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本編
No,82 山梨旅行、その後 【貴志SIDE】
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「…雨…降って来ちゃいましたねぇ~~」
「…テシュプも、真唯さんが充分に楽しんだのだから、もう良いと思われたのでしょう。」
「…ヒッタイトの天候神さまですね…不思議ですね、他の古代文明は殆どが太陽神を主神としているのに、ヒッタイトだけが天候神を主神としているなんて…」
「…その昔、イルルヤンカシュを、我が緋龍院建設の外国名に登録しようとした、剛毅なジイサマがいましてねぇ~~」
「…っ! 嵐の神様に退治されちゃう大蛇じゃないですか!! それを会社の名前に…っ!?」
「…ええ。『これからは海外に拠点を置いていかなければならない。そのためには緋龍…“レッド・ドラゴン”では具合が悪かろう』とね。」
「…そうか…キリスト教圏内では、レッド・ドラゴンと言えば、赤い龍…ルシファーの事ですもんね…あ、でもウェールズ地方…でしたっけ、良い意味でとられていましたよね。それに東洋…中国文化圏で言えば、赤龍は五行思想において赤は南を位置するものだから、朱雀と同様、“南を守護する神聖な龍”とされているはずです。」
「さすが真唯さん、良くご存じですね。でも、黙示録の赤龍の方がはるかにイメージが強いですからね。そのジーサマはこれから世界で活動していくのに、それでは体裁が悪かろうと【イルヤンカ・コーポレーション】で行こうと言い出したのですよ。」
「…でも、そっちの方が、はるかに体裁が悪いんじゃ…嵐の神様に退治されちゃうんですよ? 却って、緋龍院建設のイメージダウンに繋がるんじゃ…」
「真唯さんもそう思うでしょう? 緋龍院建設の建てる建物は嵐に負ける事になると、役員一同から反対されて…それでもそのジーサマは、『それも面白かろう。』と一歩も退かなかったんですよ。」
「……………」
「まあ、結局、古い中国人の友人に説得されて思いとどまってくれましたがね。 …お陰で今では、中国圏内では仕事がしやすくなっています。」
「…良かったですね…イルヤンカの名前を使わなくて済んで…あれって、まんま、八岐大蛇ですもんね…」
俺は思わず仕事のチェックをしていたタブレットから眼を上げ、ニヤリと笑う。
真唯との会話はまるで当たり前のように、こんな話が出来るから面白くて堪らないのだ。
「…真唯さんも、そう思われますか?」
「…ええ、思います。ヒッタイト帝国と日本の類似点をあげていけば、楽しい会話になりそうですね?」
「…残念ながら止めておきましょう。恋人との休日を、学術論を戦わせる場にするのは無粋だ。」
恋人との時間を裂く無粋なものの最たるものである“仕事”を1分でも早く終わらせるためにも、俺は手元のタブレットに再び眼を走らせ始める。
「…お天気…回復してくれないかな…まだ、GWを楽しんでいる人は沢山いるのに…」
……やれやれ。俺の心優しい姫君に心を痛めて欲しくなくて、わざと我が社のマル秘裏話をしたりしてみたのだが……あまり、効果がなかったようだ。
一刻も早く姫君に笑顔を取り戻すため……姫君のお相手を出来るように、俺は仕事に集中し出した。
※ ※ ※
昨夜遅くに帰宅した俺たちは、早速風呂に入って旅の疲れを癒した。
(エアコンや、風呂の給湯システムをスマホで遠隔操作出来るので、快適な室温に保たれている部屋に帰宅出来る。仕事で時間が不規則で、急な出張もあったりするから、このシステムを取り入れたのだが、真唯と旅行から帰って来た昨夜ほどその事に感謝した事はなかった。)
ここ最近、真唯の訪れが頻繁だったため出番のなかった、全自動ミル付きコーヒーメーカーで珈琲を淹れて一息ついて。リビングで思い出話に花を咲かせていた真唯が、こっくりこっくりと舟をこぎ出している事に気付いた。
……正直言えば、旅の間中、俺を翻弄してくれた可愛い姫君を思う存分愛したかったのだが……全てを預けきったような表情をして、俺の肩に寄り掛かって来る愛しい女性を揺り起してまで責め抜くほど鬼畜にも成りきれなかった。
仕方なくベッドに運び、腕の中に囲い入れ……俺も静かに眼を閉じた。
……だが、眠気は一向に訪れなかった。
確かに身体の疲れは感じる。
3日間、長距離の運転をしていたのだから、無理もない。
だが……精神は違う。
俺は眠るのを諦めて、腕の中で安らかに憩う眠り姫の寝顔を見つめた。
【北口本宮冨士浅間神社】で、入ってしまっていた時の表情を……そして。
『……ああ、一条さんは、きっと、こうやって私を一生守ってくれるんだなァ~~と思ったら、とっても幸せな気分になれたんです。……一条さん…アタシのために、ホントにありがとう……』
あの神社でついしてしまった事への礼と共に聞かされた嬉しい言葉が鮮やかに蘇る。
旅先で迎えた1日目の朝に、この何より大切な存在が腕の中になかった喪失感は例えようもない。だが。
『……アタシ、【おざわ】の玉子焼きより、あのスゴイ御屋敷ホテルのシェフの作ったレアオムレツよりも、一条さんがアタシのために作ってくれる卵焼きの方が好きですよ……?』
……あの言葉で、本当は自分の機嫌などコロッと直っていた事を知られたら、一体何を言われるだろう……?
