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本編
No,145 忘年会 in 【なまはげ】 with 旦那さま's
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『悪ぃ大人は、いねーがぁ~~っ!!』
独特のダミ声に、
「ここにおりますが。」
答えるのは、クールなヴァリトン。
毎年恒例の、銀座の【AKITA DINING なまはげ】で行う優里ちゃんとの忘年会に、今年はそれぞれの夫が付いて来た。
本当は、今年は諦めようと思っていた。SPさんたちの事を考えて。
しかし貴志さんが、そんなアタシの背中を押してくれたのだ。
『行ってらっしゃい。忘年会なんて、年に一度の事なんですから。少々騒がしい居酒屋くらい、SPたちにはなにほどの事もありません。…ただし…私も一緒に行って良いですか?』
と。
それを聞いた木島さんも、貴志さんが行くなら自分も行きたいと言い出して。
かくして。貴志さんのお言葉に甘えて“ダブルデート”もどきの忘年会を催すべく、優里ちゃんと木島さんの仕事のスケジュールにあわせて、4人掛けのかまくらを予約する事になってしまった真唯なのだった。
※ ※ ※
『なに!? おめーさんは、悪ぃ大人なのかっ!?』
いきり立つ【なまはげ】さんに、
「冗談です、冗談! この男性は、私を幸せにしてくれる優しい旦那さまで、とっても良い大人ですっ!!」
必死で貴志さんを庇うアタシは、100%本気だ。
『なに? おめーさんたちは、フーフなのか?』
「はい! 先月、結婚したばかりの、熱々の新婚夫婦です♡」
『それは、めでてー! 良し! 祝い酒だっ!!』
そうおっしゃった【なまはげ】さんは、出刃包丁と桶をその場に置いて消えたかと思うと、日本酒の一升瓶と五つのお猪口を持って戻って来られた。そして、お酒を注いでゆくと、
『おめーさんたちの、しぁーわせを祈って! かんぱーい!!』
などと、とっても嬉しい事をおっしゃって下さる。
お酒は、お店からのサーヴィスのようだ。
「「かんぱ~い♪」」
ノリの良い、アタシと優里ちゃんの声が重なって。
「「…乾杯…」」
クールな声が重なった。
『うめー! 祝い酒は、うめーな!!』
温かい【なまはげ】さんのお言葉に、
「ホント、美味しい~♪ …そう言えば、去年はありがとうございましたっ!!
…去年、ここの【なまはげ】さんに応援して頂いて、結婚に踏み切る勇気を頂いたんです!!」
……ホントはちょっと違うけど、励ましてもらった事はホントだから、多少の脚色は勘弁してもらおう。
『そーか! 去年も来てくれてただか! もう一杯いくかっ!!』
そう言って、もう一杯ずつ注ごうとしていたらしい【なまはげ】さんに、
「…【秀よし古酒秘蔵酒】をボトルで追加オーダーします。
…どうせ乾杯するなら、良い酒の方が良いでしょう?
…お付き合い下さい、【なまはげ】さん。」
店で一番高価いお酒を澄ました顔でオーダーする貴志さんは、しかし表情がこの状況を明らかに楽しんでいた。
いつも優里ちゃんと2人っきりの時は、普通の「きりたんぽ鍋コース」だった。しかし、お店のHPを検索していた貴志さんが、全部で9品もある「ぜいたく秋田コース」を希望した。
秋田満喫桶前菜5種盛り合わせ・季節の鮮魚・ハタハタしょっつる一夜干し・季節食材の煮物・いぶりがっことおからのボールコロッケ・太刀魚の菊花和え・新米あきたこまち使用きりたんぽ鍋・雑炊又は稲庭うどん・季節のデザートなどなど、盛り沢山の豪華版だ。
『…高価いし…そんなに食べられませんよ…』渋るアタシに、
『今年は、男2人が追加参加するんですよ。…余裕ですよ。』のたまったのは当然、貴志さん。
そんな訳でアタシたちのテーブルには、“これでもか!!”とばかりにお皿が並んでいた。中央に【きりたんぽ鍋】が鎮座ましますのは、お約束だ。
