IMprevu ―予期せぬ出来事―

天野斜己

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ラブラブ新婚編

No,207 上井夫妻のお伊勢参り 【内宮編】

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アタシは朝からハイテンションだった。
目が覚めて窓を開ければ、鳥羽湾の絶景が見えて。
お天気も良いのだから、何よりだ。

昨夜不満に思ったお風呂も朝行って見れば、これまた見事なオーシャンビューで。すこぶる気持ちの良い朝風呂を堪能出来て、朝食処になっている昨日のレストラン「花鳥」からもその絶景は変わらず。すかさず窓際の席をキープ出来たアタシは、バイキング形式になっている朝食にあれやこれやと楽しく悩む。和食、洋食そろっているが、アタシは迷わず和食中心で纏めた。ほかほか炊き立てのご飯にお海苔、納豆、魚の干物、卵焼き。温泉卵や湯豆腐、それに名物の伊勢うどんもチョイスしてしまった。貴志さんはパン中心の洋食だった。

「「頂きます。」」
声を揃えて合掌し。

楽しく会話しながら味わう旅先の朝食は、いくらでも入りそうである。調子に乗って、ご飯をおかわりしてしまった。だって、美味しいんだもん♪
初めて食べる地元の名物のうどんは、評判通りの特徴だった。甘いタレと刻みネギと辛い一味が絶妙にマッチングしてる。正直、讃岐うどんの方が好みだが、これはこれで美味しいと思う。
食後はお茶ではなくて、珈琲を頂いた。
豊受大御神さまに、大いなる感謝を捧げて。


一晩お世話になった宿に別れを告げて、向かった先は……


※ ※ ※


【二見興玉神社】
夫婦岩で有名で、道開きの神さま【猿田彦大神】さまを御祭神とする神社であり、かつては、お伊勢参りの前にここで禊をしてから詣でる事が習わしとされていたお社である。

(…本来は、こっちが先なんだけどね…ツアーで連れて来てもらってるんだから、文句は言えないけど…)
心の中でそっと呟くに留め。
バスを降りて、二見浦の海岸近くの御宮に向かう。


猿田彦の御遣いとされる蛙が、異様に幅を利かせるお社でもある(笑)。
“無事に帰る”、“貸した物が返る”、“若返る”などのご利益に与った方々の献納による蛙の置物の多さは、その御神徳の現れでもあろう。有り難い蛙の像があるお手水舎で作法通りに清め、お参りである。
「天岩戸」には【宇迦御魂大神】さまがお祀りされ、傍には【天鈿女命】さまのお像がある。
岩戸なのだから当たり前と云えば当たり前なのだが……些かそのお像のありように不自然さを感じていたアタシだが、天鈿女命が猿田彦の妻神であると知れば納得である。

そして神社の立派な拝殿で、再びの御縁に感謝を捧げる。
導きの神に、迷えるアタシに御力を頂けるよう願う。

伊勢神宮には、御神籤がない事は有名だ。
お伊勢参りそのものが“吉”とされるからである。
だから、このお社で引くのを楽しみにしていたのだが、結果は……まさかの大吉であった…っ!!


天地あめつちの中に生えた草木まで、神のすがたと大切にみよ
万物の中に神様はらせられる。天から降り注ぐ日差しに、雨に、雪に。道端の草にも、岩にも、川にも。森羅万象を司る諸々の神々に祈りを捧げ、謙虚な気持ちで自然と向き合えば、生かされていることへの感謝が自ずと芽生え、そして神様は豊かな稔りを約束して下さる。』


『神の教』とあった御言葉には、さすがに含蓄ある事が書かれていた。
正直言えば御神籤には多い御言葉フレーズであるが、お伊勢参りにやって来て頂けた御言葉だと思うと一際心に沁み入る心地がする。
大凶を喜ぶ天の邪鬼なアタシも、大吉は素直に嬉しい。
ニマニマと笑いながら、大事にお財布に仕舞い。