クスッ
思わず笑みがもれる。
あんな恥ずかしい事をしなくて済んだのにと、きっと思いっ切り罵倒されるだろう。
……しかし…そのお陰で、あんなに嬉しい本音が聞けた。
大善寺で、俺のしたエスコートに昔の女の陰を見て、嫉妬してくれたのだ……っ!
しかも黙っていれば分からなかった本音を漏らしてくれたのも旅の解放感と、離れの露天風呂と云う非日常のシチュエーションならではだろう。
あの時抱いた、熱く艶やかな姿と狂暴な衝動を思い出し、身体が正直に反応するが……今夜は我慢である。
その痩せ我慢に一役買ってくれたのが、あの時同時に齎された真唯の礼の言葉だった。
『…お浅間さまで、御神木を守って下さったでしょう…?
…今朝、とても綺麗な富士山を拝みながら、温泉に入る事が出来たんです…
…きっと、一条さんへの御利益のお零れです…本当に、ありがとうございます…』
……何と云う優しい言の葉か。
……どこぞの英国人に聞かせてやりたいくらいだ。
俺は、折角の真唯とのバレエ鑑賞デートを潰してくれたイギリス人に改めて怨念を抱いた。
だが、それをすぐに鎮めてくれたのも、真唯の優しい思いやりと言葉だった。
昇仙峡の滝上の鄙びた寂しい店を、真唯は心から想い心配していた。
『正直、此処のほうとうは、特別美味しい訳ではありません。この上にある会館の方でもっと美味しいほうとうが、いくらでも頂けます。……ですが…私は此処の素朴なほうとうが大好きなんです。……女将さんの暖かい人柄が滲み出ている、このお店が大好きなんです……』
……あの店は、真唯のブログのアップと同時に、超人気店になるだろう。慣れない忙しさの中、初心を忘れてしまうのは、簡単な事だ。 ……だが……店に訪れてくれる客のために紅葉を押し葉にしておくような心持ちの持ち主が、己を簡単に変えられるとも思えないし……正直、思いたくない。 ……あの店に、特別な思い入れを持つ真唯のためにも……
そして……
『…そんな哀しい事をおっしゃらないで下さい…ご自分をお金の成る樹だなんて…
…一条さんは、私の大切な男性です…例え1文なしでも…私は大好きですから…』
……俺の選んだ女性が…この女性で良かった……
【一条貴志】と云う人間を、家名の背後にあるブランドでしか見なかった女たちには、死んでも言えない言葉だろうと思う。
それこそ、あの女どもは、俺を金の成る木としか見ていなかったのだから。
事実、あの後、行った滝上の商店街には、女なら眼の色を変えそうな宝石がゴロゴロしていたが、真唯は何1つ俺に強請らなかった。
それどころか、真唯が興味を示すのは水晶球だったり、紅水晶の原石だったり……普通の女性が欲しがらない天然石ばかりだ。そんな石さえ俺に興味を持った事を知られまいと、努力していた姿は本当に可愛いらしかった。
事実、真唯の危惧した通り、客寄せに店先に飾ってあった2億円相当すると云う紫水晶の原石でさえ、真唯が少しでも欲しがる様子を見せれば買い与えていただろう。この良い思い出ばかりの楽しい旅の記念品になるのなら安い買い物だ。
……だが、きっと真唯は喜びはすまい。
いや、却って怒られるだろう。
『こんなドデカイ物、どこに飾るんですかっ!?』
真唯の青筋を立てて怒る表情が簡単に想像出来て、可笑しくて仕方がない。
……もし真唯が俺と結婚してくれたなら、とりあえずはこの部屋に住む心算だが……将来的には、あんな物が飾れるような一軒家を手に入れても良い……
そんな楽しい未来の事を考えながら、いつしか俺も眠りに落ちていた。
―――……酷く幸福な想いを胸に抱きながら……―――
朝、目覚めて、腕の中にいる女性の姿にホッとする。
サクランボのように愛らしい、その唇にソッとキスを落として、俺は起き上がった。シャワーを使って、エスプレッソマシーンで自分用にエスプレッソを淹れて眼を覚ました。姫君に朝食を作らなければならない。冷蔵庫の中は碌な物は入っていなかったが、手抜かりはない。朝食用に最低限の日もちする物を揃えておいたのだ。
簡単なサンドウィッチを作っていたら、真唯が起きて来た。
……残念だ。朝食を作り終えたら、キスで起こそうと思っていたのに。
「おはようございます。」挨拶すると、
「……おはようございます……」返って来る返事が緩慢だ。
「……真唯さん…寝足りないのでしたら、2度寝しても……」
「……違うの……旅先で、一条さんより早く起きられたのが不思議で……」