先ずはビールで乾杯したが、話題は当然、新婚ほやほやのアタシたちの事だ。散々冷やかされたが、貴志さんは平然としていらっしゃる。一杯目のビールを直ぐに飲み干してしまった貴志さんは、興味深そうにドリンクメニューを見ていた。
『…ああ…真唯さんのお好きなマンゴーサワーがあります…
…あの時の約束を、ようやく果たして頂けました…』
……感慨深そうな貴志さんの声に、“マンゴーサワー”、“約束”の2文字が引っ掛かって。頭の中で素早く検索して。あの時がいつの事か、ヒットしたのは北原さんに奢ってもらった【インスマウス人の館】での出来事。
……たちまちアタシの胸の中に、温かな感情が湧き上がる。
『…覚えてて下さったんですか…』
『…当然です…この私が、大事な妻との約束を忘れるはずがない…』
『…貴志さん…嬉しいです。…今夜は、“普通の居酒屋”を満喫して下さいね。』
『…ありがとうございます…お言葉に甘えまして。』
そうして貴志さんが頼んだのは、当然のようにマンゴーサワー。
アタシはこの店では、2杯目は大概梅酒と決めているのだが。
貴志さんと同じものにしたくて、マンゴーサワーを頼んだのだった。
……マンゴーのフルーツの甘みが、喉を心地好く通り過ぎて行く……
……『…バカップル…』なんて、失礼な優里ちゃんの呟きは、聞かなかった振りをしてあげたのに……
※ ※ ※
『そーだか! おめーさんのよめっこは、そんなにおめーさんの言う事を聞かないんだか!?』
「そうなんですよ。私は家事をして欲しくて、彼女を妻に迎えた訳ではないのに…。…【なまはげ】さんからも、何とかおっしゃってやって頂けませんか?」
……高いお酒をグラスで振る舞われている【なまはげ】さんは、すっかりご機嫌で。狭い【かまくら】を模した個室の中、そのデカイ図体で座り込んでくつろいでいらっしゃる。……いや、それは別に良いんだけど……
『おい、よめっこ!』
「…は、ハイッ!!」
『おめーさんのダンナは、えー男だ! なして、ダンナの言う事さ、聞いてやらねーだ!?』
……【なまはげ】さんは、完全に貴志さんの味方だ。
……無理もないけど…アタシには、アタシの言い分がある。
「…だって…2人とも無職なんですよ…? …それなのに、家事全般他人任せなんて…贅沢過ぎます…」
『ダンナは、あーりーりたいあして、金持ちなんだべ?』
「お金を持ってるから、良いってもんじゃありません!!」
『…んだば、なにが問題なんだべ?』
「…なにって…」
『身の程知らずのぜーたくは、オラもわりー事だと思う。だけんど、おめーさんのダンナは、それだけの稼ぎが既にある。…その稼ぎで人を雇っても、な~んも悪い事ではねーんだゾ?』
「…でも! …それはあくまで、貴志さんのお金であって…っ!」
『…ダンナの稼いだ金をよめっこが使う…どこがわりーんだべ?』
「…っ!!」
……去年と同じだ……【なまはげ】さんの言葉は、ホントにアタシの胸にストンと落ちる。
黙ってしまったアタシに、【なまはげ】さんが尚も言う。
『男は、よめっこに少しでも楽させてやりてーと、一所懸命働く。おめーさんのダンナの稼いだ金は、少しばっかり多かっただけだ。…それに、男はおなごに頼りにされて、甘えてほしーもんだ。おめーさんもすこぉーしばっかり、ダンナに甘えてみたらどーだ!?』
「…【なまはげ】さん…」
……そうして、潮時を感じる事に長けた【なまはげ】さんは、『んだば、そろそろしつれーすっか!』と腰を上げた。
「ありがとうございました。…私の言いたい事を代弁して下さって。」
お礼を言う貴志さんに。
『いや。こっちこそ、うめー酒おごってもらった上に、めったに聞けねー景気のえー話さ、聞かせてもらった。…最近、景気の悪い話ばっかで、愚痴さ聞かされる事がた~んとあるから、しょーじき気が滅入りそーになってただが…おめーさんみてーに金を循環してくれるお人がいると…こりゃぁ、日本の景気回復も夢でねーなっ!! ワハハハハッ!!』
