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本編
No,107 ラスト【ボレロ】と、美容クラシックバレエ再び
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約十五分の演目【ボレロ】
今は亡き名振付家、モーリス・ベジャールによって創作された、その作品は、この不世出の舞踊家、シルヴィ・ギエムの肉体で表現される事に寄って、神聖なる【儀式】として昇華された。
正に、美神・アフロディーテの降臨だ。
舞台上と客席との距離はあるが、今、この瞬間、同じ空間に存在出来る事が嬉しい。同じ空気を吸っている事さえ愛おしい。
……涙が溢れて、止まらない……
観客が総立ちになるスタンディングオベーション。
鳴りやまぬアンコールの声と、万雷の拍手と、みんながブラボーを叫ぶ中。
「ブラヴォーーーッ!!」
真唯は、手も腫れよとばかりに拍手をし、声が枯れるまで叫んだ。
―――……ありがとう! ありがとう、ギエムッ!―――
―――貴女と同じ時代に生まれた幸運に、心から感謝しますっ!!―――
万雷の拍手に応え、優雅なお辞儀を繰り返す、舞台上のただ一点を見つめている真唯には、横で儀礼的な拍手をしながら苦笑いをしている男の表情に気付く余裕は、これっぽっちもありはしなかった。
※ ※ ※
「…スゴかった…っ、…ホントに素晴らしかった…っ!!」
「それはもう充分伺いましたから…いいかげん、泣きやんでは頂けませんか?」
「…だって、…だって! …もう、これが、ホントに最後のボレロなんですよ!?」
「…真唯さんのその涙は…感激の涙ではなくて、ラストを惜しんでいらっしゃるんですか?」
「両方ですっ!!」
真唯が待ちに待った【ボレロ】の終焉は、NHKホールだった。
そのホールからほど近いブラッスリーで、真唯は過ぎ行く夏を惜しむように、もうこれが本当の最後になるだろう舞台を心の底から惜しんでいた。
映画「愛と哀しみのボレロ」で、あまりにもジョルジュ・ドンが有名になってしまって、ベジャールが彼のために振り付けたかのように思われているかも知れないが、元々【ボレロ】は、女性ダンサーのための振り付けだった。
女性の“エロス”を追求したものが、男性であるドンが踊った事によって“儀式”に変換されたとの評があるが、真唯は、そうは思わない。
真唯は初めから、ギエムの踊る【ボレロ】には、小島昇司さんのフラメンコに通じる“神に至る、精神的に神聖な儀式”を感じていたのだ。
……衝撃だった。人間の身体は、こんなにも“神”に近付けるものなのかと。……その場にいる人間(観客)たちを巻き込み、呑み込み、“神”へ至る道へとつなげてしまう事が出来るものなのかと。
【ボレロ】は真唯にとって、神社仏閣に参拝するかのような、神と人間とを交感させてしまう神聖な儀式であり、シルヴィ・ギエムは、それを司る祭司であったのだ。
(ちなみに真唯の思う“神”とは、キリスト教のGODなどではなく、もっと普遍的な“グレート・サムシング”である。)
ドンの踊った【ボレロ】を見た。
「瀕死の白鳥」で有名な、マヤ・プリセツカヤの【ボレロ】も見た。
高岸さんも、首藤さんのも観た。
しかし、ギエムの踊る【ボレロ】とは、まったく次元が異なるのだ。
……それが、今日を限りに永遠に封印されてしまい。
おまけに彼女は、来年の12月、東京での公演を最後に引退する事を表明しているのだ。
これが、嘆かずにおられようかっ!?
「やれやれ。…今日は、東京バレエ団創立五十周年記念の祝祭ガラなんですよ?
