IMprevu ―予期せぬ出来事―

天野斜己

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ラブラブ新婚編

No,183 上井夫妻の信濃路紀行 其の三

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「真唯、久し振り~! 会いたかったぁ~~!!」
「マッツン、元気してたァ~~!?」
「お陰さまでね! それに、真唯大先生のお陰で大繁盛よ!! 本当に、ありがとうねっ!!」
「それはもう良いってば! それに披露宴に来てくれてありがとうね! 今回のガイド、頼りにしてるわよっ!!」
「任せといてよ!!」


『女三人寄れば、姦しい。』

昔から言うが、アタシとマッツンは、二人だけでも充分に姦しい。
……昔はこれに、トーシローも一緒になって騒いでたんだっけ……懐かしいなァ~と、しばし遠くなってしまった短大時代に想いを馳せる真唯なのであった。



※ ※ ※



朝、あの豪華なホテルの如き、澤木さんの別邸の客室のベッドで目覚め。夢であってくれたらどんなに良かったか、と落胆した(ただ、真唯的に、良かった事が一つだけあった。旦那さまが『…申し訳ありません…澤木様がご一緒だと思うと、その気になれなくて…』と謝って来たのだ。歓喜に緩みそうになる頬を必死で我慢した)。
朝食は意外な事に、和食だった。だが、昨日とは違う和風ダイニングに案内された時は……朝っぱらから疲れた。……一体、この“別邸”と云う名の豪邸には、何部屋あると言うのだっ!?
でも、例え、心の中で文句の嵐が吹き荒れていようとも、食べ物とそれを調理してくれた板長さんに罪は無い。信州の山の恵みがふんだんに使われた、豪勢な朝のご膳をしっかりと頂いたのであった。
されど。
騙し討ちの協力者の罪は重い。


「おはようございます!」相変わらず、小西さんは元気一杯だ。彼の車に乗り込んで…真唯の恨み節が始まった。
「…小西さん…昨日、お土産を買わせて下さらなかったのは…貴志さんとの会話を聞いてらしたからなんですね…」
「も…申し訳ございません。…澤木様が上井様を驚かせたいから、自分たちが来ている事を口外するなと…」
「…も、いーデス…お陰でお間抜けなお土産を買わずに済みましたし…ただ一言、文句言いたかっただけなんです…」

……理解ってる。
……一介の運転手に過ぎないこの人が、澤木さんに逆らえる筈がない事も……

「…お、お詫びと言っては何ですが…誠心誠意、務めさせて頂きますっ!!」
「…よろしくお願いします…」
「ハ…ッ! お任せ下さいっ!!」





「…ふ~ん…、何だか良く理解らないけど、大変だったのねぇ~~」
「うん、まあね…それで申し訳ないんだけど、今晩の夕飯の件、連絡した通り…」
「二名様追加ね! 任せといて!! どっちにしたって大感謝よ! あんなに遠慮していた真唯が、今夜ウチのお店に来てくれるんだから!!」

……そうなのだ。
今日は、マッツンのお店【蕎麦と酒処 田宮】の定休日。だからこそマッツンが、アタシのガイドなんかを引き受けてくれたのだが。マッツンは、その定休日の夜にわざわざ店を開けてくれると言ってくれたのだ。……アタシだけのために。
アタシは最初、丁重にお断り申し上げた。気持ちだけ貰っておくと言って。
だって。
アタシのためにわざわざ一晩貸し切りだなんて勿体ないし。何より、定休日にはキチンと身体を休めて欲しかったのだ。だから、翌日、つまり明日行く気でいた。
ブログで紹介した手前、お店の今の状況も見てみたかったのだ。
だが、予定が大幅に狂ってしまった。
……だったら。
リザさんと澤木さんに、マッツンのお店のお蕎麦とお料理を味わって頂きたい。そんな欲が産まれてしまったのだ。貴志さんに相談したら、松田さんとアドミラルに掛け合ってくれて、何より澤木さんの意向を聞いてくれて。『是非とも、御相伴に与りたい』との仰せで、マッツンに慌てて連絡したのだ。マッツンの最初の意見に従わせて欲しいと。
ただし、二名様追加で。


