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本編
No,10 真唯の初めて 1 ※R15
しおりを挟む―――…こうなる予感がどこかにあったのに…どうして今日、アタシはここへ来てしまったのだろう…―――
―――やっぱり…どこかで期待していたから…?―――
「…真唯さん…こっちを向いて…?」
自分の腕の中でフリーズしてしまっている真唯を自分に向き直させた男――― 一条は、もう己の中の熱情を隠そうとはしなかった。
「三年前…貴女に声を掛けた、あの日から…ずっと、こうしたかった―――」
右手で真唯の腰を抱き、左手で顎をとらえ上向かせる。
「…あ! …ヤッ…」
思わず抗い顔を背けると、両手で真唯の頬を挟み、瞳を覗き込んで来る。
「あらがわないで。 …滅茶苦茶にしたくなる。」
思わず息を飲んだ真唯には構わず、唇をソゥッと触れさせた。
(……あ…私のファーストキス……)
などと真唯が呑気に考えていられたのも、ここまでだった。
一条は何度も何度も角度を変えて唇を押し付けてきて。真唯の唇を己の舌で辿ったかと思うと、強引に歯列を割って舌を真唯の口中に入れてきた。そして、真唯の舌を弄ぶように絡ませてくる。唾液が溢れて口の端から流れていくが、真唯にはそんな事を気にする余裕はない。口で、鼻で呼吸するのが精一杯だ。
真唯がボウッとしている間にも、一条は性急に事を進めて行く。真唯を抱き上げ、いくつかのフロアーを長い脚を生かした大きなストライドで奥へと歩を進める。一番奥のフロアーは―――寝室だ。
二つあるキングサイズベッドの近い方のベッドのカバーを乱暴に剥がし、真唯を放り投げるような勢いで押し倒し性急に覆い被さる。
……予め、部屋の光量を落とし、ベッドサイドのランプのみにしてあった。抜かりはない。
真唯が本当に我に返ったのは、背中にベッドのシーツの冷たさを感じるのとは正反対なキスの熱さを顔中と、その下辺りに感じての事だった。気が付けば、一条の手は背中のファスナーを下ろし、ドレスを脱がそうとしている。
(い、一条さん、仕事、早っ!)
我に返った真唯は真っ赤になりながら、何とか一条の腕を抑えようとした。
「…い、一条さん! …ま、待って…」
「待たない」
音速で返ってきた返事にくじけそうになるが、何とか朦朧としそうな頭を動かした。
「せ、せめてシャワーを…そ、そうだ! …お化粧、落とさないと…っ」
「……忘れなさい。貴女のファンデーションなど、さっき私が舐めて落としてあげたから大丈夫ですよ」
赤くなっていいのか、青くなっていいのか分からない返答をされて…それでも最後の望みの綱に縋った。
「…こ、この部屋、泊まるわけにはいかないんじゃ…っ!」
しかし、それも一条の次の台詞で見事に撃沈した。
「今夜一晩だけと云う事で、ホテル側の許可はとってあります。
この時間まで、コンシェルジュから連絡がないのが証拠です。
……さあ、囚われの私の月の女神
永遠の処女神の座から、堕ちる覚悟をなさって下さい。」
ここまでお膳立てされてしまえば、もう真唯に反論の余地はない。
「お腹、壊したって知りませんからね。
…初物ですけど…とっくに賞味期限切れですから」
何だか少し悔しくなって、思わず言ってしまった色気のない台詞は、一条の鮮やかな笑顔に歓迎された。
―――真唯の処女を捧げられる栄誉を受けた私は、世界一幸せな男だ―――
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