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ラブラブ新婚編
No,210 結婚記念日は、出雲の地で 【貴等去出祭】
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朝陽を浴びての朝風呂は最高の贅沢だ。
モーニングコール前に起きてしまった身体をシャッキリさせて、浴衣と丹前姿でペタペタとスリッパの音をさせて、昨夜と同じ【食事処 錦】へゆく。
用意されたテーブルには、やはり御献立のお品書きがあった。
一、珍味 三種盛り合わせ しらす干し・烏賊の塩辛・こんぶ梅
一、蒸し物 温泉玉子
一、鍋 湯豆腐
一、冷菜 本日の野菜 彩りサラダ
一、焼き物 鯵の干物
一、炊き合わせ わらびかんぴょう巻き・鶏と豆腐のつくね・長芋の揚煮
一、食事 白飯 汁物 しじみの味噌汁 香の物
一、水菓子
朝からこんなに食べられるかいなと思われる様な内容だが、いざとなればペロリとイケてしまうのは旅先ならではだろう。それぞれが実に味わい深く、ご飯はおかわりまでしてしまった。
……嗚呼……この、しじみのお味噌汁、美味しいなァ……君枝さんにも飲ませてあげたい……今度、君枝さんとSPさんたちとの慰安旅行なんてどうだろうか……
お味噌汁をじっくりと味わい、お香こをパリポリと噛み締めてそんな事を考えていたら、ブログアップ用に写真を撮っていたアタシを見て気を利かせてくれた女性スタッフさんがツーショットを撮って下さって。
ついでにお願いしておいた。チェックアウト時にタクシーを呼んでおいて頂ける様に。勿論、神野さんのアドバイス通り、『観光ガイド認定ドライバー』さんを指名したのは言う間でもない。
食後はお茶を頂いたが、どうしても珈琲を飲みたかったアタシたちはまた【トラベル・ライブラリー】へと向かい。テラスへ出られる事に気付いたアタシは食後の珈琲を外で楽しむ事にした。
「…こんなに“非日常”を味わわせてくれるなんて…このリゾートグループの人気の秘密の一端を垣間見た気がします…」
「…ですが…あの半露天風呂はどうにかなりませんかね…あれでは庭も見えない。」
「まあまあ…正規のお部屋だったら、それなりなんじゃありませんか…? 旅行代理店の設定した部屋としては申し分ありませんよ。昨日の夕飯も今朝の朝食も、本当に美味しかったですし。」
「…真唯さんが大浴場を楽しめなかったのが、唯一の難点ですかね……」
「…貴志さんったら…」
そんなバカップル丸出しの会話をして。珈琲を飲み終わったら、ついでにホテルの中を探検した。随所にさり気なく飾られた生け花や、ギャラリー並の焼き物のお皿や壺などをしみじみ鑑賞して。外の小さな日本庭園は腹ごなしの散策には丁度良い(勿論しっかりすべてデジカメにおさめた)。
部屋に戻って驚いた。とっくに片付けられていると思っていたお布団がそのままだったから。迷わずダイブ。
……嗚呼……極楽ゥ~~……チェックアウトは十二時とゆっくりだし……二度寝が出来そうだ……
この近辺は、“オンナノコ”が喜びそうな神社やお寺が目白押しなのだが、生憎食指が動かなかった。御朱印をゲット出来るチャンスなのは分かってるが、今はそれよりも動きたくない……
“女子力0の干物女”の血が復活したのか(笑)、荷物は昨夜のうちに纏めていたので、結局チェックアウト時間までゴロゴロして。のんびり、まったり過ごしたアタシたちは、ホントにギリギリの時間にチェックアウトの手続きをしたのだった。
※ ※ ※
極上の御宿を後にするアタシたちを、これまた素敵な運転手さんが迎えてくれた。わざわざロビーまで入って来てくれて、荷物を全てトランクに入れて下さったのだ。
「今日の観光のご案内をさせて頂きますカンノと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