「…リザさんには、真唯の披露宴でお会いしてたけど、まさかドイツの貴族だったなんてね…」
「…まあ、“元”が付くんだけどね…“フォン”の称号だって、今は無いって本人は笑ってるし…」
「…その恋人さんがまた凄いわね…あの緋龍院グループの経営戦略コンサルタントだなんて…」
「…ナハハハ…」

……って事にしておくよう言われた。詳しい事は説明する必要はない。その肩書だけで充分だと。……案の定、マッツンは納得してしまっている。却って「そんな凄い人たちのお口に合うかしら…」なんて心配してるし。その点は心配無用だと、アタシは太鼓判を押した。
そんな話をしながら車から下ろしてもらって、着いた処が……




【穂高神社】
立派な一之鳥居の扁額には、【安曇一郡之宗廟 穂高神社】とある。御祭神は穂高見命であり、“日本アルプスの総鎮守”と謳われ、交通安全、産業の守り神として人々の尊崇を集めている。

つい癖で、鳥居の前で一礼したら、マッツンに笑われてしまった。
「相変わらずねぇ~~」
と。

……背後から熱視線を感じる。貴志さんだ。貴志さん、落ち着いて、落ち着いて! 別にマッツンは、アタシをバカにしてる訳じゃないんだからっ!! (…まあ、貴志さんの今の場合、アタシの隣に居るマッツンに、ヤキモチを焼いて拗ねてると云うのが正解だろうが…)

神社には、一人か、優里ちゃんと参拝させて頂くか。最近では、貴志さんと一緒とのパターンが増えているが。こうして昔馴染みと一緒と云うのも悪くない。参道を歩きながらのマッツンとの会話は、神社の御祭神とか御由緒の話なんてしない。お互いの近況報告だ。お客さんが増えたが故の苦労話を、マッツンは楽し気に語る。慎太郎さんが現状に甘える事無く努力する様を語れば、アタシも負けじと旦那さまとなった男性ひとがいかに素敵か熱く語ってしまう。
左側に位置するお手水舎を使った。なかなか渋い面構えの龍があらっしゃった。後ろに回ってみれば、味わい深い龍体をくねらせていらっしゃる。迷わずデジカメで激写してしまった。
船が見え、神馬がいらっしゃったが、今は素通りさせて頂く。狛犬ブラザースは、(怪しい者じゃありませんよォ~、お参りさせて頂きますねェ~)と心の中で腰を低くしたくなるような威厳に満ちていて。二之鳥居を潜れば、眼に飛び込んで来るのは神楽殿だ。ここで舞われる御神楽は、さぞかし荘厳に見えるに違いない。
朱塗りとはまた違う、微妙な色合いの拝殿の前に、立派な御神木が在った。だが【孝養杉】と云う名のため、嫌な予感を感じて丸っと無視させて頂いた(笑/後日、その予感は当たっていた事が判明した。調べたところによると、穂高在住の女性が母親の病気を治したいと願掛けの丑の刻参りをして、容態が回復したと云う逸話にのっとっているそうだ。……別の意味での丑の刻参りなら、するかも知れないケド)。