「…ありがとうございます…来年も、また来ますよ。」
『おう! 来年、また会おう! …んだばなっ!!』
……そう言って含蓄ある【なまはげ】さんは、ご機嫌で去って行かれたのだった。
前回と同じく“荒ぶる神さま”に力づけて頂いたけれど、真唯は前回と同じ過ちは繰り返さなかった。
しばしボウッとしてしまった真唯だったけれど。黙って【きりたんぽ鍋】の用意を始めた優里ちゃんに、すぐに気付く事が出来たのだった。
「真唯さん…私1人で出来ますよ?」
「ううん、やらせて。…大丈夫! 菜箸使うのも、大分板について来たんだから!!」
「…じゃあ、お願いします。」
「うん! 2人でやった方が早いよ!!」
そこに参戦して来たのは、貴志さんだった。
「…た、貴志さん! …私たちだけで大丈夫ですから!!」
「菜箸を使うのは、私の方が上手いですよ。」
「…グッ! …否定はしませんが…」
そして、意外そうに口を挟んだのは、木島さん。
「…上井さんも、料理なさるんですか?」
「…も…と云う事は、木島君も?」
「ええ。…正直言えば、優里よりもオレの方が上手いですよ。」
「…っ! …何よ…悟くんの意地悪っ!!」
……などと言い合いをしている間にも、主役のきりたんぽを始め、比内地鶏やゴボウ、白ネギ、しらたき、舞茸などが程良く煮えて。セリの緑が彩りを添えている。
曲げわっぱの取り皿なので、あまり熱さを感じる事がない。
貴志さんが素早くアタシの分を取り分けてくれる。
「…どうぞ、真唯さん。」
「…ありがとうございます…」
自分の分を装った貴志さんは、当然のようにおたまと菜箸を木島さんの方に向けて。心得たように、彼も妻の分を取り分け、自分のを装った。
「ほら、優里。いっぱい、食べろよ。」
「わ~い! ありがとう、悟くん!!」
全員に【きりたんぽ鍋】が行き渡ると、みんなで声を揃えて箸をつけた。
「「頂きま~す♪」」
「「頂きます」」
その後はみんなで良く食べ、良く飲み、良く喋った。
肴にされた事の仕返しのように、優里ちゃん夫婦の事を聞けば、「私たちは、万年、新婚ほやほやで~す♪」などと言われてしまい。早くも「…ご馳走様」などと呟いてしまっても、かまくらの中の神棚にお祀りされている【水神さま】も許して下さるに違いない。
優里ちゃんも木島さんも、仕事の愚痴は一切、言わない。お客様との温かい交流のお話や、それこそお互いの夫自慢・妻自慢とも云える惚気話ばかりだ。
惚気なら、貴志さんも負けてはいない。“真唯専用溺愛フィルター”を発揮し、自分の妻がいかに素敵な女性であるかを滔々と語り、真唯を恋人に、更に婚約者に、遂には妻に出来た自分がいかに幸せ者であるかと云う事を力説するのだ。
だが、それを聞いた全員が、黙ってはいなかった。
アタシが、貴志さんが、いかに素敵な旦那さまであるかを熱く語り。
優里ちゃんが、木島さんが、いかに優しい旦那さまであるかを主張し。
木島さんが、優里ちゃんが、いかに可愛いらしい妻であるかを訴える。
いつ果てるともない白熱した惚気合戦は、しかし唐突に終わりを告げた。
【特選日本酒 かまくら】をオーダーしたアタシが、ポツリと呟いたのだ。
「…そー言えば、優里ちゃんと行った鎌倉、楽しかったなァ~~♪
…優里ちゃん…また、行こうねっ!」
「はい、是非っ!!」
打てば響くように答えてくれた優里ちゃんと。
「真唯さん! 今度は、私がお伴します!!」
叫んだ貴志さんと。
「優里と上井さんが行くなら、オレも行きたい。」
呟いた木島さんと。
4人で顔を見合わせて。
女2人旅を邪魔する気ですか!?
と、優里ちゃんが貴志さんに、男の横暴さを非難すれば。
貴女こそ、夫婦の時間を邪魔する気ですか? 貴女は、旦那に連れて行ってもらえばよろしい。
と、貴志さんが開き直り。
オレ、休み取る! 取るから、一緒に行こう、優里!!
