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ラブラブ新婚編
No,206 上井夫妻のお伊勢参り 【外宮編】
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(…豊受大御神さま…一日三食、美味しく頂ける事に感謝致します…夫婦揃っての御縁を、どうもありがとうございます…っ!!)
真唯は、お伊勢さんの外宮さんに、一心に感謝の祈りを捧げていた。
※ ※ ※
真唯は旅行代理店のパンフを見るのが好きである。
奈良や京都、滅多に行けない海外のパンフレットを眺めては、行った事のある場所の思い出に浸ったり、脳内旅行を繰り広げる事が出来るから。ここお台場に引っ越して来てからも、自転車で出掛けられる範囲内の旅行代理店に足を運び、パンフを集めて眺めては悦に入ってたものである。
それは、たまたまだった。
今月九月は、上野に出掛けただけだった。こんな事は、ブロガー【上井真唯】にしてみれば、初めての事であったかも知れない。お陰で大分節約出来た家計簿を見てニンマリ微笑ってしまう。だから、来月十月は少しくらいなら贅沢してみても罰は当たるまいと思ったのだ。折しも秋の行楽シーズンを迎え、紅葉目当てのツアーのパンフも出揃った頃である。普段は全く興味など持たない『はとバス』のパンフを手に取ったのも、日帰りでどこかに出掛ける安いツアーも良いかも知れないと思ったのだ。
その晩、君枝さんの作ってくれた美味しい夕飯を頂いて。貴志さんがお風呂に入ってる間の、寝る前ののんびりタイム。
ラベンダーのハーブティーなんぞを飲みながら、パンフを捲っていたアタシの手がピタリと止まった。そして、眼がある一点に釘付けになる。見間違えなんじゃないかと、何度も何度も確認をするが……紙面が変わる事はない。何と、バスでお伊勢参りのツアーがあったのだ。……アタシとしては、遠くても日光辺りをイメージしていたのだが……現在は『はとバス』も侮れないなと感心しつつ…ネットでならもっとお得な情報があるのではないかと検索してみたら。あるわあるわ、旅行代理店のツアーのオンパレードだったのである。しばらくネットの海を彷徨って。真唯が気に入ったのは、一つの旅行会社だった。様々なバスツアーを企画しているのだが、パワースポット巡りや『ひとり参加限定』なるものがあったのが気に入った。何より。『バリアフリーツアー』と称して、高齢者や障害者の方たちに旅行を楽しんでもらえるよう全面的にバックアップしている姿勢に感銘を受けたのである。その会社が企画しているお伊勢参りに参加してみようと思い立ったのだ。旅行会社【レグルス・ツーリズム】の。
翌日、貴志さんの返事は、非常に微妙だった。
泊りの旅行は何ら問題ないが、旅行代金がすべてアタシ負担だと云う事が納得いかないらしい。渋る貴志さんを説き伏せて、アタシはその旅行代理店に確認の電話を入れた。そして予約を入れ、後日郵送で送られて来た指定の入金を済ませた(但し、『牧野秀美』名義で。そしていつの間にか『牧野貴志』の戸籍も用意されていて、無事に二人で旅行保険にも加入する事が出来たのだった。恐るべし【CLUB NPOE】★)。
しかし、バスツアーと云うのも、なかなかスリリングなものである。何せ、『最少催行人数』と云うものが決まっていて、その数に達しないとツアーが中止になってしまうのだから。お陰でアタシは催行決定の電話を頂くまで、ドキドキワクワクの日々を過ごす事となった。もし万が一、中止が決定したら、(…今回は、“呼ばれていない”のだ…)と潔く諦めようと思って。
幸いツアーは無事催行される運びとなったが。
―――“呼ばれている“
そう感じた。
思えば、高千穂の峰に参拝させて頂いた。
戸隠にも参拝させて頂けた。
今度は。
日本の総氏神【伊勢神宮】に参拝せよとの思し召しなのだ。