いよいよハイライト。
日本三大ガッカリ(笑)の一つに数えられる、【夫婦岩】を改めて拝観させて頂く。
そもそもこの岩は、日の大神と、沖約七百m先に鎮まる興玉神石(猿田彦大神さまの化身)を拝むための鳥居の役目を 果たしているのだが。その“鳥居”を拝むための鳥居があるのが、何ともおかしく感じるのはアタシだけであろうか?
まあ何はともあれ、ここまで来たのである。四の五の言わずに素直に手を合わせた。
そして。

「はい、チーズ♪」

石飛さんに、夫婦岩をバックに貴志さんとのツーショットをお願いした。そして社務所で、このお社オリジナルの御朱印帳を授与して頂いた。表面に夫婦岩が、裏面に二見蛙がデザインされた、ここでしか授与して頂けない御朱印帳を。

……以前は縁結びのご利益など、微塵も興味がなかったのだが……貴志さんとの間になら、この夫婦岩の様に固くブッ太い丈夫な注連縄でも張って頂きたい気分だ。

オーラスは、【綿津見大神】さまと【八大竜王】さまが御祭神の【竜宮社】に参拝させて頂いて。後は時間まで、夫婦岩のショットを撮り、二見浦を貴志さんと散策する。

そもそも、この「二見浦」の地名は、“倭姫命さまが、そのあまりの景観の美しさに二度振り返りご覧になった為”と言われるが、伊勢神宮(内宮)から流れてくる五十鈴川が二見を挟む様に東西二手に分かれて伊勢湾に注いでいる為、「二水ふたみ」に由来するとも言われている。
真偽のほどは定かではないが、神話好きのアタシとしては、断然、倭姫命説を推奨したい(笑)。

ツアーで知り合った、日本中を旅して各地の写真を撮影していると云うおひとり参加のご老体も、盛んに撮りまくっていらっしゃるし。
何より。
手と手を繋ぐ旦那さまが、とっても優しい表情かおで微笑んで下さっているから(照)。


海水にその身を浸した訳ではないが、気分的には充分、“禊”をした心地になって。

いざ、本日のハイライト。
太陽神のおわします【内宮】さんへ…っ!!



※ ※ ※



【皇大神宮】
明治神宮や鹿島神宮など、神宮を名乗る(?)社号のお社は数多いが。
正式名称を【神宮】と言い、この一言で通るのは伊勢神宮のみである。
そして御祭神は言う間でもなく天照大御神さまだが、神宮では【天照坐皇大御神】さまと申されるそうだ。
何とも有り難い響きではないか。正に神々の王であり、日の本の国の皇室の御祖神さまであり、総氏神さまであらせられるのだ。

【宇治橋鳥居】を拝せば、自然と頭が下がってしまう。一歩足を踏み入れれば、明らかに空気が変わり、“神域”に入った事が理解り、【宇治橋】を渡る脚も軽やかになろうと云うものだ。緑に囲まれた【神苑】を玉砂利を踏み締めながら歩く。
お手水舎があるが、やはりお伊勢さんにお参りするのだから、特別な場所で身を清めたい。
【五十鈴川御手洗場】である。
五十鈴川は、今日も綺麗に澄み切っていた。倭姫命さまが御裳のすその汚れを濯いだという伝説があり、御裳濯川とも呼ばれる。川底の石が透けて見えて、見事な透明度を誇っていて。水面がキラキラと陽をはじいている。ここで手を洗わせて頂くと、心身が清められた様に清々しく心地良い気分になれる。

そして。
真新しい【御正宮】で、相対して。
心の中で新たな“本名”を名乗り、新たに“夫婦”となる事が出来た男性ひとと参拝の御縁を頂けた事に感謝していると……御幌が一陣の風にフワリと舞い上がり……歓迎されている心地に陥り……


(…嗚呼…生かされているんだ…ありがとうございます…)
と、心の底から感謝の念が湧き上がる。


……広大な宇宙の中、二千億個もの星々が集う銀河系の中、太陽系が存在すると云う奇跡。

……地球と云う惑星ほしが存在し、太陽が輝き万物を照らしていると云う奇跡。

……海が、水が、空気が、大地があり…そして“アタシ”と云う存在が許されていると云う奇跡。

その昔、西行法師が「何事の おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」と詠んだ句の意味が、アタシの精神こころの中にストンと落ちた瞬間であった。


