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本編
No,58 WEDGWOODと【裏切り者】
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2月に入ると、真唯はそわそわと落ち着かなくなった。
2月は恋人たちのイベント、バレンタインがある。
もっとも去年の2月の真唯ならば鼻で笑っていただろう。
一般的には、ローマ皇帝に迫害されて殉教した聖ウァレンティヌスに因んだ、恋人たちの愛の誓いの日とされるが、これは実は初期キリスト教会の陰謀説が有力で、この聖ヴァレンタインの実在も怪しまれ、カトリック教会の祝日からも外されている。
おまけに、日本の【バレンタインデー】は明らかに菓子業界の陰謀だ。会社で義理チョコを配る度に心の中で盛大にため息をつき、“友チョコ”、“自己チョコ”が普及してくるにつれ、『2月14日にチョコなんか、絶対買うもんか!!』と思っていたのだ。
だが……今年は事情が違う。
真唯に“恋人”なるものが初めて出来たのだ。おまけに、この恋人には日頃から数限りない恩を受けている。こう云う日に便乗せずに、何とする!
真唯は“ブログUPのためのお店新規開拓”に歩き回りながら、バレンタイン商戦に賑わう街を店を精力的に覗いた。そしてネットでも検索しまくった。
あの一条さんには、どんなチョコレートが相応しかろうと。
高級ブランドはもとより、各有名ホテルの商品や、あの帝都ホテルのサイトも覗いてみて。
……だが、どれもこれも、今一つなのだ。
最後の手段として手作りも考えて、レシピを検索した真唯は『湯煎』の2文字の前に撃沈した。…不器用な真唯はうまく溶かす自信がない。…こんな時に、あの女がいてくれたらと思う。
真唯に美味しいハヤシライスのレシピを教えてくれた友人。だが……彼女は、裏切り者なのだ。
※ ※ ※
チョコレートの事はひとまず棚上げした真唯は、プレゼントの事を考えた。
候補はいくつかあった。しかし、差し迫った事情を考えて……7日の金曜日、会社を終えた真唯は北原さんからの誘いをご丁寧にお断り申し上げ、銀座から少し歩いた処にあるWEDGWOODの直営店に来ていた。週末、真唯を攫いに来る“恋人”には用事があるから、明日、土曜に会う約束をして。
「いらっしゃいませ、牧野様。」
「こんばんは。お久し振りです。」
ここの店員さんとは既に顔馴染だ。
マグカップもカフェ・オ・レ・ボウルもここで買った。
「どうぞ、ごゆっくりご覧になって下さいませ。」
「ありがとうございます。」
WEDGWOOD好きの真唯にとって、ここは正にパラダイスだ。
右を見ても左を向いてもWEDGWOOD。
上品を絵に描いたようなお店だ。
が、しかし。
麗しく陳列されたワイルドストロベリーのティーセットが憎い。
なぜ、コーヒーセットがないのだ。
この時ばかりは、英国仕様なのが憎らしく感じる。
正直、真唯は、この【ワイルドストロベリー】があまり好きではない。
少々、間が抜けた感があるように感じるのだ。どちからと云えば、クラシックな柄の方が好みだったりする。
だが不思議な事に、色が付くとその感じが消える。
それが証拠に真唯の愛用のマグカップは、これのデルフィのパステルグリーンだったりする。
店内を一通り見させてもらって、お目当てだった物の前に立つ。
【ワイルドストロベリー】のブルームマグ。
コンセプトは、“優しい日差しが降り注ぐイングリッシュガーデンで過ごすティータイム”
残念ながら、真唯には本格的なイングリッシュガーデンを見た経験はない。英国に行くには行ったが、大英博物館に夢中になり、ガイドブックで見つけたWEDGWOODの専門店に行ってカップ&ソーサーを一客購入しただけで満足してしまった。
……大英博物館で【死者の書】の原本を見た時は感動したな~~~
それに踊るシヴァ神や、サラスヴァーティー像を見た時は……、とまたまた頭がトリップしてしまった。『イカン、イカン』頬を2、3回叩いて意識を集中する。
ブルーとピンクのペアのマグカップは、本来の真唯の好みからするとキュートが過ぎる。
でも真唯のアパートで、一条さんと2人で使う事を考えたら……