そう言って、俺の姫君は洗面所のシンクに消える。その姿が酷く幼くて愛らしくて……やはり目覚めのキスが出来なかった事を残念に思う。真唯が身支度を調えて出て来る頃には、全自動コーヒーメーカーもその役割を終えていた。馴染みの店で買ったオリジナルブレンドと俺の作ったサンドウィッチで朝食を終えて。
食後に甘いカフェ・オ・レを作ってやったら酷く喜んでいた。
やはり、疲れているのだろう。
もう1度2度寝を勧めてみたら、やはり断られてしまった。
『……こうやって、まったりしているだけで良いの……』
そう言ってリビングのソファーにちんまりしている姿はあまりに可愛いくて……ここに閉じ込めて、ずっと飾っておきたくなって……困る。
『……そうですか…では、私は少し仕事をさせて頂きますから、真唯さんはご自由に過ごしていらして下さい。午後は予定通り、買い物に行きましょうね。』
本来のGW中にも仕事を入れていたのに、旅行中に少し厄介な案件が持ち上がってしまっていた。仕事場に行く間でもない。真唯の居る空間は……それだけで、俺にとっては快適な居心地の良い場となる。リビングでの方が集中出来そうで……俺はタブレットを開いて本格的に作業を始めた。
※ ※ ※
「……そうか…理解った。 ……ありがとう。」
通話の相手が一瞬、息を飲む。
……さも、あろう。俺が一条家の“影”に礼を言うなんて異例中の異例だ。
相手は一条家に尽くす事が使命の人間だ。俺も普段は『ご苦労』の一言で済ますのだが、今回は礼を言いたかった。
「…お仕事ですか? …無理はしないで下さいね。」
スマホを切った俺に、眼の前で複雑そうに……それでも微笑ってくれるのは、無邪気に豚骨ラーメンを啜っている真唯だ。
仕事が思いの外手間取ってしまった俺は、フードコートのある大型スーパーにやって来た。
普段ならこんなスーパーにはやって来ないのだが、真唯の買い物もあったので仕方がない(ただし、買い物の内容には一切口を出さないと云う条件付きだ。そんな事を言い出すのも頷けると云うもので、真唯の買い物は俺が眉間に深い皺を作らずにはいられない物ばかりだった。あまりの内容に口を開き掛けたら『何か文句があるなら、すぐにアパートに帰ります!!』と伝家の宝刀を出されてしまったのには、大人しく口を噤むしかなかった。……真唯には、今、帰らせる訳にはいかないのだから)。
……いつか、一緒に暮らすようになったら、絶対あの食生活を改善させてみせる!! と、俺を奮い立たせるのに十分なものだった……とだけ、言っておこう。 ……真唯の名誉のためにも。
そんな大荷物を抱え、フードコートの中にある結構有名らしい店で遅い昼食をとっている時だった。その連絡があったのは。
俺が昨日、昇仙峡の滝の上から連絡をして迎えを寄こすように言って、この俺に乗車拒否をした運転手を解雇するよう言い、後にその命令を解除したのは、【緋龍院警備保障】のSPの上部だ。
だが、今、連絡があったのは、例の運転手をクビにさせ、尚かつ、その後もどこの雇用の口もないように手をまわさせた、一条家の“影”だ。
……俺1人の事だったら、俺もここまではしなかった。
……奴は、真唯を……俺の女神を愚弄したのだ。制裁は受けてもらわなければならない。
しかし、俺の女神はあまりに優しい。きっと、この事を知れば悲しみ、最悪、俺を許さないかも知れない。
だから、俺はにっこり黒笑う。
「……大丈夫、無理なんてしていませんよ。……仕事で必要で、適切な処置をしただけです」と。
―――汚い事は俺がやる。……真唯……君がいつまでも笑顔でいられるように……―――
午後いっぱいは、本当にまったりと過ごした。
次々に届く自分土産を、ワインセラーに移し。
日本初の貴腐ワイン【ノーブル・ドール】だけは、今日のうちに開ける事にする。
ブルーチーズと実に良く合う。青カビの辛さが貴腐ワインの甘さを引き立たせる。
……しっとりとした雨の午後を楽しむには、もってこいの逸品と言えよう。
勿論、飲む相手が真唯である事が、一番重要なのだが―――
つまみは実は、もう1つあった。
更新されたばかりの真唯のブログ【強引g 真唯道】である。
俺が仕事に没頭している間、向かい側に座って愛用のノーパソで何やらやっている事には気付いていたが、早々と更新しているとは思わなかった。
1日目の山中湖【天使の森 エンジェル・ミュージアム】と【忍野八海】に行った事、【北口本宮冨士浅間神社】での参拝記録、河口湖温泉【湖山亭 うぶや】の宿泊記が実に良くまとめられている。
この中では俺は同性の友人と云う事になっている。
……別にこれはこれで構わない。大人気のブロガ―に恋人がいる事が知られて、変に騒がれても迷惑だ。