丁寧に挨拶して下さったのは、少々ふくよかな女性ドライバーだった。
車内に入って確認してみれば、『菅野』と云う字で。こんな偶然もあるものかと嬉しくなってしまった。
どうしても行きたい処と帰りのフライト時間だけ伝えて。後はお任せすると言えば、しばらく考えた菅野さんは「…では…日本最古の神社と、出雲一之宮に参拝して……その後、ご希望の神社とお寺に参拝するコースでよろいですか…?」と実に魅力的なプランを提案して下さった。そして道々話して下さったのはやはり出雲の神話の数々だったが、地元の方ならではの蘊蓄もあって実に有意義な時間となったのであった。
【須我神社】
八岐大蛇を退治された素戔嗚尊さまが稲田姫命さまと結婚され、住む土地を探していてこの地にやって来られた時に「我が心、すがすがし」とおっしゃられ、『須賀(須我)』と命名されて宮殿ををお建てになりそれが後に神社となったと伝えられる事から『日本初之宮』とされる。そして……
お手水舎を使い、古びていかにも歴史のありそうな鳥居を潜り少しの階段を登り、更に随神門を潜れば、さほど広くはない境内にその石碑はあった。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠めに 八重垣作る その八重垣を」
素戔嗚尊さまが詠んだ歌が日本初の和歌と云う事で『和歌発祥之地』ともされる。
まあ、のんびりするのは後にして、先ずは御祭神さまにご挨拶が筋である。境内からまた少し石段を登った処に、そのお社はあった。伝説通りの御夫婦神さまと、その御子神さまがお祀りされてあらっしゃる。由緒正しいお社に、夫婦で参拝させて頂ける御縁に感謝を申し上げ。仲良い夫婦神さまのように、いつまでも貴志さんと一緒にいられますようにと祈願せずにはいられない。
そして御朱印を授与して頂いてる間に、改めて石碑をしみじみとお見上げす。
妻への愛情に溢れた御歌だが、綺麗に五七五七七と揃っている為、後世の作と主張する人々が多いが。素直に信じて、神代の昔の浪漫に想いを馳せる方が、断然お得だと思うのだ。
背後にある八雲山には夫婦岩と呼ばれる巨石とお社があり、奥宮となっているそうだ。この巨石は磐座であるとの事なので見て見たい気はするが、生憎登山の時間はない。元は先に鎮座していた神さまがおられたのだが、記紀神話の影響で素戔嗚尊と結びつけられたとも考えられているそうだが、丸っと無視だ!(笑)
大国主命さまの祖神さまへの敬意を胸に、素朴で落ち着いた佇まいのお社を後にしたのだった。
【熊野大社】
出雲大社と共に出雲一之宮とされる。
事実、“大社”と呼ばれるのは出雲大社の他はこのお社だけであり、熊野の「クマ」とは神代の「クマ」であり、神と同義であるらしい(菅野さん談)。
立派な鳥居を潜ると、直ぐに朱色も鮮やかな綺麗な橋を渡らなければならない。春には川辺の桜が美しいそうだが、秋の風情もなかなかである。お天気が良くて、本当に恵まれている。
ただ。お手水舎で、ちょっとびっくりしてしまった。お手水鉢は石造りで立派なのだが、お水が出て来る処が見事なまでのアルミ製なのだ。これまで数々の神社仏閣を旅して来たが、ここまで風情がないと逆に感心して笑ってしまう。
二之鳥居と立派な注連縄が掛かる随神門を潜れば、堂々たる風格の拝殿が鎮座している。
御祭神は、伊邪那伎日真名子 加夫呂伎熊野大神 櫛御気野命さま。長ったらしい御名前であるが、要は素戔嗚尊の別名らしい。「クシ」とは「神奇」に通じ、「霊妙な」と云う意味であり、「ミケ」とは「御饌」の事であり食物を指す。つまり「霊妙なる食物神」の事らしい。ガイドさんがいらっしゃると、色々な事が理解って本当にためになる。
アタシは御縁を頂けた事と、日々口にする糧を与えて下さる事に、大いなる感謝を捧げた。
御朱印を頂いている間に御神籤を引いてみると、何とまさかの大吉であった!!
