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本編
No,128 【十年愛】 No,13
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結局、春がやって来ても、俺たちは【竹むら】へも行けなかったし、古書店巡りも出来なかった。未曾有の大震災があり、建設業界にも激震が走ったからである。
東京にも少なからず影響があった。
“遠くの親戚よりも近くの他人”とばかりに、俺は真唯の世話を焼いた。
真唯は免許を持っていない。気軽に足代わりにしてくれと申し出たが、そんな事は出来ないと遠慮する彼女にゴリ押しをした。普段だったら断られただろう事も、非常時には心弱くなり、誰かに頼りたくなる事もある。そんな真唯につけこんだのだ。強引だった自覚はある。だが、自分からは言い出せない遠慮深い彼女の事を、俺が構いたかったのだ。
リザも何くれと無く世話を焼いてくれた。真唯はリザの庇護欲を酷く刺激したらしく、近所のスーパーでは物資が少なくなっているのを見越して、あれやこれやと差し入れをしたらしい。真唯も同性の気安さからか、リザには素直に頼み事をしたと云うのだから、少しばかり……いや、大いに妬けてしまったのも仕方のない事だろう。
しかし、真唯は真唯だった。
こんな時こそ、自分のブログを利用したのである。東北への義援金を募り、クリック募金のリンクを貼り。自身も“東北・福島復興応援キャンペーン”と称し、東北で唯一国宝に指定されている薬師如来坐像と日光・月光菩薩立像がある会津の勝常寺や、国の重要文化財を含む70 余りの仏像が残る東北屈指の古刹・山形県の慈恩寺などに参拝し、そこで大いに散財し、その模様をUPする事で人々を誘致したのである。
……俺が惚れ直したのは、言うまでもない。
そして、こんな年に不謹慎だと怒られる事を覚悟の上で、松山バレエ団のクリスマス恒例行事【くるみ割り人形】に誘えば、多少の躊躇いはあったもののOKの返事をもらい、【インティ・ライミ】には澤木様のご温情で、“影のエアフォースワン”で過ごす事を許された。これにはリザの尽力もあったが、何と澤木様が以前から真唯の事を詳しく調べ上げていらして、ご自身が彼女の事をかなり気に入って下さっていたのは嬉しい誤算だった。
※ ※ ※
「真唯さんは、実家に帰省はされないんですか?」
それまで楽し気だった彼女の表情が、一瞬にして強張り、言った瞬間に後悔した。
夏の盆休み。震災の影響による気が狂いそうな忙しさも一段落し、まともに少し長く休めた休日の一日を真唯さんを誘って、湘南にドライブにやって来た。
本当は避暑地の別荘にでも誘いたかった。真唯さんの夏休みを独占したかった。しかし、例の復興支援キャンペーンで出羽三山神社に参拝に行ってらっしゃったのだ。
………いつか、そのような場所へも誘って頂けるような仲になりたい……
夏休みの最後の一日くらい、家でゆっくり過ごしたい。
そう考えて断られるのを覚悟でお誘いしてみたら、思いがけずにOKの返事を頂き、俺は真唯の気が変わらぬうちにと思い、大急ぎで用意を整え出発した。待ち合わせのコンビニに現れた真唯は相変わらずスッピンだったが、俺にはどんな美女よりも美しく見えた。
湘南の海岸線をドライブして、心地良い海風を感じて頂いて。七里ガ浜にある洒落たイタリアンでランチをとる事にした。シーフードのパスタを頼んでスプーンとフォークで器用に食べる姿を見て、『学生の頃よりずっと上手になったね。随分、練習したんじゃないかい?』などとからかいたくなって困った。
そして真唯おすすめの、“竹寺”と異名をとる報国寺と浄妙寺をのんびり散策がてらの参拝をして。念願の【神社仏閣参拝デート】を叶える事が出来た俺は、有頂天になってしまった。
報国寺で涼し気な竹のざわめきに耳を澄ませ、浄妙寺では瀟洒な日本庭園を鑑賞して、古都の風情を楽しんだ。勿論、“最愛の女性と共に”と云う点が大きなポイントだった事は、言うまでもないだろう。
この後、何処へ行きたいかと尋ねる俺に、「…すみません…我儘を言ってもいいですか…?」などと、上目遣いで見上げられた瞬間! この無邪気な小悪魔は、本気で俺の心臓を止めようとしているのかも知れないと思ってしまった。
「勿論ですよ。 何でも、おっしゃって下さい!」