真唯さんの前では、東京バレエ団の面々は勿論、ルグリも、あのマラーホフも霞んでしまいますね。」
「…アタシの中で、ギエムの【ボレロ】は別格なんです。…その祝祭ガラと云う事でギエムは封印を解いてくれたんですから、東京バレエ団には感謝してます。…そして、それを2日間、特別な席で観せて下さった一条さんにも感謝してます。本当に、ありがとうございました。」
「…そのお言葉を頂けただけで、NBSのパトロンになった甲斐がありましたよ。」
にっこり
あまりに見事な笑顔に見惚れ、真唯の泣き顔が段々、笑顔へと変わって行く。
そうだ。
確かに再びの封印は悲しいけれど、一条さんがわざわざ真唯のためだけにバレエ・ロイヤル・シート特別会員になって、昨日30日の初日と今日の千秋楽のチケットを取ってくれたのだ。
……いつまでも泣いていたら、失礼だ。
真唯は持っていた特別製のミニタオルで涙を拭うと、【銀座 香十】で買った金魚の柄が涼しげなティッシュ・ケースからティッシュを取り出し横を向いて鼻をかんだ。(勿論、そのゴミはすぐにバックに仕舞った。)
そして、今度こそ晴れやかに笑って、改めてお礼を言う。
「…一条さん…重ね重ね、ありがとうございました。
先月のアリーナも素敵だったし…昨日、今日と、一生の思い出になりました。」
テーブルに額が付きそうに、お辞儀をすると、
「…そこまで言われると、却って恐縮します。
…私の完全な自己満足なのですから。
さあ、真唯さん。折角のシャンパンの気が抜けてしまいますよ。」
「はい!」
元気良くお返事して、泣き過ぎの喉を食前酒のシャンパンで潤した。
2人は最高の舞台の余韻を楽しむように、カジュアル・フレンチのコースディナーを堪能した。メインのお料理に合わせてワインを飲んだ真唯だったが、一条さんは運転があるので飲めない。そんな彼のために、食後酒にその店オリジナルのノンアルコール・カクテルを頼んで、真唯も〆はそれにさせて頂いた。
ホントは酔いたい気分だったのだが、明日からはまた会社がある。
しかも、新しい月の始まりだ。
まだまだ残暑も厳しい。
体調管理は、しっかりしなくては。
……と、そこまで考えて。
チラリと向かいの一条さんを、上目遣いで見つめてしまい。
……眼と眼が合った。
その瞬間、一条さんが、ハァ~ッと大きなため息を吐いた。
「ダメですよ。」
「…私、まだ何も言ってませんが…」
「おっしゃりたい事は、理解っています。…どうせ、昨日会った女性の事を、考えていらっしゃったのでしょう。」
……グッ…、図星だ……
「バレエや習い事が悪いと言っている訳ではありません。ただ、送迎をさせると言っているだけです。」
「…っ、…ですから、それが納得出来ないんですってば!!」
「でしたら、諦めて下さい。」
……ダメだ…平行線だ……
澄ました表情で、優雅に食後酒のグラスをかたむけている男性を恨めしげに見やる。でも、一条さんは、そんなアタシの視線を見事にシャットダウンして下さっている。
……ナロォ~~!と思うが、それも一瞬で。
……さっきの一条さんよりも、大きいため息を吐き出してしまう真唯だった。
※ ※ ※
事は、昨日の公演の幕間に遡る。
【東京バレエ団創立五十周年記念祝祭ガラ】にやって来ていた真唯は、ドリンクサービスでアイスコーヒーを飲みつつ、少し拍子抜けしていた。それと云うのも、一緒にいる一条さんに、誰も挨拶にやって来ないのだ。
……アリーナ・コジョカルの公演の時も、誰かしら挨拶に来ていたのに……
不思議に思った真唯は、一条さんに聞いてみた。
すると一条さんは、いとも簡単に種明かしをして下さった。真唯がこう云う場所で行われる“社交”を苦手としていた事は知っていたが、まさか1人でヒョイと何処かに行ってしまうほど苦手だとは思わなかったそうだ。お盆の帰省の時、小出君の出現で「心底、懲りましたから」と、一条さんは公演事務局側は勿論、こう云う場で出会いそうな人たちに『今後、一切の挨拶は無用』と片っ端から通達をしておいたとの事なのだ。
「…それに、今日と明日は、真唯さんのお好きなギエムの【ボレロ】を観られる最後の機会です。
…そんな大事な日は、やはり、ゆっくりと、心おきなく楽しみたいでしょう…?」
……真唯は危うく、その場で、一条さんに抱き付きたくなってしまった。
……この男性は、なんて、真唯のココロを大事にしてくれるのかと。嬉しいやら、くすぐったいやら、有り難いやらで…瞳の奥がツンと痛くなってしまって、それを我慢している時、その声は響いて来た。
「…牧野さん! やっぱり、牧野さんだっ!!」
本名で呼ばれてギョッとしたが、振り向いた先にいたのは、懐かしい笑顔だった。
「佐藤センセ!!」
「2階席から見えたのよ! スゴイ席で観られて良いわね!!」
そんな言葉に再び、ギョッとしてしまった。
……ああ! 一条さんに、センセの事、なんて説明したら良いの!?
真唯のそんな心の内など知らずに佐藤先生は、久し振りに会えた同好の士に、大はしゃぎで東京バレエ団の質の高さを誉め讃える。…先生は、さすが現役のバレエ・インストラクターらしく、真唯とは微妙に視点が違う。平素なら楽しく拝聴出来たであろう先生のバレエ論も、(どうしよう、どうしよう!)とプチパニックになっている今の真唯には、半分も頭には入っていなかった。
そこへ。
「…失礼ですが、真唯さん。この方を紹介しては頂けませんか?