こうして、アタシの二度目の……いや、【上井真唯】になってからは初めての、“お伊勢参り”が決行される事と相成ったのであった。
※ ※ ※
「…真唯さん…随分、楽しそうですね…」
「だって楽しいんですもん…貴志さんも食べますか、ポテチ。」
「…結構です。」
「どうせなんですから、貴志さんも楽しんで下さいよ。お伊勢さんまでバスが連れてってくれるんですよ。気楽じゃありませんか。」
「…どうせでしたら、私が払わせて頂きたかったですよ…これから先も貴女の支払いだと思うと、気が滅入ります…」
「…じゃんじゃかお金を払って頂く私の気持ちが、少しは理解って頂けましたか…?」
「理解りました…充分理解出来ましたから、もう勘弁して下さいませんか…?」
「ダ~メ♪」
「真唯さん…っ!!」
「貴志さんは今までお金を払うばかりで、“奢られる”と云う経験があんまりないんじゃありませんか…? たまには、人にお金を出してもらう立場を経験なさってみて下さい…」
「…会社での接待なら、腐るほど経験があるんですが…」
「そんなの、全然比較になりませんよ。割り勘も、あんまり経験がなさそうですし…潔く諦めて今年後半は、私に奢られて下さい。」
「……真唯さん……」
「男としての面子や、歳上だと云う事を気にしてらっしゃるのは知ってますが…たまには素直に、妻に甘えて下さい♪」
「………………………」
観念したようにガックリと項垂れる旦那さまの頭をヨシヨシと撫でて。
アタシは流れる車窓に眼を向けた。
朝早くに新宿に集合した団体さまご一行は、順調に高速道路をヒタ走っている。途中、何回かお手洗い休憩を入れて。アタシはこんなバスの旅は初めてなので、何もかもが新鮮で楽しい。女性の添乗員さんやバスガイドさんたちとは、すっかり仲良くなってしまった(男性の運転手さん達には、最低の挨拶だけに留めておいた。嫉妬深い旦那さまへの予防線だ/笑)。
バスガイドの白石さんの蘊蓄トークはためになるし、ベテラン添乗員の石飛さんは姐御肌でとても頼りになる。二人とも素敵な女性だ。アタシは観光地のタクシーの運ちゃん運が良いと自負しているのだが……ドライバーの宮崎さんと関さんとあんまりお喋り出来ないのが残念である。バスの運転手として経験を積まれて、色んな事をご存じだろうに。まあ、ただでさえナーバスになっている旦那さまを、これ以上刺激するのは可哀想である(お昼休憩に寄ったSAでも、ランチの食券を買ったアタシにかなり恐縮していたのだから)。
幾つもの県を越えて、三重県は伊勢市に入った時には、もう夕方近くになってしまっていたが、石飛さんや白石さんの軽妙なトークで全然疲れなど感じる暇が無かった。却ってブログのネタの取材になってしまって、有り難く思ったぐらいである。
伊勢神宮には【外宮】と【内宮】があるが、古来より、外宮から参拝するのが習わしとなっている。
【豊受大神宮】
通称“外宮さん”と呼ばれるお社に到着した。
ここには、天照大御神さまの御食事を司る、豊受大御神さまがお祀りされていらっしゃる。この女神さまは、衣食住は勿論、農業や漁業、ありとあらゆる産業の守護神でもあらっしゃるが。
インカで言えば【パチャママ】の様な大地の地母神でもあると、アタシは勝手に思ってる。
表参道火除橋を渡れば、いよいよである。有名な『清盛楠』を右手に見ながら、お手水舎で手と口を漱ぐ。第一鳥居、第二鳥居の前で一礼する。いつもは奇異な目で見られるこの行為も、誰もが自然に行っている事が素直に嬉しい。静かな参道を歩いていると、(…嗚呼…お伊勢さんに、来られたんだなァ…)と感動もひとしおである。
ほどなく、豊受大御神さまがご鎮座する【御正宮】にやって来る。外玉垣南御門の白絹の御幌に隠された御正殿に想いを馳せ…日頃の感謝を心の中で申し上げる。
(…豊受大御神さま…一日三食、美味しく頂ける事に感謝致します…夫婦揃っての御縁を、どうもありがとうございます…っ!!)