大凶を喜ぶ天の邪鬼であるが、大吉は素直に嬉しい(お蕎麦のお店で頂いた玩具の様な御神籤とは、有り難さが段違いである/笑)。
『春風の 吹けばおのずと 山かげの 梅も桜も 花は咲くなり』とあり、解釈として『心をかたくもって 一時の不運にあわてさわぎ思いまようてはいけません。本業をよくまもって静かにときの来るのをまちなさい。開運うたがいありません。』と、アタシを大いに喜ばせたが。
ふと思い出してしまった。戸隠神社で頂いた御神籤を。あの時は「くまのの御神」とは熊野三山の熊野大権現さまの事かと思ったが。こちらの神さまの事かも知れないと。
折角の大吉なのだ。こちらの神さまだと思っている方が、お得な気がする(笑)。有り難くLANCELの長財布に仕舞わせて頂き、大事に持っていようと決意する。
御朱印を授与して頂いたら、縁結びで有名なお社へレッツラゴーである。
【八重垣神社】
素戔嗚尊さまと稲田姫命さまを主祭神とし、大己貴命さま、及び青幡佐久佐日古命さまを合祀するお社である。巷では、稲田姫命がここで八岐大蛇から身を隠している間、鏡代わりに姿を映したと伝えられる「鏡の池」で行う事の出来る良縁占いが有名だが、アタシはそんなものには興味はない。既にこれ以上ない良縁を手に入れているのだから。アタシの目的は別にある。
お手水舎を使い、拝殿で本日の御縁に感謝申し上げ。
本殿後方の奥の院の佐久佐女の森の中の「鏡の池」を目指すオンナノコたちを尻目に、御朱印をお願いしている間に目的地に向かう。
宝物殿である。ここには、およそ千百年前に平安時代の絵師・巨勢金岡によって描かれたとされる「板絵著色神像」があるのだ(実際は室町時代の作だとか諸説あるらしいが、丸っと無視だ!/笑)。素戔嗚尊と稲田姫命、天照大御神、市杵島姫命などの御神像が描かれている。元は本殿の板壁画だったものを、保存のため宝物殿に移し、一般公開しているのだ。神社の障壁画としては日本最古と言われる貴重なものである。
平安の御代の人物が描いたため典型的な“平安美人”に描かれている、美人の誉れ高い女神たちの息吹をアタシは確かに感じて、しばし時が経つのを忘れた―――
菅野さんの提案により、彼女オススメのお店で昼食をとる事となった。
【塩見茶屋】
そこは一見、何の変哲もない普通のお店だった。
しかし、中に入って、奥の様子に歓喜の声が上がってしまう。
松江城内堀に面したガーデンコーナーが設けられ、何と、松江城の緑と掘川の遊覧船を眺めながらお茶や軽食が楽しめるようになっていたのだ。何とも風情で優雅であった。道路に面した外観からは想像もつかない景色の良さに、これは地元の観光ドライバーが勧める穴場だけの事はあると、内心舌を巻く。聞けば、あの元・高円宮典子さまと千家国麿さんが、ご婚約時代に訪れた事もあるそうだ。きっと隠れ家のようなこのお店で、外界の喧騒を忘れのんびりなさった事であろう。例え、SP付きでも(笑)。
楽しくメニューを眺めれば、松江名物・ぼてぼて茶が有名の様だが、正直そんなに心は惹かれなかった。何より、朝食を食べ過ぎた感があるので、そんなに空腹を感じない。散々迷って、結局、しじみご飯としじみ汁のセットにした。さほど待たされる事もなくやって来たそれは、しじみのお出汁が染み込んだ実に美味しいものであった。何より景色が良い。遊覧船の中からたまに手を振ってくれる人がいてそれに笑顔で手を振り返しながら、松江城の景色を眼で味わい、宍道湖のしじみを舌で堪能して。地元の名物を存分に享受する事が出来たのだった。
【佐太神社】
出雲国二之宮。
国引き神話に関する神々がお祀りされている、由緒あるお社である。
社殿は大社造りのお社が三殿並ぶ珍しい形式で、一際高い正殿に佐太大神さま、伊弉諾尊さま、伊弉冉尊さま、速玉男命さま、事解男命さまの五柱の神さまがお祀りされていて。
北殿に天照大御神さまと瓊々杵尊さまの二柱が。南殿に素盞嗚尊及び秘説四柱の計五柱の神々がお祀りされてあらっしゃる。
出雲の地で、すべての神々の祖神である伊弉諾尊と伊弉冉尊に御縁を頂けた事を感謝申し上げた。ちなみに佐太大神とは、“導きの神”として有名な猿田彦大神と同一らしい。“秘説”とは何とも意味深だが、そこはかとない浪漫も感じる。
珍しい形式の社殿をしみじみとお見上げし、超シンプルな御朱印を頂いたら、即刻立ち去る事になってしまった。時間がないとの事なので(苦笑)。
【一畑薬師】
正式名称は【医王山 一畑寺】。今回の旅のラストを飾る御寺である。
千三百段の石段で有名だが、タクシーは楽をさせて下さった。横の駐車場から寺務所に出たので、御朱印をお願いしておいて、その間に参拝させて頂く事にした。