“先生”とは、なんの先生でいらっしゃるのですか?」
今、一番、聴きたくない声が響いて来る(いや、そんな不可能な事はありえないと、真唯にも理解ってはいるが)。……嗚呼、万事休す!!心の中で十字をきって(いつからクリスチャンになったんだ★/セルフ突っ込み)、真唯は覚悟を決めた。
「…こちらの女性は、私がバレエを教わっていた佐藤由美先生です。
…先生、こちらは、私の恋…婚約者の一条貴志さんです。」
私の簡単な紹介に(つい『恋人』と言いそうになって、一条さんからジロリと睨まれ、慌てて言い直した)、お互いが名刺交換して……お互いが相手の肩書にビックリしている。………全然、違う種類の驚きだろうけど……
「まあ、牧野さん! おめでとう!! いつ、婚約したの!? …あ、ホントだ、指環してる♪」
「…はあ、ありがとうございます。…あの…今年の私の誕生日に…」
「そうそう、私の最後のレッスンを休んだ日だったわよね!」
「…よく覚えてらっしゃいますね…」
「そりゃ、生徒さんのプロフィールは、頭の中に叩き込んでありますからね。それに牧野さんが打ち上げに来ないの、みんな残念がってたんだけど…デートだったのなら仕方ないわね♡」
佐藤センセにニッコリと微笑みかけられて、思わず真っ赤になってしまう。途端に、キャー!可愛いー!!なんて、可愛い年下の先生に叫ばれ、穴掘って隠れたくなってしまった。(…か、カワイイって、何っ!? センセの方が、ずっと可愛いのにっ!!)
またしてもパニックになってしまった真唯を助ける、開演5分前のベルが鳴った。
助かった!と思ったのも束の間、佐藤センセは、「折角、会えたんだから、どこかでお茶でもしましょ!」なんて気楽に言ってくれる。そして、一条さんまでもが「生徒さんだった秀美さんの話を聞きたい」などと勝手にOKをしてしまい、待合場所まで決めてしまう。
いよいよ、進退窮まってしまった真唯なのであった。
真唯と佐藤先生の再会のお茶会は、一見、和やかに始まった。
……しかし、それを邪魔する存在がいた。先生のお友達、2人組である。やはりバレエをやっているらしく、プロポーションは抜群である。おまけにマラーホフやルグリのファンらしく、この暑いのに化粧もバッチリ、ミニスカで自慢らしい美脚を誇示している。真唯の苦手とするタイプである。
その娘たちが、うっとりと一条さんを見ているのだ。……無理もない。このルックスだし、スーパーゼネコンの専務と云う立場も魅力的に映っているのだろう。その上、一条さんが、バレエ・ロイヤル・シート特別会員である事をポロリと言ってしまったものだから、彼女たちの興奮は絶頂に達してしまっているかのようだ。
……なんでも、NBS WEB会員である彼女たちは、最初、真唯の諦めたS席を購入しようとしていたのだが、WEB会員先行予約の時、アクセスが集中してしまい、なかなかログインする事さえ出来ずに、やっとログイン出来た20分後には既にS席は完売し、19,000円であるA席しか残っていなかったと言うのだ。
……真唯は、ひたすら恐縮するしかない。いくら最初は9,000円のD席を購入していても、実際観たのは22,000円であるS席なのだから。
……しかも、2日間も。
……おまけに。いやに頻繁にお手洗いに行くな~と思っていたら、こまめに口紅を塗り直していて。その上、見事にかちあってしまった時は、『あの牧野って子、全然、大した事ないじゃん! なんで、あんな素敵な人と婚約なんかしてるの!?』『きっと弱みかなんか握られてるのよ! でなきゃ、アリエナイって!!』『それもそーか!!』アハハハと大笑いしているのである。……真唯が個室にいるのを知っていて……
リザさんや室井さん、北原さんにすんなり肯定してもらえて。佐藤先生にも、あまりにも簡単に『おめでとう』なんて言ってもらえたんで、すっかり忘れてしまっていた。
……真唯が、どんなに一条さんに釣り合っていないか……
ギエムのボレロと云う至高の舞台を観た余韻が霞んでしまうほどの衝撃に、お手洗いから帰って来た真唯の表情は当然強張っていた。真唯と佐藤先生そっちのけで、しきりに一条さんに話し掛ける2人の女性の含み笑いに、真唯を嘲り笑う表情が透けて見えて……真唯の自虐の虫が疼き出しそうになった時、それを救ってキレてくれたのは、友人であるはずの佐藤センセだった。
『あんたたち、いいかげんにしなさいよ!