そうしてようやく、冒頭の場面となるのである。
※ ※ ※
ここでツアコンの石飛さんが大活躍である。お客さんたちに頼まれる前に、自ら即席カメラマンに大変身するのだ(おまけに配布された会社のバッジの裏には石飛さんの携帯番号が書かれていて、非常時に限らず二十四時間受け付けますと言われた時には頭が下がってしまった)。アタシはデジカメでブログアップ用の写真を気の済むまで撮ったら、石飛さんの元へ貴志さんの手を引いて歩き出した。
「貴志さん、アタシたちもお願いしましょう!」
と。
「…! …よろしいんですか…?」アタシの自分の写真嫌いを知っている貴志さんが驚くが、「折角、夫婦で参拝出来たんですよ? 記念に一枚…ね…?」「はい…っ!!」貴志さんの表情が輝いて、アタシは自分の選択の正しさを確信する。結局。一昨年、式年遷宮で新しくなったばかりの鳥居の前で、アタシのデジカメと貴志さんのスマホで、ピースサインとサムズアップで笑顔でおさまった。
【御正宮】の次は、豊受大御神の“荒御魂”がお祀りされている【多賀宮】参拝である。
“荒御魂”とは、神さまの行動的で力強い側面の事を言う。対して【御正宮】にお祀りされていたのは、平和的で穏やかな“和御魂”なのである。九十八段の石段の上に鎮座するため、昔は【高宮】とも言われたそうだ。
アタシは祈った。
……牧野の両親と和解出来た行動力に、(感謝致します)と。
【土宮】
外宮が鎮座する山田原の地主神【大土乃御祖神】さまを御祭神とする。
尚、他の別宮が全て南面するのに対して、この土宮だけが東面している。諸説あるが理由は不明である。が、外宮ご鎮座以前に遡り、古態を残したものなのは間違いないようである。
千五百年前、豊受大御神さまがご鎮座あそばされる以前からこの地を御守護する神さまに、アタシは敬意を表した。
【風宮】
【級長津彦命】さまと【級長戸辺命】さまを御祭神とする別宮である。この二柱の神さまは風雨の神であり、農作物が順調に育つようにと祈願される御宮であるが。元寇の蒙古襲来の折り、“神風”を吹かせ国難を排除したとされ、末社から別宮に昇格された。
アタシはここで、アタシの人生の“風”に……貴志さんと出逢わせて頂けた“運命”に、感謝の祈りを捧げ……貴志さんの人生に激しい荒波が立たないよう、ひたすら祈願した。
夕焼けに染まる外宮はなかなかの風情だったが、秋の陽は釣瓶落とし。参拝が終わる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。バスもライトを点けて走り、今夜のお宿に着いた。ヨーロピアンテイストのなかなか洒落たホテルである。
アタシたちは預けておいたキャリーバッグとボストンバッグを受け取り、石飛さんから部屋のキーを配布されて。これからの夕飯と明日の朝食の時間と出発の集合時間の案内があって、それぞれ解散となった。
「…わァ…素敵…っ、…もう真っ暗なのは残念ですが、明日の朝はきっと海が綺麗ですよ…っ!!」
部屋を見て歓声を上げたアタシはバルコニーへ出て、心地良い海風を感じた。ここは全室、オーシャンビューなのだ。あの金額で、このツインの部屋はラッキーである。
「…真唯さん…今からでも、特別料金を払って、もっと広い部屋に変更を…」
「…変更してもいーですけど…アタシのお金なんですよ? …それでも、変更を希望されますか…?」
「………………………」
「こーゆー処へ来ると、テレビつけたくなるんですよね。三重には、どんなチャンネルがあったっけかな…?」
「……真唯さんの意地悪……」
負け惜しみのような旦那さまの可愛い愚痴を丸っと無視してテレビをつければ、天気予報をやっていて明日は晴れとの事で上がっていたテンションが更に盛り上がる。
「明日の内宮さんのお参りも晴れみたいですよ! おかげ横丁の散策も楽しみですね♪」
「………………………」
「貴志さんはお風呂はどうされますか? 夕飯の前にひとっ風呂浴びてらっしゃいますか?」
「…真唯さんがいらっしゃるなら、ご一緒しますが…」
「アタシは寝る前で良いです。じゃあ、お土産見て、そのまま夕飯に行きましょ!」
「…はい…」
アタシは貴志さんと、一階ロビーフロント横にあるお土産コーナーを見て回り。地元の銘菓や、本真珠のアクセサリー。そしてご当地キャラのグッズなどをひと通り冷やかして楽しんだ。
時間になったのでレストラン「花鳥」に向かい、名前と部屋番号を言うとテーブルに案内された。
このツアーは、夕飯を和食にするかフレンチにするか予約時に選択出来たので、アタシは迷わず和食を選んだ。折角のお伊勢さん参りなのだ、なぜしてフレンチなど食べなきゃならんのだ?(フレンチ好きの方、ごめんなさい!)