浅間神社での俺の行為は、勇気ある武勇伝に仕立て上げられていて、何やら面映ゆかったのだが。
……驚いたのは、宿の事だった。
【秀峰閣 湖月】の特別室をとれなくてひたすら残念がっていた俺は、挨拶に訪れた女将の事などまるで覚えていなかったのだが、真唯は一言一句、正確に記憶していたようだ。
……朝食をとった食事処では真唯は俺の機嫌をとるのに、精一杯のはずだったのに……いつの間に外国人用のパンフにまで眼を通していたのだろう。
「『Our various "Kaiseki"dishes are lovingly prepared with vegetables in season.
We are sure our excellent dishes,great tastes and smell of seasonal vegetables will satisfy you, and also your eyes and tongue.
We hope you enjoy your time with our seasonal dishes and feel at home.
”季節の野菜の偉大な味、香りがあなたの目および舌を満足させるだろうと確信します。”』……こんな事が書かれていたんですか……うぶやのスローガンなど、初めて眼にしましたよ……」
『女将の人柄は申し分のないものであり、“大切なときに 大切な人と”と云うスローガンに偽りなしの持て成しであり、次回は本当に大切な人と再訪したい。』と結んでいる。
……上手いものである。
まるっきり同性の友人との気ままな女2人旅のように装い、次回は大切な人と……つまりは恋人と一緒に来てみたいものだと誉め讃えているのだ。
これが本当は、男と一緒の旅だったとは、誰も思うまい。
【うぶや】は、上井真唯のお墨付きとなり、株は急上昇。
真唯は“アラサーの干物女”の星であり続けるのだ。
「……怒っちゃいましたか……?」
真唯が不安げに上目遣いで伺って来る。
……そんな表情をされてしまえば、怒れないし……もともと怒る心算もない。
ブログを読んでいたタブレットをテーブルに置き、俺は真唯を抱きよせた。
「…なぜ、怒るんですか…?
…貴女の文章力に感心していただけですよ…
この調子で、湯村の【常磐ホテル】もアップして下さいね。 …楽しみにしていますよ。」
「…っ! …イジワル…ッ!!」
……俺の腕の中で拗ねてしまった真唯は可愛いらしく頬を膨らませている。
その真っ赤に熟れたリンゴのような頬をツンと突いた。
……あの離れでの出来事を、真唯はどう料理するのか……特に露天風呂の下りは、とても楽しみだ。
夜も、俺の手作りの夕飯をご馳走して。
ちょっと遅くなってしまったが、9時半頃にようやく真唯の帰宅にOKサインを出した。
……仕方がないのである。
真唯のアパートに異常がないか先行させていたSPが、非常事態宣言を掛けてきたのだから。
不審な男が1人、真唯のアパートをうろついていて……真唯の関係者の顔を全て頭に叩き込んでいるその優秀なSPは、男が真唯に言い寄っている同僚の北原である事を確認した。
……北原も焦っているのだろう。猶予期限が刻々と迫っている中、想い人が相手の男と一緒にいるかも知れないと思うと、いてもたってもいられなかったのだろうが……奴に同情する余裕など、俺には1ミクロンもない。
9時過ぎにようやく諦めたのか、北原が車で帰宅した事を確認して……俺はやっと、安心して真唯を送って行ったのだ。何も知らない真唯にブーブー文句を言われたが一向に堪えなかった。
……仕方がないんだよ、真唯。
……無防備な赤ずきんを狙うオオカミが待ち構えていたのだから……
……いや、違うか。
……無邪気な赤ずきんを食べてしまった悪いオオカミを退治するべく、善良な猟師が待ち構えていたのか……と自分を自嘲う。
……なんにせよ、心配だ。
追い詰められた男が、どんな手に出て来るか理解らない。
……俺は、真唯の会社の先輩である、今回の旅行で唯一、土産を送っていた【室井女史】なる女性に連絡をする決意をしたのだった。
「…テシュプも、真唯さんが充分に楽しんだのだから、もう良いと思われたのでしょう。」
「…ヒッタイトの天候神さまですね…不思議ですね、他の古代文明は殆どが太陽神を主神としているのに、ヒッタイトだけが天候神を主神としているなんて…」
「…その昔、イルルヤンカシュを、我が緋龍院建設の外国名に登録しようとした、剛毅なジイサマがいましてねぇ~~」