さすがの偉容を誇る拝殿に、マッツンと貴志さんと並んでご挨拶申し上げる。新たな御縁を頂けた事に、ひたすら感謝である。


ちなみに。この本宮は里宮であり、上高地(神垣内、神降地)に奥宮、奥穂高岳山頂に嶺宮が在る。本殿は形式の等しい右殿・中殿・左殿が並ぶ三殿方式で、この三殿と規模の小さい神明社が一直線に並ぶ。このうち中殿には、このお社だけに伝わる独特の形式の「千木」と「勝男木」が乗せられている。勝男木は釣竿または船の帆柱を表していると言われ、この形式は「穂高造」といわれる。左殿の御祭神は、綿津見命。海の神であり、安曇氏の祖神でもある。右殿は、瓊々杵命がお祀りされている。
参拝は後ろに並ぶ方にすぐに譲ったが、奥の本殿(中殿)と、拝殿の向拝をじっくりと拝ませて頂いた。波と亀が彫刻されていて”海”を連想させる意匠に、“穂高”をイメージするものではなく、祖神を優先させている処に面白さを感じた。安曇氏が筑紫から安曇野に逃れて来た話は、昔、何かで読んだ覚えがあるが、詳しい事は忘れてしまった(苦笑)。
鶏が放し飼いにされているようで、鳴く声がどこかゆかしく感じられる。アタシは伊勢神宮を思い出してしまった。
御朱印を授与して頂く間に、広い境内を散策させて頂く事にした。
幸い時間はたっぷりある。
拝殿の向かって右側に、立派な樹が在った。近付いてゆくと、どうやら欅の木のようだ。その見事な枝振りに陶然としていると、「この木は樹齢500年以上ある天然記念物【若宮西の欅】よ。川端康成や井上靖、東山魁夷が夫婦お揃いで参拝して、絶賛した事で知られているわ。井上靖は、この古樹に感銘を受けて、帰京後に短編小説「欅の木」を書き下ろしたほどだと言われてま~す。」
マッツンの説明に驚いていたら、「今日はガイドだからね。一生懸命、勉強して来たのよ。」お茶目にペロリと舌を出す仕草に、心が温かくなる。「…ありがと、マッツン。」「どういたしまして。」
安曇連比羅夫命がお祀りされていると云う若宮に先ずは参拝して。若葉が萌えいづるような大樹をしみじみとお見上げした。危うく“トリップ”しそうになるが、今日はマッツンが一緒なのだ。慌てて自重して……しみじみと見上げるだけに留めた。……【孝養杉】なんかより、ずっと立派だわと心の中で称賛しながら(笑)。
一旦、二之鳥居の外に出る。さっき素通りした処を改めて拝見させて頂くためである。
平安時代風と云うには、いささか首を傾げたくなるような木造の屋形船が在った。【神船】だ。東京多摩川最後の船大工・久保井富蔵氏が平安時代の資料を元に完成させ、1982年の大祭に奉納された「穂高丸」との事である。
舳先の龍が何ともユニークで、平安時代の貴族が舟遊びしたと云うにはいささか典雅に欠けると思ってしまうアタシは、充分罰当たりだろう。
それを言うなら、【御神馬】像の方が、余程、優雅な佇まいだ。信州古来種の木曽馬をモデルにしたものだそうで、煌びやかな鞍や唐鞍(奈良時代の馬の飾り)と呼ばれる馬具を装着している白馬は見るからに気品が在る。
面白い像もあった。「日光泉小太郎」だ。マッツンは、ひととおり安曇野の民話を聞かせてくれた。松谷みよ子さんの「龍の子太郎」のモチーフであり、アニメ「日本昔ばなし」のオープニングのモデルにもなったと聞けば興味深い。脇に在った碑によれば、『父親の白龍が海津見神。小太郎が、穂高見神の生まれ変わり』とあり、ホンマかいな!?と思いつつも、スケールの大きな民話の内容を大人しく拝聴したのだった。

【 健康長寿道祖神】も、しっかり拝ませて頂いた。

が、しかし。

長野県が男女で長寿日本一になったことを記念した物であるとの事だが……ステンレス製と云う事には大いに違和感を感じた。アタシの中で「道祖神」と言うとどうしても、素朴な石造りのイメージがあるから……
まあ、年老いた翁と媼が微笑み合って仲良く手を取り合っている様には、(…貴志さんと、こんな風に過ごせる様になれますように…っ!)と、手を合わせてしまったのだった。

【 ものぐさ太郎の塚】は、身につまされた。
“ものぐさ太郎”として有名であった、若宮社の相殿に祀られている信濃中将をモチーフとした「御伽草子」は、アタシの心にしっかり根付いている。太郎顔負けのモノグサであったアタシだが……今では、朝食やブランチをかなり手際良く作れるようになっている……ハズだ。