「…ちょっと、遠回りになってしまうんですが…」
「なんだ、そんな事ですか。 真唯さんさえよろしければ、深夜のドライブになっても構いませんよ。」
「いえ! まさか、そこまでは! 明日から会社もありますし…」
「でしたら、何の問題もありません。」
「すみません。 …せっかくここまで来たので、どうしても行きたい珈琲のお店があって…」
「…もしかして、【備屋珈琲店】ですか?」
「あ! ご存じですか…?」
「何をおっしゃってるんですか、真唯さん。私が何年、貴女のブログの読者でいると思っているんですか?」
「…光栄です。」
「こちらこそ光栄ですよ。貴女のブログを拝読して憧れていた店に、ご本人とご一緒出来るなんて。」
そうしてやって来た【備屋珈琲店 江ノ島支店】
車は勿論、最寄りのコインパーキングに停めてきた。
煙草を吸うかと聞かれて、自分は吸っていないと言うと、案の定、真唯は嬉しそうな表情をして。禁煙席を希望して、4人掛けのテーブル席に案内された。
……実は俺はその昔、ヘビースモーカーだった。煙草を覚えたのは十代の頃。英国に渡ってからは、葉巻の味も覚えて。帰国してからは、仕事が忙しく煮詰まる事があったりすると、煙草の本数が増えていった。澤木様に、これからは喫煙者には厳しい時代になってくるから、出来れば禁煙するようにと注意されていたのだが止められなかったのだ。
しかし、そんなある日。
更新された真唯のブログの中で、『古都の三悪人』と題された記事があった。
山崎嬢と宿泊先の【国際帝都ホテル 奈良】から市内の観光地に移動しようとしていた時、春日大社前の大通りが渋滞していて、その中にとんでもないドライバーがいたのだ。運転席の窓が開き、右手が出てきたかと思うと、その手には車の灰皿が握られていて。どうするのかと思って見つめてしまったら、事もあろうに、その吸い殻のたまった灰皿の中身をそのまま道路にぶちまけて。真唯と山崎嬢が唖然としている中、窓は再び閉められその車は何事もなかったように悠然と走り去っていったそうだ。
『渋滞だったために、その車のナンバーは覚えています。私がここで、それを明かして非難する事は簡単です。勿論、そんな事はしませんが。喫煙者の方は気を付けて下さい。あなたの何気ない行為で、喫煙者への印象が最悪なものになってしまうのです。』
真唯らしくない、いやに攻撃的な口調は、(…もしかして真唯は、喫煙に嫌悪感を持っているのでは…)と容易に推察出来てしまい。その日から、俺はピタリと煙草を止める事が出来たのだった。
閑話休題。
真唯は夏にも関わらず、“本日の珈琲”をホットで頼んだ。恐らくは器を楽しむために。俺も同じ物を頼んだら、真唯がマイセンで、俺がジノリだった。……WEDGWOODだったら、換えて差し上げたのに……。いささか残念に思いつつも、真唯のブログに度々登場する店の雰囲気と美味い珈琲を心行くまで味わった。
……出来れば報国寺ではなく、江ノ島に誘って頂きたかった。
……俺を虜にした、散策記にあった道順通りに、俺を案内して頂きたかった……
そんな恨みがましい言葉を吐きたくなくて、俺はつい口にしてしまったのだ。
「真唯さんは、実家に帰省はされないんですか?」
※ ※ ※
言った瞬間に後悔してしまった言葉は取り戻せない。
……間違いない。
彼女は実家に……両親に嫌悪感を抱いているのだ。
あれから真唯と両親との関係を調査させたが、結果は『頻繁に帰省はしていないものの、特に問題はなし。概ね良好。』との事だった。
……何が良好なものか……
……俺の眼の前の彼女の表情が、全てを物語っている……
あの日の、バー【コレンティエ】で泥酔していた彼女の告白が、俺の頭の中でリピートする。小学生の娘に向かって、あの母親の言葉は酷過ぎる。……もしも、あのような言葉を幼い頃から、日常的に浴びせられていたとしたら…? 彼女の自己肯定力の低さに納得がいってしまうのだ。
家庭の中の事情とは、外にはなかなか漏れないものだ。
……例えば、緋龍院家のように……
「…すみません。立ち入った事を…」
謝罪しようとした言葉に被せるようにして、
「帰省はしません。親が見合いさせようと、待ち構えているので。」
別の意味でギョッとさせられるような言葉がサラッと返って来た。
……見れば、真唯の表情は普段のものに戻ってしまっている。
