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本編
No,28 一条さんの誘い ※R18
しおりを挟む他人が聞いたら砂を吐くんじゃないかと思われる甘やかな会話をしていたアタシたちだったが、一条さんはそれだけではおさまってくれなかった。アタシ個人としてはベッドの上で抱き締められて、アタシも彼の背中にさりげなく手をまわしてみたりして。こんな甘い台詞を、SEXY低音で囁かれるだけで充分満足だったりするのだが……
妖しく蠢く両手は相も変わらず鮮やかで、接吻しながら服を脱がしていくのは、その先の行為を彼が望んでいる事を教えてくれる。
まあ、一条さんもイイ大人なんだし、当たり前よね。
……彼氏イナイ歴がそのままイコール年齢なんて、アラサーの女ホント化石だろうし……
……ああ、下着、リザさんのところで買ってもらった物、つけて来てホントに良かった……
……っ! …それにしたって……
「……いちじょ…じゃなくて…貴志さん…恥ずかしいから、カーテン閉めて下さい……」
とてもじゃないけれど、明るい午後の光の中、このみっともない裸体を晒す度胸は真唯にはなかった。
「イヤです。 …と言いたいところですが、名前を言い直して下さった事に免じて、姫君の仰せのままに。」
そう言って、真唯の頬にキスを落としてカーテンを閉めて来てくれた貴志さんに、真唯は尚も言い募った。
「……いえ、そのレースのカーテンじゃなくて、遮光カーテンを……」
「お断りします」
……出たよ。貴志さんの得意技、0.1秒の瞬殺の否定……
いや、ここで負けていてはいけない!
「……は、恥ずかしいんですってばっ!!」
「ですから、貴女の意見を尊重して譲歩しました。本当なら、明るい中で貴女の美しい身体をじっくり見たいのに。遮光カーテンなんて、もっての他です。貴女も譲歩して下さい。」
「で、ですから…っ!」
「ああ、もう黙って。」
アタシが言い訳しようとするのを一刀両断して、貴志さんは本格的に真唯の身体を弄り出した。
「……あぁ…っ! …んっ…はァ……ッ!!」
ブラを器用に外した男は真唯の胸元を両手で、そして唇や舌を使って音を立てて愛撫する。その感覚に耐え切れなくて、漏れてしまう嬌声が堪らなく恥ずかしい。我慢しようとして指を噛もうとしたのだが、それに気付いた貴志さんに彼の指を口に入れられてしまった。彼の指を噛むなんて考えられない真唯は、男の策略のままに喘ぐしかなかった。
「嬌声を噛むなんて、そんな勿体ない事は許さない……」
男は、真唯がコンプレックスを感じているささやかな胸の膨らみを、心ゆくまで堪能した。胸の頂きの朱い実は、貴志の愛撫に敏感に反応する。男には、その様が愛しくて仕方がなかった。
……いつまでも弄っていたい……
そんな欲望の赴くままに指の動きも舌の動きもついつい執拗になってしまう。
だが、そんな男の気持ちも、自分の魅力も理解っていない女性からクレームが入った。
「……貴志さんっ! …そんな胸っ、いつまでも触って…ないでっ! …楽しくなんか…ないでしょう…?」
……また、この女性は……
自己卑下の塊のような、この女性はすぐに自分で自分を貶める。それを苦々しく思ってしまったが、彼は彼女の言い草を利用させてもらった。
「……ああ、気付かないで済みません。…早く、欲しかったのですね。」
「……えっ!? …ち、違っ…そんな意味じゃ…っ!!」
「そんな風にねだってくるなんて…奥ゆかしい方だ……」
「ねだってなんか…っ! …アッ!だめェ…ッ!!」
大きな嬌声が響いたのは、貴志の指が真唯のショーツの中に潜り込んだせいだ。叢の感触を楽しみ、花弁を一枚一枚愛し気に可愛いがる。男の指が既に濡れているのは、彼女が自分の行為に感じてくれている証しだ。つい口角が上がってしまうのを見咎められた。
「……やっぱり、貴志さんだけ、ヨユー……」
拗ねた可愛い声に、男の笑みが深まる。
「そんな事、ありませんよ。 …ただ、貴女が感じて下さっているのが嬉しいだけです……」
そして言いざまに、彼女の内部に指を一本慎重に埋めていった。指に感じる彼女の内部の熱さとその締め付けに、早く繋がりたい欲望が男を支配しようとするが、なんとか理性を総動員させた。
真唯の初めてを奪ってしまった日は、彼女の言葉に触発されてかなりサディスティックになってしまった。今日は……優しく抱きたい。
……現在…この瞬間も、真唯を包み込む、陽光のように……
こんな優しい感情、男は“らしくない”と自覚していた。