鳥居の前でのツーショットは、最早、お約束。
貴志さんがにこやかな表情かおで、撮れたスマホの画像をチェックしているのが、こそばゆくも面映ゆい。
伊勢神宮独特の建築様式“唯一神明造”を間近で観る事の出来る【御稲御倉】を興味深く見学させて頂き。

“天照大御神 荒御魂”がお祀りされている【荒祭宮】に参拝させて頂き、(…貴志さんを幸福しあわせにする事が出来ますように…っ!!)と、一心に祈りを捧げた。

【風日祈宮】と【瀧祭神】にも参拝させて頂き。
古代から大切に守られて来た神宮の森を歩いていると、樹齢ン千年はあろうかと思われる樹に出会う事が出来る。注連縄がないので遠慮なく抱き付かせて頂き、大地のパワーを分けて頂く。
清涼な神の森の中は清々しい空気に満ちている。思いっ切り深呼吸して、神域の“御神気”をたっぷりと肺一杯に吸い込んでパワーの充電をさせて頂こう。

気持ちの良い秋晴れの中を森林浴を楽しみながら歩いていると、【神苑】までアッと云う間に戻って来てしまう。
左に曲がれば宇治橋だが、アタシにはまだ寄りたい処があった。右に曲がって少し歩くと、山の神【大山祇神】さまがお祀りされている【大山祇神神社】と、【木花開耶姫命】さまがお祀りされている【子安神社】が鎮座している。日本の山々の神と、富士山と桜の女神に、再びの御縁を頂けた事を感謝したのだった。

宇治橋鳥居を振り返って、深々とお辞儀をすれば、これでアタシの“お伊勢参り”は終了である。
だが、完全な終わりではない。

ここには、“神恩感謝“の町が在るのだ。

今まで遠慮していた腕を、スルリと旦那さまの腕に絡めれば。一瞬、驚いた表情かおをするものの、その表情は次の瞬間には嬉しそうに笑み崩れて。アタシと貴志さんは、で微笑み合って。「おはらい町」を歩き出した。

伊勢と言ったら「赤福」であろう。ひねくれ者で天の邪鬼を自称するアタシだが、これはやっぱり外せない。堂々たる本店は、今日もお伊勢参りの人々で賑わっている。五十鈴川のせせらぎを表現したと云う出来たての餡子のお餅を、番茶と共に五十鈴川を眺めながら頂けば、(…嗚呼…お伊勢さんに、お参り出来たんだなァ…)と、今更ながらの感慨が湧いて来る。“赤心慶福”の由来を思い出せば、この場に居合わせている全ての方々に幸多かれと、頬も緩んでしまう。

その内に、どこからか太鼓の音が鳴り響いて来た。
「おかげ横丁」の「神恩太鼓」だろう。

既に食べ終わっていた貴志さんを急かして、アタシは急いで席を立った。





……涙が、止まってくれない……

太鼓の威力と云うか、表現力の豊かさは【鼓童】の公演で知った気になっていたのに……あれ以上に感動してしまった。

神に対し、今ここにあることを感謝する“神恩感謝”。

おかげ横丁の基本理念である、この精神で貫かれた音と演舞は、これ程までに心を揺さぶるものであったのだ…魂の底から震える感動を覚える……メンバーの一人一人に『ありがとう』を言いたい……

席を立つのが惜しくて、『蘇民将来』の門符が飾られた櫓を、いつまでもみつめていたのだった。






「…それほど、感動されましたか…」
「…凄かったです…無料で聴かせて頂けた事が、申し訳なくなるくらい…」
「貴女のブログで紹介する事が何よりの宣伝になり、より多くの人々が聴いてくれる事が太鼓の打ち手の励みになりますよ。」
「…! …はい、ありがとうございます…っ、…張り切って、記事を書きます…っ!!」
アタシは今、「鈴木水産 内宮前店」のイートインスペースで、少し遅い昼食をとっていた。ここは狭いながらも、新鮮な海の幸を安く美味しく気楽に食べさせてくれる処だ。「手こね寿司」などの名物なども良いかも知れないが、アタシはこう云う気軽な処が良い。前に来た時は大あさりと松坂牛ステーキ串と黒鮑ステーキ串焼きを食べたので、今回は違うものにチャレンジした。牡蠣は身が引き締まりぷりぷりしてるし、雲丹は甘くて濃厚な味わいだし、鮑のお刺身は絶品である!! 生ビールと共に頂けば……嗚呼……至福のひと時……「神恩太鼓」で“耳福”を、このお店で“口福”を味わって……贅沢してるなァ……いつか、この店の全種類を制覇したい…っ!!