今日ほどあんたたちと友達である事を、恥ずかしく思った事はないわ!!』
※ ※ ※
「…あの後、佐藤センセだけを食事に誘って下さったのは、一条さんですよ?」
「…あれは、あの図々しく品のない女性たちへの当てつけです。それに真唯さんが佐藤氏と、まったくお話が出来ていらっしゃらなかったからと思って…それをあんな話題を出されるとは…恩を仇で返された気分です。」
最初はブーブー文句を言っていた2人の女性も、友人だと思っていた娘の『あんたたちとは、縁を切る!』との激しい怒りと、『…それが良いでしょう。…こんな品性の欠片もない女性と付き合っていたら、貴女のためにもならない。』友人以上の静かで激しい怒りを秘めた男の様子に恐れをなした2人は、早々に引き揚げて行った。
場所を変えて3人になった時、佐藤センセは真唯に頭を下げて謝ってくれて。『…センセのせいじゃないんですから…謝らないで下さい。』ぎこちなく微笑んだ真唯の表情は、センセと今日の舞台について語り合っていき、ボレロの話題に及ぶ頃には完全な笑顔になっていた。
そして、ひとしきり盛り上がった後、センセが言い出した事は……
『実は、【美容クラシックバレエ】の講座なんだけど…10月から、またやらせてもらえる事になったのよ。 …牧野さん、誰よりも熱心だったし、何より楽しそうだったし…良かったら再受講を考えてみてくれない…?』
真唯としては、すぐにも飛び付きたい提案であった。
一条さんに、バレエを習っていた事がバレてしまった今、隠す事など何もない(いや、リザさんの処の素敵な服が似合うような体型になりたい乙女的発想と、S○Xにおいてすぐにバテてしまう体力のなさを憂えた本音はしっかり隠したが)。
何かを始めようかと思っていた矢先なのだ、丁度、良い。
しかし、それに待ったを掛けたのが、一条さんだった。
会社の帰りの習い事が悪いとは言わないが、現在ご自分が住んでいる場所を考えてみて下さい、と言って。……確かに佐藤センセの講座は、真唯が以前、住んでいた処からの通いやすさを考慮して選んだモノだ。お台場から通うには、確かに不便かも知れない。だが、真唯とてイイ年をした大人だ。少しくらい遅くなったって帰って来られる。
しかし一条さんは、頑としてウンとは言ってくれなかった。
『このマンションにはトレーニングルームだって、プールだってあるんです。身体を動かしたいなら、ここでも出来るでしょう? …もし、どうしても北千住まで通いたいならば、帰りは山中か私自身が迎えに行きます。』
真唯はそこまで迷惑は掛けられないと大反論、自分1人で通えると主張するのだが、一条さんが一向に折れてくれずに……2人の話は平行線の一途を辿っているのだった。
「…よろしい。真唯さんがそれほど気になさるのであれば、山中自身がどう思うか、直にお聞きになってはいかがですか?」
一条さんがそんな提案をしてきたのは、NHKホールから帰って来てお風呂で汗を流し、後は寝るだけと云うのんびりタイムを過ごしていた時だった。
「…具体的には、どうするんですか?」
「簡単ですよ。明朝、迎えに来る山中に直接、聞いてごらんになれば良い。」
「そんな…! 上司である一条さんの意向に、山中さんが逆らえるはずないじゃありませんか!!」
「…選択は、彼の完全自由意志に任せます。私の意見は考慮しないで良いと伝えます。」
「でも…!!」
「大丈夫ですよ。あいつはあれでも、嫌なものは嫌だと、私にハッキリ言える男ですから。」
「…………」
「その代わり、あいつがOKしたら、素直に送迎されて下さいますね?」
「…山中さんが、少しでも迷惑そうな様子をされたら、一条さんこそ諦めて下さいますか?」
「お約束しましょう。あいつがほんの少しでもそんな様子を見せたら、潔く諦めましょう。」
「本当に約束ですよ!!」
言質は取ったとばかりに喜ぶ真唯に、一条さんは微笑み。