「…っ! 嵐の神様に退治されちゃう大蛇じゃないですか!! それを会社の名前に…っ!?」
「…ええ。『これからは海外に拠点を置いていかなければならない。そのためには緋龍…“レッド・ドラゴン”では具合が悪かろう』とね。」
「…そうか…キリスト教圏内では、レッド・ドラゴンと言えば、赤い龍…ルシファーの事ですもんね…あ、でもウェールズ地方…でしたっけ、良い意味でとられていましたよね。それに東洋…中国文化圏で言えば、赤龍は五行思想において赤は南を位置するものだから、朱雀と同様、“南を守護する神聖な龍”とされているはずです。」
「さすが真唯さん、良くご存じですね。でも、黙示録の赤龍の方がはるかにイメージが強いですからね。そのジーサマはこれから世界で活動していくのに、それでは体裁が悪かろうと【イルヤンカ・コーポレーション】で行こうと言い出したのですよ。」
「…でも、そっちの方が、はるかに体裁が悪いんじゃ…嵐の神様に退治されちゃうんですよ? 却って、緋龍院建設のイメージダウンに繋がるんじゃ…」
「真唯さんもそう思うでしょう? 緋龍院建設の建てる建物は嵐に負ける事になると、役員一同から反対されて…それでもそのジーサマは、『それも面白かろう。』と一歩も退かなかったんですよ。」
「……………」
「まあ、結局、古い中国人の友人に説得されて思いとどまってくれましたがね。 …お陰で今では、中国圏内では仕事がしやすくなっています。」
「…良かったですね…イルヤンカの名前を使わなくて済んで…あれって、まんま、八岐大蛇ですもんね…」
俺は思わず仕事のチェックをしていたタブレットから眼を上げ、ニヤリと笑う。
真唯との会話はまるで当たり前のように、こんな話が出来るから面白くて堪らないのだ。
「…真唯さんも、そう思われますか?」
「…ええ、思います。ヒッタイト帝国と日本の類似点をあげていけば、楽しい会話になりそうですね?」
「…残念ながら止めておきましょう。恋人との休日を、学術論を戦わせる場にするのは無粋だ。」
恋人との時間を裂く無粋なものの最たるものである“仕事”を1分でも早く終わらせるためにも、俺は手元のタブレットに再び眼を走らせ始める。
「…お天気…回復してくれないかな…まだ、GWを楽しんでいる人は沢山いるのに…」
……やれやれ。俺の心優しい姫君に心を痛めて欲しくなくて、わざと我が社のマル秘裏話をしたりしてみたのだが……あまり、効果がなかったようだ。
一刻も早く姫君に笑顔を取り戻すため……姫君のお相手を出来るように、俺は仕事に集中し出した。
※ ※ ※
昨夜遅くに帰宅した俺たちは、早速風呂に入って旅の疲れを癒した。
(エアコンや、風呂の給湯システムをスマホで遠隔操作出来るので、快適な室温に保たれている部屋に帰宅出来る。仕事で時間が不規則で、急な出張もあったりするから、このシステムを取り入れたのだが、真唯と旅行から帰って来た昨夜ほどその事に感謝した事はなかった。)
ここ最近、真唯の訪れが頻繁だったため出番のなかった、全自動ミル付きコーヒーメーカーで珈琲を淹れて一息ついて。リビングで思い出話に花を咲かせていた真唯が、こっくりこっくりと舟をこぎ出している事に気付いた。
……正直言えば、旅の間中、俺を翻弄してくれた可愛い姫君を思う存分愛したかったのだが……全てを預けきったような表情をして、俺の肩に寄り掛かって来る愛しい女性を揺り起してまで責め抜くほど鬼畜にも成りきれなかった。
仕方なくベッドに運び、腕の中に囲い入れ……俺も静かに眼を閉じた。
……だが、眠気は一向に訪れなかった。
確かに身体の疲れは感じる。
3日間、長距離の運転をしていたのだから、無理もない。
だが……精神は違う。
俺は眠るのを諦めて、腕の中で安らかに憩う眠り姫の寝顔を見つめた。
【北口本宮冨士浅間神社】で、入ってしまっていた時の表情を……そして。
『……ああ、一条さんは、きっと、こうやって私を一生守ってくれるんだなァ~~と思ったら、とっても幸せな気分になれたんです。……一条さん…アタシのために、ホントにありがとう……』
あの神社でついしてしまった事への礼と共に聞かされた嬉しい言葉が鮮やかに蘇る。
旅先で迎えた1日目の朝に、この何より大切な存在が腕の中になかった喪失感は例えようもない。だが。
『……アタシ、【おざわ】の玉子焼きより、あのスゴイ御屋敷ホテルのシェフの作ったレアオムレツよりも、一条さんがアタシのために作ってくれる卵焼きの方が好きですよ……?』
……あの言葉で、本当は自分の機嫌などコロッと直っていた事を知られたら、一体何を言われるだろう……?