コース料理は決まっているが、ドリンクは選べる。アタシがネーミングに惹かれて「神都ビール」を頼めば、貴志さんも同じ物を注文した。
「…貴志さんは赤ワインがお好きなのに…ビールで良いんですか…?」「…冗談じゃありません…いくら違うと思ってるんですか…」「…嬉しいです…そうやって、値段を気にして頂けるのが…」「…やっぱり、貴女は意地悪だ…」「おや。アタシは根っからの天の邪鬼ですよ。…ご存じなかったんですか…?」「……意味が全然違います……」
そんな会話をしていると、件の「神都ビール」がやって来て。ビール瓶の日の出のラベルに、太陽神・天照大御神さまを奉じる街の誇りを感じた。それをお互いグラスに注ぎあって。
「日々の糧を下さる【豊受大御神】さまと、明日の参拝の機会を与えて下さった、日本の最高位の女神【天照大御神】さまに感謝して。」
アタシがグラスを掲げると。
「…私の愛しい小悪魔な妻と過ごせる、伊勢の夜に…」
貴志さんが応えてくれて。
カチン♪
厳格なお店ではマナー違反だろうが、こんなレストランならアリだろうと、グラスを鳴らし。一口飲めば爽やかな苦みが喉を潤し、その独特の味わいに一気にグラスを干してしまったが。それは貴志さんも同じだったようで。二杯目以降は完全に手酌で気楽にするのがアタシたち流なので、先付から始まった秋の味覚を味わわせてくれる創作和食レストランの懐石ディナーは和やかに進んで行った。
正直言えば、味はそれほどでもない。だが、ツアーの料金を考えれば、妥当であろう。それにメインの伊勢海老の大きさ、美味しさはさすが地元のこだわりを感じる事が出来て、まずまずの夕飯であった。
それよりも。
漏れ聞こえて来る、近くの席に座っているツアーに参加している方々の会話が興味深かった。ご高齢のご夫婦、同性の友人同士、またはおひとりで参加している方々と実に様々である。
(…そう云えば…このツアーは、一人参加もOKだったんだ…生涯“おひとりさま”を目指していたアタシが愛する男性と、お伊勢参りが出来るなんて…ホントに人生は、何があるか理解らないものね…)
心の中で、結婚と云う“人生の波”をたてて下さった、【級長津彦命】さまと【級長戸辺命】さまをに改めて感謝したのであった。
食休みをした後、アタシたちはホテル自慢の温泉に入った。これまた、山梨で贅沢をしてしまった事が祟ってか、大浴場も檜の露天風呂もアタシの満足出来るレベルではなかったが、これが“普通”なのだと思い直して。天照大御神さまのお膝元で浸かる事が出来たお湯のお恵みに感謝を申し上げた(日本語としてはおかしい表現かも知れないが、気分はそんな感じだったのだ/苦笑)。
「…本当は『奥之院』と呼ばれる鬼門を守る金剛證寺や、月夜見宮や倭姫宮の別宮にも行きたかったんですが…ツアーだから仕方がありませんよね…」
「…真唯さん…なんでしたら、明日の自由時間にでも、」
「…おっしゃると思いました…でも、本当に結構です…以前参拝しましたし、第一時間がありませんよ…それより、おかげ横丁の散策を楽しみましょう♪」
「…真唯さんが、そうおっしゃるのでしたら…」
今、アタシたちは、フランス語で“再会”を意味するバーラウンジ「Revoir」で軽いカクテルを楽しんでる。寝酒には丁度良い。大きな窓から見える鳥羽湾が真っ暗なのが残念だ。
「…貴志さんは、楽しんで下さってますか…?」
「…私は愛しい妻とツーショットを撮れた事が、何より嬉しかったですよ…」
「…“小悪魔”などと、不名誉なあだ名を頂戴してしまいましたが…?」
「…それだけ魅力的だと云う事ですよ…」
「…貴志さんったら、調子良いんだから…」
「…調子の良い男はお嫌いですか…?」
「…ただのお調子者は嫌いだけど…貴志さんなら…好き。」
「…良かった…寛大な奥方に感謝致します。」
こうして。