しばらく眺めた真唯は、結局、これに決めて。そうしたら、コースターも欲しくなってしまった。【ワイルドストロベリー】のコースターとランチョンマットのセットも一緒に購入する事にした。
ティータイムではなくコーヒーブレークに使う事は、この際、ジョサイアさんに勘弁してもらおう。
良い買い物をしたとホクホクしていると、送りに出てくれた店員さんが、
「牧野様。さきほどから、とうとう降って参りました。傘はお持ちですか?」
と聞いてくる。
「あ~、降って来ちゃったか~~。はい、持ってます。」
真唯がバッグの中から折り畳み傘を取り出し開くのを待って、この店独特の青い袋に入れられた品物を渡してくれる。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。お気を付けてお帰り下さいませ。」
深々と腰を折られ、見送ってくれた。
ここからなら帝都ホテルも近い。チョコレートを見ようと思っていたのだが…この寒さだから雪に変わったら厄介だ。真唯は諦めて駅を目指して歩き出した。
ホテルは諦めたが、駅に連結されている三越の中を覗いてみた。
ショーケースの中のキラキラと宝石みたいに輝くブランド物のチョコレートさんたち。
……でも、なんか違う……
結局、買ったのは、その日の夕飯にする炭火焼き牛タン弁当だった。
家に帰り着いて、綺麗にラッピングされた箱を備え付けの押し入れの中に大事に仕舞う。おろしたてのコースターでこれを一条さんと使う日の事を考えると頬が緩む。
だが……
牛タン弁当を食べながら真唯は考えた。
……なぜ、どれもこれもがピンと来ないのだろう。
何が欠けているのか考えて……真唯は、いよいよ覚悟を決めなければならないかと腹を括る。
思い立ったが吉日、女は度胸!
……意味は全然違うが、真唯は短大時代に仲の良かった友人【裏切り者】の処へ久し振りに連絡する事にした。たっぷり食休みして、少し早いけど一条さんに、ただ今とお休みなさいのメールをして。 ……もうこの時間なら“店”も終わってゆっくりしている頃だろう時間を見計らって。
※ ※ ※
『はい、田宮でございます。』
……数年ぶりに聞く懐かしい声に、一瞬声が詰まりそうになるが直ぐにお決まりの挨拶をした。
「……“マッツン”の裏切り者~~」
少し間があって
『……その呼び方に、その台詞……その声は……真唯っ!?
……うっわあ、何年振り? 真唯が電話くれるなんて!!』
懐かしい声が弾けた。
「……マッツン……今、電話、大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。しっかし、ホントなっつかしいねぇ~~
そうそう、真唯のお母さんがぼやいてたよ。ウチの子はお正月にとうとう帰って来なかったって!』
(…あんの、ク○ババァ~~、何言い触らしてんのよ! …え? …って事は…)
「マッツンは帰省したの? 信州からっ!?
それこそ、うっわぁ~だよ! ご苦労さまだね!!」
『……真唯は相変わらずだね…。ところでホントにどうしたの?』
「……うん…実は、マッツンに教えて欲しい事があって……」
『あたしに聞くって事は料理関係? …時期的にはチョコだけど、真唯に限ってそれはないか!! 何? 何の料理?』
「……っ、……………」
『なに、無言電話になってんのよ! …っ! ……やだ、ちょっと、まさか……っ!!』
「……その、まさかです……マッツン…アタシにチョコレートの作り方教えてくだ、」
『えええーーーーーーっっっ!!!』
真唯は友人の大音声に、思わず子機を耳から離す。 ……無理もないが「マッツン…ちょっと、落ち着いて……」
『これが落ち着いていられますかっ! 一生、独身でいるって、散々、あたしを【裏切り者】呼ばわりしてたくせにっ!!』
「……返す言葉もございません……」殊勝で弱気な真唯の声に、友人の声が面白がるものに変わる。
『わざわざ【裏切り者】に聞く必要ないんじゃな~い? ネット検索すれば簡単よ?』
「…ぐ…っ! ………それでも不安だから、聞いてるんじゃないっ!!」
コロコロと笑う友人は、手順を説明してくれた。でもそれは、それこそ検索して見たレシピと殆ど同じで、真唯を余計に不安にさせた。
「……ねえ、40度くらいってどうしたら分かるの? 温度計、買った方が良い?