十六羅漢の像がズラリと並んだ処は壮観である。「め」と書かれた絵馬が異様に多いのは、ここが“目のお薬師さま”として有名な御寺だからだろう。駆け足で通り過ぎようとしたが、羅漢の中に龍を肩に乗せたようなお像に興味を引かれ足を止めると、それは「驕梵波提尊者」とあり、説明書きには『生まれながらに爪が二つに割れていて、牛の生まれ変わりと噂され釈尊に憐れまれた。』とあったが、牛の生まれ変わりとされる方がなぜ龍と彫刻されているのかが理解らない。よほど寺務所で伺ってみようかと思ったが、お参りが先だと諦めた。
本堂と観音堂に丁寧に参拝させて頂いて、本日の御縁に感謝申し上げる。
アタシも貴志さんもパソコンを良く使うのに、有り難い事に今のところドライアイなどの症状には無縁である。目が見えて、五体満足に産んでもらえた事に、牧野の両親に感謝の念が湧き上がる。そんな想いを抱ける事に一抹の面映ゆさを感じつつ。
無事に「薬師如来」と「観音菩薩」の御朱印をゲットしたアタシは、菅野さんに促されるままにタクシーに急いだ。水木しげるロードに興味がないから、目玉おやじのオブジェも丸っと無視だ!(笑)
「…申し訳ありません…急がせてしまって…」
後は空港に向かうだけとなった車中、菅野さんに謝られてしまったが。
「とんでもありません! こんな欲張りコースを案内して頂けて、感謝してます! 素敵なお店にも案内して頂きましたし!!」
「…そう言って頂けると、ご案内した甲斐がありますが…」
「ガイドも楽しくてためになりましたし…ホントに菅野さんには感謝してます…!!」
「…ありがとうございます…今度は是非、本当の神在月にいらして下さい…感動しますよ。」
神野さんと同じ事をおっしゃる彼女に苦笑いが漏れてしまったが、「…ええ、そのうち…機会があれば…」と誤魔化してしまった。
「…今回はご案内出来ませんでしたが、【神魂神社】や【須佐神社】や【美保神社】もおすすめですし…是非、また出雲にいらして下さい。」
「…ありがとうございます…御縁がありましたら、是非…」
今は再訪の気はないが、御縁があれば“呼んで”頂けるだろうと、アタシは愛想良く返事をしておいた。
そして無事に出雲空港まで送って下さった菅野さんに、感謝の気持ちを込めてチップ代わりに『お釣りはいらない攻撃(笑)』を仕掛けたら、えらい感謝をされてしまって。可愛い四つ葉のクローバーのイラストが描かれたお名刺を頂戴してしまった。素敵な旅の思い出がまた一つ増えた事に、アタシはにっこり笑顔で、最敬礼で見送って下さった菅野さんに。そして、出雲の地に別れを告げた。
※ ※ ※
「…しかし…貴女も人が良いと言うか、何と言うか…」
出雲縁結び空港から飛行機に乗って、ドリンクサービスを受けて珈琲を飲んで落ち着いたと思った貴志さんの第一声がコレだった。
「…アタシはただ…池波先生の教えを実践してるだけです…」
……そうなのだ。
アタシは、「男の作法」と云う池波正太郎先生のエッセイの中の言葉を実践してるに過ぎない。
アタシはタクシーに乗る機会があると、例え百円でも『お釣りはいらない攻撃』を繰り出す。すると運転手さんは必ずと言って良い程、少し恐縮はするもののにこやかにお礼を言ってくれて。気分良く去っていかれる。この世知辛い世の中、百円玉一つでも運転手さんは喜んでくれて。その後の仕事も愛想良く気分良くする事が出来たら交通安全にも繋がるし、アタシの小さなお節介が親切の循環の一助になってくれたらこれ以上の事はない。
「…それにしたって…昨日も今日も気前が良過ぎです…」
「そんな事ありませんよ! 神野さんも菅野さんも、とても良くして下さって!!」
「…ですが…だったら…私の支払い禁止令をそろそろ…」
「…それとこれとは、話が全く別です。」
「………………………」
「…いいじゃありませんか…そろそろ、今年も終わりなんですから…それより…今回の旅行は楽しんで頂けましたか…?」
「それは勿論ですよ! こんな素晴らしい誕生日と結婚記念日を迎える事が出来た私は、本当に幸せ者です…っ!!」
「…だったら良かった…色々手配した甲斐がありました…」
「…真唯さん…本当にありがとうございました…」
「…お礼を言うのは、こちらの方ですよ…これからもよろしくお願いします、旦那さま…」
「…真唯さん…来年になったら、楽しみにしてらして下さい。」
「…それはそれで、とっても怖いんですケド……」
羽田で待機してくれていたSPさんたちに迎えられて。マンションに戻ったアタシは、早速出雲の自分土産を使う事にした。「おたまはん」と、アタシの分の夫婦箸である。