バカップルな二人のお伊勢参りの夜は、更けてゆくのであった。
ちなみに。
同行出来なかったSPの代わりに、【CLUB NPOE】から派遣された“親衛兵”と呼ばれる護衛の者たちが付いていた事は、真唯は与り知らぬ、ささやかな余談である。
真唯は、お伊勢さんの外宮さんに、一心に感謝の祈りを捧げていた。
※ ※ ※
真唯は旅行代理店のパンフを見るのが好きである。
奈良や京都、滅多に行けない海外のパンフレットを眺めては、行った事のある場所の思い出に浸ったり、脳内旅行を繰り広げる事が出来るから。ここお台場に引っ越して来てからも、自転車で出掛けられる範囲内の旅行代理店に足を運び、パンフを集めて眺めては悦に入ってたものである。
それは、たまたまだった。
今月九月は、上野に出掛けただけだった。こんな事は、ブロガー【上井真唯】にしてみれば、初めての事であったかも知れない。お陰で大分節約出来た家計簿を見てニンマリ微笑ってしまう。だから、来月十月は少しくらいなら贅沢してみても罰は当たるまいと思ったのだ。折しも秋の行楽シーズンを迎え、紅葉目当てのツアーのパンフも出揃った頃である。普段は全く興味など持たない『はとバス』のパンフを手に取ったのも、日帰りでどこかに出掛ける安いツアーも良いかも知れないと思ったのだ。
その晩、君枝さんの作ってくれた美味しい夕飯を頂いて。貴志さんがお風呂に入ってる間の、寝る前ののんびりタイム。
ラベンダーのハーブティーなんぞを飲みながら、パンフを捲っていたアタシの手がピタリと止まった。そして、眼がある一点に釘付けになる。見間違えなんじゃないかと、何度も何度も確認をするが……紙面が変わる事はない。何と、バスでお伊勢参りのツアーがあったのだ。……アタシとしては、遠くても日光辺りをイメージしていたのだが……現在は『はとバス』も侮れないなと感心しつつ…ネットでならもっとお得な情報があるのではないかと検索してみたら。あるわあるわ、旅行代理店のツアーのオンパレードだったのである。しばらくネットの海を彷徨って。真唯が気に入ったのは、一つの旅行会社だった。様々なバスツアーを企画しているのだが、パワースポット巡りや『ひとり参加限定』なるものがあったのが気に入った。何より。『バリアフリーツアー』と称して、高齢者や障害者の方たちに旅行を楽しんでもらえるよう全面的にバックアップしている姿勢に感銘を受けたのである。その会社が企画しているお伊勢参りに参加してみようと思い立ったのだ。旅行会社【レグルス・ツーリズム】の。
翌日、貴志さんの返事は、非常に微妙だった。
泊りの旅行は何ら問題ないが、旅行代金がすべてアタシ負担だと云う事が納得いかないらしい。渋る貴志さんを説き伏せて、アタシはその旅行代理店に確認の電話を入れた。そして予約を入れ、後日郵送で送られて来た指定の入金を済ませた(但し、『牧野秀美』名義で。そしていつの間にか『牧野貴志』の戸籍も用意されていて、無事に二人で旅行保険にも加入する事が出来たのだった。恐るべし【CLUB NPOE】★)。
しかし、バスツアーと云うのも、なかなかスリリングなものである。何せ、『最少催行人数』と云うものが決まっていて、その数に達しないとツアーが中止になってしまうのだから。お陰でアタシは催行決定の電話を頂くまで、ドキドキワクワクの日々を過ごす事となった。もし万が一、中止が決定したら、(…今回は、“呼ばれていない”のだ…)と潔く諦めようと思って。
幸いツアーは無事催行される運びとなったが。
―――“呼ばれている“
そう感じた。
思えば、高千穂の峰に参拝させて頂いた。
戸隠にも参拝させて頂けた。
今度は。
日本の総氏神【伊勢神宮】に参拝せよとの思し召しなのだ。
こうして、アタシの二度目の……いや、【上井真唯】になってからは初めての、“お伊勢参り”が決行される事と相成ったのであった。