クスッ
思わず笑みがもれる。
あんな恥ずかしい事をしなくて済んだのにと、きっと思いっ切り罵倒されるだろう。
……しかし…そのお陰で、あんなに嬉しい本音が聞けた。
大善寺で、俺のしたエスコートに昔の女の陰を見て、嫉妬してくれたのだ……っ!
しかも黙っていれば分からなかった本音を漏らしてくれたのも旅の解放感と、離れの露天風呂と云う非日常のシチュエーションならではだろう。
あの時抱いた、熱く艶やかな姿と狂暴な衝動を思い出し、身体が正直に反応するが……今夜は我慢である。
その痩せ我慢に一役買ってくれたのが、あの時同時に齎された真唯の礼の言葉だった。
『…お浅間さまで、御神木を守って下さったでしょう…?
…今朝、とても綺麗な富士山を拝みながら、温泉に入る事が出来たんです…
…きっと、一条さんへの御利益のお零れです…本当に、ありがとうございます…』
……何と云う優しい言の葉か。
……どこぞの英国人に聞かせてやりたいくらいだ。
俺は、折角の真唯とのバレエ鑑賞デートを潰してくれたイギリス人に改めて怨念を抱いた。
だが、それをすぐに鎮めてくれたのも、真唯の優しい思いやりと言葉だった。
昇仙峡の滝上の鄙びた寂しい店を、真唯は心から想い心配していた。
『正直、此処のほうとうは、特別美味しい訳ではありません。この上にある会館の方でもっと美味しいほうとうが、いくらでも頂けます。……ですが…私は此処の素朴なほうとうが大好きなんです。……女将さんの暖かい人柄が滲み出ている、このお店が大好きなんです……』
……あの店は、真唯のブログのアップと同時に、超人気店になるだろう。慣れない忙しさの中、初心を忘れてしまうのは、簡単な事だ。 ……だが……店に訪れてくれる客のために紅葉を押し葉にしておくような心持ちの持ち主が、己を簡単に変えられるとも思えないし……正直、思いたくない。 ……あの店に、特別な思い入れを持つ真唯のためにも……
そして……
『…そんな哀しい事をおっしゃらないで下さい…ご自分をお金の成る樹だなんて…
…一条さんは、私の大切な男性です…例え1文なしでも…私は大好きですから…』
……俺の選んだ女性が…この女性で良かった……
【一条貴志】と云う人間を、家名の背後にあるブランドでしか見なかった女たちには、死んでも言えない言葉だろうと思う。
それこそ、あの女どもは、俺を金の成る木としか見ていなかったのだから。
事実、あの後、行った滝上の商店街には、女なら眼の色を変えそうな宝石がゴロゴロしていたが、真唯は何1つ俺に強請らなかった。
それどころか、真唯が興味を示すのは水晶球だったり、紅水晶の原石だったり……普通の女性が欲しがらない天然石ばかりだ。そんな石さえ俺に興味を持った事を知られまいと、努力していた姿は本当に可愛いらしかった。
事実、真唯の危惧した通り、客寄せに店先に飾ってあった2億円相当すると云う紫水晶の原石でさえ、真唯が少しでも欲しがる様子を見せれば買い与えていただろう。この良い思い出ばかりの楽しい旅の記念品になるのなら安い買い物だ。
……だが、きっと真唯は喜びはすまい。
いや、却って怒られるだろう。
『こんなドデカイ物、どこに飾るんですかっ!?』
真唯の青筋を立てて怒る表情が簡単に想像出来て、可笑しくて仕方がない。
……もし真唯が俺と結婚してくれたなら、とりあえずはこの部屋に住む心算だが……将来的には、あんな物が飾れるような一軒家を手に入れても良い……
そんな楽しい未来の事を考えながら、いつしか俺も眠りに落ちていた。
―――……酷く幸福な想いを胸に抱きながら……―――
朝、目覚めて、腕の中にいる女性の姿にホッとする。
サクランボのように愛らしい、その唇にソッとキスを落として、俺は起き上がった。シャワーを使って、エスプレッソマシーンで自分用にエスプレッソを淹れて眼を覚ました。姫君に朝食を作らなければならない。冷蔵庫の中は碌な物は入っていなかったが、手抜かりはない。朝食用に最低限の日もちする物を揃えておいたのだ。
簡単なサンドウィッチを作っていたら、真唯が起きて来た。
……残念だ。朝食を作り終えたら、キスで起こそうと思っていたのに。
「おはようございます。」挨拶すると、
「……おはようございます……」返って来る返事が緩慢だ。
「……真唯さん…寝足りないのでしたら、2度寝しても……」
「……違うの……旅先で、一条さんより早く起きられたのが不思議で……」