明けて、9月1日月曜日。山中の愛車の中でなされた一条さんの簡潔な説明に、山中さんは送迎を快諾し。慌てた真唯に「お忙しい山中さんに、これ以上ご迷惑をお掛けするには…!」と固辞しようとすると、「真唯さんのお帰りが遅いのは私も心配ですし。」とか、その上、「私の息抜きにもなるので、是非やらせて下さい。」などと言われてしまえば、真唯もそれ以上は反論など出来ずに。
真唯は再び、【美容クラシックバレエ】講座を受講する事になった。
………アテンザか、レクサスで帰宅する事が条件付きと云う、何ともゴージャスな再受講であった。
今は亡き名振付家、モーリス・ベジャールによって創作された、その作品は、この不世出の舞踊家、シルヴィ・ギエムの肉体で表現される事に寄って、神聖なる【儀式】として昇華された。
正に、美神・アフロディーテの降臨だ。
舞台上と客席との距離はあるが、今、この瞬間、同じ空間に存在出来る事が嬉しい。同じ空気を吸っている事さえ愛おしい。
……涙が溢れて、止まらない……
観客が総立ちになるスタンディングオベーション。
鳴りやまぬアンコールの声と、万雷の拍手と、みんながブラボーを叫ぶ中。
「ブラヴォーーーッ!!」
真唯は、手も腫れよとばかりに拍手をし、声が枯れるまで叫んだ。
―――……ありがとう! ありがとう、ギエムッ!―――
―――貴女と同じ時代に生まれた幸運に、心から感謝しますっ!!―――
万雷の拍手に応え、優雅なお辞儀を繰り返す、舞台上のただ一点を見つめている真唯には、横で儀礼的な拍手をしながら苦笑いをしている男の表情に気付く余裕は、これっぽっちもありはしなかった。
※ ※ ※
「…スゴかった…っ、…ホントに素晴らしかった…っ!!」
「それはもう充分伺いましたから…いいかげん、泣きやんでは頂けませんか?」
「…だって、…だって! …もう、これが、ホントに最後のボレロなんですよ!?」
「…真唯さんのその涙は…感激の涙ではなくて、ラストを惜しんでいらっしゃるんですか?」
「両方ですっ!!」
真唯が待ちに待った【ボレロ】の終焉は、NHKホールだった。
そのホールからほど近いブラッスリーで、真唯は過ぎ行く夏を惜しむように、もうこれが本当の最後になるだろう舞台を心の底から惜しんでいた。
映画「愛と哀しみのボレロ」で、あまりにもジョルジュ・ドンが有名になってしまって、ベジャールが彼のために振り付けたかのように思われているかも知れないが、元々【ボレロ】は、女性ダンサーのための振り付けだった。
女性の“エロス”を追求したものが、男性であるドンが踊った事によって“儀式”に変換されたとの評があるが、真唯は、そうは思わない。
真唯は初めから、ギエムの踊る【ボレロ】には、小島昇司さんのフラメンコに通じる“神に至る、精神的に神聖な儀式”を感じていたのだ。
……衝撃だった。人間の身体は、こんなにも“神”に近付けるものなのかと。……その場にいる人間(観客)たちを巻き込み、呑み込み、“神”へ至る道へとつなげてしまう事が出来るものなのかと。
【ボレロ】は真唯にとって、神社仏閣に参拝するかのような、神と人間とを交感させてしまう神聖な儀式であり、シルヴィ・ギエムは、それを司る祭司であったのだ。
(ちなみに真唯の思う“神”とは、キリスト教のGODなどではなく、もっと普遍的な“グレート・サムシング”である。)
ドンの踊った【ボレロ】を見た。
「瀕死の白鳥」で有名な、マヤ・プリセツカヤの【ボレロ】も見た。
高岸さんも、首藤さんのも観た。
しかし、ギエムの踊る【ボレロ】とは、まったく次元が異なるのだ。
……それが、今日を限りに永遠に封印されてしまい。
おまけに彼女は、来年の12月、東京での公演を最後に引退する事を表明しているのだ。
これが、嘆かずにおられようかっ!?
「やれやれ。…今日は、東京バレエ団創立五十周年記念の祝祭ガラなんですよ?