※ ※ ※
「…真唯さん…随分、楽しそうですね…」
「だって楽しいんですもん…貴志さんも食べますか、ポテチ。」
「…結構です。」
「どうせなんですから、貴志さんも楽しんで下さいよ。お伊勢さんまでバスが連れてってくれるんですよ。気楽じゃありませんか。」
「…どうせでしたら、私が払わせて頂きたかったですよ…これから先も貴女の支払いだと思うと、気が滅入ります…」
「…じゃんじゃかお金を払って頂く私の気持ちが、少しは理解って頂けましたか…?」
「理解りました…充分理解出来ましたから、もう勘弁して下さいませんか…?」
「ダ~メ♪」
「真唯さん…っ!!」
「貴志さんは今までお金を払うばかりで、“奢られる”と云う経験があんまりないんじゃありませんか…? たまには、人にお金を出してもらう立場を経験なさってみて下さい…」
「…会社での接待なら、腐るほど経験があるんですが…」
「そんなの、全然比較になりませんよ。割り勘も、あんまり経験がなさそうですし…潔く諦めて今年後半は、私に奢られて下さい。」
「……真唯さん……」
「男としての面子や、歳上だと云う事を気にしてらっしゃるのは知ってますが…たまには素直に、妻に甘えて下さい♪」
「………………………」
観念したようにガックリと項垂れる旦那さまの頭をヨシヨシと撫でて。
アタシは流れる車窓に眼を向けた。
朝早くに新宿に集合した団体さまご一行は、順調に高速道路をヒタ走っている。途中、何回かお手洗い休憩を入れて。アタシはこんなバスの旅は初めてなので、何もかもが新鮮で楽しい。女性の添乗員さんやバスガイドさんたちとは、すっかり仲良くなってしまった(男性の運転手さん達には、最低の挨拶だけに留めておいた。嫉妬深い旦那さまへの予防線だ/笑)。
バスガイドの白石さんの蘊蓄トークはためになるし、ベテラン添乗員の石飛さんは姐御肌でとても頼りになる。二人とも素敵な女性だ。アタシは観光地のタクシーの運ちゃん運が良いと自負しているのだが……ドライバーの宮崎さんと関さんとあんまりお喋り出来ないのが残念である。バスの運転手として経験を積まれて、色んな事をご存じだろうに。まあ、ただでさえナーバスになっている旦那さまを、これ以上刺激するのは可哀想である(お昼休憩に寄ったSAでも、ランチの食券を買ったアタシにかなり恐縮していたのだから)。
幾つもの県を越えて、三重県は伊勢市に入った時には、もう夕方近くになってしまっていたが、石飛さんや白石さんの軽妙なトークで全然疲れなど感じる暇が無かった。却ってブログのネタの取材になってしまって、有り難く思ったぐらいである。
伊勢神宮には【外宮】と【内宮】があるが、古来より、外宮から参拝するのが習わしとなっている。
【豊受大神宮】
通称“外宮さん”と呼ばれるお社に到着した。
ここには、天照大御神さまの御食事を司る、豊受大御神さまがお祀りされていらっしゃる。この女神さまは、衣食住は勿論、農業や漁業、ありとあらゆる産業の守護神でもあらっしゃるが。
インカで言えば【パチャママ】の様な大地の地母神でもあると、アタシは勝手に思ってる。
表参道火除橋を渡れば、いよいよである。有名な『清盛楠』を右手に見ながら、お手水舎で手と口を漱ぐ。第一鳥居、第二鳥居の前で一礼する。いつもは奇異な目で見られるこの行為も、誰もが自然に行っている事が素直に嬉しい。静かな参道を歩いていると、(…嗚呼…お伊勢さんに、来られたんだなァ…)と感動もひとしおである。
ほどなく、豊受大御神さまがご鎮座する【御正宮】にやって来る。外玉垣南御門の白絹の御幌に隠された御正殿に想いを馳せ…日頃の感謝を心の中で申し上げる。
(…豊受大御神さま…一日三食、美味しく頂ける事に感謝致します…夫婦揃っての御縁を、どうもありがとうございます…っ!!)