……女子力0の“干物女”ではない……少しは進化したと思いたい……


「御伽草子」の中では、甲斐・信濃の中将に任ぜられた太郎はしっかり子孫繁栄、120歳の長寿を全うし。死して後、太郎は「おたがの大明神」(穂高明神あるいは松本の多賀明神と思われる)、女房は「あさいの権現」として祭られ人々に篤く崇敬されたとされるが…120歳なんて贅沢は言わない。80か、せめて60までは、貴志さんと仲良く共に生きたい……
非常に珍しいと云う白松もしっかり拝見させて頂いて。その他、見どころ満載であった境内内をゆっくりしていたら、時間なんてアッと云う間で。新しい御朱印を無事にゲットしたアタシは、すっかり満足してしまった。
小西さんが待っていると云う駐車場へ向かう一角に、【安曇の銘水】が在った。手水の御水のようであるが、飲用したら癌が治ったとか、古来より病気治癒のご利益の水として有名だったそうだ。「長野県の検査センターで水質調査して、お墨付きを貰ってる名水よ。」とのマッツンの御言葉に、みんなで有り難く頂戴する事になった。
そうして喉を潤して。
海の神と山の神が、混然一体となったような不思議なお社を後にして。
次の目的地、【大王わさび農場】へと向かったのだった。




【大王わさび農場】

「あ~ん、残念だわぁ~! どうせ見せるんなら、お義父さんの山葵畑見て欲しかったぁ~~!!」
「…だから私は、そっちでも良かったんだってば…」
「やぁよ! どうせなら、青々と瑞々しい山葵畑を見てほしいんだから!!」
「…………………」


……着いた時からマッツンは、ずっとこの調子なのである。

(…もう、放っとこう…)


愚図愚図と五月蠅い友は放っておくことにして、真唯は日本最大規模を誇る“わさびのテーマパーク”を楽しむ事にしたのだった。

入り口で観光客を迎えてくれる蓼川の水車小屋は、とても風情が在る。
故・黒沢明監督の映画「夢」の舞台となった事から一躍有名になったが、なるほど人の訪れが絶える事はない。安曇野らしい大自然を体感出来る絶景ポイントとして人気のようだ。
さらさらと流れる小川の水底は透き通る様で、時折魚の姿も見える。その、あまりに清らかな流れに、伊勢神宮の五十鈴川を……浅間大社の湧玉池を……忍野八海を思い出す……
しかし、どんなに美しい眺めもお腹のたしにはなってはくれない(苦笑)。いくつかある食事処から無難なレストランを選択して、アタシは「本わさび丼」なるものを注文した。貴志さんもマッツンも同じ物をオーダーしていた。熱々のご飯に山葵の茎をまぶし、産地直送の鰹節の上に摩り下ろした本山葵を乗せ、お醤油を垂らしただけだと云うシンプルな逸品は、ここの名物だと云う事だ。間もなくやって来た名物を味わい、食後は「湧水コーヒー」を楽しんだ。
食休みをしたら散策である。
先ずは【大王神社】に参拝させて頂いた。
まるで、沖縄のシーサーのような狛犬が護る、小さなお社であった。
【大王わさび農場】が完成した年、創業者・深沢勇市氏によって地元の英雄「魏石鬼八面大王」をお祀りした神社である。お社には、“八面大王の大わらじ”が奉納されていた。その大きさは六尺との事で、“八面大王”がいかに巨人であったか理解ろうと云うものだ。……この手の巨人は、“伝説”で片付けられてしまうが……


アタシは丁重にご挨拶申し上げた。
時の権力者によって攻め滅ぼされてしまった、悲運の英雄に。


「この地方ではね、巨大なわらじを作って子供に踏ませると、健やかに育つって言われてるのよ。」
「ふ~~ん…じゃあ、マッツンと慎太郎さんの子供のために、でェ~~っかいわらじ用意しとかないとね。」
「言い伝えよ、言い伝え。それよりここは長野のパワスポとして、戸隠神社や諏訪大社と肩を並べてるのよ。御利益あるかもよ~~。」
「興味ない。」
「…変な子よねぇ~~、これだけ神社なんかが好きなのに…」
「…パワースポット巡りしてる気はないし…ブログにも、そんな紹介の仕方をした事はないわ。」

……そう。
……アタシの神社仏閣巡りは、“御利益”を求めての旅ではない……
アタシの興味が動くか……浪漫を感じるか否か。
ただ、それだけなのだ。

【幸いのかけ橋】なる人気スポットは無視させて頂きたかったが、先に進みたかったので仕方なしに渡った。
ちなみに。
山葵の花言葉をマッツンは教えてくれた。

“幸せを運ぶ”、“目覚め”、“嬉し涙”

どれも素敵なキーワードである。少なくともマッツンとっては、“幸せを運んで”くれたようだ。……アタシの幸せは……背後を歩くひとが運んでくれる。アタシも貴志さんに幸せを運べるように、もっと努力しなければ…っ!!