ちなみに「おたまはん」とは、卵かけご飯専用のお醤油である。国産の丸大豆を地元島根県、奥出雲町で作られた木桶を使って熟成させた醤油に、鹿児島産のカツオだしと三州三河の本みりんを加えて旨みを出していると云う優れ物だ。
全然お腹の空いてないアタシでも、非常に美味しく夕飯を頂けた(食後のデザートには、「紅白ひとくち生姜糖」を頂いた。御宿のお茶受けにあったのを拝借して来たのだ。「祝のお裾分け 出雲大社 平成の大遷宮」との包み紙に入っていたから、旅の思い出にもなるだろう)。
貴志さんも早速プレゼントしたお箸を使ってくれて。
その日から、二人で仲良く夫婦箸を使い始めた事は言う間でもない。
素敵な人たちと出逢い、御縁旅をさせて下さった、神話の国・出雲の地に想いを馳せながら―――
モーニングコール前に起きてしまった身体をシャッキリさせて、浴衣と丹前姿でペタペタとスリッパの音をさせて、昨夜と同じ【食事処 錦】へゆく。
用意されたテーブルには、やはり御献立のお品書きがあった。
一、珍味 三種盛り合わせ しらす干し・烏賊の塩辛・こんぶ梅
一、蒸し物 温泉玉子
一、鍋 湯豆腐
一、冷菜 本日の野菜 彩りサラダ
一、焼き物 鯵の干物
一、炊き合わせ わらびかんぴょう巻き・鶏と豆腐のつくね・長芋の揚煮
一、食事 白飯 汁物 しじみの味噌汁 香の物
一、水菓子
朝からこんなに食べられるかいなと思われる様な内容だが、いざとなればペロリとイケてしまうのは旅先ならではだろう。それぞれが実に味わい深く、ご飯はおかわりまでしてしまった。
……嗚呼……この、しじみのお味噌汁、美味しいなァ……君枝さんにも飲ませてあげたい……今度、君枝さんとSPさんたちとの慰安旅行なんてどうだろうか……
お味噌汁をじっくりと味わい、お香こをパリポリと噛み締めてそんな事を考えていたら、ブログアップ用に写真を撮っていたアタシを見て気を利かせてくれた女性スタッフさんがツーショットを撮って下さって。
ついでにお願いしておいた。チェックアウト時にタクシーを呼んでおいて頂ける様に。勿論、神野さんのアドバイス通り、『観光ガイド認定ドライバー』さんを指名したのは言う間でもない。
食後はお茶を頂いたが、どうしても珈琲を飲みたかったアタシたちはまた【トラベル・ライブラリー】へと向かい。テラスへ出られる事に気付いたアタシは食後の珈琲を外で楽しむ事にした。
「…こんなに“非日常”を味わわせてくれるなんて…このリゾートグループの人気の秘密の一端を垣間見た気がします…」
「…ですが…あの半露天風呂はどうにかなりませんかね…あれでは庭も見えない。」
「まあまあ…正規のお部屋だったら、それなりなんじゃありませんか…? 旅行代理店の設定した部屋としては申し分ありませんよ。昨日の夕飯も今朝の朝食も、本当に美味しかったですし。」
「…真唯さんが大浴場を楽しめなかったのが、唯一の難点ですかね……」
「…貴志さんったら…」
そんなバカップル丸出しの会話をして。珈琲を飲み終わったら、ついでにホテルの中を探検した。随所にさり気なく飾られた生け花や、ギャラリー並の焼き物のお皿や壺などをしみじみ鑑賞して。外の小さな日本庭園は腹ごなしの散策には丁度良い(勿論しっかりすべてデジカメにおさめた)。
部屋に戻って驚いた。とっくに片付けられていると思っていたお布団がそのままだったから。迷わずダイブ。
……嗚呼……極楽ゥ~~……チェックアウトは十二時とゆっくりだし……二度寝が出来そうだ……
この近辺は、“オンナノコ”が喜びそうな神社やお寺が目白押しなのだが、生憎食指が動かなかった。御朱印をゲット出来るチャンスなのは分かってるが、今はそれよりも動きたくない……
“女子力0の干物女”の血が復活したのか(笑)、荷物は昨夜のうちに纏めていたので、結局チェックアウト時間までゴロゴロして。のんびり、まったり過ごしたアタシたちは、ホントにギリギリの時間にチェックアウトの手続きをしたのだった。
※ ※ ※
極上の御宿を後にするアタシたちを、これまた素敵な運転手さんが迎えてくれた。わざわざロビーまで入って来てくれて、荷物を全てトランクに入れて下さったのだ。
「今日の観光のご案内をさせて頂きますカンノと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
丁寧に挨拶して下さったのは、少々ふくよかな女性ドライバーだった。
車内に入って確認してみれば、『菅野』と云う字で。こんな偶然もあるものかと嬉しくなってしまった。