そうしてようやく、冒頭の場面となるのである。
※ ※ ※
ここでツアコンの石飛さんが大活躍である。お客さんたちに頼まれる前に、自ら即席カメラマンに大変身するのだ(おまけに配布された会社のバッジの裏には石飛さんの携帯番号が書かれていて、非常時に限らず二十四時間受け付けますと言われた時には頭が下がってしまった)。アタシはデジカメでブログアップ用の写真を気の済むまで撮ったら、石飛さんの元へ貴志さんの手を引いて歩き出した。
「貴志さん、アタシたちもお願いしましょう!」
と。
「…! …よろしいんですか…?」アタシの自分の写真嫌いを知っている貴志さんが驚くが、「折角、夫婦で参拝出来たんですよ? 記念に一枚…ね…?」「はい…っ!!」貴志さんの表情が輝いて、アタシは自分の選択の正しさを確信する。結局。一昨年、式年遷宮で新しくなったばかりの鳥居の前で、アタシのデジカメと貴志さんのスマホで、ピースサインとサムズアップで笑顔でおさまった。
【御正宮】の次は、豊受大御神の“荒御魂”がお祀りされている【多賀宮】参拝である。
“荒御魂”とは、神さまの行動的で力強い側面の事を言う。対して【御正宮】にお祀りされていたのは、平和的で穏やかな“和御魂”なのである。九十八段の石段の上に鎮座するため、昔は【高宮】とも言われたそうだ。
アタシは祈った。
……牧野の両親と和解出来た行動力に、(感謝致します)と。
【土宮】
外宮が鎮座する山田原の地主神【大土乃御祖神】さまを御祭神とする。
尚、他の別宮が全て南面するのに対して、この土宮だけが東面している。諸説あるが理由は不明である。が、外宮ご鎮座以前に遡り、古態を残したものなのは間違いないようである。
千五百年前、豊受大御神さまがご鎮座あそばされる以前からこの地を御守護する神さまに、アタシは敬意を表した。
【風宮】
【級長津彦命】さまと【級長戸辺命】さまを御祭神とする別宮である。この二柱の神さまは風雨の神であり、農作物が順調に育つようにと祈願される御宮であるが。元寇の蒙古襲来の折り、“神風”を吹かせ国難を排除したとされ、末社から別宮に昇格された。
アタシはここで、アタシの人生の“風”に……貴志さんと出逢わせて頂けた“運命”に、感謝の祈りを捧げ……貴志さんの人生に激しい荒波が立たないよう、ひたすら祈願した。
夕焼けに染まる外宮はなかなかの風情だったが、秋の陽は釣瓶落とし。参拝が終わる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。バスもライトを点けて走り、今夜のお宿に着いた。ヨーロピアンテイストのなかなか洒落たホテルである。
アタシたちは預けておいたキャリーバッグとボストンバッグを受け取り、石飛さんから部屋のキーを配布されて。これからの夕飯と明日の朝食の時間と出発の集合時間の案内があって、それぞれ解散となった。
「…わァ…素敵…っ、…もう真っ暗なのは残念ですが、明日の朝はきっと海が綺麗ですよ…っ!!」
部屋を見て歓声を上げたアタシはバルコニーへ出て、心地良い海風を感じた。ここは全室、オーシャンビューなのだ。あの金額で、このツインの部屋はラッキーである。
「…真唯さん…今からでも、特別料金を払って、もっと広い部屋に変更を…」
「…変更してもいーですけど…アタシのお金なんですよ? …それでも、変更を希望されますか…?」
「………………………」
「こーゆー処へ来ると、テレビつけたくなるんですよね。三重には、どんなチャンネルがあったっけかな…?」
「……真唯さんの意地悪……」
負け惜しみのような旦那さまの可愛い愚痴を丸っと無視してテレビをつければ、天気予報をやっていて明日は晴れとの事で上がっていたテンションが更に盛り上がる。
「明日の内宮さんのお参りも晴れみたいですよ! おかげ横丁の散策も楽しみですね♪」
「………………………」
「貴志さんはお風呂はどうされますか? 夕飯の前にひとっ風呂浴びてらっしゃいますか?」
「…真唯さんがいらっしゃるなら、ご一緒しますが…」
「アタシは寝る前で良いです。じゃあ、お土産見て、そのまま夕飯に行きましょ!」
「…はい…」
アタシは貴志さんと、一階ロビーフロント横にあるお土産コーナーを見て回り。地元の銘菓や、本真珠のアクセサリー。そしてご当地キャラのグッズなどをひと通り冷やかして楽しんだ。
時間になったのでレストラン「花鳥」に向かい、名前と部屋番号を言うとテーブルに案内された。
このツアーは、夕飯を和食にするかフレンチにするか予約時に選択出来たので、アタシは迷わず和食を選んだ。折角のお伊勢さん参りなのだ、なぜしてフレンチなど食べなきゃならんのだ?(フレンチ好きの方、ごめんなさい!)