と、木島さんも譲らず。
女の友情を取るか、夫婦の愛情を取るか、究極の選択を迫られて困ってしまったのだが…心地好く酔っ払ってしまったアタシの頭の中からは、“SP”さんの2文字がスッカリ抜け落ちてしまっていたのだった。
2人の時、〆はいつも雑炊にしていた。
自炊をしていなかったアタシにとってお米は貴重であり、【あきたこまち】なんて滅多に食べられなかった上、比内地鶏のお出汁の出ているスープで頂く雑炊なんて、物凄いご馳走だったのである。
だが、しかし。
今回は初めて、稲庭うどんにした。
何故なら、今夜は大晦日。
……これは年越し蕎麦ならぬ、年越しうどんなのである。
お蕎麦は細く長い事から、延命・長寿を祈願するものとされるが。
うどんは、太く長い(と言っても、稲庭うどんは割と細いのが特徴だ)。
……延命・長寿なんて、贅沢な事は言わない。
……うどんのように太く図太く、少しでも長く貴志さんと一緒にいたい。
それだけを願って。
ズルズルと美味しく楽しく、初めて食べる稲庭うどんによる、“年越し蕎麦”を味わったのだった。
ただ。
お会計の際、ひと悶着が起きた。
いつもは完全な割り勘にしていたのだが。
貴志さんが全額払うと言って譲らず(まあ、あんな高いお酒を独断でオーダーしていたのだから、当然と言えば当然である)。木島さんが難色を示したのだが。
「年長者の顔を立てて下さい。」
貴志さんの一言に、
「…ご馳走になります。」
「…ご馳走さまですっ!!」
木島さんは頭を下げ、優里ちゃんも慌ててそれにならっていた。
「真唯さ~ん、絶対、奈良旅行、実現させましょうねぇ~~」
「…優里ちゃんの休みを捥ぎ取るのが先じゃないの…?」
「…え~ん、それを言わないで下さいよぉ~~!!」
「…また連絡するから…良いお年をね。」
「…絶対ですよ! …真唯さんも、良いお年を~~♪」
お決まりの台詞を交わして。
アタシたちは、呼んだタクシーに乗り込んだのだった。
※ ※ ※
……流れる車窓を…見事な銀座の街の夜景と、お台場の街の師走も押し迫った夜の風景をぼんやりと眺めていた。
そうして、去年の今頃の事を思い出す。
【なまはげ】さんに、醜い心を暴かれて……
貴志さんを初めて、部屋に……あの6畳間にお招きして、醜い本心を曝け出して……受け入れてもらえて……
2人で年越し蕎麦を食べて……あのマンションで、除夜の鐘の代わりに汽笛の音を聴いた……
「…何を考えていらっしゃるのですか…?」
……隣に座って、問い掛けて来る男性が、私の旦那さまになってるなんて……
「…女2人旅は、絶対、阻止しますからね。」
……なに的外れな事、言ってるんだか……偶には、この夫を焦らせてみたい……
「…去年の今頃の事を思い出していたんです…
…汽笛を聴いて、過ごした夜の事を…
…今年の今月は、正に【カパック・ライミ】…“壮麗な祭り”でした…
…貴志さん…いくら“解禁”になったからと言って、そんなに張り切らないで下さいね。…明日の朝、お雑煮が作れなくなっちゃいますから…」
「…っ! …ま、真唯さん…っ!!」
……やった!
アタシも、貴志さんを焦らす事が出来た…っ!
……などと思ったのは、早計だった。
「…了解りました。貴女のお雑煮は、是非とも頂きたいですからね。
…その代わり明日の【姫初め】は、覚悟しておいて下さいよ…奥様…?」
勝ったと思った次の瞬間に、ヤられてしまう。
ガックリくるが、(…ま、いっか…)と云う気持ちになってしまう。
【なまはげ】さんに言われた台詞が、心の中にお灯明を灯してくれていたからだ。
『男は、よめっこに少しでも楽させてやりてーと、一所懸命働く。おめーさんのダンナの稼いだ金は、少しばっかり多かっただけだ。…それに、男はおなごに頼りにされて、甘えてほしーもんだ。おめーさんもすこぉーしばっかり、ダンナに甘えてみたらどーだ!?』
……アタシ…ずぅっと、“おひとりさま”を目指していたから、自分の足で立たなきゃいけないって思い込んでた。
……貴志さんと結婚しても、甘え切っちゃいけないって、ココロのどこかでブレーキ掛けてた。
……でも…甘えて良いんだ…頼って良いんだ…アタシには、その権利があるんだ。
素直にこんな事を認めるのは、本来なら真唯の理性が邪魔をしていただろう。
(何を言ってるの? 親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ!?)