……ついさっきまでの、観光地のお気に入りの場所で珈琲を楽しんでいる…そんな表情だ。
……きっと、用意されている言葉なのだろう。
……これ以上、自分の内部に踏み込ませないための……
―――……痛ましい……―――
俺は溢れ出しそうになる真唯への想いを、一億分の一……、いや、十億分の一でも漏らしてみる事にした。
「…お見合いですか…、確かにそれは私にとっても有り難くない話です。
…今後一切、帰省はしないで頂きたいですね。」
にっこり
瞳と瞳を見交わして。
一瞬、微笑んだ後は、澄ました表情を心掛けて珈琲を口に運んだ。
「…や…やーだ、一条さんってば、冗談ばっかり~~!」
照れたように、珈琲を飲み干してしまう真唯が可愛い。
……冗談なんかじゃない、と言ってしまうのは簡単だ。
しかし真唯は、そう容易くは信じてくれないだろう。
……今は、“冗談”と云う逃げ道を用意しておいてあげよう。
……現在は、ね。
2人とも飲み終わってしまった事を確認して。「そろそろ出ましょうか。」声を掛けたら、「…はい。」と小さな返事を確かに耳にして。俺は勘定のために席を立った。
普段使いしているプラチナカードで支払いを済ませた後に、事は起こった。
真唯が、「すみません。お土産にしたいので、オリジナルブレンドの豆を100g下さい。」そう言って、代金分の現金をさっさとカルトンに置いてしまったのだ。
「…真唯さん…」
「ご馳走してもらってばかりなのに、お土産代まで出して頂く訳にはいきません!」
「…払わせて頂きたかったですよ。」
真唯との外出は全て“デート”だと思っている俺にとっては、支払いは自分がするのが当然だと思っていたので、毎回実に申し訳なさそうに『ご馳走様でした。』と頭を下げられるのは、地味にストレスだったりした。
……君との心の距離を感じてしまうから……
まあ、奢られる事が当然だと思っている、一部の勘違い女よりは遥かにましだが……
……などと自分を慰めていた俺を哀れに思われたのか、幸運の女神が微笑んでくれた。
夏休みの最後の一日を楽しんだ、レジャー好きの人々のお陰で帰りの渋滞に巻き込まれてしまい。結構な時間になってしまった車中、真唯のお腹がグウ~ッと鳴った。真唯はとっさにお腹を抑えてしまうが、そんな事で収まるはずがない。
「ああ、こんな時間になってしまって申し訳ない。どこかで食べて帰りましょう。」
微笑んで提案すると、
「いいえ、お構いなく! 送って頂くコンビニまで我慢出来ますから!!」
真唯は真っ赤な表情をして抵抗するが、頑固な口とは反対に正直な真唯の可愛いらしいお腹の虫は『お腹が空いた! 我慢出来ない!!』と訴えて来るのだ。
“恥辱・屈辱”と顔に大書されているが、こんな好機を逃す馬鹿はいないだろう。
だから言い方を変えてみた。
「…私もさっきから空腹を我慢していたのです。
…私を助けると思って、ご一緒して頂けませんか…?」
「…そんなに高いお店でなければ…」
……やった!
……真唯を夕飯に誘う事が出来て、しかも快くOKしてもらえた…!!
俺は頭の中で素早く店を検索して。車を一時停止させると、携帯で連絡をとった。
「すみません。緋龍院の貴志ですが。」
……便利な言葉だと毎回思う。通話の相手には【緋龍院家の貴志】だと伝える事が出来るし、こちらで話を聞いている相手には、【緋龍院建設の一条貴志】を略した言葉だと誤解してもらえるからだ。同時に魔法の言葉でもある。どんな高級料亭でも、たちまち最上の席を用意してくれるのだから。
……しかし、今、連絡している処は、そうはいかない。席が限られている予約原則の店だからだ。一種の賭けだったが、初めての真唯とのディナーなのだ。下手に妥協はしたくなかった。
……そして、ここでも、報国寺の釈迦如来が微笑んでくれたのか、奇跡的に当日キャンセルの席が空いていると言うのだ。迷わずそこをリザーヴして。俺は上機嫌で車を発進させた。
「一条さんの事だから、どこの高級料亭かフレンチレストランに連れ込まれるのか、ドキドキしちゃいました。」
ニコニコとのんびりお冷を飲んでいる真唯に、心の中だけで返事をする。
……都心の一等地にある店だけが、高級店と云う訳ではないんだよ…?
「私だって、いつもそんな処で食事をしている訳ではありませんよ。」
微笑って、そう答えるが。
……君を初めて夕飯に誘えたんだよ?
……少しばかり、贅沢をしても罰は当たらないだろう…?