……絞り出し方にコツなんてあるの? あったら教えてっ!!」
こっちは真剣に聞いているのに、今度はあっちが無言電話になってしまった。……やっぱり、ムシが良過ぎただろうか?あれだけ【裏切り者】と騒いでおいて、こんな時だけ頼るなんて……ごめん、やっぱりいい。……そう言おうとしていた時だった。やっと聞こえた返事はレシピではなく質問だった。
『…ねえ、真唯。相手に渡すのはいつ? バレンタイン当日?それとも……』
「…あ、うん。ちょうど週末だから、当日渡す予定だけど……」
『…勤め先は変わってない? まだKY商事?』
「…このご時世に転職なんかするわけないじゃない。まだKYにいるよ。」
『…ちょっと、待っててね。 …切らないでよ!』
優しいオルゴールの保留音が流れる。 ……切らないでなんて、こっちが頼みたいくらいだ。しばらく待つと、やっとマッツンが電話に出てくれた。そして。
『決めたわ! 11日に、そっちへ行く! 真唯にお料理教室開いてあげるっ!!』
「ええっ、嘘!? だって祝日じゃない! お店どうするのよ!?」
『大丈夫、頼りになるパートさんがいるから! 旦那にOKもらったから安心して!!』
「…マッツン…ッ!!」
『その代わり、一生恩に着てよ。』
「着る、着る!! 喜んで着ちゃう♪」
『いいって、いいって。 …ところで…お相手は…どんな男(ヒト)?』
「……………」
信州からわざわざ出て来てくれる代わりに、一条さんの事を根掘り葉掘り聞かれる事を覚悟した真唯だった。
2月は恋人たちのイベント、バレンタインがある。
もっとも去年の2月の真唯ならば鼻で笑っていただろう。
一般的には、ローマ皇帝に迫害されて殉教した聖ウァレンティヌスに因んだ、恋人たちの愛の誓いの日とされるが、これは実は初期キリスト教会の陰謀説が有力で、この聖ヴァレンタインの実在も怪しまれ、カトリック教会の祝日からも外されている。
おまけに、日本の【バレンタインデー】は明らかに菓子業界の陰謀だ。会社で義理チョコを配る度に心の中で盛大にため息をつき、“友チョコ”、“自己チョコ”が普及してくるにつれ、『2月14日にチョコなんか、絶対買うもんか!!』と思っていたのだ。
だが……今年は事情が違う。
真唯に“恋人”なるものが初めて出来たのだ。おまけに、この恋人には日頃から数限りない恩を受けている。こう云う日に便乗せずに、何とする!
