5 / 130
⑷ムカつく妖精
しおりを挟むいくら手を打ったところで結局物語がどう動くかは分からない。悪役令息という立場である以上攻略対象達のヘイトが俺に向くことは変わりないのだ。どう足掻いてもこのままいったら俺は死んでしまう。それならいっその事ここを離れて逃げてしまえばいいのだ。
荷物を纏めた俺は部屋を出ようとドアを開けたその瞬間ビタンと顔面に何かがぶつかる。
「っっってぇ~~~」
『ちょっとちょっと~君今逃げようとしたでしょ!』
「・・・は?」
痛む額を抑えながら薄ら目で見るとそこには何やら羽を羽ばたかせる妖精・・・?のようなものが。
ぷりぷりと怒りながらこちらを指さす。
『君はこの物語の悪役令息なんだから逃げちゃダメだよ!ちゃんと物語が進むようにしてくれないと』
「なっお前誰だよ!?」
『僕はこの物語の案内役とでも言おうか!本当は主人公にアドバイスする存在なんだけどね~。君が勝手な行動取ろうとするから出てこざるを得なくなっちゃったじゃないかぁ』
「はぁ?」
やれやれといった仕草の妖精に若干のイラつきを覚えつつもふとこの妖精について思い出した。
ゲームプレイ中主人公に攻略対象達についてアドバイスしてきたキャラだ。現時点での好感度等を教えては次はこうしたらいいんじゃないかああしたらと指図してきた奴。まさかこいつまでいるとは。
「悪いが俺は悪役令息にならない。まだ死にたくないし」
『ふぅん・・・、本当に逃げて無事でいられると思ってるの?』
「は?何だよその意味ありげな返答」
『まだ分かってないようだから教えてあげるよ。ここでは誰もが役割を持っているんだ。その役割を放置して物語を壊すような事をしたら君が見たバッドエンドよりも酷い死に方するよ』
「・・・嘘つけ」
『嘘じゃないさ。肉を削がれて血を抜かれるよりも酷い死に方したい訳?』
「・・・・・・」
嫌に決まってるだろ。嘘だと思いたい、だが確かにここはファンタジーな世界だ。それに案内人だとかいう訳分からないこいつが存在してる以上何が起こってもおかしくない。
「・・・俺は死にたくない」
『はぁ、分かったって。じゃあ上手く立ち回ればいいじゃん。悪役令息として仕事してくれればそれで構わないから。攻略対象達に酷く憎まれない程度に噛ませ犬になればいいでしょ』
そう言うと妖精はもう用はないとばかりに消えてしまった。残された俺はスーツケースから手を離しじっと妖精がいた場所を睨んで考え込んでいた。
その時、ぬっと現れた手に驚いて悲鳴をあげる。
「あ、驚かせちゃいましたかすみません・・・」
「ユリス・・・」
「エヴァ様まだ起きてらっしゃったんですね。一緒に寝ましょう」
寝ぼけているのか俺の腕を掴みグイグイとベッドへ引っ張るユリス。俺を抱き込むと再び眠りについたユリス。
あんまり騒ぎすぎて起こしてしまったのかそれなら悪い事をした。抱き込まれたことによってユリスの胸に頭がつく体勢になってしまったが自然と聞こえるユリスの鼓動に俺も徐々に眠気に襲われた。
1,765
お気に入りに追加
3,599
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる