IMprevu ―予期せぬ出来事―

天野斜己

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本編

No,95 七夕と愛妻弁当

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「よ~し、出来た! 我ながら、上デキ♪」
真唯の前には、男性用のランチボックスが2つある。
1つには、冷めてもジューシーな唐揚げが3つ。茄子とオクラの煮物。生野菜のサラダと彩りにプチトマト。用意したドレッシングはゴマダレ。そして、もう1つの箱に詰めてあるのは6穀米。その真ん中に陣取っているのは、大粒の紀州の梅干しだ。

『暑い夏を乗り切る! 健康スタミナ弁当』と題された本に載っていたレシピである。



※ ※ ※



あれから一条さんは、以前からお願いしていた家政婦さんに朝食と夕飯を作らせてくれている。真唯はただ温めるだけ、ご飯を装ったり、パンを焼いたりするだけと云った状態だ。掃除と洗濯は業者さんにお願いしている。この広い部屋を掃除するのは大変かも知れないが、洗濯くらい自分にも出来ると言ってみたのだが、『業者にとって、私は上得意なんですよ? それを奪うのは気の毒でしょう?』などと言われてしまえば真唯には一言もない。
そこで考え付いたのが、お昼のお弁当だったのだ。一条さんの昼食は外食やビジネスランチだったり、秘書の山中さんが手配するお弁当だったり、たまに社食で食べたりする事もあるらしい。

だが、以前、お花見をした時にチラリとだが、お弁当の話題が出た事がある。
せめてもの感謝の印に作ってあげたくなったのだ。“愛妻弁当”を……


赤くなってしまった頬をペチンと叩いて、お弁当を冷ます間に朝食の準備をしようとしてハッとする。

「いけない! 一条さんを起こさなくっちゃ!!」





急いで寝室ベッドルームにとって返し、東側の遮光カーテンを開ける。
生憎の曇り模様で、今にも降り出しそうだ。

今日は年に1度の七夕の日だ。
織姫さまと彦星さんの事を考えれば、雨よ降ってくれるなと思うのかも知れないが、生憎、真唯にはそんな可愛い気はない。第一、ベガとアルタイルだ。銀河に下界の天候は関係ない。雨でも降って、少しでも日中の暑さが和らいでくれるのなら恩の字である。


「一条さん、起きて下さい。もう、7時を過ぎてますよ!」
「……………」
真唯が6時に起きた時に起きてるはずなのだ。それから2度寝をしたにしても、枕元にあるスマホのアラームが鳴ったはずなのである。

(……仕方がないなァ~~……)
……真唯は覚悟を決めた。


「……おはようございます。起きて下さい…貴志さん・・・・。」


耳元で囁いて、頬にキスを1つ落とす。
すると。一条さんが起き上がったと思った時には、もう腕を引かれベッドに押し倒されていた。一条さんの薄い唇が真唯の唇に襲いかかって、散々に貪られてしまった。
お互いの間の引く銀の糸を舌で切った一条さんが、にっこりと微笑う。


「おはようございます、真唯さん。」


真唯は一条さんの腕の中で、ゼイゼイと息を吐いてしまう。

最初は、ほんのイタズラ心だった。
7時のアラームが鳴っても、それを止めるとまた真唯を抱いてゴロゴロといつまでも起きようとしない一条さんに、今のようにしたら……今のように返されてしまって……それから一条さんは、真唯が目覚めの言葉を囁いて頬にキスしないと起きなくなってしまったのだ。


……同棲2週間目で、どこの新婚バカップルかと思うが……起きてくれないのだから仕方がない。

1度試しにしてみなかった時など、一条さんが拗ねてしまって、危うく遅刻しかかったのだ。以前の真唯なら、『こんなバカ、勝手に遅刻しろ。』とばかりに別出勤しているところだが、“一条さんは、自分が起こさなくてはならない”との刷り込みが出来上がってしまっているのには、自分でも黄昏れてしまった。



「爽やかな目覚めをありがとうございます。では、シャワーを浴びて来ます。」

ご機嫌で寝室を出て行く一条さんを見送って、真唯は思った。


―――……同棲でコレなら、ホントに結婚したら…どーなるんだろ、アタシ……―――





「……ああ…幸せです……」
朝食を終え、食後の珈琲を飲んでいる時に一条さんがシミジミと言うから、真唯は危うく珈琲を噴き出しそうになってしまった。
……某少佐が愛飲していたインスタントではない。全自動ミル付コーヒーメーカーが抽出してくれる、薫り高いブレンドコーヒーである。

「……朝、目覚めて1番に見る事の出来るのは、真唯さんの愛らしいお顔。一緒に朝食をとり、出社までゆったり出来る横には、真唯さんお手製の愛妻弁当が待っているなんて…今週も、良い事がありそうです。」

……朝っぱらから、小っ恥ずかしい事を言わないで欲しい。

WEDGWOODのブルームマグのピンクを使いながら、真唯は赤らんだ顔をあげられなくなってしまう。
ちなみに、一条さんが使っているのは、勿論、ブルームマグのブルーだ。

「…あ、あの! 念のため、言い添えますが、毎日は無理ですからね!!」
「勿論ですよ。気が向いた時で結構ですので。しかし、今日は朝から昼食が待ち遠しい。山中の羨ましがる顔が眼に浮かびます。」
……いえ、山中さんは、ドン退きすると思います……
「味見したから大丈夫だとは思うんですけど…お口にあえば、嬉しいです。」
「何を言うんですか、真唯さん! 美味しいに決まってますっ!!」
……そのウルウルした、期待に満ちたは止めて欲しい……

「そのエプロン、良くお似合いですよ。室井さんのバースデープレゼントなんですよね?」
「はい。婚約祝いも兼ねてと頂いた物です。」
「その白いエプロンは、実に清楚で可憐なのですが…なぜもう1つの、ピンクのエプロンはお使いにならないのですか?」

……そうなのだ。
室井さんからは、白とピンクのフリルのエプロンをプレゼントされたのだ。
とんでもない提案と共に……

「ピンクの方が、真唯さんにはお似合いだと思いますよ。是非、あれをつけて…そして、はだ、」
「あーーっ! 一条さん! もうすぐ8時ですよ!! 山中さんが、そろそろいらっしゃるんじゃありませんかっ!?」
「……準備は、もう出来ています。 …真唯さん、それよりも…」
「じゃあ、食洗機につけさせて頂きますね! あー、忙しい、忙しいっ!!」

……食洗機につけるだけで、何が忙しいんだ★
っつーセルフ突っ込みは丸っと無視だっ!!


ピンポーン♪


やったーー!
救いの神だっ!!

インターホンに出ようとしたら、「ああ、私が出ますから。真唯さんは続きをどうぞ。」と言われて、お言葉に甘える事にした。キッチンをサッと片付けて、エプロンを外し軽く畳んでランドリーボックスの中に入れに走る。
自分の部屋に宛がわれた場所から通勤バッグを引っ掴んで来て、その中にお弁当を入れれば真唯の準備なんて完了だ。

「山中が来ました。それじゃあ、行きましょうか。」
「はい!」
広い大理石の玄関で靴を履いていると、一条さんも靴を履いて。
だが、外に出るでもなく、突っ立って、こちらを伺っている。
……ワクワクしているような眼差しで。
「……やっぱり、するんですか…?」
「新婚なら、お約束でしょう? …ああ、まだ、結婚してはいませんが。」
……真唯は最早、諦めの境地で、眼を閉じてその瞬間ときを待った。

……軽く腰を抱かれて、真唯の唇に柔らかな感触が触れて……離れた。


今日も良く響くヴァリトンで、「…行ってきます。 …行ってらっしゃい。」
そう囁かれて。

「……行ってらっしゃいマセ。 ……行ってきます……」
う~~、一条さんの顔がまともに見られないよ~~~っ!!



※ ※ ※



お台場のタワーマンションから、緋龍院建設本社がある銀座の外れまではすぐだ。

今まで一条さんは、レクサスを自分で運転して通勤していたのだが、今は秘書の山中さんが運転する愛車・マツダのアテンザで出勤している。真唯と一緒だからだ。
地下の役員専用の玄関口まで送ってもらって、真唯とはここでお別れだ。

「……真唯さん……、会社になんか行きたくないっ」
……アテンザの後部座席での抱擁も、お約束パートスリーだ。

「真唯さん。貴女に頂いたお弁当を糧に今日を乗り切りますので、貴女もお仕事、頑張って下さいね。」
「私はよほどの事がない限り、定時で帰れるから大丈夫ですよ。一条さんこそ残業続きなんですから、頑張って下さいね。」
「ありがとうございます、真唯さん! …山中、頼んだぞ。」

「……お任せ下さい。それでは。」
山中さんが一条さんに軽く目礼して、車を出してくれる。


「……ウチの専務が、お世話をお掛けします。」
「……いえ、そんな……っ!」

……ホントだよ…どーにかしてくれよ……、なんて本音は絶対に言えない。





以前、一条さんがトランザムを停めていた、人気ひとけの少ない処で降ろしてもらう。

山中さんは、【緋龍院建設の一条専務の有能な秘書】として、知る人ぞ知る存在だ。それに車で送迎されているなんて、会社の人には絶対にバレたくはない。

わざわざ早起きして真唯の送迎をしてくれる山中さんに、最敬礼してお礼を言って。一駅分を猛ダッシュ。それが、真唯の朝の運動になりつつある。



※ ※ ※



KY商事は、今日も平和だ。

「お~~い、誰か、この見積もり、コピーとって~~」
「あの契約、どーなってるんだ、おいっ!」
「この図面、コピー屋にお使い行って来てくれ」
「あ~~、アタシのお菓子~~っ!!」

……たまに、変な声も混ざるが……




昼食時、真唯がお弁当を持って来たので、ちょっとした騒ぎになった。

「あ~、牧野さんがお弁当だ~。チョー珍しい~~っ!」

……『超』なんて、いつの言葉だ、オイ。

「自炊始めたの? 節約? そーか、そーか、結婚資金、貯めてるんだ。」

……誰もンな事、言ってないだろ。勝手に結論、出すな。

……返事もせずに、黙々と食べる。…うん、良かった、美味しい。
ちなみに真唯のランチボックスは1つだ。唐揚げは2つ。ご飯も、そんなにいっぱいは食べられない。

……一条さん…残さず食べてくれるかなァ~~……

……ちょっぴり不安だ。マッツンくらいのお料理上手になれば、そんな心配は必要ないだろうケド。
佐藤先生の講座も終わっちゃったし…お料理教室にでも通おうかなァ~~~

そう云えば、【インティ・ライミ】の日は残念だった。
実は佐藤先生の【美容クラシックバレエ講座】の最終日だったのだ。その日はささやかながら、どこかで打ち上げをすると言っていた。真唯も出たかったな~と思うが、一条さんとの約束には代えられない。

結局、何かの公演を観に行きたいね、と云う約束も実現出来なかった。シルヴィ・ギエムのボレロに誘ったら喜んでくれただろうが…一条さんには会わせられない。
どこで知り合ったのか、一条さんに言い訳出来ないと云うのは建前だ。


……可愛い美人の佐藤先生を、一条さんに紹介するのがイヤなのだ。


……一条さんが、佐藤先生に惹かれたらどうしよう……

……佐藤先生が、一条さんに惹かれたらどうしよう……



……恋する乙女ゴコロは、これでなかなか複雑なのだ。





午後の仕事が始まったが、佐藤先生や一条さんの事を考えてしまって……イマイチ集中出来ない。


……今朝…一条さんは、真唯に何を言おうとしていたのか……


室井さんに婚約指環エンゲージリングを見られて、誕生日と婚約祝いだと言って、レストランでプレゼントを渡された時の会話が蘇る。

『…室井さん…嬉しいんですけど…これは、私には可愛いらし過ぎるのではないかと…』
『何言ってんの。どーせ、牧ちゃんの事だから、色気のないデニムのエプロンかなんか使ってんでしょ。』
『…グッ!』
……図星だ。
『新婚さんなんだから、それぐらいで丁度いーのよ。』
『し、新婚じゃないし、婚約だって、まだ正式にはしてませんっ!!』
『一条氏もかーいそーに。でも、そのエプロンしたら、絶対、喜ぶから。』
『……そーでしょーか……』
『男心の理解ってない子は、これだから…絶対、リクエストされるわよ。』
『何をですか?』
『……ちょい、耳かして。』

室井さんに近付いた真唯に、囁かれた言葉は……


(……ドワァァ~~~~ッッ!!!)


心の中で絶叫して、不整脈になってしまった呼吸を整える。
やましい事を考えていたせいで、ついキョロキョロと挙動不審になってしまったが、誰も真唯を見ている人はいなかった。良かったァ~~とホッとして、眼の前のPCに意識を集中させる。

しかし。
気を抜くと、一条さんにもらった薬指のリングを眺めてしまう。


……そうだ。
一条さんに、指環を用意しないといけないのだった。



……真唯の誕生日。【太陽の祭りインティ・ライミ】のあの日。
一条さんが自分で用意して、自分で嵌めてしまおうとした婚約指環エンゲージリングは、真唯にとってはかなりの衝撃だった。

心の準備が全然だったからだ。

確かに、一条さんは大好きだ。


……愛している……と思えるくらいに、大切な……真唯にとっては、唯一人の男性ひとだ。



……だが……一条さんに、今、指環をしてもらえるだけの勇気が、真唯にはない。



一条さんと正式に婚約すると云う事は、いわゆる“上流社会”の仲間入りする事と同義だ。


……それに……



『君も、一条の家に気がねがあるのなら、わざわざ私の親に会う必要はない。
……会って愉快な人間ではない…と云うより、最悪の部類に入る畜生にも劣る輩だからね。』



……自分の両親は、どうでも良い。
……しかし……“一条”のお家は、そうはいかないだろう……


……どんな反対を……どんな妨害を受けるか理解らない……


暗く沈みかけた思考をブルブルと頭を振って、霧散させる。


……きっと、大丈夫だ。
一条さんは、どんな妨害からもアタシを守ってくれる。
……真唯には、それが信じられる。


もっと、楽しい事を考えよう!

一条さんに贈るリング……ホントにどうしよう?

正式な婚約指環エンゲージリングなんだから、まさか、守護石ルビーと云う訳にはいかないだろう。


……アレ…?
11月の誕生石って、なんだったっけ…?

すぐ眼の前にPCがあるのに、今、それを調べるのは、真唯の職業意識が許さなかった。

(…ま、いいや。家に帰ったら、検索しよ♪)
そう考えて。すぐに馴染んだ、あの6畳間を思い出すのだが。
……もう、帰る家は……あそこではないのだ。

……一気に寂寥感が押し寄せてくるが、その次にやって来るのは突然住居を変えられてしまった一条さんへの怒りで。
……そして、そのお次にやって来るのは、バカップルもここに極まれりと思われる、一条さんとの遣り取りに対する羞恥なのだった。



……………………
……………………
…………仕事しよ。



やっと意識を切り替えて、仕事に集中し出した真唯だったが。

嫉妬と羞恥と困惑と……

“無表情な干物女”の通り名を返上して、ここ最近、百面相を繰り返す真唯がみんなの注目を集めている事を―――本人まいだけが知らなかった。



※ ※ ※



定時に終わった真唯を、山中さんが迎えに来てくれて。
暗証ナンバーでセキュリティーを解除してマンションの中に入り、エントランスのコンシェルジュさんにご挨拶して、一条さんに貰ったICカードキーで最上階への専用エレベーターを動かし……フワリとした浮遊感はお馴染みではあるが、今まではあくまでも週末の非日常へいざなうものだった。