と。
……あの、荒ぶる神さま、【なまはげ】さんに言われたからだ……
……ありがとう…【なまはげ】さん……
―――そうして、真唯は。
旧い年を終え、新しい年を迎えるに当たって…一つの決意を胸に秘めるのだった。
独特のダミ声に、
「ここにおりますが。」
答えるのは、クールなヴァリトン。
毎年恒例の、銀座の【AKITA DINING なまはげ】で行う優里ちゃんとの忘年会に、今年はそれぞれの夫が付いて来た。
本当は、今年は諦めようと思っていた。SPさんたちの事を考えて。
しかし貴志さんが、そんなアタシの背中を押してくれたのだ。
『行ってらっしゃい。忘年会なんて、年に一度の事なんですから。少々騒がしい居酒屋くらい、SPたちにはなにほどの事もありません。…ただし…私も一緒に行って良いですか?』
と。
それを聞いた木島さんも、貴志さんが行くなら自分も行きたいと言い出して。
かくして。貴志さんのお言葉に甘えて“ダブルデート”もどきの忘年会を催すべく、優里ちゃんと木島さんの仕事のスケジュールにあわせて、4人掛けのかまくらを予約する事になってしまった真唯なのだった。
※ ※ ※
『なに!? おめーさんは、悪ぃ大人なのかっ!?』
いきり立つ【なまはげ】さんに、
「冗談です、冗談! この男性は、私を幸せにしてくれる優しい旦那さまで、とっても良い大人ですっ!!」
必死で貴志さんを庇うアタシは、100%本気だ。
『なに? おめーさんたちは、フーフなのか?』
「はい! 先月、結婚したばかりの、熱々の新婚夫婦です♡」
『それは、めでてー! 良し! 祝い酒だっ!!』
そうおっしゃった【なまはげ】さんは、出刃包丁と桶をその場に置いて消えたかと思うと、日本酒の一升瓶と五つのお猪口を持って戻って来られた。そして、お酒を注いでゆくと、
『おめーさんたちの、しぁーわせを祈って! かんぱーい!!』
などと、とっても嬉しい事をおっしゃって下さる。
お酒は、お店からのサーヴィスのようだ。
「「かんぱ~い♪」」
ノリの良い、アタシと優里ちゃんの声が重なって。
「「…乾杯…」」
クールな声が重なった。
『うめー! 祝い酒は、うめーな!!』
温かい【なまはげ】さんのお言葉に、
「ホント、美味しい~♪ …そう言えば、去年はありがとうございましたっ!!
…去年、ここの【なまはげ】さんに応援して頂いて、結婚に踏み切る勇気を頂いたんです!!」
……ホントはちょっと違うけど、励ましてもらった事はホントだから、多少の脚色は勘弁してもらおう。
『そーか! 去年も来てくれてただか! もう一杯いくかっ!!』
そう言って、もう一杯ずつ注ごうとしていたらしい【なまはげ】さんに、
「…【秀よし古酒秘蔵酒】をボトルで追加オーダーします。
…どうせ乾杯するなら、良い酒の方が良いでしょう?
…お付き合い下さい、【なまはげ】さん。」
店で一番高価いお酒を澄ました顔でオーダーする貴志さんは、しかし表情がこの状況を明らかに楽しんでいた。
いつも優里ちゃんと2人っきりの時は、普通の「きりたんぽ鍋コース」だった。しかし、お店のHPを検索していた貴志さんが、全部で9品もある「ぜいたく秋田コース」を希望した。
秋田満喫桶前菜5種盛り合わせ・季節の鮮魚・ハタハタしょっつる一夜干し・季節食材の煮物・いぶりがっことおからのボールコロッケ・太刀魚の菊花和え・新米あきたこまち使用きりたんぽ鍋・雑炊又は稲庭うどん・季節のデザートなどなど、盛り沢山の豪華版だ。
『…高価いし…そんなに食べられませんよ…』渋るアタシに、
『今年は、男2人が追加参加するんですよ。…余裕ですよ。』のたまったのは当然、貴志さん。
そんな訳でアタシたちのテーブルには、“これでもか!!”とばかりにお皿が並んでいた。中央に【きりたんぽ鍋】が鎮座ましますのは、お約束だ。