真唯は“ブログUPのためのお店新規開拓”に歩き回りながら、バレンタイン商戦に賑わう街を店を精力的に覗いた。そしてネットでも検索しまくった。
あの一条さんには、どんなチョコレートが相応しかろうと。
高級ブランドはもとより、各有名ホテルの商品や、あの帝都ホテルのサイトも覗いてみて。
……だが、どれもこれも、今一つなのだ。
最後の手段として手作りも考えて、レシピを検索した真唯は『湯煎』の2文字の前に撃沈した。…不器用な真唯はうまく溶かす自信がない。…こんな時に、あの女がいてくれたらと思う。
真唯に美味しいハヤシライスのレシピを教えてくれた友人。だが……彼女は、裏切り者なのだ。
※ ※ ※
チョコレートの事はひとまず棚上げした真唯は、プレゼントの事を考えた。
候補はいくつかあった。しかし、差し迫った事情を考えて……7日の金曜日、会社を終えた真唯は北原さんからの誘いをご丁寧にお断り申し上げ、銀座から少し歩いた処にあるWEDGWOODの直営店に来ていた。週末、真唯を攫いに来る“恋人”には用事があるから、明日、土曜に会う約束をして。
「いらっしゃいませ、牧野様。」
「こんばんは。お久し振りです。」
ここの店員さんとは既に顔馴染だ。
マグカップもカフェ・オ・レ・ボウルもここで買った。
「どうぞ、ごゆっくりご覧になって下さいませ。」
「ありがとうございます。」
WEDGWOOD好きの真唯にとって、ここは正にパラダイスだ。
右を見ても左を向いてもWEDGWOOD。
上品を絵に描いたようなお店だ。
が、しかし。
麗しく陳列されたワイルドストロベリーのティーセットが憎い。
なぜ、コーヒーセットがないのだ。
この時ばかりは、英国仕様なのが憎らしく感じる。
正直、真唯は、この【ワイルドストロベリー】があまり好きではない。
少々、間が抜けた感があるように感じるのだ。どちからと云えば、クラシックな柄の方が好みだったりする。
だが不思議な事に、色が付くとその感じが消える。
それが証拠に真唯の愛用のマグカップは、これのデルフィのパステルグリーンだったりする。
店内を一通り見させてもらって、お目当てだった物の前に立つ。
【ワイルドストロベリー】のブルームマグ。
コンセプトは、“優しい日差しが降り注ぐイングリッシュガーデンで過ごすティータイム”
残念ながら、真唯には本格的なイングリッシュガーデンを見た経験はない。英国に行くには行ったが、大英博物館に夢中になり、ガイドブックで見つけたWEDGWOODの専門店に行ってカップ&ソーサーを一客購入しただけで満足してしまった。
……大英博物館で【死者の書】の原本を見た時は感動したな~~~
それに踊るシヴァ神や、サラスヴァーティー像を見た時は……、とまたまた頭がトリップしてしまった。『イカン、イカン』頬を2、3回叩いて意識を集中する。
ブルーとピンクのペアのマグカップは、本来の真唯の好みからするとキュートが過ぎる。
でも真唯のアパートで、一条さんと2人で使う事を考えたら……
しばらく眺めた真唯は、結局、これに決めて。そうしたら、コースターも欲しくなってしまった。【ワイルドストロベリー】のコースターとランチョンマットのセットも一緒に購入する事にした。
ティータイムではなくコーヒーブレークに使う事は、この際、ジョサイアさんに勘弁してもらおう。
良い買い物をしたとホクホクしていると、送りに出てくれた店員さんが、
「牧野様。さきほどから、とうとう降って参りました。傘はお持ちですか?」
と聞いてくる。
「あ~、降って来ちゃったか~~。はい、持ってます。」
真唯がバッグの中から折り畳み傘を取り出し開くのを待って、この店独特の青い袋に入れられた品物を渡してくれる。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。お気を付けてお帰り下さいませ。」
深々と腰を折られ、見送ってくれた。
ここからなら帝都ホテルも近い。チョコレートを見ようと思っていたのだが…この寒さだから雪に変わったら厄介だ。真唯は諦めて駅を目指して歩き出した。
ホテルは諦めたが、駅に連結されている三越の中を覗いてみた。
ショーケースの中のキラキラと宝石みたいに輝くブランド物のチョコレートさんたち。
……でも、なんか違う……
結局、買ったのは、その日の夕飯にする炭火焼き牛タン弁当だった。
家に帰り着いて、綺麗にラッピングされた箱を備え付けの押し入れの中に大事に仕舞う。おろしたてのコースターでこれを一条さんと使う日の事を考えると頬が緩む。
だが……
牛タン弁当を食べながら真唯は考えた。
……なぜ、どれもこれもがピンと来ないのだろう。
何が欠けているのか考えて……真唯は、いよいよ覚悟を決めなければならないかと腹を括る。
思い立ったが吉日、女は度胸!