コース料理は決まっているが、ドリンクは選べる。アタシがネーミングに惹かれて「神都ビール」を頼めば、貴志さんも同じ物を注文した。
「…貴志さんは赤ワインがお好きなのに…ビールで良いんですか…?」「…冗談じゃありません…いくら違うと思ってるんですか…」「…嬉しいです…そうやって、値段を気にして頂けるのが…」「…やっぱり、貴女は意地悪だ…」「おや。アタシは根っからの天の邪鬼ですよ。…ご存じなかったんですか…?」「……意味が全然違います……」
そんな会話をしていると、件の「神都ビール」がやって来て。ビール瓶の日の出のラベルに、太陽神・天照大御神さまを奉じる街の誇りを感じた。それをお互いグラスに注ぎあって。
「日々の糧を下さる【豊受大御神】さまと、明日の参拝の機会を与えて下さった、日本の最高位の女神【天照大御神】さまに感謝して。」
アタシがグラスを掲げると。
「…私の愛しい小悪魔な妻と過ごせる、伊勢の夜に…」
貴志さんが応えてくれて。
カチン♪
厳格なお店ではマナー違反だろうが、こんなレストランならアリだろうと、グラスを鳴らし。一口飲めば爽やかな苦みが喉を潤し、その独特の味わいに一気にグラスを干してしまったが。それは貴志さんも同じだったようで。二杯目以降は完全に手酌で気楽にするのがアタシたち流なので、先付から始まった秋の味覚を味わわせてくれる創作和食レストランの懐石ディナーは和やかに進んで行った。
正直言えば、味はそれほどでもない。だが、ツアーの料金を考えれば、妥当であろう。それにメインの伊勢海老の大きさ、美味しさはさすが地元のこだわりを感じる事が出来て、まずまずの夕飯であった。
それよりも。
漏れ聞こえて来る、近くの席に座っているツアーに参加している方々の会話が興味深かった。ご高齢のご夫婦、同性の友人同士、またはおひとりで参加している方々と実に様々である。
(…そう云えば…このツアーは、一人参加もOKだったんだ…生涯“おひとりさま”を目指していたアタシが愛する男性と、お伊勢参りが出来るなんて…ホントに人生は、何があるか理解らないものね…)
心の中で、結婚と云う“人生の波”をたてて下さった、【級長津彦命】さまと【級長戸辺命】さまをに改めて感謝したのであった。
食休みをした後、アタシたちはホテル自慢の温泉に入った。これまた、山梨で贅沢をしてしまった事が祟ってか、大浴場も檜の露天風呂もアタシの満足出来るレベルではなかったが、これが“普通”なのだと思い直して。天照大御神さまのお膝元で浸かる事が出来たお湯のお恵みに感謝を申し上げた(日本語としてはおかしい表現かも知れないが、気分はそんな感じだったのだ/苦笑)。
「…本当は『奥之院』と呼ばれる鬼門を守る金剛證寺や、月夜見宮や倭姫宮の別宮にも行きたかったんですが…ツアーだから仕方がありませんよね…」
「…真唯さん…なんでしたら、明日の自由時間にでも、」
「…おっしゃると思いました…でも、本当に結構です…以前参拝しましたし、第一時間がありませんよ…それより、おかげ横丁の散策を楽しみましょう♪」
「…真唯さんが、そうおっしゃるのでしたら…」
今、アタシたちは、フランス語で“再会”を意味するバーラウンジ「Revoir」で軽いカクテルを楽しんでる。寝酒には丁度良い。大きな窓から見える鳥羽湾が真っ暗なのが残念だ。
「…貴志さんは、楽しんで下さってますか…?」
「…私は愛しい妻とツーショットを撮れた事が、何より嬉しかったですよ…」
「…“小悪魔”などと、不名誉なあだ名を頂戴してしまいましたが…?」
「…それだけ魅力的だと云う事ですよ…」
「…貴志さんったら、調子良いんだから…」
「…調子の良い男はお嫌いですか…?」
「…ただのお調子者は嫌いだけど…貴志さんなら…好き。」
「…良かった…寛大な奥方に感謝致します。」
こうして。
バカップルな二人のお伊勢参りの夜は、更けてゆくのであった。
ちなみに。
同行出来なかったSPの代わりに、【CLUB NPOE】から派遣された“親衛兵”と呼ばれる護衛の者たちが付いていた事は、真唯は与り知らぬ、ささやかな余談である。
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