先ずはビールで乾杯したが、話題は当然、新婚ほやほやのアタシたちの事だ。散々冷やかされたが、貴志さんは平然としていらっしゃる。一杯目のビールを直ぐに飲み干してしまった貴志さんは、興味深そうにドリンクメニューを見ていた。
『…ああ…真唯さんのお好きなマンゴーサワーがあります…
…あの時の約束を、ようやく果たして頂けました…』
……感慨深そうな貴志さんの声に、“マンゴーサワー”、“約束”の2文字が引っ掛かって。頭の中で素早く検索して。あの時がいつの事か、ヒットしたのは北原さんに奢ってもらった【インスマウス人の館】での出来事。
……たちまちアタシの胸の中に、温かな感情が湧き上がる。
『…覚えてて下さったんですか…』
『…当然です…この私が、大事な妻との約束を忘れるはずがない…』
『…貴志さん…嬉しいです。…今夜は、“普通の居酒屋”を満喫して下さいね。』
『…ありがとうございます…お言葉に甘えまして。』
そうして貴志さんが頼んだのは、当然のようにマンゴーサワー。
アタシはこの店では、2杯目は大概梅酒と決めているのだが。
貴志さんと同じものにしたくて、マンゴーサワーを頼んだのだった。
……マンゴーのフルーツの甘みが、喉を心地好く通り過ぎて行く……
……『…バカップル…』なんて、失礼な優里ちゃんの呟きは、聞かなかった振りをしてあげたのに……
※ ※ ※
『そーだか! おめーさんのよめっこは、そんなにおめーさんの言う事を聞かないんだか!?』
「そうなんですよ。私は家事をして欲しくて、彼女を妻に迎えた訳ではないのに…。…【なまはげ】さんからも、何とかおっしゃってやって頂けませんか?」
……高いお酒をグラスで振る舞われている【なまはげ】さんは、すっかりご機嫌で。狭い【かまくら】を模した個室の中、そのデカイ図体で座り込んでくつろいでいらっしゃる。……いや、それは別に良いんだけど……
『おい、よめっこ!』
「…は、ハイッ!!」
『おめーさんのダンナは、えー男だ! なして、ダンナの言う事さ、聞いてやらねーだ!?』
……【なまはげ】さんは、完全に貴志さんの味方だ。
……無理もないけど…アタシには、アタシの言い分がある。
「…だって…2人とも無職なんですよ…? …それなのに、家事全般他人任せなんて…贅沢過ぎます…」
『ダンナは、あーりーりたいあして、金持ちなんだべ?』
「お金を持ってるから、良いってもんじゃありません!!」
『…んだば、なにが問題なんだべ?』
「…なにって…」
『身の程知らずのぜーたくは、オラもわりー事だと思う。だけんど、おめーさんのダンナは、それだけの稼ぎが既にある。…その稼ぎで人を雇っても、な~んも悪い事ではねーんだゾ?』
「…でも! …それはあくまで、貴志さんのお金であって…っ!」
『…ダンナの稼いだ金をよめっこが使う…どこがわりーんだべ?』
「…っ!!」
……去年と同じだ……【なまはげ】さんの言葉は、ホントにアタシの胸にストンと落ちる。
黙ってしまったアタシに、【なまはげ】さんが尚も言う。
『男は、よめっこに少しでも楽させてやりてーと、一所懸命働く。おめーさんのダンナの稼いだ金は、少しばっかり多かっただけだ。…それに、男はおなごに頼りにされて、甘えてほしーもんだ。おめーさんもすこぉーしばっかり、ダンナに甘えてみたらどーだ!?』
「…【なまはげ】さん…」
……そうして、潮時を感じる事に長けた【なまはげ】さんは、『んだば、そろそろしつれーすっか!』と腰を上げた。
「ありがとうございました。…私の言いたい事を代弁して下さって。」
お礼を言う貴志さんに。
『いや。こっちこそ、うめー酒おごってもらった上に、めったに聞けねー景気のえー話さ、聞かせてもらった。…最近、景気の悪い話ばっかで、愚痴さ聞かされる事がた~んとあるから、しょーじき気が滅入りそーになってただが…おめーさんみてーに金を循環してくれるお人がいると…こりゃぁ、日本の景気回復も夢でねーなっ!! ワハハハハッ!!』