……意味は全然違うが、真唯は短大時代に仲の良かった友人【裏切り者】の処へ久し振りに連絡する事にした。たっぷり食休みして、少し早いけど一条さんに、ただ今とお休みなさいのメールをして。 ……もうこの時間なら“店”も終わってゆっくりしている頃だろう時間を見計らって。
※ ※ ※
『はい、田宮でございます。』
……数年ぶりに聞く懐かしい声に、一瞬声が詰まりそうになるが直ぐにお決まりの挨拶をした。
「……“マッツン”の裏切り者~~」
少し間があって
『……その呼び方に、その台詞……その声は……真唯っ!?
……うっわあ、何年振り? 真唯が電話くれるなんて!!』
懐かしい声が弾けた。
「……マッツン……今、電話、大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。しっかし、ホントなっつかしいねぇ~~
そうそう、真唯のお母さんがぼやいてたよ。ウチの子はお正月にとうとう帰って来なかったって!』
(…あんの、ク○ババァ~~、何言い触らしてんのよ! …え? …って事は…)
「マッツンは帰省したの? 信州からっ!?
それこそ、うっわぁ~だよ! ご苦労さまだね!!」
『……真唯は相変わらずだね…。ところでホントにどうしたの?』
「……うん…実は、マッツンに教えて欲しい事があって……」
『あたしに聞くって事は料理関係? …時期的にはチョコだけど、真唯に限ってそれはないか!! 何? 何の料理?』
「……っ、……………」
『なに、無言電話になってんのよ! …っ! ……やだ、ちょっと、まさか……っ!!』
「……その、まさかです……マッツン…アタシにチョコレートの作り方教えてくだ、」
『えええーーーーーーっっっ!!!』
真唯は友人の大音声に、思わず子機を耳から離す。 ……無理もないが「マッツン…ちょっと、落ち着いて……」
『これが落ち着いていられますかっ! 一生、独身でいるって、散々、あたしを【裏切り者】呼ばわりしてたくせにっ!!』
「……返す言葉もございません……」殊勝で弱気な真唯の声に、友人の声が面白がるものに変わる。
『わざわざ【裏切り者】に聞く必要ないんじゃな~い? ネット検索すれば簡単よ?』
「…ぐ…っ! ………それでも不安だから、聞いてるんじゃないっ!!」
コロコロと笑う友人は、手順を説明してくれた。でもそれは、それこそ検索して見たレシピと殆ど同じで、真唯を余計に不安にさせた。
「……ねえ、40度くらいってどうしたら分かるの? 温度計、買った方が良い?
……絞り出し方にコツなんてあるの? あったら教えてっ!!」
こっちは真剣に聞いているのに、今度はあっちが無言電話になってしまった。……やっぱり、ムシが良過ぎただろうか?あれだけ【裏切り者】と騒いでおいて、こんな時だけ頼るなんて……ごめん、やっぱりいい。……そう言おうとしていた時だった。やっと聞こえた返事はレシピではなく質問だった。
『…ねえ、真唯。相手に渡すのはいつ? バレンタイン当日?それとも……』
「…あ、うん。ちょうど週末だから、当日渡す予定だけど……」
『…勤め先は変わってない? まだKY商事?』
「…このご時世に転職なんかするわけないじゃない。まだKYにいるよ。」
『…ちょっと、待っててね。 …切らないでよ!』
優しいオルゴールの保留音が流れる。 ……切らないでなんて、こっちが頼みたいくらいだ。しばらく待つと、やっとマッツンが電話に出てくれた。そして。
『決めたわ! 11日に、そっちへ行く! 真唯にお料理教室開いてあげるっ!!』
「ええっ、嘘!? だって祝日じゃない! お店どうするのよ!?」
『大丈夫、頼りになるパートさんがいるから! 旦那にOKもらったから安心して!!』
「…マッツン…ッ!!」
『その代わり、一生恩に着てよ。』
「着る、着る!! 喜んで着ちゃう♪」
『いいって、いいって。 …ところで…お相手は…どんな男(ヒト)?』
「……………」
信州からわざわざ出て来てくれる代わりに、一条さんの事を根掘り葉掘り聞かれる事を覚悟した真唯だった。
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