どうしても行きたい処と帰りのフライト時間だけ伝えて。後はお任せすると言えば、しばらく考えた菅野さんは「…では…日本最古の神社と、出雲一之宮に参拝して……その後、ご希望の神社とお寺に参拝するコースでよろいですか…?」と実に魅力的なプランを提案して下さった。そして道々話して下さったのはやはり出雲の神話の数々だったが、地元の方ならではの蘊蓄もあって実に有意義な時間となったのであった。
【須我神社】
八岐大蛇を退治された素戔嗚尊さまが稲田姫命さまと結婚され、住む土地を探していてこの地にやって来られた時に「我が心、すがすがし」とおっしゃられ、『須賀(須我)』と命名されて宮殿ををお建てになりそれが後に神社となったと伝えられる事から『日本初之宮』とされる。そして……
お手水舎を使い、古びていかにも歴史のありそうな鳥居を潜り少しの階段を登り、更に随神門を潜れば、さほど広くはない境内にその石碑はあった。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠めに 八重垣作る その八重垣を」
素戔嗚尊さまが詠んだ歌が日本初の和歌と云う事で『和歌発祥之地』ともされる。
まあ、のんびりするのは後にして、先ずは御祭神さまにご挨拶が筋である。境内からまた少し石段を登った処に、そのお社はあった。伝説通りの御夫婦神さまと、その御子神さまがお祀りされてあらっしゃる。由緒正しいお社に、夫婦で参拝させて頂ける御縁に感謝を申し上げ。仲良い夫婦神さまのように、いつまでも貴志さんと一緒にいられますようにと祈願せずにはいられない。
そして御朱印を授与して頂いてる間に、改めて石碑をしみじみとお見上げす。
妻への愛情に溢れた御歌だが、綺麗に五七五七七と揃っている為、後世の作と主張する人々が多いが。素直に信じて、神代の昔の浪漫に想いを馳せる方が、断然お得だと思うのだ。
背後にある八雲山には夫婦岩と呼ばれる巨石とお社があり、奥宮となっているそうだ。この巨石は磐座であるとの事なので見て見たい気はするが、生憎登山の時間はない。元は先に鎮座していた神さまがおられたのだが、記紀神話の影響で素戔嗚尊と結びつけられたとも考えられているそうだが、丸っと無視だ!(笑)
大国主命さまの祖神さまへの敬意を胸に、素朴で落ち着いた佇まいのお社を後にしたのだった。
【熊野大社】
出雲大社と共に出雲一之宮とされる。
事実、“大社”と呼ばれるのは出雲大社の他はこのお社だけであり、熊野の「クマ」とは神代の「クマ」であり、神と同義であるらしい(菅野さん談)。
立派な鳥居を潜ると、直ぐに朱色も鮮やかな綺麗な橋を渡らなければならない。春には川辺の桜が美しいそうだが、秋の風情もなかなかである。お天気が良くて、本当に恵まれている。
ただ。お手水舎で、ちょっとびっくりしてしまった。お手水鉢は石造りで立派なのだが、お水が出て来る処が見事なまでのアルミ製なのだ。これまで数々の神社仏閣を旅して来たが、ここまで風情がないと逆に感心して笑ってしまう。
二之鳥居と立派な注連縄が掛かる随神門を潜れば、堂々たる風格の拝殿が鎮座している。
御祭神は、伊邪那伎日真名子 加夫呂伎熊野大神 櫛御気野命さま。長ったらしい御名前であるが、要は素戔嗚尊の別名らしい。「クシ」とは「神奇」に通じ、「霊妙な」と云う意味であり、「ミケ」とは「御饌」の事であり食物を指す。つまり「霊妙なる食物神」の事らしい。ガイドさんがいらっしゃると、色々な事が理解って本当にためになる。
アタシは御縁を頂けた事と、日々口にする糧を与えて下さる事に、大いなる感謝を捧げた。
御朱印を頂いている間に御神籤を引いてみると、何とまさかの大吉であった!!
大凶を喜ぶ天の邪鬼であるが、大吉は素直に嬉しい(お蕎麦のお店で頂いた玩具の様な御神籤とは、有り難さが段違いである/笑)。
『春風の 吹けばおのずと 山かげの 梅も桜も 花は咲くなり』とあり、解釈として『心をかたくもって 一時の不運にあわてさわぎ思いまようてはいけません。本業をよくまもって静かにときの来るのをまちなさい。開運うたがいありません。』と、アタシを大いに喜ばせたが。
ふと思い出してしまった。戸隠神社で頂いた御神籤を。あの時は「くまのの御神」とは熊野三山の熊野大権現さまの事かと思ったが。こちらの神さまの事かも知れないと。
折角の大吉なのだ。こちらの神さまだと思っている方が、お得な気がする(笑)。有り難くLANCELの長財布に仕舞わせて頂き、大事に持っていようと決意する。
御朱印を授与して頂いたら、縁結びで有名なお社へレッツラゴーである。
【八重垣神社】