そう言って、俺の姫君は洗面所のシンクに消える。その姿が酷く幼くて愛らしくて……やはり目覚めのキスが出来なかった事を残念に思う。真唯が身支度を調えて出て来る頃には、全自動コーヒーメーカーもその役割を終えていた。馴染みの店で買ったオリジナルブレンドと俺の作ったサンドウィッチで朝食を終えて。
食後に甘いカフェ・オ・レを作ってやったら酷く喜んでいた。
やはり、疲れているのだろう。
もう1度2度寝を勧めてみたら、やはり断られてしまった。
『……こうやって、まったりしているだけで良いの……』
そう言ってリビングのソファーにちんまりしている姿はあまりに可愛いくて……ここに閉じ込めて、ずっと飾っておきたくなって……困る。
『……そうですか…では、私は少し仕事をさせて頂きますから、真唯さんはご自由に過ごしていらして下さい。午後は予定通り、買い物に行きましょうね。』
本来のGW中にも仕事を入れていたのに、旅行中に少し厄介な案件が持ち上がってしまっていた。仕事場に行く間でもない。真唯の居る空間は……それだけで、俺にとっては快適な居心地の良い場となる。リビングでの方が集中出来そうで……俺はタブレットを開いて本格的に作業を始めた。
※ ※ ※
「……そうか…理解った。 ……ありがとう。」
通話の相手が一瞬、息を飲む。
……さも、あろう。俺が一条家の“影”に礼を言うなんて異例中の異例だ。
相手は一条家に尽くす事が使命の人間だ。俺も普段は『ご苦労』の一言で済ますのだが、今回は礼を言いたかった。
「…お仕事ですか? …無理はしないで下さいね。」
スマホを切った俺に、眼の前で複雑そうに……それでも微笑ってくれるのは、無邪気に豚骨ラーメンを啜っている真唯だ。
仕事が思いの外手間取ってしまった俺は、フードコートのある大型スーパーにやって来た。
普段ならこんなスーパーにはやって来ないのだが、真唯の買い物もあったので仕方がない(ただし、買い物の内容には一切口を出さないと云う条件付きだ。そんな事を言い出すのも頷けると云うもので、真唯の買い物は俺が眉間に深い皺を作らずにはいられない物ばかりだった。あまりの内容に口を開き掛けたら『何か文句があるなら、すぐにアパートに帰ります!!』と伝家の宝刀を出されてしまったのには、大人しく口を噤むしかなかった。……真唯には、今、帰らせる訳にはいかないのだから)。
……いつか、一緒に暮らすようになったら、絶対あの食生活を改善させてみせる!! と、俺を奮い立たせるのに十分なものだった……とだけ、言っておこう。 ……真唯の名誉のためにも。
そんな大荷物を抱え、フードコートの中にある結構有名らしい店で遅い昼食をとっている時だった。その連絡があったのは。
俺が昨日、昇仙峡の滝の上から連絡をして迎えを寄こすように言って、この俺に乗車拒否をした運転手を解雇するよう言い、後にその命令を解除したのは、【緋龍院警備保障】のSPの上部だ。
だが、今、連絡があったのは、例の運転手をクビにさせ、尚かつ、その後もどこの雇用の口もないように手をまわさせた、一条家の“影”だ。
……俺1人の事だったら、俺もここまではしなかった。
……奴は、真唯を……俺の女神を愚弄したのだ。制裁は受けてもらわなければならない。
しかし、俺の女神はあまりに優しい。きっと、この事を知れば悲しみ、最悪、俺を許さないかも知れない。
だから、俺はにっこり黒笑う。
「……大丈夫、無理なんてしていませんよ。……仕事で必要で、適切な処置をしただけです」と。
―――汚い事は俺がやる。……真唯……君がいつまでも笑顔でいられるように……―――
午後いっぱいは、本当にまったりと過ごした。
次々に届く自分土産を、ワインセラーに移し。
日本初の貴腐ワイン【ノーブル・ドール】だけは、今日のうちに開ける事にする。
ブルーチーズと実に良く合う。青カビの辛さが貴腐ワインの甘さを引き立たせる。
……しっとりとした雨の午後を楽しむには、もってこいの逸品と言えよう。
勿論、飲む相手が真唯である事が、一番重要なのだが―――
つまみは実は、もう1つあった。
更新されたばかりの真唯のブログ【強引g 真唯道】である。
俺が仕事に没頭している間、向かい側に座って愛用のノーパソで何やらやっている事には気付いていたが、早々と更新しているとは思わなかった。
1日目の山中湖【天使の森 エンジェル・ミュージアム】と【忍野八海】に行った事、【北口本宮冨士浅間神社】での参拝記録、河口湖温泉【湖山亭 うぶや】の宿泊記が実に良くまとめられている。