こじんまりとした古民家風の店内に、席は20にも満たない。
しかし、ここは政財界の要人のみが知る、看板の出ていない隠れた名店だ。
以前お祖父さまが、俺の誕生日に連れて行って下さった料亭の板場を長い間任されていた板長が、後進に道を譲って引退した後、こっそりと趣味で開いた店なのだが、所謂“社交界”で噂が噂を呼び客の絶える暇がない。
メニューは二種類のみ。
“おまかせ”の一品料理か、コースのどちらか。
俺が迷わず一品料理をオーダーすると、明らかにホッとする表情をする真唯。
……まったく、君って娘は……
ドリンクメニューを渡されて。酒の飲めない俺に構わず、何でも好きな物を頼むように言ったのだが、真唯は食後の珈琲のみをオーダーしたので、俺も同じにしておいた。
「…すみません。 …私が我儘言ったから、こんなに遅くなっちゃって…」
……やれやれ。やっぱり、言われてしまったか……
しばらくは興味深く、店内の生け花や飾られた陶器や掛け軸、ライトアップされた瀟洒な庭などを眺めていた真唯だったが、おそらくはずっと気にしていたであろう事を吐き出した。
「…謝罪は必要ないと言っても、貴女は気にするんでしょうね…」
「…当然です。私のせいなんですから…」
「…私はむしろ感謝しているんですよ? こうして貴女と夕飯をご一緒出来たのですから…」
「…っ、…からかわないで下さい…っ!」
……いえ、100%本気なのですが……
「…仕方ないですね…では、今から言う条件を飲んで下さったら、今日の事は許して差し上げましょう。」
「はい! 何でもおっしゃって下さい!!」
「…何でも…その言葉に、二言はありませんね?」
「誓って、ありませんっ!!」
「…これからはこうやって、たまに夕飯をご一緒して下さる事。
…そしてその時は、素直に奢られて下さる事。」
「……は……?」
「おや、聞こえませんでしたか? 何度だって言いますよ。 これからは…」
「いえ、一回で充分です! …でも、何か、ちょっと違うと思いますっ!!」
「二言は、誓ってないんでしょう…?」
「…グッ」
……してやったりと、ニヤリと黒笑みたい気分を必死に抑える。
……言質は取った。
……楽しみだね、真唯……
やっぱり何か違うと、ブツブツうるさい口は、丁度良く運ばれて来たお膳に救われる。“おまかせ”は、鰻だった。ひつまぶし風だが、お茶ではなくて氷の入った冷やしダレをかけるようになっている。まだまだ残暑が厳しいと思われる時期に、これは有り難い。
文句を言っていた真唯も瞳を輝かせている。「頂きます」合掌して、箸をとって。ふっくらとした鰻とご飯を装って好みの薬味を乗せて、モリモリと食べている姿に笑みを誘われる。普段、真唯はマトモな食生活を送ってはいない。こんな時こそ、しっかり栄養を摂って欲しい。
冷やしダレをかけると、あっさりさっぱり食べられて、何杯でもおかわりしたくなってしまう。さすが行田さんだ。……これで冷えたビールがあったら、もっと美味いだろうに。
……真唯に再度アルコールを勧めてみようかと思ったが、俺に遠慮するのは理解りきっていたので諦めた。
……いつか、車で遠い処へ食事に連れて行っても、俺に遠慮する事なく酒を飲む……そんな仲に早くなりたい……
「ご馳走様でした! とっても、美味しかったです♪」
笑顔で礼を言う真唯に、そんな葛藤を知らせる事無く、俺はにっこりと微笑んだ。
※ ※ ※
「今日は素敵なドライブに誘って下さって、ありがとうございました!
昼食に、夕飯まで奢って頂いてしまって…これ、ほんのお礼の気持ちです!!」
真唯のアパートの最寄りのコンビニの駐車場で、ソレを手渡された瞬間、俺はそれが何か分かっていながら、訳が理解らなかった。
「…は…?」
「…ですから、【備屋珈琲店】の珈琲豆です。 …気に入って下さったんでしょう…?」
……気に入って頂けませんでしたか?
……そんな心の声が聴こえてきそうな上目遣いに、俺は慌てて首を上下に振った。
「勿論、気に入りましたとも!! …ですがそれは、ご自分で飲まれるのではないのですか…?」
「ウチには、ミルがありませんから。 …一条さんのお宅は、全自動ミル付コーヒーメーカーがあると伺ったので…」
……そうなのだ。真唯の部屋にはミルがない。いつも粉に挽いてもらって購入しているのに、ミルを買うのかと安易に考えていたのだが……まさか、俺に……とは……
「…ご馳走になるばかりで心苦しいので、少しでもお礼がしたくて…幸い、【備屋珈琲店】のお店の雰囲気も味も気に入って下さったみたいなので…これからまた、ご馳走になっちゃう事を約束しましたけど、こんな小さなお礼くらい許して下さい…受け取って下さい! お願いしますっ!!」
……参った、こんな事は初めてだ……どうしたら良いんだ……とてつもなく、嬉しい…っ
「…ありがとうございます…喜んで飲ませて頂きますよ…」
俺が珈琲豆の袋を受け取った事に、ほっと安堵の吐息を吐いて。
真唯はクルリと踵を返す。そして少し歩いて、もう一度振り返って。
「…今日は本当に楽しかったです! 明日から、また元気に働けそうです!