何より。
アタシの奢りに遠慮してた貴志さんが、気楽に海の幸を味わって下さっている事が嬉しい……


アタシはニコニコの恵比寿顔で、伊勢の新鮮な海の幸を心ゆくまで堪能したのだった。今朝、参拝させて頂いた、海の神さまである【綿津見大神】さまと【八大竜王】さまに心の中で感謝を捧げながら。




昼食を食べ終えたら、即、おかげ横丁を目指す。

このバスツアーでは、三枚の無料の『おかげ横丁食べ歩きチケット』なる物が配布されているのだ。これを使わんで何とするっ! この三枚を使い切るために、鈴木水産でサザエの壺焼きを我慢したのだから…っ!!

先ず「豚捨」で、ラードで揚げたサクサクのコロッケを頬張り。
「傳兵衛」で、串に刺したきゅうりの漬物を味わい。ついでに伊勢沢庵が美味しそうだったので、自宅用と君枝さんへのお土産に購入した。
そしてラスト。「美杉郷八知玉屋」で、抹茶のこんにゃくようかんを食べながら歩く事にする。昔ながらの製法を守り、生のこんにゃく芋を使用していると云う品はなかなか乙な味だ。刺身こんにゃくをこれまた購入決定。

そして全てを使い切って満足したアタシは貴志さんと腕を組んで、「おはらい町通り」と「おかげ横丁」を散策する。

……ちょっと……今、振り返って顔を赤くしてるオネーサン……貴女の隣には、ちゃんと彼氏がいらっしゃるでしょ…っ、…このひとは売約済みなんですからね…っ!!

不届きなオネーサンたちを睨み付けて(心の中で/笑)、アタシは「鬼平」や「剣客商売」などが撮影出来そうな町並みをそぞろ歩く。伊賀の組紐や一刀彫のお店などを冷やかしていると、本当にタイムスリップ気分だ。
いつもお世話になってる君枝さんやSPの皆さん、リザさんや澤木さん、由美センセと山中さん、室井さんにマッツンやトーシローたちにそれぞれお土産をあれこれ楽しく悩み購入し。
御木本真珠は丸っと無視だ!(笑)
そして「くつろぎや」と云うお香のお店では、自分土産にかなり悩んでしまった。あれも欲しいがこれも欲しい。滅多に来れない処だと思うと、悩む頭もかなり使ってしまう。色々聞いて試してみて。結局、ネーミングに惹かれ『神宮林 杜の気配』に決定。折角の伊勢神宮参拝なのだから、その土地でしか買えない物を購入したかったから。


そうして。
バスの集合時間ギリギリまで、アタシと貴志さんは、神宮のお膝元の“神恩感謝”の町の賑わいを満喫したのだった。





「…予定していた「五十鈴川カフェ」で、珈琲を楽しむ事が出来ませんでしたね…」
帰りのバスの中で、貴志さんがアタシに小声で話し掛けて来た。

周りは静かだ。
バスガイドの白石さんも無言だ。『皆さん、お疲れでしょうから。』と言っていたが、実際ホントに眠ってる人もいる! バス旅行に慣れているのだろう。
アタシはダメだ。興奮してしまって眼が冴えて、眠るどころじゃない…っ!!


