にも僕は転入生へ制裁していますよ。これじゃどちらが隊長なのか分かりませんね?」
得意げな副隊長。というか制裁って何したんだ?
あんなに生徒会の奴らがべったりなのによく近付けたな。
「今の貴方の親衛隊内での評価は最悪ですよ。隊長のくせに転入生に何もしてくれないって。このまま評価が下がり続けたら除隊も有り得るかもしれませんねぇ。でも安心してくださいこの隊は僕がしっかり引き継ぎますしアルベール様の事も満足させますので」
「・・・随分よく回る口だね。僕が誰か分かって言ってるのかい?」
全然怒ってないけどとりあえず怒ったふりをすれば副隊長がたじろぎ少し恐怖を滲ませた。
「ふっふん、今だけですよそんな強気でいられるのも。それじゃあ僕はもう行くので」
バタバタと取り巻きを連れて去っていくルネ。
夜伽変わってくれてさんきゅーな。
さて、転入生への制裁など乗り気はしないがあれだけ言われたら仕方ない。一応悪役令息だし悪役っぽいことはしとかないとな。
もう取り巻きのいない1人を狙うのは無理そうだし普通に正面から行こう。
そう考え俺は転入生の教室へと向かう。
他の生徒と廊下ですれ違う度俺を恐怖やの目で見てくる。気にせずスタスタと今日別を目指せば目当ての人物はすぐに見つかった。
後ろの席で美形連中に囲まれているのが主人公のエマだな。副会長に書記、会計や爽やかスポーツマン等そういえばそんなキャラいたなという攻略対象たちに囲まれていた。
「あれだけ忠告したのにまだ懲りずに生徒会の皆様に接触しているの?本当に呆れる」
「お前はっ・・・!?」
「副会長様、ここは一般生徒の教室です。あなた方のような特別な生徒が軽々しく出入りしては良くない影響を及ぼすとお考えにはならないのでしょうか」
「ふっ悪影響なのは貴方でしょう?私がエマの所に来ようが誰かに指図される覚えはありません。それよりも」
副会長が怒ったように俺に何かを突き出してくる。切り刻まれた教科書?
「ここ最近エマの私物にこうした嫌がらせがされているのは全てあなたの指示でしょう。本当にどこまでも汚い人間だ。会長の婚約者でなければすぐにでも退学にしてやるのに」
「・・・・・・」
いや俺じゃないけど。ふと得意げな副隊長の顔が脳裏を過った。
(あいつか・・・)
しかしここで僕じゃありませんと否定するのもキャラじゃないしな。とりあえず俺ってことにしとくか。
「当然の報いです。忠告を聞かずに生徒会の皆様の傍をちょろちょろしているんですから当然でしょう」
「お前っ・・・!」
「やめて!僕のために争わないで・・・!」
「エマっ・・・」
「あの・・・エヴァさん?ですよね・・・?どうしてこんな事するのか分からないけれど僕が悪いことをしたんですよね・・・。それなら謝りますごめんなさい・・・」
「エマ貴方は謝らなくていいんですよ!?」
「いいの、僕は・・・僕が傷つくのは構わない。けど大切な皆を悲しませたくないから・・・」
随分いい子だな。涙をうかべ訴える転入生申し訳ない気持ちしか生まれないがこれもキャラのためなんだと内心謝罪する。
しかしそんな俺と転入生の間にまた誰かが割入ってくる。
「エマは・・・悪くない・・・謝らなくていい・・・こんな奴に」
「リュカ・・・」
こいつは確か・・・
書記のリュカ・クラメル。BLゲームでありがちな無口わんこキャラクター。生徒会で書記をしているが普段は殆ど喋らないし喋っても必要最低限の単語でコミュ力は壊滅的。まあ所謂コミュ障ってやつ。
だが生徒会の中でも1番の高身長に長い前髪から覗く顔はとんでもない美形。
そんな書記は俺の事を睨み胸倉を掴んできた。
「エマに・・・手を出すな・・・・!いつもいつも・・・親衛隊だからって・・・鬱陶しい・・・うざいんだよ」
「ふっ。勘違いしないでください僕はアルベール様の親衛隊です。アルベール様の為に行っているだけで僕は貴方にまとわりついている訳じゃありませんから」
そう言った瞬間頬が熱くなる。リュカに殴られたのだと分かった瞬間には俺は地面に倒れていた。
これ絶対腫れる。痛みでじわりと涙が出てきた。
だがこんな時でも悪役の演技を崩さない。キッとリュカを睨む。
「こんな事して許されると思ってるんですか?アルベール様の婚約者である僕に!あとで後悔しても遅いですからね・・・!」
負け犬のような捨てセリフを吐き俺はダッシュで立ち去った。
(クソいってええ~~~~)
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