珈琲豆は鮮度が命ですから、早めに飲み切って下さいね! お寝みなさい!!」
そう叫ぶと、今度こそ振り返らずに走って行ってしまった。
真唯にもらった【お土産】が嬉しくて、嬉しくて。
結局、勿体なくて、飲む事が出来ずに冷凍保存してしまって。
実は……と、冷凍庫を開けてみせて白状して。真唯に呆れて捨てられてしまうのは、同棲するようになって三日目の……ずっとずっと先の、未来のお話―――
東京にも少なからず影響があった。
“遠くの親戚よりも近くの他人”とばかりに、俺は真唯の世話を焼いた。
真唯は免許を持っていない。気軽に足代わりにしてくれと申し出たが、そんな事は出来ないと遠慮する彼女にゴリ押しをした。普段だったら断られただろう事も、非常時には心弱くなり、誰かに頼りたくなる事もある。そんな真唯につけこんだのだ。強引だった自覚はある。だが、自分からは言い出せない遠慮深い彼女の事を、俺が構いたかったのだ。
リザも何くれと無く世話を焼いてくれた。真唯はリザの庇護欲を酷く刺激したらしく、近所のスーパーでは物資が少なくなっているのを見越して、あれやこれやと差し入れをしたらしい。真唯も同性の気安さからか、リザには素直に頼み事をしたと云うのだから、少しばかり……いや、大いに妬けてしまったのも仕方のない事だろう。
しかし、真唯は真唯だった。
こんな時こそ、自分のブログを利用したのである。東北への義援金を募り、クリック募金のリンクを貼り。自身も“東北・福島復興応援キャンペーン”と称し、東北で唯一国宝に指定されている薬師如来坐像と日光・月光菩薩立像がある会津の勝常寺や、国の重要文化財を含む70 余りの仏像が残る東北屈指の古刹・山形県の慈恩寺などに参拝し、そこで大いに散財し、その模様をUPする事で人々を誘致したのである。
……俺が惚れ直したのは、言うまでもない。
そして、こんな年に不謹慎だと怒られる事を覚悟の上で、松山バレエ団のクリスマス恒例行事【くるみ割り人形】に誘えば、多少の躊躇いはあったもののOKの返事をもらい、【インティ・ライミ】には澤木様のご温情で、“影のエアフォースワン”で過ごす事を許された。これにはリザの尽力もあったが、何と澤木様が以前から真唯の事を詳しく調べ上げていらして、ご自身が彼女の事をかなり気に入って下さっていたのは嬉しい誤算だった。
※ ※ ※
「真唯さんは、実家に帰省はされないんですか?」
それまで楽し気だった彼女の表情が、一瞬にして強張り、言った瞬間に後悔した。
夏の盆休み。震災の影響による気が狂いそうな忙しさも一段落し、まともに少し長く休めた休日の一日を真唯さんを誘って、湘南にドライブにやって来た。
本当は避暑地の別荘にでも誘いたかった。真唯さんの夏休みを独占したかった。しかし、例の復興支援キャンペーンで出羽三山神社に参拝に行ってらっしゃったのだ。
………いつか、そのような場所へも誘って頂けるような仲になりたい……
夏休みの最後の一日くらい、家でゆっくり過ごしたい。
そう考えて断られるのを覚悟でお誘いしてみたら、思いがけずにOKの返事を頂き、俺は真唯の気が変わらぬうちにと思い、大急ぎで用意を整え出発した。待ち合わせのコンビニに現れた真唯は相変わらずスッピンだったが、俺にはどんな美女よりも美しく見えた。
湘南の海岸線をドライブして、心地良い海風を感じて頂いて。七里ガ浜にある洒落たイタリアンでランチをとる事にした。シーフードのパスタを頼んでスプーンとフォークで器用に食べる姿を見て、『学生の頃よりずっと上手になったね。随分、練習したんじゃないかい?』などとからかいたくなって困った。
そして真唯おすすめの、“竹寺”と異名をとる報国寺と浄妙寺をのんびり散策がてらの参拝をして。念願の【神社仏閣参拝デート】を叶える事が出来た俺は、有頂天になってしまった。
報国寺で涼し気な竹のざわめきに耳を澄ませ、浄妙寺では瀟洒な日本庭園を鑑賞して、古都の風情を楽しんだ。勿論、“最愛の女性と共に”と云う点が大きなポイントだった事は、言うまでもないだろう。
この後、何処へ行きたいかと尋ねる俺に、「…すみません…我儘を言ってもいいですか…?」などと、上目遣いで見上げられた瞬間! この無邪気な小悪魔は、本気で俺の心臓を止めようとしているのかも知れないと思ってしまった。
「勿論ですよ。 何でも、おっしゃって下さい!」