「…ありがとうございます…来年も、また来ますよ。」
『おう! 来年、また会おう! …んだばなっ!!』
……そう言って含蓄ある【なまはげ】さんは、ご機嫌で去って行かれたのだった。
前回と同じく“荒ぶる神さま”に力づけて頂いたけれど、真唯は前回と同じ過ちは繰り返さなかった。
しばしボウッとしてしまった真唯だったけれど。黙って【きりたんぽ鍋】の用意を始めた優里ちゃんに、すぐに気付く事が出来たのだった。
「真唯さん…私1人で出来ますよ?」
「ううん、やらせて。…大丈夫! 菜箸使うのも、大分板について来たんだから!!」
「…じゃあ、お願いします。」
「うん! 2人でやった方が早いよ!!」
そこに参戦して来たのは、貴志さんだった。
「…た、貴志さん! …私たちだけで大丈夫ですから!!」
「菜箸を使うのは、私の方が上手いですよ。」
「…グッ! …否定はしませんが…」
そして、意外そうに口を挟んだのは、木島さん。
「…上井さんも、料理なさるんですか?」
「…も…と云う事は、木島君も?」
「ええ。…正直言えば、優里よりもオレの方が上手いですよ。」
「…っ! …何よ…悟くんの意地悪っ!!」
……などと言い合いをしている間にも、主役のきりたんぽを始め、比内地鶏やゴボウ、白ネギ、しらたき、舞茸などが程良く煮えて。セリの緑が彩りを添えている。
曲げわっぱの取り皿なので、あまり熱さを感じる事がない。
貴志さんが素早くアタシの分を取り分けてくれる。
「…どうぞ、真唯さん。」
「…ありがとうございます…」
自分の分を装った貴志さんは、当然のようにおたまと菜箸を木島さんの方に向けて。心得たように、彼も妻の分を取り分け、自分のを装った。
「ほら、優里。いっぱい、食べろよ。」
「わ~い! ありがとう、悟くん!!」
全員に【きりたんぽ鍋】が行き渡ると、みんなで声を揃えて箸をつけた。
「「頂きま~す♪」」
「「頂きます」」
その後はみんなで良く食べ、良く飲み、良く喋った。
肴にされた事の仕返しのように、優里ちゃん夫婦の事を聞けば、「私たちは、万年、新婚ほやほやで~す♪」などと言われてしまい。早くも「…ご馳走様」などと呟いてしまっても、かまくらの中の神棚にお祀りされている【水神さま】も許して下さるに違いない。
優里ちゃんも木島さんも、仕事の愚痴は一切、言わない。お客様との温かい交流のお話や、それこそお互いの夫自慢・妻自慢とも云える惚気話ばかりだ。
惚気なら、貴志さんも負けてはいない。“真唯専用溺愛フィルター”を発揮し、自分の妻がいかに素敵な女性であるかを滔々と語り、真唯を恋人に、更に婚約者に、遂には妻に出来た自分がいかに幸せ者であるかと云う事を力説するのだ。
だが、それを聞いた全員が、黙ってはいなかった。
アタシが、貴志さんが、いかに素敵な旦那さまであるかを熱く語り。
優里ちゃんが、木島さんが、いかに優しい旦那さまであるかを主張し。
木島さんが、優里ちゃんが、いかに可愛いらしい妻であるかを訴える。
いつ果てるともない白熱した惚気合戦は、しかし唐突に終わりを告げた。
【特選日本酒 かまくら】をオーダーしたアタシが、ポツリと呟いたのだ。
「…そー言えば、優里ちゃんと行った鎌倉、楽しかったなァ~~♪
…優里ちゃん…また、行こうねっ!」
「はい、是非っ!!」
打てば響くように答えてくれた優里ちゃんと。
「真唯さん! 今度は、私がお伴します!!」
叫んだ貴志さんと。
「優里と上井さんが行くなら、オレも行きたい。」
呟いた木島さんと。
4人で顔を見合わせて。
女2人旅を邪魔する気ですか!?
と、優里ちゃんが貴志さんに、男の横暴さを非難すれば。
貴女こそ、夫婦の時間を邪魔する気ですか? 貴女は、旦那に連れて行ってもらえばよろしい。
と、貴志さんが開き直り。
オレ、休み取る! 取るから、一緒に行こう、優里!!
