IMprevu ―予期せぬ出来事―

天野斜己

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【番外編】

迎春と、【諏訪大社】四社の初詣

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貴志さんの記憶喪失と云う最悪の事態をプラスに変える事が出来て。山中さんと由美センセが無事に華燭の典を挙げて、アタシ達も【結魂式】とも呼べるような二度目のお式を挙げて、益々絆の深さを増す事が出来た特別な二○一七年。
 恒例行事である【なまはげ】での忘年会も『去年で懲りました』とおっしゃる貴志さんの意志を尊重して、木島夫妻と山中夫妻の合同三家族で行われた。アタシだって、旦那さまのスーツのポケットに連絡先を忍ばせる女の子達とは飲みたくないモン(プンプン)。新婚ほやほやの山中夫妻は格好の酒の肴にされてしまってたけどネ(笑)。それでも、楽しく美味しく呑めたし、二次会と称して【椿屋珈琲店】で珈琲を飲みながらの、優里ちゃんと由美センセとの女子会ガールズトークは何より楽しかった♪

そうして開けた二○一八年。
 今年もアタシの手作りのお雑煮で新年を迎える事が出来た。
 生憎少し小雨が降ってたが、穏やかで静かなお正月なのが何よりだ。
やはり、いつもの草加の弁財天さまに初詣に出掛けた。雨が雪に変わりそうな寒い日なので、風雨を避ける頼もしい屋根があるのは何よりだ。善男善女の皆様は草加七福神めぐりをしてらっしゃる。気は心である。楽しそうなのだから、何も言うまい(苦笑)。
 夕方になったら案の定、雪に変わった。寒い日はお鍋に限る。その晩は「ご馳走海鮮鍋」にした。鱈や鮭、牡蠣、海老、帆立などがたっぷりと入った豪華版だ。春菊や水菜や三つ葉の緑が目に鮮やかだ。隙あらばアタシに贅沢をさせようと手ぐすねを引いてらっしゃる旦那さまをサラリとかわして、お酒は恵比寿麦酒エビスビールだ。これだって、充分に贅沢なんですからね♪ 高価なシャンパンや日本酒を購入出来なくて残念そうだった旦那さまも、おコタに入ってアタシの手作りのお鍋にはにっこりほっこりと満面の笑みになって沢山召し上がって下さった(照)。
「こんなに美味な貴女の手作りお鍋なら、三箇日毎食でも飽きませんね。」
などと。
それは流石にアタシが飽きそうです、ごめんなさい。
まあ、翌日はおじやにしちゃったんですけどネ(笑)。
 三日目は手抜きのカレーです。
お節も良いけど、カレーもネ(笑)。


お正月が済んだら通常運転の旦那さまに、アタシも手作りのお弁当作りを頑張った。貴志さんは何を作っても『ご馳走様でした。とても美味しかったですよ♡』と、ハートマークを一杯飛ばしたような写メ付きのメールを下さる。これがアタシの、何よりの栄養剤だ♪
そうして。聞けば、由美センセが新婚家庭で、お料理に苦戦されてらっしゃるとか。いや、ご自分で食べる分には何も困らないのだが、やはり旦那さまである山中さんには少しでも美味しい料理ものを食べて頂きたいと云う、由美センセの乙女ゴコロのようだ。何ともいじらしい話ではないか♡ だから、アタシも一肌脱ぐ事にした。とは言っても、ホントに脱いでくれたのは、君枝さんなんだけどね(苦笑)。何と君枝さんが、アタシと由美センセのお料理教室を開いて下さる事になったのだ。しかも、無償で。『それはあんまりだ。』と申し訳ながるアタシ達に『実はですね。』と前置きして話して下さった。貯金と年金で充分に食べてゆける事、この仕事は好きだけど上流階級の人々には少々うんざりしていた事。けれども、アタシの家に来てくれて、その認識が変化した事。
 「こんなに使用人の事を考えて下さる雇用主の女性かたは初めてですよ。
  ですから、これはご恩返しなんですよ。旦那さまの為に頑張って下さいませ。」
と、うっすら涙さえ浮かべておっしゃるのだ。
これには、アタシも由美センセも黙るしかなかった。
だからせめて、美味しいお料理を作れるようになって、旦那さまに喜んで頂いて。
その暁には、何か君枝さんにお礼をしようと目論んでたりするのだ。


そうして、由美センセと言えば。
 実は、少し生活ペースにゆとりが出てきたから、去年の七月に行けなかった【閻魔さま詣で】をなさろうとされたのだが(「閻魔王の斎日」は一月と七月の十六日なのだ)。何と今年のその日は火曜日で講座の日なのだ。『私は極楽往生出来ないの!?』とお嘆きの由美センセに、他のツアーを提案した。それが【諏訪大社】四社への初詣ツアーだ。正直なところを言うと、人混みは苦手なのだが、センセがあんまりガッカリされてらっしゃるから少しでも協力したかったのだ。それに、ご集印の魅力に目覚めさせてしまったのは、アタシだしネ(苦笑)。日本屈指の“パワースポット”に行けると由美センセは大喜びして下さった。だが、今回は優里ちゃんはパスだ。何故ならば、“ぶつ”がないから(大笑)。
 新宿を朝早く出発する今回のバスツアーのコースは先ずは【下社秋宮】だ。晴れてはいたけど雪が残ってて、メッチャ寒かったけど、センセがとても楽しそうでアタシも嬉しかった。秋宮ここは普通の御手水舎とは別に“御神湯”なる処が在る。龍の口からお湯が出て来るのだ。かなり熱く感じたが、有り難く温まらせて頂いた。新たな御縁を頂けたご挨拶の参拝が済んだら、楽しい御集印だ(笑)。次の【下社春宮】には、御神木と見紛うばかりの大樹が在った。根っこがどっしりとした素晴らしい樹であった。注連縄がないから、遠慮なく抱き付かせて頂いた。センセとご一緒だから、“トリップ”は出来なかったけど(苦笑)。ランチを取ったら、次は【上社前宮】だ。前宮ここの御本殿は少し登山するのだが、根性で頑張りましたとも! そしてラストを飾るのは、【上社本宮】だ。本宮ここは少し変わっていて、参拝経路が少し複雑なのだ。【本宮】と称される通りに、成程、素晴らしい御社である。日の本“第一軍神”と称される龍神の【建御名方神】が御祭神とされるが、先住民の土着信仰もしっかり残っている。
が、しかし。実は、社殿の横に立派な社殿に追いやられるように鎮座する磐座いわくらが、本来の真の御神体である事を知る方はどれくらいいらっしゃるのだろう。建御名方神は国譲りに反対して敗走した神様であるが、土着信仰を奪った神でもあるのだ。だが、御柱祭などで全国的に有名で、何よりも“御神気”に満ちたパワーの在る聖域まほろばには違いない。まだ松の内だから初詣に訪れる善男善女の方々が沢山いらっしゃって凄く混んでいたけど、新春早々のめでたく楽しい初詣ツアーであった。
そうして、四社全てを巡った人には、特別な物が頂ける。御神供の蕎麦落雁と、四社参拝記念の特製の樹の栞である。御朱印帳にはもってこいの嬉しい、何よりのプレゼントである♪ アタシと由美センセが二人で大喜びした事は言うまでもない。あ、蕎麦落雁も、大変美味しゅうございました。二人でそれぞれの愛する旦那さまと君枝さんへのお土産に楽しく悩み、アタシが由美センセの専属カメラマンと化したのは、ささやかな余談である(笑)。



こうしてアタシは、新たなる年を迎えたのであった。





FIN

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