「…ちょっと、遠回りになってしまうんですが…」
「なんだ、そんな事ですか。 真唯さんさえよろしければ、深夜のドライブになっても構いませんよ。」
「いえ! まさか、そこまでは! 明日から会社もありますし…」
「でしたら、何の問題もありません。」
「すみません。 …せっかくここまで来たので、どうしても行きたい珈琲のお店があって…」
「…もしかして、【備屋珈琲店】ですか?」
「あ! ご存じですか…?」
「何をおっしゃってるんですか、真唯さん。私が何年、貴女のブログの読者でいると思っているんですか?」
「…光栄です。」
「こちらこそ光栄ですよ。貴女のブログを拝読して憧れていた店に、ご本人とご一緒出来るなんて。」
そうしてやって来た【備屋珈琲店 江ノ島支店】
車は勿論、最寄りのコインパーキングに停めてきた。
煙草を吸うかと聞かれて、自分は吸っていないと言うと、案の定、真唯は嬉しそうな表情をして。禁煙席を希望して、4人掛けのテーブル席に案内された。
……実は俺はその昔、ヘビースモーカーだった。煙草を覚えたのは十代の頃。英国に渡ってからは、葉巻の味も覚えて。帰国してからは、仕事が忙しく煮詰まる事があったりすると、煙草の本数が増えていった。澤木様に、これからは喫煙者には厳しい時代になってくるから、出来れば禁煙するようにと注意されていたのだが止められなかったのだ。
しかし、そんなある日。
更新された真唯のブログの中で、『古都の三悪人』と題された記事があった。
山崎嬢と宿泊先の【国際帝都ホテル 奈良】から市内の観光地に移動しようとしていた時、春日大社前の大通りが渋滞していて、その中にとんでもないドライバーがいたのだ。運転席の窓が開き、右手が出てきたかと思うと、その手には車の灰皿が握られていて。どうするのかと思って見つめてしまったら、事もあろうに、その吸い殻のたまった灰皿の中身をそのまま道路にぶちまけて。真唯と山崎嬢が唖然としている中、窓は再び閉められその車は何事もなかったように悠然と走り去っていったそうだ。
『渋滞だったために、その車のナンバーは覚えています。私がここで、それを明かして非難する事は簡単です。勿論、そんな事はしませんが。喫煙者の方は気を付けて下さい。あなたの何気ない行為で、喫煙者への印象が最悪なものになってしまうのです。』
真唯らしくない、いやに攻撃的な口調は、(…もしかして真唯は、喫煙に嫌悪感を持っているのでは…)と容易に推察出来てしまい。その日から、俺はピタリと煙草を止める事が出来たのだった。
閑話休題。
真唯は夏にも関わらず、“本日の珈琲”をホットで頼んだ。恐らくは器を楽しむために。俺も同じ物を頼んだら、真唯がマイセンで、俺がジノリだった。……WEDGWOODだったら、換えて差し上げたのに……。いささか残念に思いつつも、真唯のブログに度々登場する店の雰囲気と美味い珈琲を心行くまで味わった。
……出来れば報国寺ではなく、江ノ島に誘って頂きたかった。
……俺を虜にした、散策記にあった道順通りに、俺を案内して頂きたかった……
そんな恨みがましい言葉を吐きたくなくて、俺はつい口にしてしまったのだ。
「真唯さんは、実家に帰省はされないんですか?」
※ ※ ※
言った瞬間に後悔してしまった言葉は取り戻せない。
……間違いない。
彼女は実家に……両親に嫌悪感を抱いているのだ。
あれから真唯と両親との関係を調査させたが、結果は『頻繁に帰省はしていないものの、特に問題はなし。概ね良好。』との事だった。
……何が良好なものか……
……俺の眼の前の彼女の表情が、全てを物語っている……
あの日の、バー【コレンティエ】で泥酔していた彼女の告白が、俺の頭の中でリピートする。小学生の娘に向かって、あの母親の言葉は酷過ぎる。……もしも、あのような言葉を幼い頃から、日常的に浴びせられていたとしたら…? 彼女の自己肯定力の低さに納得がいってしまうのだ。
家庭の中の事情とは、外にはなかなか漏れないものだ。
……例えば、緋龍院家のように……
「…すみません。立ち入った事を…」
謝罪しようとした言葉に被せるようにして、
「帰省はしません。親が見合いさせようと、待ち構えているので。」
別の意味でギョッとさせられるような言葉がサラッと返って来た。
……見れば、真唯の表情は普段のものに戻ってしまっている。