素戔嗚尊さまと稲田姫命さまを主祭神とし、大己貴命さま、及び青幡佐久佐日古命さまを合祀するお社である。巷では、稲田姫命がここで八岐大蛇から身を隠している間、鏡代わりに姿を映したと伝えられる「鏡の池」で行う事の出来る良縁占いが有名だが、アタシはそんなものには興味はない。既にこれ以上ない良縁を手に入れているのだから。アタシの目的は別にある。
お手水舎を使い、拝殿で本日の御縁に感謝申し上げ。
本殿後方の奥の院の佐久佐女の森の中の「鏡の池」を目指すオンナノコたちを尻目に、御朱印をお願いしている間に目的地に向かう。
宝物殿である。ここには、およそ千百年前に平安時代の絵師・巨勢金岡によって描かれたとされる「板絵著色神像」があるのだ(実際は室町時代の作だとか諸説あるらしいが、丸っと無視だ!/笑)。素戔嗚尊と稲田姫命、天照大御神、市杵島姫命などの御神像が描かれている。元は本殿の板壁画だったものを、保存のため宝物殿に移し、一般公開しているのだ。神社の障壁画としては日本最古と言われる貴重なものである。
平安の御代の人物が描いたため典型的な“平安美人”に描かれている、美人の誉れ高い女神たちの息吹をアタシは確かに感じて、しばし時が経つのを忘れた―――
菅野さんの提案により、彼女オススメのお店で昼食をとる事となった。
【塩見茶屋】
そこは一見、何の変哲もない普通のお店だった。
しかし、中に入って、奥の様子に歓喜の声が上がってしまう。
松江城内堀に面したガーデンコーナーが設けられ、何と、松江城の緑と掘川の遊覧船を眺めながらお茶や軽食が楽しめるようになっていたのだ。何とも風情で優雅であった。道路に面した外観からは想像もつかない景色の良さに、これは地元の観光ドライバーが勧める穴場だけの事はあると、内心舌を巻く。聞けば、あの元・高円宮典子さまと千家国麿さんが、ご婚約時代に訪れた事もあるそうだ。きっと隠れ家のようなこのお店で、外界の喧騒を忘れのんびりなさった事であろう。例え、SP付きでも(笑)。
楽しくメニューを眺めれば、松江名物・ぼてぼて茶が有名の様だが、正直そんなに心は惹かれなかった。何より、朝食を食べ過ぎた感があるので、そんなに空腹を感じない。散々迷って、結局、しじみご飯としじみ汁のセットにした。さほど待たされる事もなくやって来たそれは、しじみのお出汁が染み込んだ実に美味しいものであった。何より景色が良い。遊覧船の中からたまに手を振ってくれる人がいてそれに笑顔で手を振り返しながら、松江城の景色を眼で味わい、宍道湖のしじみを舌で堪能して。地元の名物を存分に享受する事が出来たのだった。
【佐太神社】
出雲国二之宮。
国引き神話に関する神々がお祀りされている、由緒あるお社である。
社殿は大社造りのお社が三殿並ぶ珍しい形式で、一際高い正殿に佐太大神さま、伊弉諾尊さま、伊弉冉尊さま、速玉男命さま、事解男命さまの五柱の神さまがお祀りされていて。
北殿に天照大御神さまと瓊々杵尊さまの二柱が。南殿に素盞嗚尊及び秘説四柱の計五柱の神々がお祀りされてあらっしゃる。
出雲の地で、すべての神々の祖神である伊弉諾尊と伊弉冉尊に御縁を頂けた事を感謝申し上げた。ちなみに佐太大神とは、“導きの神”として有名な猿田彦大神と同一らしい。“秘説”とは何とも意味深だが、そこはかとない浪漫も感じる。
珍しい形式の社殿をしみじみとお見上げし、超シンプルな御朱印を頂いたら、即刻立ち去る事になってしまった。時間がないとの事なので(苦笑)。
【一畑薬師】
正式名称は【医王山 一畑寺】。今回の旅のラストを飾る御寺である。
千三百段の石段で有名だが、タクシーは楽をさせて下さった。横の駐車場から寺務所に出たので、御朱印をお願いしておいて、その間に参拝させて頂く事にした。
十六羅漢の像がズラリと並んだ処は壮観である。「め」と書かれた絵馬が異様に多いのは、ここが“目のお薬師さま”として有名な御寺だからだろう。駆け足で通り過ぎようとしたが、羅漢の中に龍を肩に乗せたようなお像に興味を引かれ足を止めると、それは「驕梵波提尊者」とあり、説明書きには『生まれながらに爪が二つに割れていて、牛の生まれ変わりと噂され釈尊に憐れまれた。』とあったが、牛の生まれ変わりとされる方がなぜ龍と彫刻されているのかが理解らない。よほど寺務所で伺ってみようかと思ったが、お参りが先だと諦めた。
本堂と観音堂に丁寧に参拝させて頂いて、本日の御縁に感謝申し上げる。
アタシも貴志さんもパソコンを良く使うのに、有り難い事に今のところドライアイなどの症状には無縁である。目が見えて、五体満足に産んでもらえた事に、牧野の両親に感謝の念が湧き上がる。そんな想いを抱ける事に一抹の面映ゆさを感じつつ。