この中では俺は同性の友人と云う事になっている。
……別にこれはこれで構わない。大人気のブロガ―に恋人がいる事が知られて、変に騒がれても迷惑だ。
浅間神社での俺の行為は、勇気ある武勇伝に仕立て上げられていて、何やら面映ゆかったのだが。
……驚いたのは、宿の事だった。
【秀峰閣 湖月】の特別室をとれなくてひたすら残念がっていた俺は、挨拶に訪れた女将の事などまるで覚えていなかったのだが、真唯は一言一句、正確に記憶していたようだ。
……朝食をとった食事処では真唯は俺の機嫌をとるのに、精一杯のはずだったのに……いつの間に外国人用のパンフにまで眼を通していたのだろう。
「『Our various "Kaiseki"dishes are lovingly prepared with vegetables in season.
We are sure our excellent dishes,great tastes and smell of seasonal vegetables will satisfy you, and also your eyes and tongue.
We hope you enjoy your time with our seasonal dishes and feel at home.
”季節の野菜の偉大な味、香りがあなたの目および舌を満足させるだろうと確信します。”』……こんな事が書かれていたんですか……うぶやのスローガンなど、初めて眼にしましたよ……」
『女将の人柄は申し分のないものであり、“大切なときに 大切な人と”と云うスローガンに偽りなしの持て成しであり、次回は本当に大切な人と再訪したい。』と結んでいる。
……上手いものである。
まるっきり同性の友人との気ままな女2人旅のように装い、次回は大切な人と……つまりは恋人と一緒に来てみたいものだと誉め讃えているのだ。
これが本当は、男と一緒の旅だったとは、誰も思うまい。
【うぶや】は、上井真唯のお墨付きとなり、株は急上昇。
真唯は“アラサーの干物女”の星であり続けるのだ。
「……怒っちゃいましたか……?」
真唯が不安げに上目遣いで伺って来る。
……そんな表情をされてしまえば、怒れないし……もともと怒る心算もない。
ブログを読んでいたタブレットをテーブルに置き、俺は真唯を抱きよせた。
「…なぜ、怒るんですか…?
…貴女の文章力に感心していただけですよ…
この調子で、湯村の【常磐ホテル】もアップして下さいね。 …楽しみにしていますよ。」
「…っ! …イジワル…ッ!!」
……俺の腕の中で拗ねてしまった真唯は可愛いらしく頬を膨らませている。
その真っ赤に熟れたリンゴのような頬をツンと突いた。
……あの離れでの出来事を、真唯はどう料理するのか……特に露天風呂の下りは、とても楽しみだ。
夜も、俺の手作りの夕飯をご馳走して。
ちょっと遅くなってしまったが、9時半頃にようやく真唯の帰宅にOKサインを出した。
……仕方がないのである。
真唯のアパートに異常がないか先行させていたSPが、非常事態宣言を掛けてきたのだから。
不審な男が1人、真唯のアパートをうろついていて……真唯の関係者の顔を全て頭に叩き込んでいるその優秀なSPは、男が真唯に言い寄っている同僚の北原である事を確認した。
……北原も焦っているのだろう。猶予期限が刻々と迫っている中、想い人が相手の男と一緒にいるかも知れないと思うと、いてもたってもいられなかったのだろうが……奴に同情する余裕など、俺には1ミクロンもない。
9時過ぎにようやく諦めたのか、北原が車で帰宅した事を確認して……俺はやっと、安心して真唯を送って行ったのだ。何も知らない真唯にブーブー文句を言われたが一向に堪えなかった。
……仕方がないんだよ、真唯。
……無防備な赤ずきんを狙うオオカミが待ち構えていたのだから……
……いや、違うか。
……無邪気な赤ずきんを食べてしまった悪いオオカミを退治するべく、善良な猟師が待ち構えていたのか……と自分を自嘲う。
……なんにせよ、心配だ。
追い詰められた男が、どんな手に出て来るか理解らない。
……俺は、真唯の会社の先輩である、今回の旅行で唯一、土産を送っていた【室井女史】なる女性に連絡をする決意をしたのだった。
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