真唯さんの前では、東京バレエ団の面々は勿論、ルグリも、あのマラーホフも霞んでしまいますね。」
「…アタシの中で、ギエムの【ボレロ】は別格なんです。…その祝祭ガラと云う事でギエムは封印を解いてくれたんですから、東京バレエ団には感謝してます。…そして、それを2日間、特別な席で観せて下さった一条さんにも感謝してます。本当に、ありがとうございました。」
「…そのお言葉を頂けただけで、NBSのパトロンになった甲斐がありましたよ。」
にっこり
あまりに見事な笑顔に見惚れ、真唯の泣き顔が段々、笑顔へと変わって行く。
そうだ。
確かに再びの封印は悲しいけれど、一条さんがわざわざ真唯のためだけにバレエ・ロイヤル・シート特別会員になって、昨日30日の初日と今日の千秋楽のチケットを取ってくれたのだ。
……いつまでも泣いていたら、失礼だ。
真唯は持っていた特別製のミニタオルで涙を拭うと、【銀座 香十】で買った金魚の柄が涼しげなティッシュ・ケースからティッシュを取り出し横を向いて鼻をかんだ。(勿論、そのゴミはすぐにバックに仕舞った。)
そして、今度こそ晴れやかに笑って、改めてお礼を言う。
「…一条さん…重ね重ね、ありがとうございました。
先月のアリーナも素敵だったし…昨日、今日と、一生の思い出になりました。」
テーブルに額が付きそうに、お辞儀をすると、
「…そこまで言われると、却って恐縮します。
…私の完全な自己満足なのですから。
さあ、真唯さん。折角のシャンパンの気が抜けてしまいますよ。」
「はい!」
元気良くお返事して、泣き過ぎの喉を食前酒のシャンパンで潤した。
2人は最高の舞台の余韻を楽しむように、カジュアル・フレンチのコースディナーを堪能した。メインのお料理に合わせてワインを飲んだ真唯だったが、一条さんは運転があるので飲めない。そんな彼のために、食後酒にその店オリジナルのノンアルコール・カクテルを頼んで、真唯も〆はそれにさせて頂いた。
ホントは酔いたい気分だったのだが、明日からはまた会社がある。
しかも、新しい月の始まりだ。
まだまだ残暑も厳しい。
体調管理は、しっかりしなくては。
……と、そこまで考えて。
チラリと向かいの一条さんを、上目遣いで見つめてしまい。
……眼と眼が合った。
その瞬間、一条さんが、ハァ~ッと大きなため息を吐いた。
「ダメですよ。」
「…私、まだ何も言ってませんが…」
「おっしゃりたい事は、理解っています。…どうせ、昨日会った女性の事を、考えていらっしゃったのでしょう。」
……グッ…、図星だ……
「バレエや習い事が悪いと言っている訳ではありません。ただ、送迎をさせると言っているだけです。」
「…っ、…ですから、それが納得出来ないんですってば!!」
「でしたら、諦めて下さい。」
……ダメだ…平行線だ……
澄ました表情で、優雅に食後酒のグラスをかたむけている男性を恨めしげに見やる。でも、一条さんは、そんなアタシの視線を見事にシャットダウンして下さっている。
……ナロォ~~!と思うが、それも一瞬で。
……さっきの一条さんよりも、大きいため息を吐き出してしまう真唯だった。
※ ※ ※
事は、昨日の公演の幕間に遡る。
【東京バレエ団創立五十周年記念祝祭ガラ】にやって来ていた真唯は、ドリンクサービスでアイスコーヒーを飲みつつ、少し拍子抜けしていた。それと云うのも、一緒にいる一条さんに、誰も挨拶にやって来ないのだ。
……アリーナ・コジョカルの公演の時も、誰かしら挨拶に来ていたのに……
不思議に思った真唯は、一条さんに聞いてみた。
すると一条さんは、いとも簡単に種明かしをして下さった。真唯がこう云う場所で行われる“社交”を苦手としていた事は知っていたが、まさか1人でヒョイと何処かに行ってしまうほど苦手だとは思わなかったそうだ。お盆の帰省の時、小出君の出現で「心底、懲りましたから」と、一条さんは公演事務局側は勿論、こう云う場で出会いそうな人たちに『今後、一切の挨拶は無用』と片っ端から通達をしておいたとの事なのだ。
「…それに、今日と明日は、真唯さんのお好きなギエムの【ボレロ】を観られる最後の機会です。
…そんな大事な日は、やはり、ゆっくりと、心おきなく楽しみたいでしょう…?」
……真唯は危うく、その場で、一条さんに抱き付きたくなってしまった。
……この男性は、なんて、真唯のココロを大事にしてくれるのかと。嬉しいやら、くすぐったいやら、有り難いやらで…瞳の奥がツンと痛くなってしまって、それを我慢している時、その声は響いて来た。
「…牧野さん! やっぱり、牧野さんだっ!!」
本名で呼ばれてギョッとしたが、振り向いた先にいたのは、懐かしい笑顔だった。
「佐藤センセ!!」
「2階席から見えたのよ! スゴイ席で観られて良いわね!!」
そんな言葉に再び、ギョッとしてしまった。
……ああ! 一条さんに、センセの事、なんて説明したら良いの!?
真唯のそんな心の内など知らずに佐藤先生は、久し振りに会えた同好の士に、大はしゃぎで東京バレエ団の質の高さを誉め讃える。…先生は、さすが現役のバレエ・インストラクターらしく、真唯とは微妙に視点が違う。平素なら楽しく拝聴出来たであろう先生のバレエ論も、(どうしよう、どうしよう!)とプチパニックになっている今の真唯には、半分も頭には入っていなかった。
そこへ。
「…失礼ですが、真唯さん。この方を紹介しては頂けませんか?
“先生”とは、なんの先生でいらっしゃるのですか?」
今、一番、聴きたくない声が響いて来る(いや、そんな不可能な事はありえないと、真唯にも理解ってはいるが)。……嗚呼、万事休す!!心の中で十字をきって(いつからクリスチャンになったんだ★/セルフ突っ込み)、真唯は覚悟を決めた。
「…こちらの女性は、私がバレエを教わっていた佐藤由美先生です。
…先生、こちらは、私の恋…婚約者の一条貴志さんです。」
私の簡単な紹介に(つい『恋人』と言いそうになって、一条さんからジロリと睨まれ、慌てて言い直した)、お互いが名刺交換して……お互いが相手の肩書にビックリしている。………全然、違う種類の驚きだろうけど……
「まあ、牧野さん! おめでとう!! いつ、婚約したの!? …あ、ホントだ、指環してる♪」
「…はあ、ありがとうございます。…あの…今年の私の誕生日に…」
「そうそう、私の最後のレッスンを休んだ日だったわよね!」
「…よく覚えてらっしゃいますね…」
「そりゃ、生徒さんのプロフィールは、頭の中に叩き込んでありますからね。それに牧野さんが打ち上げに来ないの、みんな残念がってたんだけど…デートだったのなら仕方ないわね♡」
佐藤センセにニッコリと微笑みかけられて、思わず真っ赤になってしまう。途端に、キャー!可愛いー!!なんて、可愛い年下の先生に叫ばれ、穴掘って隠れたくなってしまった。(…か、カワイイって、何っ!? センセの方が、ずっと可愛いのにっ!!)
またしてもパニックになってしまった真唯を助ける、開演5分前のベルが鳴った。
助かった!と思ったのも束の間、佐藤センセは、「折角、会えたんだから、どこかでお茶でもしましょ!」なんて気楽に言ってくれる。そして、一条さんまでもが「生徒さんだった秀美さんの話を聞きたい」などと勝手にOKをしてしまい、待合場所まで決めてしまう。
いよいよ、進退窮まってしまった真唯なのであった。
真唯と佐藤先生の再会のお茶会は、一見、和やかに始まった。
……しかし、それを邪魔する存在がいた。先生のお友達、2人組である。やはりバレエをやっているらしく、プロポーションは抜群である。おまけにマラーホフやルグリのファンらしく、この暑いのに化粧もバッチリ、ミニスカで自慢らしい美脚を誇示している。真唯の苦手とするタイプである。
その娘たちが、うっとりと一条さんを見ているのだ。……無理もない。このルックスだし、スーパーゼネコンの専務と云う立場も魅力的に映っているのだろう。その上、一条さんが、バレエ・ロイヤル・シート特別会員である事をポロリと言ってしまったものだから、彼女たちの興奮は絶頂に達してしまっているかのようだ。
……なんでも、NBS WEB会員である彼女たちは、最初、真唯の諦めたS席を購入しようとしていたのだが、WEB会員先行予約の時、アクセスが集中してしまい、なかなかログインする事さえ出来ずに、やっとログイン出来た20分後には既にS席は完売し、19,000円であるA席しか残っていなかったと言うのだ。
……真唯は、ひたすら恐縮するしかない。いくら最初は9,000円のD席を購入していても、実際観たのは22,000円であるS席なのだから。
……しかも、2日間も。
……おまけに。いやに頻繁にお手洗いに行くな~と思っていたら、こまめに口紅を塗り直していて。その上、見事にかちあってしまった時は、『あの牧野って子、全然、大した事ないじゃん! なんで、あんな素敵な人と婚約なんかしてるの!?』『きっと弱みかなんか握られてるのよ! でなきゃ、アリエナイって!!』『それもそーか!!』アハハハと大笑いしているのである。……真唯が個室にいるのを知っていて……
リザさんや室井さん、北原さんにすんなり肯定してもらえて。佐藤先生にも、あまりにも簡単に『おめでとう』なんて言ってもらえたんで、すっかり忘れてしまっていた。
……真唯が、どんなに一条さんに釣り合っていないか……
ギエムのボレロと云う至高の舞台を観た余韻が霞んでしまうほどの衝撃に、お手洗いから帰って来た真唯の表情は当然強張っていた。真唯と佐藤先生そっちのけで、しきりに一条さんに話し掛ける2人の女性の含み笑いに、真唯を嘲り笑う表情が透けて見えて……真唯の自虐の虫が疼き出しそうになった時、それを救ってキレてくれたのは、友人であるはずの佐藤センセだった。
『あんたたち、いいかげんにしなさいよ!
今日ほどあんたたちと友達である事を、恥ずかしく思った事はないわ!!』
※ ※ ※
「…あの後、佐藤センセだけを食事に誘って下さったのは、一条さんですよ?」
「…あれは、あの図々しく品のない女性たちへの当てつけです。それに真唯さんが佐藤氏と、まったくお話が出来ていらっしゃらなかったからと思って…それをあんな話題を出されるとは…恩を仇で返された気分です。」
最初はブーブー文句を言っていた2人の女性も、友人だと思っていた娘の『あんたたちとは、縁を切る!』との激しい怒りと、『…それが良いでしょう。…こんな品性の欠片もない女性と付き合っていたら、貴女のためにもならない。』友人以上の静かで激しい怒りを秘めた男の様子に恐れをなした2人は、早々に引き揚げて行った。
場所を変えて3人になった時、佐藤センセは真唯に頭を下げて謝ってくれて。『…センセのせいじゃないんですから…謝らないで下さい。』ぎこちなく微笑んだ真唯の表情は、センセと今日の舞台について語り合っていき、ボレロの話題に及ぶ頃には完全な笑顔になっていた。
そして、ひとしきり盛り上がった後、センセが言い出した事は……
『実は、【美容クラシックバレエ】の講座なんだけど…10月から、またやらせてもらえる事になったのよ。 …牧野さん、誰よりも熱心だったし、何より楽しそうだったし…良かったら再受講を考えてみてくれない…?』
真唯としては、すぐにも飛び付きたい提案であった。
一条さんに、バレエを習っていた事がバレてしまった今、隠す事など何もない(いや、リザさんの処の素敵な服が似合うような体型になりたい乙女的発想と、S○Xにおいてすぐにバテてしまう体力のなさを憂えた本音はしっかり隠したが)。
何かを始めようかと思っていた矢先なのだ、丁度、良い。
しかし、それに待ったを掛けたのが、一条さんだった。
会社の帰りの習い事が悪いとは言わないが、現在ご自分が住んでいる場所を考えてみて下さい、と言って。……確かに佐藤センセの講座は、真唯が以前、住んでいた処からの通いやすさを考慮して選んだモノだ。お台場から通うには、確かに不便かも知れない。だが、真唯とてイイ年をした大人だ。少しくらい遅くなったって帰って来られる。
しかし一条さんは、頑としてウンとは言ってくれなかった。
『このマンションにはトレーニングルームだって、プールだってあるんです。身体を動かしたいなら、ここでも出来るでしょう? …もし、どうしても北千住まで通いたいならば、帰りは山中か私自身が迎えに行きます。』
真唯はそこまで迷惑は掛けられないと大反論、自分1人で通えると主張するのだが、一条さんが一向に折れてくれずに……2人の話は平行線の一途を辿っているのだった。
「…よろしい。真唯さんがそれほど気になさるのであれば、山中自身がどう思うか、直にお聞きになってはいかがですか?」
一条さんがそんな提案をしてきたのは、NHKホールから帰って来てお風呂で汗を流し、後は寝るだけと云うのんびりタイムを過ごしていた時だった。
「…具体的には、どうするんですか?」
「簡単ですよ。明朝、迎えに来る山中に直接、聞いてごらんになれば良い。」
「そんな…! 上司である一条さんの意向に、山中さんが逆らえるはずないじゃありませんか!!」
「…選択は、彼の完全自由意志に任せます。私の意見は考慮しないで良いと伝えます。」
「でも…!!」
「大丈夫ですよ。あいつはあれでも、嫌なものは嫌だと、私にハッキリ言える男ですから。」
「…………」
「その代わり、あいつがOKしたら、素直に送迎されて下さいますね?」
「…山中さんが、少しでも迷惑そうな様子をされたら、一条さんこそ諦めて下さいますか?」
「お約束しましょう。あいつがほんの少しでもそんな様子を見せたら、潔く諦めましょう。」
「本当に約束ですよ!!」
言質は取ったとばかりに喜ぶ真唯に、一条さんは微笑み。
明けて、9月1日月曜日。山中の愛車の中でなされた一条さんの簡潔な説明に、山中さんは送迎を快諾し。慌てた真唯に「お忙しい山中さんに、これ以上ご迷惑をお掛けするには…!」と固辞しようとすると、「真唯さんのお帰りが遅いのは私も心配ですし。」とか、その上、「私の息抜きにもなるので、是非やらせて下さい。」などと言われてしまえば、真唯もそれ以上は反論など出来ずに。
真唯は再び、【美容クラシックバレエ】講座を受講する事になった。
………アテンザか、レクサスで帰宅する事が条件付きと云う、何ともゴージャスな再受講であった。
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