アタシも小声で返した。

「…仕方がありませんよ、「神恩太鼓」に一時間近くも聞き入ってたんですから…五十鈴川を眺めながらぼんやりお茶するのは、次の機会にします。」
「…その時は是非、愛する妻に、名産品の真珠をプレゼントさせて頂きたいですね…」
「…(…コレだよ…)…」

アタシは呆れた気分で、車窓を眺めていた眼を閉じた。



※ ※ ※



……キリスト教などには、『原罪』と云う根強い思想がある。

全ての人間ひとが、祖先であるアダムイブGODに背いた罪を、背負って生まれて来たのだと……

救世主キリストへの信仰以外、救いの道はないのだと……それでなければ、『地獄』へおちてしまうのだと……


……仏教や他の宗教にも、『地獄』と云う概念があり、信仰を迫る方便として使われている。



対して。


神道には、それがない。

“罪”や“穢れ”と云う概念はあるが、“お祓い”によって浄める事が出来る。



アタシが読んだ、ある本に書かれていた。


『そもそも人間の本質は宇宙や天地自然そのものであり、罪穢れと云う塵や埃、汚れによって、本質が覆い隠されているに過ぎない。』
と。

『曇っていても雨が降っても、常に太陽はその上に輝いていて、雲が祓われれば、自然に太陽の光が届きます。』
と。



―――真理だと思う。


“お伊勢参り”とは、人間本来の姿に立ち戻る為の旅路であり、参拝だと、アタシは思うのだ。




地平線に沈む夕陽を見ながら、今回、参拝が叶った、天照大御神さまを始めとする伊勢の神々さまに、“生かされている”事への感謝が自然と湧き上がり、その身を浸す事を真唯は感じていた―――



※ ※ ※



眠っていらした皆さまも起き出して来る頃、ベテランバスガイドさんはDVD上映会を開始された。最初は「釣りバカ」だった。最初は無視していた真唯も、みんなの笑い声につられてつい見てしまい。次の「テルマエ・ロマエ」は夢中になって見入り、大笑いしてしまった。しかし。ラストまで後少し、と云う頃。バスは、東京駅の丸の内口に着いてしまったのだった。後日、続きがどうしても気になって、TSUT〇YAの会員になってしまった事と、バス内で石飛さんに配布され書かされたアンケート用紙にスタッフの皆さんを絶賛しておいた事はささやかな余談である。【上井真唯】として気になった事は後日ブログの中でチクリと言わせて頂く事にして(笑)。

長い長い距離を安全運転で走って下さって、無事にこうして帰して下さった、宮崎さん、関さん両運転手さんと。

真唯たちお客を楽しませる事に徹したバスガイドの白石さんと。

文字通りツアーの見事な指揮をして下さった石飛さんに、最大級の感謝を込めて笑顔でお礼を言ってバスを降りた。

「ありがとうございました。お陰さまで、楽しい旅が出来ました。」
と。




東京駅は真唯の古巣であり、庭の様なものである。安くて美味しいお店ならいくらでも知っている。
だが、荷物と沢山のお土産を抱えたままで入るのは、さすがにキツイ。貴志さんが早々に連絡したらしいSPさんが迎えに来てくれて。車は懐かしの我が家に帰り着いた。時刻は既に二十二時に近い。あまり重い物は食べられないし、食べたくない。結局、君枝さんが冷凍しておいてくれたご飯をレンジでチンして、お茶漬けにして簡単に済ませた。


荷解きは明日にする事にして。
お風呂に二人で浸かって旅の疲れを癒し。
慣れ親しんだベッドで、一日振りに貴志さんの腕の中で眠る夜。



「…楽しい旅でしたね…」
「…貴志さんに、そう思って頂けるなら何よりです…」
「記事のアップ…楽しみにしていますよ。」
「…頑張ります。…“お伊勢参り”の魅力を、もっともっと皆さんに知って頂きたいですから。」


石飛さんが嘆いておられたのだ。
『式年遷宮』と『おかげ参り』と言う二大イベントを終了して、伊勢神宮の集客が明らかに落ちていると。


「大丈夫。貴女なら、出来ますよ。」

「…貴志さん…」



……真唯が頑張れるのは、貴志さんがいてくれるから……



万物を産み出し育む地母神【豊受大御神】さまと、太陽神【天照大御神】さまの懐にいだかれる心地良さと、“真実の自分自身”を見つめ直す旅の素晴らしさを、少しでも多くの方に知って頂ける文章を紡ぎたい…それだけを願って、真唯は眼を閉じたのだった。


……お伊勢参りの旅を共にして下さった、愛するひとの腕の中で。






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