……ついさっきまでの、観光地のお気に入りの場所で珈琲を楽しんでいる…そんな表情だ。
……きっと、用意されている言葉なのだろう。
……これ以上、自分の内部に踏み込ませないための……
―――……痛ましい……―――
俺は溢れ出しそうになる真唯への想いを、一億分の一……、いや、十億分の一でも漏らしてみる事にした。
「…お見合いですか…、確かにそれは私にとっても有り難くない話です。
…今後一切、帰省はしないで頂きたいですね。」
にっこり
瞳と瞳を見交わして。
一瞬、微笑んだ後は、澄ました表情を心掛けて珈琲を口に運んだ。
「…や…やーだ、一条さんってば、冗談ばっかり~~!」
照れたように、珈琲を飲み干してしまう真唯が可愛い。
……冗談なんかじゃない、と言ってしまうのは簡単だ。
しかし真唯は、そう容易くは信じてくれないだろう。
……今は、“冗談”と云う逃げ道を用意しておいてあげよう。
……現在は、ね。
2人とも飲み終わってしまった事を確認して。「そろそろ出ましょうか。」声を掛けたら、「…はい。」と小さな返事を確かに耳にして。俺は勘定のために席を立った。
普段使いしているプラチナカードで支払いを済ませた後に、事は起こった。
真唯が、「すみません。お土産にしたいので、オリジナルブレンドの豆を100g下さい。」そう言って、代金分の現金をさっさとカルトンに置いてしまったのだ。
「…真唯さん…」
「ご馳走してもらってばかりなのに、お土産代まで出して頂く訳にはいきません!」
「…払わせて頂きたかったですよ。」
真唯との外出は全て“デート”だと思っている俺にとっては、支払いは自分がするのが当然だと思っていたので、毎回実に申し訳なさそうに『ご馳走様でした。』と頭を下げられるのは、地味にストレスだったりした。
……君との心の距離を感じてしまうから……
まあ、奢られる事が当然だと思っている、一部の勘違い女よりは遥かにましだが……
……などと自分を慰めていた俺を哀れに思われたのか、幸運の女神が微笑んでくれた。
夏休みの最後の一日を楽しんだ、レジャー好きの人々のお陰で帰りの渋滞に巻き込まれてしまい。結構な時間になってしまった車中、真唯のお腹がグウ~ッと鳴った。真唯はとっさにお腹を抑えてしまうが、そんな事で収まるはずがない。
「ああ、こんな時間になってしまって申し訳ない。どこかで食べて帰りましょう。」
微笑んで提案すると、
「いいえ、お構いなく! 送って頂くコンビニまで我慢出来ますから!!」
真唯は真っ赤な表情をして抵抗するが、頑固な口とは反対に正直な真唯の可愛いらしいお腹の虫は『お腹が空いた! 我慢出来ない!!』と訴えて来るのだ。
“恥辱・屈辱”と顔に大書されているが、こんな好機を逃す馬鹿はいないだろう。
だから言い方を変えてみた。
「…私もさっきから空腹を我慢していたのです。
…私を助けると思って、ご一緒して頂けませんか…?」
「…そんなに高いお店でなければ…」
……やった!
……真唯を夕飯に誘う事が出来て、しかも快くOKしてもらえた…!!
俺は頭の中で素早く店を検索して。車を一時停止させると、携帯で連絡をとった。
「すみません。緋龍院の貴志ですが。」
……便利な言葉だと毎回思う。通話の相手には【緋龍院家の貴志】だと伝える事が出来るし、こちらで話を聞いている相手には、【緋龍院建設の一条貴志】を略した言葉だと誤解してもらえるからだ。同時に魔法の言葉でもある。どんな高級料亭でも、たちまち最上の席を用意してくれるのだから。
……しかし、今、連絡している処は、そうはいかない。席が限られている予約原則の店だからだ。一種の賭けだったが、初めての真唯とのディナーなのだ。下手に妥協はしたくなかった。
……そして、ここでも、報国寺の釈迦如来が微笑んでくれたのか、奇跡的に当日キャンセルの席が空いていると言うのだ。迷わずそこをリザーヴして。俺は上機嫌で車を発進させた。
「一条さんの事だから、どこの高級料亭かフレンチレストランに連れ込まれるのか、ドキドキしちゃいました。」
ニコニコとのんびりお冷を飲んでいる真唯に、心の中だけで返事をする。
……都心の一等地にある店だけが、高級店と云う訳ではないんだよ…?
「私だって、いつもそんな処で食事をしている訳ではありませんよ。」
微笑って、そう答えるが。
……君を初めて夕飯に誘えたんだよ?
……少しばかり、贅沢をしても罰は当たらないだろう…?