だが、真唯を見ていると、すべてを奪って縛りつけたい欲望と相反する、どこまでも穏やかに優しく愛したいと云う気持ちが同時に湧き上がってくるのだ。
―――……こんなに、愛せる女性とめぐり逢えるとは思わなかった……―――
己の生まれを自覚し、荒れていた十代、二十代の頃。
己の中に流れる血を厭い、かなりな無茶もした。
こんな容貌に生まれてしまったせいで、そして見せ掛けの家柄のブランドに惹かれ、女は腐るほど寄って来た。その中から後腐れのない女を選び、それなりに遊んで来た。
女は自分を連れ歩く事でアクセサリーを自慢するような満足を得、抱かれる事でひと時の快楽を得る。男はそれなりに金は使わせられたが、刹那の欲求を解消させてもらう。男にとって、女性との付き合いやSEXなど、そんな程度の事でしかなかったのだ。
……その俺が……
過去を思い返すと自嘲しか浮かばないが、これほどの女性と巡り会うための代償行為だったのかと思えば、己の血にさえ感謝したくなる。
そうだ。
自分の産まれと過去がなかったら、ここまで彼女と共感する事など出来なかっただろう。
少なくとも真唯の告白には驚かされた。
だが、『多少は』程度だ。
己の産まれに比べれば、かわいいものだ。
……それを知られて、彼女に嫌われてしまったら……と一瞬、男の表情に影が差すが、次の瞬間には消えてしまう。
真唯なら……彼女なら、ただ黙って自分を赦してくれそうな気がするのだ……
溢れる気持ちのまま、その濡れそぼる花園に己の昂ぶりを少しずつ挿入していく。そしてすべてをうめこんだ男は満足の吐息を吐き、ゆっくりと動きだした。
……真唯の内部は、彼女の性格そのままを表わすような暖かさに満ちている……
段々と激しくなる抽挿のリズムに、上がる可愛い嬌声は、貴志を煽る心地好いBGMでしかない。これ以上はないほどの幸福の中で……貴志は己を解放した―――
真唯はベッドの中で、貴志さんに抱き締められていた。
人生初の恋人の腕の中でまどろむような時間が、なんともくすぐったくも恥ずかしくて……そして、幸せで。自分にこんな時間が許される幸運がいまだに信じられない心地だった(初めての時のように何回も抱かれるのかと実は怯えていたのだが、今日はこの一回で勘弁してくれそうな雰囲気なので真唯は黙っている)。
あのルーヴル美術館で見た、ギリシア彫刻のような完璧な肉体の立派な胸筋のラインに指を滑らせてみたい欲求にかられたが、『煽ってるんですか?』とか『まだ、足りないんですか?』などと誤解されてはたまらない。その危険な欲求はとりあえず仕舞っておいて、真唯はただ頬を寄せるだけにとどめた。
「……貴志さんの【DUENDE】の香りがする……」
真唯が思わず呟けば、
「……貴女も【IMprevu】の香りがしますよ……」
微笑んだ声が応える。
……気付いてくれてたんだ……
自分のまとう香りを気にしてくれている事に、真唯の表情が綻ぶ。
一条さんは……貴志さんは、真唯がトワレを使わなくなった理由を知っている。そして、【IMpevu】を特別な時間にしか使わない事も。
今日と云う日を、真唯がどれだけ特別視していたか、理解ってくれているだろう。
……展開によっては、別離を覚悟していた事も……
ちょっと、しんみりしてしまった真唯に、貴志さんの複雑そうな声が降って来た。
「……真唯さん、…実は私はマナー違反をしてしまいました。申し訳ありません」
「……マナー違反…何ですか?」
「実は…アレをしなかったんですよ。」
「……アレ…? …アッ!」
アレと云うのが、避妊具の事だと気付いた真唯は、
「……あの、でも貴志さんは……」
さすがに言葉にはしづらい。
「……ええ。でも、大人の男性としてのマナーですから。」
気真面目に謝ってくれる姿勢が嬉しい。
確かに妊娠の心配はないとは言え、病気などの事を考えてセーフティーセックスを心掛けるなら、シタ方が安全なのだろう。生涯、バージンでいる心算だった真唯にも、それくらいの知識はある。でも……
「……その辺は、貴志さんの意思にお任せします。 …それに、あの…男の人って、シテない方が気持ちイイって聞いた事があるんで……」
アラサーの女は耳年増なのだ。
恥ずかしくて耳が真っ赤になってしまった真唯は貴志さんの胸に顔を埋めてしまったが、「また、貴女と云う女性は…っ!!」と思い切り抱き締められてしまった。
ヤバイ。貴志さんのスイッチを押しちゃったかナとうろたえた真唯は、これ以上はない爆撃を受ける事になった。
「……真唯さん…貴女さえ良かったら、ここで一緒に暮らしては頂けませんか?」
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