無事に「薬師如来」と「観音菩薩」の御朱印をゲットしたアタシは、菅野さんに促されるままにタクシーに急いだ。水木しげるロードに興味がないから、目玉おやじのオブジェも丸っと無視だ!(笑)
「…申し訳ありません…急がせてしまって…」
後は空港に向かうだけとなった車中、菅野さんに謝られてしまったが。
「とんでもありません! こんな欲張りコースを案内して頂けて、感謝してます! 素敵なお店にも案内して頂きましたし!!」
「…そう言って頂けると、ご案内した甲斐がありますが…」
「ガイドも楽しくてためになりましたし…ホントに菅野さんには感謝してます…!!」
「…ありがとうございます…今度は是非、本当の神在月にいらして下さい…感動しますよ。」
神野さんと同じ事をおっしゃる彼女に苦笑いが漏れてしまったが、「…ええ、そのうち…機会があれば…」と誤魔化してしまった。
「…今回はご案内出来ませんでしたが、【神魂神社】や【須佐神社】や【美保神社】もおすすめですし…是非、また出雲にいらして下さい。」
「…ありがとうございます…御縁がありましたら、是非…」
今は再訪の気はないが、御縁があれば“呼んで”頂けるだろうと、アタシは愛想良く返事をしておいた。
そして無事に出雲空港まで送って下さった菅野さんに、感謝の気持ちを込めてチップ代わりに『お釣りはいらない攻撃(笑)』を仕掛けたら、えらい感謝をされてしまって。可愛い四つ葉のクローバーのイラストが描かれたお名刺を頂戴してしまった。素敵な旅の思い出がまた一つ増えた事に、アタシはにっこり笑顔で、最敬礼で見送って下さった菅野さんに。そして、出雲の地に別れを告げた。
※ ※ ※
「…しかし…貴女も人が良いと言うか、何と言うか…」
出雲縁結び空港から飛行機に乗って、ドリンクサービスを受けて珈琲を飲んで落ち着いたと思った貴志さんの第一声がコレだった。
「…アタシはただ…池波先生の教えを実践してるだけです…」
……そうなのだ。
アタシは、「男の作法」と云う池波正太郎先生のエッセイの中の言葉を実践してるに過ぎない。
アタシはタクシーに乗る機会があると、例え百円でも『お釣りはいらない攻撃』を繰り出す。すると運転手さんは必ずと言って良い程、少し恐縮はするもののにこやかにお礼を言ってくれて。気分良く去っていかれる。この世知辛い世の中、百円玉一つでも運転手さんは喜んでくれて。その後の仕事も愛想良く気分良くする事が出来たら交通安全にも繋がるし、アタシの小さなお節介が親切の循環の一助になってくれたらこれ以上の事はない。
「…それにしたって…昨日も今日も気前が良過ぎです…」
「そんな事ありませんよ! 神野さんも菅野さんも、とても良くして下さって!!」
「…ですが…だったら…私の支払い禁止令をそろそろ…」
「…それとこれとは、話が全く別です。」
「………………………」
「…いいじゃありませんか…そろそろ、今年も終わりなんですから…それより…今回の旅行は楽しんで頂けましたか…?」
「それは勿論ですよ! こんな素晴らしい誕生日と結婚記念日を迎える事が出来た私は、本当に幸せ者です…っ!!」
「…だったら良かった…色々手配した甲斐がありました…」
「…真唯さん…本当にありがとうございました…」
「…お礼を言うのは、こちらの方ですよ…これからもよろしくお願いします、旦那さま…」
「…真唯さん…来年になったら、楽しみにしてらして下さい。」
「…それはそれで、とっても怖いんですケド……」
羽田で待機してくれていたSPさんたちに迎えられて。マンションに戻ったアタシは、早速出雲の自分土産を使う事にした。「おたまはん」と、アタシの分の夫婦箸である。
ちなみに「おたまはん」とは、卵かけご飯専用のお醤油である。国産の丸大豆を地元島根県、奥出雲町で作られた木桶を使って熟成させた醤油に、鹿児島産のカツオだしと三州三河の本みりんを加えて旨みを出していると云う優れ物だ。
全然お腹の空いてないアタシでも、非常に美味しく夕飯を頂けた(食後のデザートには、「紅白ひとくち生姜糖」を頂いた。御宿のお茶受けにあったのを拝借して来たのだ。「祝のお裾分け 出雲大社 平成の大遷宮」との包み紙に入っていたから、旅の思い出にもなるだろう)。
貴志さんも早速プレゼントしたお箸を使ってくれて。
その日から、二人で仲良く夫婦箸を使い始めた事は言う間でもない。
素敵な人たちと出逢い、御縁旅をさせて下さった、神話の国・出雲の地に想いを馳せながら―――
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