こじんまりとした古民家風の店内に、席は20にも満たない。
しかし、ここは政財界の要人のみが知る、看板の出ていない隠れた名店だ。
以前お祖父さまが、俺の誕生日に連れて行って下さった料亭の板場を長い間任されていた板長が、後進に道を譲って引退した後、こっそりと趣味で開いた店なのだが、所謂“社交界”で噂が噂を呼び客の絶える暇がない。
メニューは二種類のみ。
“おまかせ”の一品料理か、コースのどちらか。
俺が迷わず一品料理をオーダーすると、明らかにホッとする表情をする真唯。
……まったく、君って娘は……
ドリンクメニューを渡されて。酒の飲めない俺に構わず、何でも好きな物を頼むように言ったのだが、真唯は食後の珈琲のみをオーダーしたので、俺も同じにしておいた。
「…すみません。 …私が我儘言ったから、こんなに遅くなっちゃって…」
……やれやれ。やっぱり、言われてしまったか……
しばらくは興味深く、店内の生け花や飾られた陶器や掛け軸、ライトアップされた瀟洒な庭などを眺めていた真唯だったが、おそらくはずっと気にしていたであろう事を吐き出した。
「…謝罪は必要ないと言っても、貴女は気にするんでしょうね…」
「…当然です。私のせいなんですから…」
「…私はむしろ感謝しているんですよ? こうして貴女と夕飯をご一緒出来たのですから…」
「…っ、…からかわないで下さい…っ!」
……いえ、100%本気なのですが……
「…仕方ないですね…では、今から言う条件を飲んで下さったら、今日の事は許して差し上げましょう。」
「はい! 何でもおっしゃって下さい!!」
「…何でも…その言葉に、二言はありませんね?」
「誓って、ありませんっ!!」
「…これからはこうやって、たまに夕飯をご一緒して下さる事。
…そしてその時は、素直に奢られて下さる事。」
「……は……?」
「おや、聞こえませんでしたか? 何度だって言いますよ。 これからは…」
「いえ、一回で充分です! …でも、何か、ちょっと違うと思いますっ!!」
「二言は、誓ってないんでしょう…?」
「…グッ」
……してやったりと、ニヤリと黒笑みたい気分を必死に抑える。
……言質は取った。
……楽しみだね、真唯……
やっぱり何か違うと、ブツブツうるさい口は、丁度良く運ばれて来たお膳に救われる。“おまかせ”は、鰻だった。ひつまぶし風だが、お茶ではなくて氷の入った冷やしダレをかけるようになっている。まだまだ残暑が厳しいと思われる時期に、これは有り難い。
文句を言っていた真唯も瞳を輝かせている。「頂きます」合掌して、箸をとって。ふっくらとした鰻とご飯を装って好みの薬味を乗せて、モリモリと食べている姿に笑みを誘われる。普段、真唯はマトモな食生活を送ってはいない。こんな時こそ、しっかり栄養を摂って欲しい。
冷やしダレをかけると、あっさりさっぱり食べられて、何杯でもおかわりしたくなってしまう。さすが行田さんだ。……これで冷えたビールがあったら、もっと美味いだろうに。
……真唯に再度アルコールを勧めてみようかと思ったが、俺に遠慮するのは理解りきっていたので諦めた。
……いつか、車で遠い処へ食事に連れて行っても、俺に遠慮する事なく酒を飲む……そんな仲に早くなりたい……
「ご馳走様でした! とっても、美味しかったです♪」
笑顔で礼を言う真唯に、そんな葛藤を知らせる事無く、俺はにっこりと微笑んだ。
※ ※ ※
「今日は素敵なドライブに誘って下さって、ありがとうございました!
昼食に、夕飯まで奢って頂いてしまって…これ、ほんのお礼の気持ちです!!」
真唯のアパートの最寄りのコンビニの駐車場で、ソレを手渡された瞬間、俺はそれが何か分かっていながら、訳が理解らなかった。
「…は…?」
「…ですから、【備屋珈琲店】の珈琲豆です。 …気に入って下さったんでしょう…?」
……気に入って頂けませんでしたか?
……そんな心の声が聴こえてきそうな上目遣いに、俺は慌てて首を上下に振った。
「勿論、気に入りましたとも!! …ですがそれは、ご自分で飲まれるのではないのですか…?」
「ウチには、ミルがありませんから。 …一条さんのお宅は、全自動ミル付コーヒーメーカーがあると伺ったので…」
……そうなのだ。真唯の部屋にはミルがない。いつも粉に挽いてもらって購入しているのに、ミルを買うのかと安易に考えていたのだが……まさか、俺に……とは……
「…ご馳走になるばかりで心苦しいので、少しでもお礼がしたくて…幸い、【備屋珈琲店】のお店の雰囲気も味も気に入って下さったみたいなので…これからまた、ご馳走になっちゃう事を約束しましたけど、こんな小さなお礼くらい許して下さい…受け取って下さい! お願いしますっ!!」
……参った、こんな事は初めてだ……どうしたら良いんだ……とてつもなく、嬉しい…っ
「…ありがとうございます…喜んで飲ませて頂きますよ…」
俺が珈琲豆の袋を受け取った事に、ほっと安堵の吐息を吐いて。
真唯はクルリと踵を返す。そして少し歩いて、もう一度振り返って。
「…今日は本当に楽しかったです! 明日から、また元気に働けそうです!
珈琲豆は鮮度が命ですから、早めに飲み切って下さいね! お寝みなさい!!」
そう叫ぶと、今度こそ振り返らずに走って行ってしまった。
真唯にもらった【お土産】が嬉しくて、嬉しくて。
結局、勿体なくて、飲む事が出来ずに冷凍保存してしまって。
実は……と、冷凍庫を開けてみせて白状して。真唯に呆れて捨てられてしまうのは、同棲するようになって三日目の……ずっとずっと先の、未来のお話―――
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