【大王窟】
この、わさび農場の名前の由来にもなった、“八面大王”が最後に立てこもった洞窟を再現しているそうだ。奥には、お地蔵様と観音様らしき石仏が建立されていた。大王をお慰めするためのものと思われる。心を込めて、合掌させて頂いた。



【開運洞】
小さな洞窟で、鎌倉の長谷寺の弁天窟を思い出させた(あそこまで規模は大きくない)。一番奥には、七福神像が安置されていた。ところが。

「触らないの…?」
「…真唯こそ…」
「触れると幸運を授かるからって、連れて来てくれたんでしょ…?」
「私はいーのよ。真唯大明神さまのお陰で、商売大繁盛だもん…これ以上、何か願ったりしたら罰が当たるわ。」

それを聞いた瞬間のアタシの反射神経は、我ながら素晴らしかったと思う。マッツンの手をムンズと掴んで、無理矢理触らせたのだ。

「キャアァーーッ! 何すんのよっ!?」
「【真唯大明神】なんて、どこにもいないのっ!! 素直に七福神の御利益に与りなさいっ!!」
「…万が一、何かあったら、あんたのせいだからね…っ!!」
「そん時は連絡寄越しなさい! 再取材して、一大キャンペーンやったげるからっ!!」
「ウキャアァ~ッ♪ やっぱり、真唯大明神さま! 真唯観音様っ!!」
「…っ!? …喧しい…っっ!!!」

……アタシたちの声は狭い洞窟に響いて、ホントに喧しかったと思う……この日アタシたちと同じ時間に【開運洞】にいらした皆さま、ごめんなさい……阿呆なマッツンが悪いんです……



【八面大王の見張り台】もしくは【太陽の石】
名前の通りの絶景ポイントであるが。このわさび農場の創設者は“八面大王”に農場の未来を託したが、二代目は精神の拠り所を太陽を主とする自然崇拝に求めたようだ。それは容易く、アタシにインカを思わせ……ヴィラコチャの祭り……来月の【インティ・ライミ】が今から楽しみになってしまったのだった。



【萬緑の湧水】
「いわな茶屋」と云う店の前の岩の上の祠の下から湧水が出ていた。“知恵の水”と“美人の水”があって、両方、有り難く頂戴した。……市販されているこの水をダース単位で購入しようとした貴志さんを慌てて止めた。『こう云う御水は、その場で頂くからこそ有り難みがあるんですっ!!』と、営業妨害まがいの事を叫んで。
お詫びの印に、山葵が使われた商品をバカ買いしてしまった(貴志さんのお金だが)。室井さんに、トーシロー。リザさんや澤木さんにも押し付けてやろう。勿論、自分土産にも致しました。
名物のわさびソフトは我慢した。夜のマッツンお手製のご馳走のためにも。

クリアボートと云う体験コーナーはパスした。川下り(?)をしたいとは思わなかったから。清流は、眺めているだけで充分なのである。



※ ※ ※



「送ってくれて、ありがとね。夜に待ってるわ。」
「こっちこそ、ありがと。楽しかったし…夜はもっと楽しみにしてるわ♪」
「プレッシャァーッ! だけど、真唯をがっかりさせないよう、全力で頑張るわ!」
「その意気、その意気! 大丈夫、マッツンを信じてるからっ!!」
「拓也君、都合で来られない事すっごく残念がってたけど、夜は来るからね! 東京のお店が順調だって、すごくお礼を言いたがってたから!!」
「そんなの、別にいーのに。順調なのは、拓也君が頑張ってるからでしょ。」
「ハハッ! 真唯らしいやっ! じゃあまた、夜にねっ!!」

安曇野を案内してくれたマッツンとは、夕方別れた。
これから仕込みの最終段階に入るそうだ。




……あァ~、夜が待ち遠しい♪






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