と、木島さんも譲らず。
女の友情を取るか、夫婦の愛情を取るか、究極の選択を迫られて困ってしまったのだが…心地好く酔っ払ってしまったアタシの頭の中からは、“SP”さんの2文字がスッカリ抜け落ちてしまっていたのだった。
2人の時、〆はいつも雑炊にしていた。
自炊をしていなかったアタシにとってお米は貴重であり、【あきたこまち】なんて滅多に食べられなかった上、比内地鶏のお出汁の出ているスープで頂く雑炊なんて、物凄いご馳走だったのである。
だが、しかし。
今回は初めて、稲庭うどんにした。
何故なら、今夜は大晦日。
……これは年越し蕎麦ならぬ、年越しうどんなのである。
お蕎麦は細く長い事から、延命・長寿を祈願するものとされるが。
うどんは、太く長い(と言っても、稲庭うどんは割と細いのが特徴だ)。
……延命・長寿なんて、贅沢な事は言わない。
……うどんのように太く図太く、少しでも長く貴志さんと一緒にいたい。
それだけを願って。
ズルズルと美味しく楽しく、初めて食べる稲庭うどんによる、“年越し蕎麦”を味わったのだった。
ただ。
お会計の際、ひと悶着が起きた。
いつもは完全な割り勘にしていたのだが。
貴志さんが全額払うと言って譲らず(まあ、あんな高いお酒を独断でオーダーしていたのだから、当然と言えば当然である)。木島さんが難色を示したのだが。
「年長者の顔を立てて下さい。」
貴志さんの一言に、
「…ご馳走になります。」
「…ご馳走さまですっ!!」
木島さんは頭を下げ、優里ちゃんも慌ててそれにならっていた。
「真唯さ~ん、絶対、奈良旅行、実現させましょうねぇ~~」
「…優里ちゃんの休みを捥ぎ取るのが先じゃないの…?」
「…え~ん、それを言わないで下さいよぉ~~!!」
「…また連絡するから…良いお年をね。」
「…絶対ですよ! …真唯さんも、良いお年を~~♪」
お決まりの台詞を交わして。
アタシたちは、呼んだタクシーに乗り込んだのだった。
※ ※ ※
……流れる車窓を…見事な銀座の街の夜景と、お台場の街の師走も押し迫った夜の風景をぼんやりと眺めていた。
そうして、去年の今頃の事を思い出す。
【なまはげ】さんに、醜い心を暴かれて……
貴志さんを初めて、部屋に……あの6畳間にお招きして、醜い本心を曝け出して……受け入れてもらえて……
2人で年越し蕎麦を食べて……あのマンションで、除夜の鐘の代わりに汽笛の音を聴いた……
「…何を考えていらっしゃるのですか…?」
……隣に座って、問い掛けて来る男性が、私の旦那さまになってるなんて……
「…女2人旅は、絶対、阻止しますからね。」
……なに的外れな事、言ってるんだか……偶には、この夫を焦らせてみたい……
「…去年の今頃の事を思い出していたんです…
…汽笛を聴いて、過ごした夜の事を…
…今年の今月は、正に【カパック・ライミ】…“壮麗な祭り”でした…
…貴志さん…いくら“解禁”になったからと言って、そんなに張り切らないで下さいね。…明日の朝、お雑煮が作れなくなっちゃいますから…」
「…っ! …ま、真唯さん…っ!!」
……やった!
アタシも、貴志さんを焦らす事が出来た…っ!
……などと思ったのは、早計だった。
「…了解りました。貴女のお雑煮は、是非とも頂きたいですからね。
…その代わり明日の【姫初め】は、覚悟しておいて下さいよ…奥様…?」
勝ったと思った次の瞬間に、ヤられてしまう。
ガックリくるが、(…ま、いっか…)と云う気持ちになってしまう。
【なまはげ】さんに言われた台詞が、心の中にお灯明を灯してくれていたからだ。
『男は、よめっこに少しでも楽させてやりてーと、一所懸命働く。おめーさんのダンナの稼いだ金は、少しばっかり多かっただけだ。…それに、男はおなごに頼りにされて、甘えてほしーもんだ。おめーさんもすこぉーしばっかり、ダンナに甘えてみたらどーだ!?』
……アタシ…ずぅっと、“おひとりさま”を目指していたから、自分の足で立たなきゃいけないって思い込んでた。
……貴志さんと結婚しても、甘え切っちゃいけないって、ココロのどこかでブレーキ掛けてた。
……でも…甘えて良いんだ…頼って良いんだ…アタシには、その権利があるんだ。
素直にこんな事を認めるのは、本来なら真唯の理性が邪魔をしていただろう。
(何を言ってるの? 親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ!?)
と。
……あの、荒ぶる神さま、【なまはげ】さんに言われたからだ……
……ありがとう…【なまはげ】さん……
―――そうして、真唯は。
旧い年を終え、新しい年を迎えるに当たって…一つの決意を胸に秘めるのだった。
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