チン♪

小気味良い音が、到着の合図だ。
この階には、部屋は1つしか存在しない。そのロックを解除するのに必要なのは、さっきも使ったICカードキーと、もう1つ。指紋だ。
『登録してある指紋は、私と山中と…真唯さん、貴女だけです。』
“帰宅”し、ここの玄関を開ける度に、一条さんの甘い囁きを思い出す。


「…ただいま…」
無人の部屋でも挨拶の言葉が出てしてしまうのは、1人暮らしが長かったせいと……【部屋の神様】へのご挨拶とアタシの帰りを待っててくれた“物”さん達へのお礼だ。

ダイニングテーブルには、既に夕飯の支度がしてある。
ラップがかかっている物を見て、思わず顔が綻ぶ。

……用意されていたのは、七夕にちなんだ巻き寿司だったのだ。

星や天の川をイメージしたものや、お雛さまのように並んだ織姫さまや彦星までいる。
勿論、副菜も3品ほど用意されていて、家政婦さんの心使いにココロが温かくなる。


真唯としては、いつもいつもお世話になってしまっている方に一言だけでもお礼が言いたいと思っているのだが、一条さんが許してくれないのだ(ちなみに家政婦さんや業者さんの出入りは、コンシェルジュさんにお願いしているらしい)。

ため息を吐いて、お水を一杯、頂戴する。
そろそろ、夏本番だ。きっと今年も酷暑なのだろう。
異常気象が叫ばれて久しいが、それが普通になりつつある。

去年の夏前に足立区の駅前で購入したピンク色の可愛いお花は、酷暑を乗り切っただけでなく、年を越し、【インティ・ライミ】を迎え、一条さんとの恋が上手くいった事を見届けて安心したかのように、先月末に天に召された。
『元気で長生きしてね~~』と言い続け、お水をやったからとは云え、大往生だと思う。

このマンションに、例え強制的とは云え引っ越して来て最初にした事は、近くのお花屋さんに連れて行ってもらって同居人(?)を探す事であった。そして、一眼惚れして購入したのが……



「ただいま、インカローズゥ~~。お水、あげるからね~~」
ピンク色のアメリカ芙蓉、その華々しさに引き寄せられるようにして……つけた名前が、こりもせずに【インカローズ】である。 ……なんの事はない、真唯はピンク色の花を買うと、その子には必ずと言っていいほど、その名前を付けているのである。
……だからこの子が、このマンションで初代の【インカローズ】になるのである。

「……高い処で気持ち良いでしょ~~?」

……実際ここ・・は、空の方が近い気がする。

結局、今日は雨は降らなかった。
子供たちは喜んでいるだろう。笹飾りなんて、幼稚園ではよくやらされたっけ……。不器用ブキな真唯にとっては、あんな時間は拷問だった。
短冊に書けば願いが叶うなんて信じてもいない自分は、実際、カワイクナイ子供だった……




フと気が付いて、スマホを取り出してみると、メールが届いている。
3件は一条さんで、他の1件は……珍しい……マッツンからだった。(家電が使えなくなったので、一条さんの許可が下りたごく親しい友人にのみ、スマホで連絡をとる事を許されたのだ。)

先ずは、一条さんからのメールを開けてみる。
昼食時に、真唯が作ったランチボックスの画像と『いただきます!』の文字が。
次はそれが見事に空になった画像と『ご馳走さまでした! 美味しかったです♡』の文字が。

……思わず、顔が笑顔になってしまう。

そして最後のメールは、帰宅予定時間を知らせるメールだった。



時計を見て、まだまだ余裕がある事に安心して、マッツンからのメールを開けて……





高層のタワーマンションの8畳間から、真唯の大絶叫が響き渡った。


「あんの、クソババァ~~ッッ!!!
 お見合いなんて、絶対にしないからね~~っ!!」







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